2021

『終ノ空 Remake』レビュー

誰もが知るエロゲー界隈には、ある伝説が流れている。みんな口を揃えて「素晴日」は神ゲーだと言う。 だが、その「神ゲー」たる所以を尋ねると、返ってくる答えはどこか噛み合わない。 「素晴日はグロ CG がたくさんあるんだよ!」 「性転換フタナリの HCG もあるぞ!」 「暴力と性の要素が盛りだくさん!」 これを聞くと、ここで言う「神ゲー」はただ「過激なエロ」のせいで神ゲー扱いされているだけなのでは、と思えてくる。しかし「素晴日」に関してはそうでもないらしい。ネットでこのゲームの感想を検索すると、必ずと言っていいほど「非常に哲学的だが、要領を得ない」感想文が山ほど出てくる。 「非常に哲学的」というのは、多くの人が「素晴日」をプレイした後に長文を残し、その中で古代のクトゥルフ神話から後年の並行世界まで、ありとあらゆる内容を縦横無尽に引用し、あたかもこのゲームの深さが巨大な哲学書並みであるかのように語るからだ。 しかし「要領を得ない」のは、俺がそんな文章を読み終えても、結局このゲームがどんな物語なのか最後までわからなかったことだ。ただ、このゲームの脚本家が SCA 自だということだけは覚えた。 後になって好奇心から「素晴日」を試したことがある。当時日本語は読めなかったし(今も読めないが)、やったのは漢化版で、2時間ほどでゲームを閉じた。理由は簡単:つまらない。 このゲームの多くの会話は、完全に「無理やりな哲学論調の無脳な植え付け」で、実際には二人が雑談しているだけなのに、大量のいわゆる「哲学的内容」をぶち込んでいるだけ。逆にゲームの主軸は主人公がうろついて会話するだけで、それ以上ではない。 当時の俺が求めていたのは「超展開」と「世界を救うレベルの戦い」で、「素晴日」は明らかに俺の好みではなかった。 その後、幸運にも「素晴日」と同じ脚本家の『サクラノ詩』をプレイする機会があった。その頃にはもう中二病丸出しのバカ設定ゲーには飽きていたこともあり、『サクラノ詩』にはかなり高い評価を与えている。『サクラノ詩』は物語として強い印象を残した。天才同士の主人公たちの会話、どこか「傷仲永」的な展開、そして最後の少し切ない結末。ゲーム中の哲学的な議論も今なお記憶に残っている。特に「美術」と「数学」の関係についての話は、女教師の前で見事にイキるのに使えた。 そんな風に『サクラノ詩』には良い印象を持ち、評価もしているのだが、ネット上の『サクラノ詩』の評価を見て呆然とした。なぜなら、見覚えのある光景がまた目の前に現れたからだ。 ネット上の『サクラノ詩』の好評は、相変わらず大量の哲学的な文字で埋め尽くされている。ゲーム中のやや中二病的な会話、ゲーム内で引用された日本文学の断片、そして幻想に満ちた自己陶酔。 もちろん、ゲームの筋書きについての紹介はほとんどない。中にはあらすじすらないものもある。聞かないでくれ、聞いたら「ネタバレ回避」だ。しかし、ネタバレを避けたとしても、ゲームがどんな物語を語っているのかは説明できるはずだ。そうでなければ、お前がこのゲームをどれだけ褒めているかだけを見て、何を語っているのかもわからないのに、どうやって自分に合っているか判断しろというのか? これで思い出したのは、かつての「素晴日」だ。同じ感覚。そしてすぐに合点がいった。『サクラノ詩』を通して「素晴日」を見れば、それがどんなゲームかわかるはずだ。 もちろん、今に至るまで、俺は「素晴日」を再プレイしていない。

『さくら色 Dreamer』レビュー

2020年の最後の月、妙な日付に妙なゲームが現れた。『さくら色 Dreamer』である。 このゲームの開発元は「Cover」、子会社は「Hololive」と書いてある。ご存知の通りVtuberを運営する会社で、ヒロインもそこの所属Vtuberの一人、さくらみこだ。この名前がまたとんでもなくダサい。翻訳すると「桜巫女」になるからだ。 もちろん、Vtuberがゲームを出すのは今の業界の流れに沿った良いことだ。Vtuberは資本の寵児で、売れてる連中は金に困ってない。エロゲー屋よりよほど金持ちだから、ゲーム作りも気合が入ってるに違いない。 で、そのゲームを見たんだが、マジで腹が立った。

『紅月ゆれる恋あかり』レビュー

前回の「続編」である『白刃きらめく恋しらべ』に心から失望してから、早いもので会社 CRYSTALiA がまた新しいシリーズ作品『紅月ゆれる恋あかり』を出してくれた。 制作陣を見てみると、この新作はどちらかというと「本気」を出しているように思える。少なくとも前作のぼったくり作品よりは本気だ。なにより最初の脚本家が戻ってきたし、原画の質も大幅に上がっている。もちろん、最初の企画が戻ってくるわけではないが。 ゲームの設定はむしろ「前日譚」に近く、各家族の先輩たちがこの学校に武術を学びに来るという物語だ。さらに主人公の設定も変わり、退役した教官として「問題児」だらけのクラスを受け持つことになる。
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『ココロのカタチとイロとオト』レビュー

CUFFS 傘下の HOLOTTE ブランドが立ち上げたサブブランド・HOLOTTE ROI の新作、『ココロのカタチとイロとオト』。タイトルはまあありがちで、要するに「心の形と音と色」ってことだ。物語は、幼い頃から超能力を持つ主人公の話。他人の「心の声」が聞こえ、「心の色」も感じ取れる。怒りなら赤、楽しければ黄色、不機嫌なら紫、みたいな感じでな。 もちろん、聞こえだけなら最高に気持ちいい能力……かと思いきや、実際はそうでもない。頭の中がうるさいのだ。周りの人間が何を考えているか全部聞こえてくるんだから、うざくてしょうがない。主人公もそれをうざったく思っていて、そのうち「周囲の音を自動で遮断する」という特技を身につける。このクソみたいな特技を覚えたのは必要だったんだろう。おかげでゲーム内で主人公の超能力をいちいち複雑に表現する必要がなくなる。たまに画面が色でチラついて、主人公が何かを聞いたと示すくらいで、プレイヤーはすぐにあのクソ能力の存在なんて忘れてしまう。 で、ここからが本題。主人公の周りに二人の女の子が現れる。一人はピンク髪、もう一人は金髪。そこで主人公は不思議なことに気づく。自分の超能力がピンク髪には効かないのだ。つまりピンク髪の心の声は聞こえないが、金髪の声は聞こえる。この設定、どこかで見たことあるだろ? 金髪は内心、主人公のことが好きでたまらないのに、ツンデレで「ピンク髪のところに行け」と言ってくる。それでも主人公は報われない金髪を無視して、ピンク髪と盛り上がり続ける。

『星空鉄道とシロの旅』レビュー

主人公は平凡な社畜絵師。ひょんなことから夜の蒸気機関車に乗り込み、どこへ向かうかもわからない旅に出る。 車内にいるのは主人公だけじゃない。スウェーデンから来た外国人、糸目のお兄さん、美人のお姉さん、それに黒猫ロリータ。もちろん、何を聞いても要領を得ない車掌もいる。 旅はいろんな場所を通る。北欧の黒い森、日本の南の島、北海道の函館天文館、そして主人公がかつて暮らしていた場所。 そう、この列車は時間と空間を越えた存在で、乗客たちをそれぞれがかつて最も憧れた場所へ連れて行く。外国人にとっては故郷の黒い森、糸目のお兄さんにとっては島が故郷、美人のお姉さんの故郷は北海道、そして主人公の故郷は当然、あの住まいだ。

『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』レビュー

Navelという会社はかつて「Navel Honeybell」という別ブランドを立ち上げていた。設定だけはやたら壮大で、ちょっとロマンチックな雰囲気のゲームを専門に出すブランドだ。しかも一番アホらしいのは、そのゲームを全部俺が遊んでいたことだ。『飛翔する羊と真夏の花』だの、『Magical Dear』だの。で、これらのゲームには共通点がある。 設定がやたら面白くて、設定を見ただけで遊びたくなる 絵柄はそこそこ。萌え系路線で、とにかく人を惹きつける 序盤のシナリオが妙にスケール大きくて、この先の展開も絶対面白いと感じさせる 音楽がやたら良い。しかもどれも西又葵が関わっている 中盤から物語が崩壊し、最後は打ち切り そう、この二本とも打ち切りなのだ。最初はあんなに設定が魅力的だったのに、最後には見事なまでの打ち切りエンドをくらわされる。意味不明すぎて、人生を疑いたくなるレベルで。 ところが面白いことに、Navel Honeybellというブランドはすぐに消えた。潰れたのだ。だがNavel本体は潰れず、ロボット設定のゲームを一本売ったあと、Citrusという名前のブランドがひょっこり現れた。正直このブランドには最初気づかなかったが、そのデビュー作を見れば親会社がどこかは誰だって分かる。 で、今回の『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』はこのCitrusの第二作目にあたる。価格から見ると短そうなのに、遊んでみるとやたら長く感じる。そしてクリアしたあとに残ったのは、消えにくい後悔の念だった。 その「後悔」が何なのか、順を追って話していこう。