『Pieces/渡り鳥のソムニウム』レビュー

夢であなたに会った

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誰にでもある種の錯覚があるはずだ。ある人に出会ったとき、あるいはある瞬間に、頭の中に「この情景/この人、夢で見たことがある気がする」という考えがふとよぎる。

この現象については多くの人が研究し、論証してきた。大半がたどり着く結論はいくつかの可能性だ。記憶のズレか、似た場景による錯覚か、あるいは潜在意識にある場景の曖昧な記憶か。シュタインズ・ゲートのゲームに至っては「異なる世界線の既視感」と説明していたりもする。そして最後に、確証はないが排除もできない要素がひとつ残る。夢だ。

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つまり、あり得る話として、あなたが出会った馴染みのある出来事は、確かに夢で見たものかもしれないのだ。

夢は面白いものだ。人間は自分の夢を決してコントロールできないが、その夢はその人自身が作り出している。すなわち、私たちが夢の中で冒険しているとき、その夢は私たち自身が編み出したものなのである。「自分と自分で遊んでいる」感覚がちょっとある。

普通の人間は毎晩眠るときに一〜三つの夢を創造していて、成長の過程でさまざまな夢が積み重なるとその数は恐ろしいほどになる。それらの中には現実で出会う情景に近いものが一、二つあってもおかしくない。だからいわゆる「既視感」が生まれる。この方法で人間の「いつも夢で見た気がする」感覚を説明するのが一番信頼できるはずだが、そんな冷たい現実より、私たちはロマンチックな解釈のほうを受け入れたいと思う。

「あなたと私の間には天が定めた何らかの繋がりがあって、だからこそ私たちはとうに夢の中で出会っていて、夢の中の情景が現実での出会いへと私たちを導いた……」

ロマンチックに聞こえるだろ? uh?

だから多くの文学作品で「夢」に関連する創作を見かける。夢が神秘的なだけではなく、「夢」がもたらすあの「ロマンチックな」、ちょっと「宿命」や「運命」めいた感覚によるものが大きい。かつて話題になった『君の名は。』もそうだし、Galgame の分野でもこうした創作は珍しくない。『キミトユメミシ』しかり、今月の Whirlpool の新作『Pieces/渡り鳥のソムニウム』しかりである。

Whirlpool といえば、多くの人は「廃萌」会社だと思うだろう。出すゲームの大半が「萌え系脳死作」で、看板絵師の水鏡まみずのエロ画像を売りにして食い繋いでいるだけ、というイメージだ。そこそこ評価された初期の『鯨を操る』や去年の『初情スプリンクル』でさえ、萌えとヒロインのかわいさを売る点で優秀なレベルに達したにすぎない。洗濯機と冷蔵庫を除けば、whirlpool と「ストーリー重視」の三文字を結びつけるのは難しい。だから今回の whirlpool は Steam の猫忍者を売りまくって儲かったのかもしれない。だが売り続けて気持ちよくなるだけではなく、本を忘れず、ストーリーの強い脚本を呼んできて、自社の「ストーリー重視」路線を始めたのだ。

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ゲーム名「Pieces/渡り鳥のソムニウム」からは正直何も読み取れない。前半は「断片」、後半の「渡り鳥」はわかりやすい。一番難しいのが「ソムニウム」で、対応する英語は「somnium」、ラテン語で「夢」を意味する。

つまりタイトルは「断片/渡り鳥の夢」と訳すのが適切で、ゲームのテーマが「夢」に関係していることも示している。

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ゲームの舞台は架空の世界で、そこにはこんな伝説がある。かつて天使が人間界に降り立ち、神から世の中で最も「尊い」ものを探すよう命じられた。しかし天使は探し方がわからず、さんざん探しても見つからない。挙げ句に天に戻ることを禁じられ、人間界で良いことなど何もせず、むしろ大騒動を巻き起こした。だが天使が眠っているときだけ人間界は平穏になる。だから人間たちは自分たちの生活の安寧のため、毎日街の中心で「催眠の子守唄」を歌い、天使に捧げて眠り続けてもらう。頼むから起きて迷惑をかけるな、というわけだ。そうして主人公の暮らすこの街には、朝に「童謡の子守唄」を歌う風習が根付いた。

とはいえ伝説は伝説で、主人公の生活には天使など見たこともない。ただ主人公には非常に独特な超能力がある。他人の夢を覗けるのだ。

その覗き方は勝手に侵入する類のものではない。誰かが眠り、主人公も眠ると、主人公はその人の夢と「同期」でき、夢に入り込み、干渉し、改変することさえできる。主人公のこの能力も実のところ大した使い道はない。夢を見るだけなら何がすごいのか。ただ主人公はこの能力のせいで、ちょっと変わった趣味を持っている。眠るのが好きなのだ。

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授業中に寝る、帰宅して寝る、用もなく寝る、どれも朝飯前。寝るのは気持ちいいし、他人の夢の中の小芝居も見られる。やらない手はない。

そんなある日、主人公は奇妙な噂を耳にする。学校の近くに幽霊が出るアパートがあり、そこには女吸血鬼がいるらしい。何人かの同級生が度胸試しに行って、全員怖がって帰ってきた。主人公も偶然そこへ行くが、アパートの窓に女の子の姿を見つける。まさか彼女が吸血鬼なのか?

帰宅後、主人公は大胆にも寝る時にその謎の女の子の夢に入り込もうとするが、何もない。翌日またその子を訪ね、ラーメンの出前一丁……ではなく出前でようやく接点を持つ。主人公は彼女から話を引き出そうとするが、相手は一瞬で主人公の「他人の夢を見る」能力を見破る。

なぜ主人公は女の子の前夜の夢を見られないのか。彼女が寝ていないからだ。

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なぜ寝ないのか。彼女には主人公に近い能力があり、ただその体験は主人公よりはるかに劣悪だったからだ。

彼女の名は君原結愛。幼い頃から奇妙な症状に悩まされてきた。近くにいる人の夢に突然引き寄せられ、急速に眠りに落ち、睡眠中に他人の夢を強制的に体験してしまう。しかも夢には選択性があり、悪夢しか体験しない。

要するに、近くに誰かが眠って悪夢を見ていると、自分が突然眠り、その人の悪夢を体験し始めるのだ。

この能力はマジでヤバい。だが君原結愛いわく、医者にも変なものにも見てもらったがどうにもならず、毎日他人の悪夢に苛まれ続けるしかないという。夢の中には何でもある。殺されるもの、潰されるもの、輪姦されるものもあり、彼女の精神状態はかなり悪く、他人の悪夢に侵されないよう工夫するしかなかった。

その方法とは何か。夜に寝ないで、昼に寝るのだ。みんな夜に寝るから、同じように寝ると他人の悪夢に拉致されやすい。昼に寝ればましになる。だからこそ主人公は君原結愛の夢を見ようとしても何も見えない。彼女は寝ていないからだ。

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こうして主人公は君原結愛の秘密を知り、彼女との関係も一歩深まる。そして彼女がこの特殊な体質ゆえに学校へ行きたがらず、このアパートにこもってひっそり暮らしていることも知る。周囲の多くの人がここを幽霊屋敷と勘違いするので、君原結愛はペットのカステラを駆使して外部の者を追い払い、ますます外界に幽霊がいると誤解させるのだった……

主人公と君原結愛の接触が増えるにつれ、彼女には不可解な秘密がまだたくさんあることがわかる。たとえば主人公はよく夢の中で女の子と話すが、その声は君原結愛によく似ている。主人公はよく奇妙な夢も見る。天使のような何かが自分に語りかけてくるような夢だが、目覚めると忘れている。これらの疑問はすべて、ゲームの True End で初めて説明される。

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そう、このゲームにはストーリーロックがある。すべてのヒロインを攻略しないと、最後の True End は解放されない。

個人的なおすすめは、まず他のサブヒロインを攻略し、最後に君原結愛を攻略して、True End を解放したら一気に進むことだ。そのほうが物語が最も連続する。

他のサブヒロインの設定は大半の Galgame と同じで、いくつかのキャラクターテンプレートにすぎない。幼なじみの小鳥遊紬、毎日寝ている先輩の藍野深織、夢の中でいつも別の自分を見る後輩の美城ありす、などなど……それぞれのルートで彼女たちは自分の問題に直面し、主人公がその解決を手伝い、ついでに本当の自分を見つける。

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彼女たちの問題は実のところすべて「夢」に関係している。たとえば小鳥遊紬は未来の情景を夢見ることができ、先輩の藍野深織はいつも眠っていて「眠りながら物事をこなす」ことができ、後輩の美城ありすは夢の中でいつも別の自分に会う。しかも夢の中の自分は今の自分と「どこか違う」。大半は「ヒロインは夢の中でいつも別の世界を見ている」ことを示しており、ある者は別世界の自分を見、ある者は夢の中に別世界の情景と存在がある。実はこれらの人々と「夢」の関係には常に謎が残る。なぜなら彼女たちの夢の中の問題に気づいたのは君原結愛だからだ。ここで触れねばならないのが、ゲーム唯一の選択肢にある小さなヒントだ。主人公は最初から君原結愛への好意を露わにしていて、周囲の人間はバカ以外みんな気づいており、誰もが二人をけしかける。その時の選択肢は「君原結愛との関係を弁解する」か「黙認する」か、である。

この選択肢を見れば「真・ヒロイン」が誰かは明白だ。

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もちろん君原結愛のルートに入れば OK だと思った? Naive!

君原結愛のルートも最初はごく普通だ。まず全ヒロインが君原結愛の家に来て、生活の楽しさと人生の温かさを見つけ、友達になる。最後に君原結愛がなぜ学校に行きたがらないのかが説明される。実はあの「悪夢能力」とは関係なく、悪夢を見たときに同級生の一人が夢の中で自分(君原結愛)を殺していたのを目撃したからだった。夢の中で他人を殺したいと思うなら、その人を相当恨んでいる証拠だ。だから君原結愛はその相手に会いたくなくなり、自分は嫌われているとさえ感じて、家にこもって出てこなくなった……

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もちろん最後には問題は解ける。要はその女の子がある男の子を好きだが、男の子は君原結愛を好きで、女の子が嫉妬して夢の中で極端な考えを持っただけ。本人もそれほど悪意があるわけではなく、考えただけである。

これは裏を返せば、夢とは人間の現実生活におけるストレス発散にすぎないということでもある。お前が気に入らない、傷つけたくない、表現もしたくない、夢の中でくらい発散してもいいだろ?

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君原結愛のルートの最後は、彼女が学校に戻り、主人公とイチャイチャした生活を送る。だがこの結末には ED がなく、君原結愛が深い眠りについて目覚めないまま終わる。そして True End へ。

True End の前に、実はこのゲームにはすでに多くの伏線がある。私も最終的な内容はほぼ予想できていた。

覚えているだろうか、ゲーム冒頭の天使の伝説を。実は個人ルートでも、街にはいつも不可解な「大地震」が起き、住民はあの「眠れる天使」の話をする。天使の目覚めが地震と災害を招き、天使の眠りが街の安寧をもたらす。面白いことに、君原結愛は何かを知っているらしいが、口にしない。

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何が思い浮かぶだろうか。この時点で私はあるゲームを思い出した……そう、私のブログアイコンのあのゲームだ……

『すきま桜とうその都会』

このゲームの設定は、最初の個人ルートではそれぞれが自分の問題を抱え、最後にヒロインが世界全体が嘘で作られたものだと告げる。世界に来た主人公たちはそれぞれの理由で外の世界から逃げてここへ来た。ヒロインのルートも最初はいろいろ隠し、最後に世界の秘密が明かされる。

もう一つ、この二つのゲームの関連を思わせた理由が SDCG だ。あまりにも似すぎ! 調べたら案の定、同じ人が描いていた。

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だからこの時点で疑わざるを得ない。主人公のいるこの世界は、実は伝説の「天使が創った夢」であり、最も天使の可能性が高いのは君原結愛ではないか、と。

だが残念ながら、前半は当たったが後半は外した。True End の展開は私の顔を引っぱたいた。

ゲームの True End が始まってすぐ、主人公は夢の中のさらなる情報に出会う。眠る君原結愛の夢の中で、主人公は自分を世界の神と名乗る二人組に出会う。彼女(彼)たちは、この世界が谁かが創った夢であることだけでなく、この夢を創る能力が「君原結愛に受け継がれた」ものであることも告げる。

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つまり君原結愛は天使ではなく、ある天使、あるいは天使に関わる者が自分の役割を君原結愛に移したのだ。天使の能力を持てば他人の夢を見られ、より多くの苦痛も背負う。だがその夢は多くの人の夢を繋ぎ合わせ、ひとつの世界を形成する。それが主人公のいる世界だ。君原結愛がこの夢を放棄すれば、世界は消え、すべては現実に戻る。

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主人公は夢の記憶の中で、何年も前の君原結愛との会話を思い出す。その会話では、君原結愛と主人公が何か取引のようなものを交わしたらしく、だから今の姿になった。主人公はこの街の奇妙な点も思い出す。たとえば多くの人が列車に乗ってやって来たこと。夢からこの世界へ来た証であり、列車に乗って去れば、みんな夢から覚めるのかもしれない。

簡単に言えば、天使が夢を創り、その夢を一人の凡人(君原結愛)に託して運営させ、夢は多くの人を引き寄せ、みんながその夢の中で暮らす。運営者が去れば夢は消え、すべての人は現実の生活に戻る。

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だが君原結愛は奇妙な責任感を感じ、この夢を終わらせたくない。自分勝手に夢を放棄するのは夢で暮らす他の人々に申し訳ない、と。そこで主人公は夢の中で住民投票を行い、大半の人が夢から覚めることを望むとわかる。ここでゲームは再び選択肢を出す。

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1、夢の中で暮らし続ける

2、夢から覚める

一つ目を選べば、主人公は偽りの夢の中で君原結愛と暮らし続け、ゲームはそこで唐突に終わる。もちろん二つ目を選べば、物語は続く。

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二つ目の結末は、主人公が街の中心で全住民にここが夢であること、数日後に夢が閉じ、列車で街を出て現実の生活に戻れることを告げる。

現実に戻るのは良いことばかりではない。夢の中の人が現実でも同じとは限らない。夢では若者でも現実ではおっさんだったり、夢では美男子でも現実ではデブヲタだったり……だがともかく、現実に戻るのは全員の決定であり、覆らない事実だ。

夢の最後の瞬間、主人公はすべての友人を見送る。各ヒロインが主人公に別れを告げ、中でも親友の言葉が最も印象的だ。

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「俺たちはもう繋がっている。夢から覚めても、きっと現実でまた会える」

(Google+ が終了した瞬間を思い出す)

君原結愛が主人公と一緒に去ろうとしたとき、主人公は彼女に言う。「ごめん、俺はここを離れられない」

「どうして?」

「俺は……この世界の一部だから」

最後に主人公は君原結愛にもっと重大な真実を告げる。

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この世界は天使が創った夢で、君原結愛に託された。すべての原因は数年前、主人公と君原結愛が海辺で出会ったことにある。

冒頭の「天使下凡」の話を覚えているか。天使は世の中で最も「尊い」ものを探すために下凡したが見つからず、そこで考えた。夢を創り、何人かの凡人を夢に引き込み、自分は夢の中で化身(あるいは代理人?)を創り、その化身を人間と打ち解けさせれば、何が世の中で最も「尊い」ものかわかるかもしれない、と。その「化身」と「代理人」こそ主人公だ。

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最初、主人公はただのバカで、天使だの中二用語だのを口にする奴だった。そんな彼が海辺で、この夢にやって来た君原結愛と出会う。

二人はいろいろ話し、いろいろした。そして一連の展開を経て、君原結愛は主人公に独立した人格を与え、自分は夢の運営者となった。

君原結愛は夢を放棄してここを離れられるが、主人公はこの夢世界の NPC であり管理者そのものなので、離れられない。だからこそ主人公は夢の中で他人の夢の内容を見られ、他人の夢に入り込み、改変することさえできる……何しろ管理者だから。

この時点で君原結愛と主人公はすでに恋人同士だが、主人公は離れられず、君原結愛だけが去るしかない。夢を離れれば、主人公は愛する君原結愛と永遠に夢の両端に引き裂かれ、一緒にはなれない。

すべては遅すぎた。君原結愛は主人公の腕の中で消え、主人公は崩壊しかけたこの世界に残される。

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天使が再び現れ、主人公の今回の働きを評価する。次の夢でも人間の身分で学び続けてほしい、と。

実は主人公は天使の夢で管理者を何度も務めており、この世界は何度も再構築されてきた。主人公は天使に問う。

「こうして繰り返し夢の中で何度も繰り返すことに、意味はあるのか?」

天使も主人公に問う。

「お前は世の中で最も『尊い』ものを見つけたか?」

主人公は自分の答えを口にする。たぶん見つけた。人と人との「絆」だ。親友のあの言葉、「俺たちが共に過ごした美しい時間が俺たちを繋いでいる。離れ離れになっても、もう離れられない。いつか必ず会える」という言葉だ。

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天使も笑った。

場面が切り替わり、ゲームは最終的な結末へ。


『Pieces/渡り鳥のソムニウム』について、私は二つに分けて評価すべきだと思う。まず前半の個人ルートは、一般的な「廃萌」と何ら変わらない。特にゲームのギャグは平均以下で、ぎりぎり及第点。多くのキャラの個人ルートは最終 True End の本筋から明らかに逸れ、関連性すらない。しかも個人ルート後半で物語が動き出す段になって、逆に何度も気まずい笑いのパートが入り、個人ルートの物語はひどく断片化している。脚本が笑いの要素で雰囲気を和らげたいのはわかるが、やり方があまりに不誠実で、緩衝効果どころか個人ルートが長くて臭いと感じさせる……

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True End については、ゲーム全体のストーリー水準を引き上げたと言える。世界そのものが「夢」だというのはもう予想できたが、最終的にはプレイヤーの予想を裏切った。天使の正体がヒロインではなく主人公だったからだ。そして何よりゲームの水準を引き上げたのが最後のあの場面。全員が現実世界に戻った後、誰もが名前を失い、主人公は自分の生活の中で夢で見覚えのある人に出会い、すべての出会いは冥々のうちに定められていたと気づく。そして天使の導きにより主人公がヒロインと再会する瞬間、音楽が突然止まり再び鳴り響く演出で、感動のレベルは頂点に達する。私は本当に本当に本当に、この一連の演出をじっくり見ることを勧める。「秒速五センチメートル」に劣らない感動だ。

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ストーリー以外にも、画面は大きく進歩している。SDCG はともかく、水鏡まみずの画風だけでも進化は大きいと感じる。以前よりずっと見やすくなった。ゲームの OST は可もなく不可もなく、光るものはないがやるべきことはやっている。このゲームは前半の共通ルートと非ヒロインの個人ルートを改善すれば、ゆずソフトのゲームを超える存在になり得るはずだ。CV の演技も悪くない。野上菜月が演じる後輩は初めて聴く声質だったし、夏和小が演じるヒロインは後半で演技が冴え、雰囲気をよく盛り上げた。先輩役の新人も『空に刻んだパラレログラム』とは違う声質を見せ、さらなる可能性を感じさせた。

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全体として、このゲームには高い評価を与えたい。確かに前半は平凡で、個人ルートには無駄話が多い。だがこのゲームには脚本が二人いる。日常と個人ルートを書いた近江谷宥、そして True End を書いた和泉万夜。和泉万夜がこのゲームを引き上げたと言っていい。多くの日本のオタクがこのゲームをプレイする前に、和泉万夜がさまざまな「ダーク系」抜きゲーを書いてきたとツッコんでいたが、それは幼稚だとしか言いようがない。私の持論はこうだ。苦しみを味わったことがなければ、甘さがなぜ美しいかわからない。失恋したことがなければ、本当の恋の価値はわからない。世界の闇を見たことがなければ、光の尊さはわからない。極限のダークな物語を書いた人だけが、本当に光の美しさを書けるのだ。

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ゲーム名の意味もわかった。「Pieces/渡り鳥のソムニウム」。「断片」はゲーム内の各人の独立した夢が寄せ集まってできた夢の世界を表し、「渡り鳥」は主人公を表す。主人公のゲーム内の名前は燕で、これも天使が与えた名前であり、主人公が夢の中で輪廻し続ける渡り鳥であることを示している。「渡り鳥の夢」は天使の夢の意味を説明しており、夢を見るすべての人の断片が寄せ集まってできた夢幻の世界なのである。

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ゲームの一番いいところは最終シーンの演出効果で、今年はこれを超えるゲームは出ないんじゃないかと思う。誰か俺の顔を殴ってくれる作品が出てほしい。思うんだけど、作品ってのはたとえ序盤に欠点がどれだけ多くても、ラストの成功で昇華されることがある。昔の『秒速5センチメートル』がそうだし、数年前に流行った短編『老男孩』もそう。やっぱり始まりより、いい結末こそが作品の勝敗を分ける鍵なんだよな。


少年は夢から目覚め、ずいぶん長い夢を見ていた気がした。

起きて外へ出る。なぜかわからないけれど、ただ歩きたくなった。

バスを待っていると、隣にいた黒髪の女の子がなぜかこちらを見つめていて、自分もその子に引き寄せられた。

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「バス待ち?」なぜか少年はその黒髪の子と随分親しい気がして、声をかけた。

女の子も応える。二人にはいつもどこか懐かしい感覚があった。

少年は十字路に差し掛かり、ビルの大画面を見上げる。新しく出てきたアイドルが宣伝していた。

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「みなさん、ありすです〜」アイドルがテレビの中で笑顔を見せる。隣にいる男はそのアイドルの師匠で、自称ロック青年。

少年がぼんやりしていると、小さな女の子にぶつかられた。よく見ればテレビに出ていたアイドルその人だ。

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「あら、お兄ちゃん〜」アイドルが口を開く。

「なんで俺のことお兄ちゃんって呼ぶんだ?」

「わかんない。でもどこかで会ったことある気がするの、お兄ちゃん〜。それに自分はお兄ちゃんの妹のはずだって、そう思うの〜」

少年も同じ感覚を覚える。長い夢を経て、自分の周りにたくさんの見慣れた人が増えたような。

病院の前を通りかかると、少年は病院の芝生のそばにいる人影に目を奪われた。白衣を着た女医で、傍らには彼女のペット。

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「綺麗だ」と彼はつぶやき、先へ進むことにした。

…………

……

「行ってきます〜」

白髪の女の子が友達と家族に手を振り、門をくぐって外へ出る。それまでの彼女は、ずいぶん長く眠っていたようだった。

「綺麗〜」

空の夕日を見て、女の子は思わず声を漏らす。こんなに美しい空を見るのは久しぶりだった。多くの人が Golden Hour と呼ぶ黄金の時間帯。

「この世界で一番尊いものは、もしかしたらこの一瞬なのかもしれない」

女の子はそう感じた。

その時、空から羽根が一枚舞い降りてきた。天使の翼の欠片のように、女の子の目の前に落ちてくる。

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女の子は指を伸ばしてその羽根に触れようとして、向こう側に別の少年が立っていることに気づく。彼もまた手を伸ばしていた。

女の子は少年の目を見つめ、視線を離せない。まるで二人が長い時間を隔てて再会したかのようだった。

「どうして、私は泣いてるんだろう」女の子の目尻に涙が浮かぶ。

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どこかで会ったことがある。夢で会ったことがある。夢の中で手を繋いだのに、間違えるはずがない。

少年もまた、女の子の心を揺さぶる言葉を口にする。「こんにちは。俺、どこかで……君に会ったことがある気がする」

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二人は見つめ合う。一度途切れた物語が、ここからまた始まるのかもしれない。

(完)

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