『タマユラミライ』レビュー
その昔、深野市には、外つ国から来た魔法使いが住んでいたという もちろん、それを本気にするものは少ない。 けど、もし旅人がこの地を訪れたなら、きっと平地にはない異郷の香りを嗅ぐことだろう。 ここは、かつてヒトとヒトならざる者が共に暮らしたと伝わる幽玄の地。 四方を山に囲まれ、独自の自然観をはぐくんできた深野の町には どこか、そんなこともあるかもしれないと信じたくなる霊気が漂っている。
昔々、深野市には外国から来た魔法使いが住んでいたという。 もちろん、その噂を本気にする者はほとんどいなかった。 だが、旅人がここを訪れれば、きっと普段とは違う異郷の香りを嗅ぎつけるだろう。 ここは伝説の幽玄の地、人間とさまざまな人ならざるものが共に暮らしている。 四方を山に囲まれ、独特の自然景観を育んだ深野の小さな町には、幽かな霊気が漂い、あるようでない、しかし信じざるを得ないものが存在している……
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この文章は俺が書いたものじゃなくて、ゲーム『タマユラミライ』から引っ張ってきたものだ。このゲームをやったことがあるなら、必然的にこの一節が脳裏に焼き付いているはず。だって作中で最低20回は繰り返されるんだからな。未プレイでこれからやる予定って人は、終わった頃には俺と同じように、ほぼ暗唱できるようになってる……
『タマユラミライ』の話をする前に、まず別のことを話そう。もちろんゲームに関係ある内容だ。ゲームと無関係な前置きは、読者が読みたくないのは分かってるから、もう書かない。

実は知らないかもしれないが、俺はルクル厨であるだけでなく、籐太厨でもある。
籐太の存在に気づいたのは、いわゆる「萌えゲー」と称される作品をあれこれ遊んでいたときだった。覚えているのは操鲸鱼やサノバウィッチをやっていた頃、なぜか妙に質の高い話が混ざっていることがあった。あの感覚は、めちゃくちゃ「気まずい」旧正月の演芸番組を見ていたら、突然目の玉テレビ局の旧正月演芸番組に切り替わったようなものだ。こうした突然の変化のおかげで、それらのシナリオが妙に記憶に残っている。そこでゲームのスクリプトを開いてみると、「籐太」という名前が目に飛び込んできた。
籐太で一番驚かされたのは、なんといっても『フローラル・フローラブ』だ。彼が企画を務め、ゲーム全体のシナリオの方向性を主導していたからだ。そして、あのゲームのシナリオは確かに俺の記憶に強く残っている。細かい部分で作り込みが足りないところはあったものの、核となる内容は十分に輝いていた。
そして籐太はその後、ゆずソフトの『千恋万花』にも参加している。担当内容は明言されていないが、この作品あたりから柚子のストーリー性がちょっと上がったのは見て取れるし、個人的には籐太が担当した部分も一役買っているんじゃないかと思う。
その後、籐太が中国大陸のどこの馬の骨とも知れないオタク雑誌のインタビューを受けたのを見た気がする。それ以降は彼の動向を聞かなくなって、たぶんライトノベルを書きに行ったんだろうな、と思っていた。そしてつい最近になって、彼が DMM に移って新しいゲームの企画とシナリオを担当していることを知った。その新作が、この『タマユラミライ』だ。
俺が知る限り、籐太の作風は大半の「廃萌ライター」より上で、物語を語る能力はルクルにやや劣る。籐太が書く物語には必ず核がある。いわゆる「伝えたい中心思想」ってやつで、それはたいてい前向きなものだ。要は人に善を勧め、人生の素晴らしさを噛みしめさせるってこと。実はこういうのはスローガンを叫ぶだけのパターンに陥りやすい。だが籐太は大半の「有名シナリオライター」と同じく、残酷な出来事を目の前に並べることを選ぶ。ただ、そうした美しいものの尊さを分からせるために。
しかも籐太はなかなか賢い。物語に残酷な展開を書きたいなら、その代償を主人公に背負わせたりはしない。たいていは脇役、いわゆる「攻略対象外のモブキャラ」に負わせる。どれだけ悲惨な結末を書いても、股間を握りしめてヒロインのエロCGで抜こうと焦っているキモオタどもは、籐太を「心温まる」殺し屋とは言わない。何せヒロインの肉は一片たりとも欠けていないのだから……
籐太と比べると、新島夕はあまりに直球でバカ正直すぎる。
だから最初、『タマユラミライ』にはそれなりに期待していた。籐太ならもっと考えさせられる物語を書いてくれるはずだと。クリアしてみての感想は、ゲーム自体の質は悪くないけど、最初に抱いていた期待にはちょっと届かなかったな……というところ。

もちろん、これは確かにまだ悪くない物語だ。
『タマユラミライ』の中国語名は実は「玉響未来」と書けるのだが、俺はこの中の「たま」と「ゆら」は別々に訳すべきだと思う。前者は「魂魄」、後者は「揺らぎ」とできる。なぜなら「たまゆら」を「玉響」と書くと、どちらかといえば「一瞬」の意味が強く出てしまい、ゲームの内容とは噛み合わないからだ……
少なくとも俺には合ってないと思う。このゲームには幽霊や妖怪がうじゃうじゃ出てくるんだから。
ゲームの主人公は深野市の魔法使いという設定で、この超小さな集落における魔法使いの存在意義は、自分の魔法能力を使って「調和」を行うことにある。村の中の妖怪と妖怪の間、人と人との間、人と妖怪の間で起きるさまざまな諍いや軋轢を調和させる——どちらかといえば調停役のような存在だ。

実はこの「魔法使い」があまりにも悲惨すぎて、ただのシャーマンみたいに仲裁役をやらされてるだけじゃん、とツッコみたくなった。でも後でゲームの背景設定を知って、この「魔法使い」にもちゃんと理由があるんだなと納得した。
作中では「深野市」という街が登場し、そこでは人間と妖怪が一緒に暮らしている。実はこの県、日本にモデルがある。それが「遠野市」だ。しかもその土地の怪異や妖怪伝説をまとめた本があって、『遠野物語』という。遠野市に伝わる奇妙な話の数々が収録されている。
そのせいか、ゲームの舞台は遠野市をモデルにした「人と妖鬼が共に暮らす深野市」で、主人公も妖鬼と人の調停役になった。
ゲームの第一章はざっくり言うと深野市の風景を紹介して、数人のヒロインを登場させる感じだ。ロリ体型の主人公の「姉」である小伯白、主人公が保護することになった、迷い込んできた西洋の淫魔・水晶石、学校の女子トイレによく出没する猫又の花子、そしてここに来たばかりで霊的なモノが見えると自称する謎の少女・由岐奈と、その親友の蒔奈。
その後、主人公は市で起きた騒動を通じて、この地の狼人と狒々妖怪の間に摩擦があることを知り、最終的に表に出て仲裁し、平和を取り戻す。

ゲームの第二章も実は主人公が妖怪同士の諍いを仲裁する話なのだが、今回は山に住む獅子に似た神様が別の神様と付き合いたくてラブレターを送り、うっかり他の神様の機嫌を損ねてしまい、最終的に主人公が表に出て解決するという流れ。しかもこの「深野市」には恋愛に非常にご利益のある「卯子鳥神社」が存在することが強調され、この「卯子鳥」にまつわる伝説も語られる。


ここで触れておきたいのが、実はこの「卯子鳥神社」は物語のモデルになった「遠野市」にも実在していて、縁結びでそこそこ知られた神社だったりする。ただ「卯子鳥」そのもののモデルは存在しない。ゲーム内の「卯子鳥」は常に番いで現れ、一羽につき翼が片方しかない鳥で、しかも「卯子鳥」は前世も今世も恋人が姿を変えたものだという言い伝えがある。


何を思い浮かべた?
これこそまさに『山海経』に出てくる比翼鳥だよ~。伝説のあの「天に在りては願わくは比翼の鳥とならん、地に在りては願わくは連理の枝とならん」ってやつ、その比翼鳥がこれってわけ。しかも設定まで『山海経』とまったく同じで、どうやらシナリオも単純に流用しただけみたいだな。
ゲームの最初の2章はボリュームもそこそこあり、『遠野物語』に関するネタや引用もかなり含まれている。だが正直なところ、これらは本筋とはほぼ関係ない。無理にこじつけるなら、この2つの事件を通じてゲーム設定面の伏線がいくつか見えてくる、といったところか:
人間は妖怪を見ることができない。魔法使いか、あるいは人間でない者なら別だが。
女子トイレの猫又花子、小伯白、そして由岐奈の親友・蒔奈は、どうやら他の人には見えないらしい。
由岐奈は非常に強い霊能力を持っていて、霊的な物体を見ることができる。だから由岐奈は人間でありながら他のヒロインを見ることができる。

ゲームは2章で終わったあと、第3章でまさかの「水着回」が来た。こういう王道パターンは他のエロゲーでもあったけど、「ちゃんと物語を語ろうとしているゲーム」に見えたこれがそんなことやるとは、ちょっと意外だった。水着回では当然、気になるヒロインを選べて、選んだあとはルートに入る。これがこのゲーム唯一の「役に立つ選択肢」だ。
水着回が終わったあと、男主は由岐奈に、その強大な霊力を使ってこの「深野市」の魔法使いの弟子になり、自分と一緒に魔法を学んでほしいと願い出る。同時に彼女を「深野市」の大物妖霊たちに引き合わせ、大物たちの認めを得て、伝説級の法杖を手に入れた。こうして由岐奈は正式に男主の弟子となり、見習い魔法使いにもなった。そしてゲームの分岐点が、すでに目の前に迫っていた。

このゲームには4本の個別ルートがあり、それぞれ由岐奈、淫魔水晶石、猫妖花子、そして最後にしか解放されない小伯白に対応している。だがこのゲームで本当に価値のあるルートは由岐奈と小伯白だけで、淫魔水晶石と猫妖花子のルートはメインの話とほとんど関係がなく、キャラを何人か多く売るための妥協のように見える。まあ、それでも軽く触れておく。

水晶石は異郷から来た淫魔で、淫魔の血筋を持つ。その名の通り、淫魔一族は他者を魅了してヤることで相手の「精力」を吸い取って生きている。ところが淫魔でありながら水晶石は「男性恐怖症」を抱えており、淫魔の恥さらしと見なされて追放され、深野市に流れ着いたところを男主に拾われる。
淫魔一族には極めて魅惑的な色気の血筋が流れているので、水晶石はいつも無意識のうちに周囲の人間を誘惑してしまう。それは主人公も例外じゃない。しかし淫魔は人間とヤることはできても、本気の恋をしてはいけない。淫魔にとって「ヤる」ことはただ飯を食って生きるための手段で、もし人間に本気を抱いて結婚してパートナーになろうものなら、淫魔はそのパートナーを搾り尽くしてしまう(真剣な顔で)。とんでもない迷惑だ。

だがご想像のとおり、水晶石は主人公に惚れてしまう。これは淫魔一族のタブーに触れる行為で、当人たちは「別にいいじゃん」と思っているし、しかもエッチのときにキスを多めにすれば搾り尽くされないことまで判明する(は?)。それでも水晶石は、自分の一族にこの結婚を認めてほしい、自分を一族の裏切り者扱いしないでほしいと願っている。
そこでさんざんくだらない悩みをこねくり回した末、水晶石と男主は深野市の神様の特殊能力を借りて、自分の故郷へ一通の手紙を送ることにした。動画の添付ファイル付きの手紙で、家族に男主を紹介し、自分の気持ちも説明した。男主には本心から惚れていること、淫魔としては一人を愛してはいけないのに、どうしても抑えられなかったこと、家族には許してほしいことを綴って。

最後はもちろん Happy End。家族は水晶石の気持ちを受け入れ、彼女に会いに来る。彼女の彼氏にも……
主人公が搾り尽くされないかどうかはさておき。
一方、猫妖の花子√はもっと純粋だ。妖怪である花子が、突然「恋愛」に多大な興味を抱く。 — ちがう、そんな感じじゃないな。とにかく花子のルートは一直線に恋愛へ向かう。
で、その「恋愛」の相手っていうのが、ほかでもない俺たちの主人公なわけだ!

そこで花子はあれこれ恋の大作戦を繰り広げ、男主に攻勢をかける。男主は最初こそ耐えていたが、結局は花子のしつこい押しに根負けして、抵抗できなくなってしまう。
とある「デート」(まあ、そういうことにしておく)の後、花子は男主に告白した。男主は戸惑う。なぜ花子はいつもあんなに執着して、男主に「愛とは何か」を教えてもらおうとするのか(誤解の余地なし!)。花子は自分の内心の想いを真摯に語った。自分は妖怪として、最初は「恋愛」に興味があっただけだった。しかし好奇心が増していくうちに、いつの間にか男主を好きになっていることに気づき、だから自分の感覚に従って告白するしかなかったのだと。最終的に男主も花子の真摯さに打たれ、まずは付き合ってみることに同意した。

もちろんこのゲームは大学生の恋愛ごとで済む話じゃなくて、付き合うと決めた以上は最終的に最後まで行くわけで、たとえば付き合って三日目にはもうヤっちゃう……そこからはヤればヤるほど気持ちよくて、どんどんハマっていって、最初の「試しに付き合ってみる」が本物の恋人同士の付き合いに変わっていく。
実はこのゲーム、ここまで来たらもう大体終わりって感じで、ルートもこんなものだろうなと思ってたんだけど、単独のルートとしてこんな終わり方じゃ当然ダメだよな。そこで猫妖族の連中が花子を迎えに来た。花子が猫妖一族の集落を離れたあと、部落で内紛が起きてしまい、花子様に戻って仲裁してほしいという。花子は「人間界で恋愛してパコパコやって最高すぎて帰りたくない」と言い張る。さらに猫妖一族は花子が恋愛で力まで落ちてるのを見つけて激怒し、花子がこうなったのは全部男主に惑わされたせいだと決めつけるのだった。

最後は当然、ひとしきり乱闘と口喧嘩を経てわだかまりも解け、花子はそのまま男主とここでイチャイチャを続けるのだった。

淫魔水晶石と花子の√を除けば、残りの√は本編とかなり密接に関わってくる。由岐奈と小伯白の√もその一つだ。
まず由岐奈の話から。由岐奈は最初、主人公の弟子になることを承諾し、弟子として当然ながら魔法を学び始める。魔法を学ぶ過程で、主人公は由岐奈に何か人に言えない過去があるらしいと気づく。実は主人公もとっくに気づいていたのだが、由岐奈と常に行動をともにしている蒔奈という少女は実は幽霊で、他の人には見えない。そしてその幽霊の由来を、蒔奈はいつもはっきり語ろうとしない。

いくつかの偶然と、それからめちゃくちゃベタな展開を経て、主人公と由岐奈は恋人同士になり、そのままヤっちゃったわけだが、その後から主人公は由岐奈の記憶らしきものが見え始める。たぶん体液交換のせいだろう(大真面目)。
そして由岐奈の二つの台詞が最も印象に残る。「なくしたものを探しに来た」「恋をする資格はない」。

(ここで自分にツッコミを入れざるを得ない。この√のシナリオがどうにも思い出せないんだよ。途中であの山姥の伝説ばかり見ていたせいで、ゲーム本編のストーリーを忘れたのかもしれない。それとも抜きすぎたせいか。スクショとX(旧Twitter)を漁って、適当に話すことにする。将来誰かが執筆を依頼してきたら、そのときは真面目に読み返す)
和由岐奈形影不离的那个蒔奈其实真身是这个山里某个部落里的活祭品,那个部落家族的人在饥荒的时候什么都吃,最后还要吃人,选人出来当祭品,大家一起吃。而蒔奈就是其中之一。而那个吃人部落后来因为吃人太多,有些人已经开始疯了,最后有的成为了疯狂的“山姥”,自然这个怪物也会吃人。

由岐奈は子供の頃から「霊的な現象が見える」目を持っていて、その上オツキサマというお守りのようなもの(両親とも関係があるらしい)を持っていた。彼女はうっかり山奥でもこの山姥に出くわしてしまい、その拍子にお守りを落としてしまう。山姥に食われそうになった由岐奈は、とっさに機転を利かせて山姥と取引を持ちかけ、「大人になったら食べてもいい?」と提案したところ、山姥はなんと承諾。そして由岐奈が逃げる際、なぜか蒔奈という少女を連れ出してしまった。実はその時点で蒔奈はすでに生贄として死んでおり、それは彼女の遊魂だったのだ。

失われたあのオツキサマこそが、由岐奈が探していた「なくしたもの」だった。
由岐奈は自分が助けた蒔奈を妹分のように扱っている。由岐奈の御守りは失われたものの、「言霊」の影響もあってか、彼女には依然として守護の効力が働いている。大人になれば喰われる運命のはずが、守護神の顕現によって彼女は成長を止め、ずっと月経が来ていない。ところが由岐奈は、自分に月経がないなら大人になっていない、セックスしても妊娠できず子孫を残せないのだから、自分には恋をする資格がないと思い込んでいた。
私:??????
フェミニスト:??????
LGBT層:??????
もちろんその後、主人公の加護を得て由岐奈にまた月経が来た。つまり彼女は成人したってことだ!ファックできるぞ!

で、蒔奈は実は本人が幽霊で、しかも昔は生贄だったうえ、以前の生贄も喰ってる。だから彼女の体内にもあの「山姥」が存在していて、とにかくもうクソややこしい展開を山ほど経て、蒔奈が覚醒して、自分がその年の山姥に化身したってわけだ。
「どうせお前も生理が来て、大人になったんだ。そろそろケリをつけるときだな」
とどのつまり最後はバタバタっと一戦交えて、蒔奈は懐に入り、由岐奈も自分の能力で戦ってそれなりに様になる魔法使いになり、ついでに男主とイチャついて終わり。

で、この√の主な内容は「蒔奈は山姥と関係がある」ってことを言いたいわけで、同時にその山姥は蒔奈の一族と「人食い」にも多少関わりがある。もちろん重要なのは、由岐奈が子供の頃に山姥と交わした取引だ。両親の魂を宿したオツキサマという人形を使って、蒔奈の存在を手に入れた。だからゲームの冒頭からずっと、由岐奈が何かなくしたものを探していると繰り返される。実はそれはなくしたんじゃなくて、自分で交換したようなものなんだが、本人が失憶して忘れてるだけ。もちろんこの√が言いたい一番重要な点は、
「今の小伯白は幽霊で、実は昭和の時代に死んでいる」
そして小伯白の妹・小伯紅は実はまだ生きていて、由岐奈が見た時にはもうお婆さんになっていたのだが、不思議なことに主人公が見た彼女はまだ少女のままだった。

本筋でいうと、この√の主な内容はここにあると思う。で、その「山姥」なんだが、正直に言うと、『遠野物語』に書かれている内容のほうがこのゲームよりよっぽど面白いし、Wikipediaの記事はさらにヤバい。そっちを読むことを勧める。読んでて思わず唸ったわ。
山姥は一般的に、日本の深い山奥に現れる妖婆だと考えられている。霊異伝説の類だが、実物を見たと主張する人は少なくない。では、その「実物」とは何者なのか?老婆が山に逃げ込んで野人になったという説、金太郎の母だという説、中でも最強なのは「山姥は欧米系の白人だ」という説だ。日本の学者が研究までしていて、日本画に描かれた山姥は白い顔に金髪で、どう見ても欧米人の血統だと主張している。しかも、日本の伝説に出てくる「鬼」も欧米系だという人がいる……日本国内で欧米系とみられる人骨の化石が実際に発見されているのだから、どうやってそこまでたどり着いたのかは神のみぞ知るところだ。
もちろん、日本の不思議な伝説の話になると、日本にはかつて秦の始皇帝が派遣した徐福の子孫がやったんだと言う人がいる。まったく、この徐福は便利すぎる……
要するに山姥をめぐる論争がめちゃくちゃ面白くて、このゲームの√よりよっぽど見応えがあったわけだ。俺はそっちに夢中になってたせいで、由岐奈√の彼女と山姥の回想シーンで何が語られたのか、正直ほとんど記憶に残ってない。とにかく覚えてるのは、由岐奈の親友・蒔奈が実は山姥の化身で、何年も経ってから由岐奈に仕返しに来たってことだけ……それで十分だ。
他の三人の√をクリアすると、最終√である小伯白の√が開放される。しかも小伯白の√をアンロックすると、タイトル画面から小伯白が消えることに気づくはずだ。

小伯白のルートは序盤こそ告白してそのまま啪啪啪、と至って平凡な展開なのだが、すぐに本番へ突入する。回想シーンが登場するぞ。
実は小伯白には小伯紅という妹がいて、二人は異母姉妹。そして主人公は小伯白の家の親戚で、子供の頃そこに住んでいた。小伯白の継母は彼女に非常に冷たく当たり、わざと小伯紅を小伯白から遠ざけていたが、それでも小伯白と主人公、そして小伯紅の関係は悪くなかった。ところがある日、小伯白は森で転落死してしまう。主人公は悲しみに暮れ、毎日山や森をさまよい、この幻想的な森の中で小伯白を蘇らせる方法を見つけたいと願っていた。

最終的に男主は小伯白を復活させるため、魔法を学び始める。魔法使いとして、深野市の妖怪たちを調和し仲良くさせながら、小伯白を復活させる方法を探す。小伯白はすでに死んでいるが、男主の彼女への強烈な未練によってオマク(このオマクは実は『遠野物語』に出てくる、そこにいる「怨霊」に似た存在)となり、長く成仏できない。そして男主の魔法使いとしての能力が向上するにつれ、彼女の魂が見えるようになり、研究を続けて小伯白を復活させようという決意も強まっていく。
しかし、魂を蘇らせるのはそんなに簡単な話じゃない。十年が過ぎ、また十年が過ぎ、さらに十年が過ぎ……どれだけの時間が経ったかもわからないほど経って、主人公は年老いた。なのに小伯白の魂は依然として若いままで、蘇らせる方法は見つからないまま。そんなとき、主人公は癌と診断され、医者から余命三ヶ月と宣告されてしまう。

三か月、もう小伯白を復活させるには間に合わない。なのに、一人のやつが主人公のもとに現れた。
「悪魔は何だってできるんだよ、僕と契約しよう!」
フェレスという悪魔で、男主が小伯白の家のどこかの箱の中で見つけたやつだ。その箱にどれだけ封印されていたのかは分からないが、男主が封印を解いた。ずっと男主と契約したがっているのだが、男主はまったく動じない。なにせ悪魔と契約するってのは魂を売り渡すことだからな。

だが残された時間はあと三か月しかない。そこで悪魔は条件を出した。契約を交わせば、主人公は不老長寿を得て永遠に若いままでいられ、好きなだけ研究を続けられるという。
最後に男主は折れて、悪魔と契約を結び、若い身体と決して老いない条件を手に入れた。男主は老いず、小伯白も幽霊として老いない。二人には研究を続けられる長い時間ができたようだ。
しかしそんなに研究を続けてきたのに、主人公は魔法使いとして幽霊である小伯白とすでに告白して付き合っているというのに、復活させる方法となると今ひとつ手がかりがつかめない。おまけに由岐奈やあの蒔奈がやっていたような人形絡みの何かを試してみたいと思っても、どうすればいいのかも分からない始末だ。
しかしこの時、小伯白の異母妹である小伯紅は、もう限界が近かった。

小伯紅は子供の頃、実は主人公のことが少し好きだった。姉を失ったとき、小伯紅も深く悲しんだ。彼女は主人公を慰めようとしたが、主人公はどうしようもなく姉に執着していて、小伯紅は何も言えず……自分の想いを主人公に伝えることもできず、ただ時間が過ぎていくのを眺めるしかなかった。
その後、小伯紅は深野市の学校の音楽教師になり、やがて退職して家にいる。今では八十歳を超えている。ただ、主人公はずっと若いままで老いない。彼女は主人公がそのために代償を払ったことを知っているが、何も言わなかった。
かつて小伯紅に告白した相手がいたが、小伯紅は受け入れなかった。彼女は依然として姉を手放せず、ましてや主人公を手放すことなどできなかった。
面白いのは、主人公の視点ではこの深野市はほとんど変わっていないように見えることだ。彼の目に映る小伯紅は今も高校生のままで、まるで幻覚みたいに、他の人にはもうおばあさんに見えてもそう感じられる。
小伯紅はそのまま独身のまま一生を終え、老いさらばえていく。結局小伯紅は老いすぎたせいで心臓発作を起こし、死の淵に瀕する。

小伯白と主人公は森へ駆け込み、神様に仙薬を求めて命を救おうとする。結局、神様は心を動かされて薬を授け、小伯紅の命も取り戻された。小伯紅が三途の川を一日観光したとき、彼女はついに自分の姉、幽霊の小伯白を見た。姉妹はこんなに長い年月を経て、ようやく言葉を交わした。
小伯白は小伯紅に申し訳ないと言う。自分のせいで、彼女は一生こんなにも不幸に過ごすことになったと。主人公への想いを告げることもできず、この小さな山村に閉じ込められ、孤独のまま老いていく。だが小伯紅はむしろ笑って、自分の一生は実は幸せだったと言う。感じていたからだ、「お姉ちゃんはずっと私のそばで見守ってくれていた、私には見えなくても」と。個人的には、このとき小伯紅が安らかに旅立つのがいいと思うのだが、ゲームはどうしても彼女を蘇らせてしまう……

もちろん、その後の問題も出てくる。男主が小伯白への「執念」を減らしていくからだ(すでに小伯白との幸福を手に入れた、幽霊相手ではあるけれど)。同じく小伯紅も小伯白への「執念」を減らしていく(もう会ったし、会話もしたから)。さらには小伯白自身、人間界への「執念」まで減っていく(もう未練はないと感じているから)。人間界への「執念」で生きているオマク幽霊である小伯白は、存在感が薄くなり始め、消えかける傾向まで出てくる。
男主は少し焦っていた。そこへ悪魔フェレスが再び現れ、男主に条件を突きつける。オツキサマを使え、という。これは岐奈ルートで言及されていたもので、俺は今に至るまでどんな代物なのか分かっていない。ただ、どうやら人形らしいということだけは知っている。それを使えば小伯白の魂をこの人形に宿らせ、命を得ることができる。しかし男主はあれこれ考えて、どうしてもそうしたくない。一つにはこれが岐奈のものであること、二つにはたとえ小伯白を人形として復活させたところで……それに意味はあるのか? ということだった。

主人公は考え始める。自分はこんなに長く生きて、いったい何のために生きてきたのか?小伯白を復活させるため?彼女を生ける屍にするため?正直、主人公も今は悪魔の契約の力に頼って生きているだけで、自身もまた生ける屍のようなものだ。なのに小伯白の魂はずっとここをさまよい続け、転生もできなければ解放もされない。それで本当にいいのか?
主人公はあれこれ考えているうちに、ここまで手間をかけてきて、もう人間なんて割に合わない、諦めたいと思うようになった。
ここで男主と契約している悪魔フェレスがそれに気づき、男主が契約を破ろうとしているのを感じ取って、少し怒る。男主とフェレスとの契約が途切れると、フェレスは生き続けられなくなる。男主の魂を受け取って初めてそれができるのだ。
そして主人公はフェレスの最初の契約者ではなく、その前にもう一人契約者がいた。その契約者もフェレスと契約して不老の身体を得て、無数の歴史を駆け抜け、いろいろな物を発明し、人類文明まで推し進めた(しかも宋朝の紙幣まで発明しやがった)。そして各地をさまよいながら東方の小さな島にある深野市までやって来てそこに住んでいた。だがその契約者は最後に、なぜか……永遠の命はもういらないと思うようになった。勝手に契約に背き、フェレスを箱に封印し、契約者自身も永生を失って灰になった。


前の契約者と同じように、男主もそうした。彼は箱を取り出し、フェレスはそれに気づいて激怒する。また裏切られたのだ。自分は前任者のように男主に罠を仕掛けられることはないと思っていたのに、結局同じだった。怒ったフェレスは自分から男主に襲いかかり、それがまんまと罠にはまる結果になる……
悪魔が先に主人を襲ったのだから、むしろ契約違反は悪魔のほうで、悪魔が罰を受ける番だ。フェレスは男主に許しを乞うが、男主が口を開く前に、一部始終を見ていて因果を知っている由岐奈が現れる。

「新しい契約者になるのは俺だ。ただし条件がある、彼の魂を返してもらう」
最終的に岐奈が新たな契約者となり、フェレスにも新しい主ができた。そして男主も、この深野市の新たな魔法使いという役割を岐奈に託し、自分は去ることを選んだ。
男主はどこへ行くのか? もちろん小伯白の魂を探しに行くのだ。二人は丘に座り、最後の言葉を交わす。
男主はもう小伯白を生き返らせることに固執しなくなった。小伯白を解放してやりたい、自分も解放されたいと思うようになった。フェレスとの契約はすでに解除されているので、男主も長くは生きられない。

二人は改めて愛を伝え合う。小伯白は、自分と一緒に昇天すべきではないと男主に言うが、男主は「忘れるな、俺はとっくに癌で死んでいたはずなんだ」と返す。
男主は小伯白に、二人はとっくに死んで成仏しているはずの人間だと言う。だが運命のいたずらで、こんなに長く生きてしまった。もうそろそろ、すべてを本来あるべき姿に戻す時だ、と。
「卯子鳥神社には卯子鳥という鳥がいると伝えられていて、いつも番(つがい)で飛ぶんだそうだ。そして番で飛ぶ鳥は、前世でも今世でも固く契った恋人なんだとか」

「もし本当に俺たちの絆が揺るぎないものなら、来世でまた会おう!」
最終的に主人公と小伯白は丘の上で卯子鳥に姿を変え、比翼連理のごとく空へ飛び立ち、この世界から消えてしまった。

由岐奈が新たな魔法使いとなり、男主がこの深野市で担っていた仕事を引き継ぎ始める。彼女は小伯紅に、小伯白と男主がすでにこの世を去ったことを告げた。小伯紅もそれを受け入れ、これがおそらく最良の結末なのだろう。
男主は由岐奈に、「彼と小伯白は昇天して、できるだけ早く生まれ変わってこの世界に戻ってくる」と告げる。
由岐奈も空を見上げ、空を飛び交う比翼の鳥(卯子鳥)を眺めながら、また主人公と小伯白に会える日を待つしかなかった。

そして世界のどこかで、二人の赤ん坊がちょうど生まれた。一人は黒髪、もう一人は白髪。

ちょっと待って、これって前世のカップルは来世でみんな兄妹の双子になるって意味じゃねえの?
ともあれ、ゲームも終わった。
このゲーム、どう評価すればいいんだろう?
まずこのゲームの背景について語らねばならない。完全に日本のとある妖怪書物『遠野物語』を参考にしており、舞台は深野市という場所に固定されている。要するに日本の「遠野市」だ。この方面での雰囲気作りをより良くするために、ゲームは大量の水増しを厭わず、本筋とほとんど関係ない妖怪話をたくさん書いている……
しかし、ないものはないんだよな。
第一章と第二章の、あの狼男とヒヒ、あとライオンにそっくりな神様と恋愛する話って、メインストーリーと一銭の関係もあんの?
このゲームのメインルートは:
男主の好きだった人は死んでしまい、男主はそれを受け入れられず、魔法使いになる道を選んだ。彼女を復活させたくて、悪魔と契約を交わし、魂まで売り渡す。結局ひと騒動の末に分かったのは、何もかも無駄だったということ。好きだった人の幽霊と一緒にすべてを諦め、静かに昇天して転生することを選ぶ。来世でまた恋人になれますように、と。
遠野市の伝説と何か関係があるのか?実はほとんど関係ない。この一連の設定は、ゲームの神秘性を高めるためのものにすぎない。

しかもこのゲーム、魔法使いの神秘性を出すために独自の魔法文字まで作ってる。要はアルファベットを変形させたもので、対照表を描けば読める代物だ。詠唱の呪文にも細かい設定が施されていて、切り貼りして並べるとちょっとアレなんだよな。『銀魂』で神楽が中国語を話すときの「〜アル」みたいなノリで……XXXXアル、みたいな。
あ、そうそう、この「アル」は「ア」を伸ばして「あーーーる」って感じで読むんだ。バカみたいだろ。
ゲームには4本の個別ルートがあり、そのうち小伯白のルートがメイン。ほかのルートで言えば、由岐奈が例の重要なオツキサマを描いていたとしても、それ以外のルートはどこか「数合わせ」っぽくて、純粋にキャラを売るためだけのもの。だからこそ「深野市」という環境の下で、一つの独立した物語が形作られている。
もちろん、ここまで色々言ってきたが、だからといってこのゲームが出来が悪いと思っているわけじゃない。ただ、かなりの箇所がちょっと無理やりすぎる気がして、実際のところ「もっと上手くやれたはずだ」と思っているだけだ。
- 例えば大悪魔フェレスが全然悪くなかった。『悪魔の誘惑』なのに、主人公と感情を共有している感じがまったくなくて、むしろ萌えキャラみたいだった。
- 例えば、もっと個人ルート同士を繋げられたはずだ。猫又も淫魔も小伯白の話に絡められれば、あのTrue Endに釣り合う内容になったはずなのに、やってない。
- 一番嫌いなのが、肝心なところでカタカナばかり使うこと。オツキサマ、オマク、ヤマオバ、ふざけんなよ。これを漢字で書いたら死ぬのか? 日本人が見て嫌かどうかは知らんけど、中国人の俺が見てると結構きつい……
それ以外、このゲームの残りは全部長所しかない。

ゲームの絵柄については正直多くを語るまでもない。この二人の絵師のファンはかなり多いんじゃないだろうか。BGMは曲数こそ少ないが、聴いているとあの雰囲気がしっかり出ていて良い。そして何より、ゲーム内には十分すぎるほどのNETAが仕込まれていて、「遠野市」とその伝説に興味を引かれる。ネットには『遠野物語』の無料版が転がっているので、気になった人は読んでみては。
ゲームのCVについて言えば、最初はヒロイン1号の声がどうにも気に入らなかった。妙に耳障りで、どっかの「唯香」って人みたいだなとすら思った。でも慣れてしまえばまあ許せる範囲。それよりも俺が一番キツいと感じたのは小伯白のCV、門脇舞以だった……
多くの人が「声が萌え」と言うけど、この声は聞いてると全身ぞわぞわする。どこが萌えなんだよ……

そういえば、花子のCVは杏花で、めちゃくちゃヤバい。歌がヤバいって前から言ってるけど、それについては別途紹介する。
最後に脚本について語ろう:籐太。
間違いなく、今回の籐太のシナリオは前回より多少は進歩している。しかも前回同様、ひどいお説教成分が混じっている。ただ、進歩の幅は俺が予想していたほど大きくはなかった。
物語には、俺が好きなルクルと比べるとやはり差がある部分が少なくない。特に「大悪魔」というキャラクターの造形が紋切り型すぎるし、細部の描写が「神怪な雰囲気」を追求しすぎて、元のキャラクターの本質からちょっと離れてしまっている。設定はあくまで物語の本筋に奉仕するためのものであって、単にかっこつけるための道具じゃない。
しかも記事冒頭のあの一節と同じで、このゲームはその一節をひたすら繰り返し使い回している。「承前啓後」っぽい「オペラのような」高級文学作品の雰囲気を出そうとしているのだろうけど、ここまで濫用されると……やっぱり柯文哲の口癖みたいに「なんか変」なんだよな。
そこを差し引いても、物語そのものの描写はそこそこしっかりしている。そして最大のポイントは「伏線の張り方がうまく、しかもきちんと回収されている」ことだ。

ゲーム開始直後は詐欺的な内容が盛りだくさんで、多くのヒロインが実は「人間ではない」ことになかなか気づけない。主人公に見えるのは彼が魔法使いだからで、由岐奈に見えるのは生まれつきの霊能力者だから。実は周りの人間には見えていないのだ。小伯白が幽霊だという伏線も随所に張られていて、特に学校で他の生徒たちに彼女が見えていないあたりがそう。後の種明かしではやっぱりちょっとした意外性がある。
しかもゲームの冒頭で「卯子鳥」を強調しておいて、ラストも「卯子鳥」で締める。まあ一応、前後が呼応してるってことなんだろう。
籐太のゲームは「蛇頭虎尾」タイプで、序盤は退屈に感じても後半になるほど面白くなっていく。このゲームも例外じゃない。最初は単純な神怪ものだったのが、最後には生と死の間の意味を問う話になっていて、なかなか良い意味での「抑えてから揚げる」構成だと言える。

ゲーム最大の意味は後半の大悪魔との契約にある。あなたは永遠の命を得るために、自分の魂を売るのか?
そして第一世代の契約者も男主も、出した答えは一致していた。永遠の命より、精彩な一生だ。
どれだけ長く生きても、永遠の命を求めても、死者を蘇らせても、自分を見つけることには敵わない。自分らしく生きている、自分の内面を追い求めて、華やかに一生を生きること。
たぶんこれこそが、籐太がここまで苦労して伝えたかったことなんだろう。
ただ、この『タマユラミライ』って名前はやっぱりダサすぎるんだよな……
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