『サノバウィッチ』レビュー
サノバウィッチ:もう少しだけ真剣だったなら
ゆず(柚子)のゲームはそんなに多くは遊んでいない。指折り数えてみても『天神乱漫』と『夏空カナタ』くらいで、あとはだいたい「ああ、柚子ね、あの顔見たことあるわ」で終わってしまう。それでも柚子には感謝しないといけない。『天神乱漫』は俺が最初に触れた18禁関連のゲームだ。遊んだのはPSP版だけど、それまでプレイしてきたのはEver17やMO2、MO4みたいな真・全年齢ものばかりだったから、初めて千歳佐奈のHSを脳内補完したときはちょっとドキドキしたのを覚えてる……
咳咳、ちょっと話がそれた。実際、ゆずソフトのゲームにはそれなりに思い入れがあるんだが、ほとんど遊んでいない。理由の大半はあちこちで人にdisられて、「ゆずは廃萌だ」とか「抜きゲー化が進んでる」とか聞かされたからだ。実際、ゲームの設定を見てもその通りで、後のヴァンパイアしかり天色先生しかり、実用性の特徴がどんどん際立っていく。そして2014年末、『サノバウィッチ』という新作がバーンと飛び出してきた。ゲーム紹介なんて何も見てない、目に入ったのは「発情」の二文字だけだった……
さらにゲームのあらすじを見てみると……おいおい……これ、完全に節操を捨てたんじゃないか?ヒロインが定期的に発情して、それを男主がこっそり目撃して、そこから二人で展開していくストーリー…………ヤる以外に何があるんだよ?
これは実用派の勝利、シナリオ派の号泣。俺としては設定をチラ見した時点で全然興味が湧かなかった。
ヒロインをヤるだけの設定かよ、脳内でいつでもミニ劇場を上演できるわ。どれもこれより精彩じゃん。わざわざゲームやる必要あんの?
だが後に体験版をやってみると、全然そんなことはなく、発情はただの見せかけで、話の本体はなかなか良かった……もちろん、体験版の話だが。製品版をクリアした今なら、このゲームについていくつか真面目に語るべきことがあると思う。

『サノバウィッチ』(サノバウィッチ)——この読み方を初めて聞いた時は「son of the bitch」かと思った。実際の英語名は Sabbat of the witch で、sabbat は巫女、あるいは宗教的な集会や儀式を指す。witch はもちろん魔女・巫女のこと。となるとこのゲーム、字面だけ見れば魔女が儀式だの集会だのを開く……という話になる。
もちろんゲームの中身はそんなわけなくて、オレが訳すならむしろ「魔女の食事会」とでも呼びたい。まあそうだよな、ゆずがダークなもん作るわけないよな?
ゲームのメインストーリーは第一ヒロインである寧々を中心に展開する。序盤で主人公には他人の心の匂いを嗅ぎ分けられる異能があると説明される。ある日、退屈した主人公は図書館で机の角に股間を擦りつけて自慰にふける寧々を目撃してしまう。しかも寧々は学園の女神。女神の淫らな一面を目撃すれば、驚きとともに理性が保てなくなるのも無理はない。やがて主人公と寧々の接点は増えていき、彼女がなぜ机の角に擦りつけていたのかという秘密も明らかになる。実は彼女は使い魔(QBでも淫獣でも好きに解釈してくれ)と契約した魔女だったのだ。魔女は契約後、人間の心の欠片を集める必要があり、集めきれば一つの願いを叶えられる。ただし魔女になるには代償があり、その代償とは自分にとって大切な何かを失うことだった。

だが見た目は優しくて献身的で話の分かる寧々女神、その代償として彼女は不定期に発情してしまう……
ああ、ネット上のオタクが不定期に勃起して、夜な夜なあれこれエロ動画やエロ漫画を漁っては画面を舐め、しかも長々と感想を書き連ねるのと同じ理屈だ。
ここで強調しておきたいのは、寧々女神のCVが私の女神・桐谷華だということ。桐谷華は寧々の性格を完璧に表現している。発情していないときは優しく礼儀正しい姿で、ゆずソフトも設定上、意図的に女神とビッチのギャップを生み出している。普段の寧々は髪型、話し方、装い、さらには立ち姿勢に至るまで、お嬢様そのものって感じ。それが発情したときの声は殺傷力抜群で、どうしようもなく制御できない感情がもう噴き出してこっちが抑えられなくなる。
建前としては、寧々のキャラ造形に問題はないし、CVの演技は期待以上、ゆずのキャラデザも完全に高品質。なら寧々√は手放しで絶賛とまではいかなくても、少なくとも失敗はしないはずでは?
違う、寧々√の最大の問題は、もともと悪くなかった話を書き潰してしまったことだ。
主人公が寧々を攻略する流れはいたってオーソドックスで、日(四声)久生情、つまり一緒に過ごすうちに情が湧いて、告白して、付き合う。付き合ってからのシナリオは甘々で、長すぎて呆れるほどなのに、この√最大の疑問は掘り下げられないままだった。
「寧々はなぜ魔女になったのか、どんな願いを叶えたいのか?」
ずっと気になっていたことではあるけれど、ゲームのシナリオは相変わらずのんびりと甘い時間を演出し、情感をこれ見よがしに見せつけて、二人はまだそこで愛だの何だのとやっている……こっちがいい加減耐えられなくなりかけたころ、シナリオが転換する。突然、寧々の使い魔が、寧々が契約した願い事は過去に戻って子供の頃に戻り、人生をもう一度やり直すことだ、しかも追加の条件として、やり直した人生では両親がもう離婚しない、と告げてくる。

そこから畳みかけるようにして怒涛の設定補完が始まる。寧々の両親は幼い頃に離婚し、本人はどうしても継母を受け入れられず、一人暮らしを選んだ。その一人暮らしがきっかけで今の学校に通うことになった……しかし今の寧々はすでに男主と恋仲にあり、集めた欠片もどんどん増えていて、願いが叶うのも目前に迫っていた。
もし願いが叶えば、寧々は消えて、過去に戻って、カップルは引き裂かれてしまう。しかも使い魔がはっきりと言う、魔女の契約は取り消せないと。
どうすりゃいいんだ?
そう、どうすりゃいいんだよ? ここでまた主人公は寧々との感情の絡み合いを始める。絡み合い始めればまたしても長くてくどいシナリオで、二人はろくに考え込むことも、ましてや解決策を探そうとすることもない。最後に寧々の使い魔が手を貸せると言い出し、彼女は主人公の心を撃ち抜いて、離れていった欠片を寧々と一緒に過去へ送り返す。寧々の願いもそれとともに叶い、彼女は主人公の腕の中で消えていった。
ここでゲームはEDを迎えた……
焦るな。ED後にタイトル画面へ戻ると新しい選択肢が出現していて、続きを選べる。続行すると幼少期の寧々に戻る。両親は離婚しておらず、しかし二人はただぎこちなく一緒にいるだけで、形だけの夫婦で心は離れている。
寧々は男主の欠片を持って時を越えた。だから男主に関する記憶がある。短い葛藤の末、彼女はある決断を下す:
「お父さん、お母さん、話したいことがあるんだ。」
ストーリーは突然の展開を見せ、寧々の両親はやはり離婚してしまった。
ここまでプレイして、正直ちょっと怒りが湧いてきた。小さな女の子の願いが「両親の仲直り」で、そのために自分で世界線を越えてまで世界を変え、大きな代償を払って、さんざん苦労してようやく過去へ戻ってきた、という設定なんだろ。両親が離婚して男主と出会う道を選ぶか、それとも偽りの両親と男主との別れを選ぶか——ここは重く描くべきところじゃないか。本来なら相当に葛藤するはずの場面なのに、ゲーム全体でここをあっさり一行で流してしまう。意味不明もいいところで、まったく何を言いたいのか分からん。

ほどなくして寧々はひとり語りを始める。両親が離婚しても、元の世界線どおりに進めば、将来また主人公と出会えるかもしれない——と。そこで寧々の計画どおり、両親は離婚し、父親は再婚。寧々は継母を嫌っているふりをして一人暮らしを要求し、中学のときはわざと元の学校を選び、ついにゲームの序章へと再びつながった。ゲームの視点も寧々から主人公へと切り替わる。
そしてどうなったと思う?ゲームが始まるとめちゃくちゃ長いコピペが始まった。大体はゲーム全体の共通ルート序章やら前の内容を全部そのまま丸写し。世界線の繰り返しだとしても、いくらなんでもこんな丸写しはないだろ?しかも面白いことに、コピペの合間にたまに変化した内容が混ざる。寧々が初めて男主に会ったとき、まるで再会したかのような反応とか。本来ならプレイヤーが「うおお神展開!」と叫ぶはずの筋書きが、超長尺のコピペのせいでイライラさせられる羽目に。たまに混ざるそのわずかな新規要素のおかげで、当時は早送りするにも出来ず、しないにも出来ず、本当に困った。
最後、この二周目の共通ルートが終わりに近づいたところで、寧々は自分が集めた男主の心の欠片を男主に返し、男主は一週目の記憶を取り戻す。二人はついに再会し、しばらくパコパコしたあと、完……
流れるEDアニメを観ながら、なんとも複雑な気持ちになった。本来ならかなり良い話のはずだ。かつての願いは両親の復縁だった。でも両親が離婚したからこそ、自分が一番好きな人に出会えた。一番好きな人のために昔の願いを捨てて、もう一度選択し直して、そして再会する——感動物語になるはずだった。なのに柚子は、やってはいけないことをやらかした。肝心の「選択」の部分を一行で流し、「再会」のシーンはコピペで済ませた。おかげで物語全体の表現力がぶっ壊れて、全力でツッコミを入れたくなる地獄に叩き落とされた。
もっと残念なのは、この√に「ああ、なるほど」と思わせる仕掛けがないことだ。たとえば2周目で再会する内容を序章に持ってきて引っ張れば、最後に種明かしをしたときのカタルシスが全然違う。なのにゆずはそれをやらない。『失われた未来を求めて』があんなバカっぽい話でも、そうすりゃ感染力が上がるって分かってたのに、まったく。
このゲームのメインルートにひどく失望していた矢先、俺は他のヒロインのルートも一応プレイしてみた。そこで、このゲームは思っていたほど悪くないと気づいた。
一番最高なのはめぐる√。めぐるは主人公の後輩で、超常現象研究会に入ったのは自分の人生の悩みを解決したかったから。学校で人気者になりたいのに、その方法がわからない。クラスにも馴染めず、いつも一人でゲームばかりしている(しかもモンハン)。
やがて男主とめぐるの接触が増えるにつれ、彼女は実はとても活発で可愛い女の子で、他人に対して絶対の信頼を寄せていることが分かる。周りの人間もわざと彼女を遠ざけているわけではなく、むしろ彼女のほうが他人を遠ざけているように思っている。こんなに明るい性格なのに、自分に人気がないことを悩んでいるなんて想像もつかない。
物語が進むにつれて、めぐるは自分がなぜ人気者になりたいのかを語り出す。めぐるにはかつて親友がいて、二人は何でも話し合える仲だった。だがある日、めぐるはその親友と喧嘩してしまい、それきり彼女に会うことはなかった。進学に成功しためぐるは、新しい学校で新しい友達を作ろうとする。しかしどう接しても、人と人との間にはどこか壁があるように感じられ、かつての親友との関係には届かない。だからきっと自分の魅力が足りないのだと思い込み、人気を高めたいと願うようになったのだ。
その後、寧々の魔女を通じて、めぐるは自分の昔の親友も実は魔女だったことを知る。その親友はめぐると喧嘩する前からずっとこっそりと欠片を集めていた。担当の使い魔が言うには、めぐるの親友が魔女になった願いは、めぐるがいつも家にこもって自分一人にまとわりつくのではなく、もっと明るく活発になってほしいというものだった。
「めぐるはいい子だ。もっと友達がいるべきだ。外の世界から逃げているこの心病から抜け出してほしい」
めぐるの友達はこの願いを叶えるために多くのものを捧げ、そして重大な代償も払った。その代償こそが忘却で、あらゆる方面の忘却だ。だから願いが叶ったその日、ちょうどめぐるがその友達と口喧嘩した日でもあったその日を境に、友達は静かに姿を消した。今ごろこの友達は、めぐるという人間のことももう覚えていないのかもしれない。だが幸いなことに、その友達の願いのおかげで、めぐるは男主や一連の新しい友達と出会えたのだ。
その後の展開は超長い恋愛劇で、正直この恋愛劇はかなりよく書けている。めぐるは自分が主人公を好きになったことに気づき、巨大な攻勢を仕掛け、二人のやり取りがとても面白い。寧々√のあの甘さのための甘さな恋愛と比べると100倍どころかもっと良い。紆余曲折を経て二人はついに付き合う。そして物語の最後、主人公の体に少し波乱が起きる。つまり心の空洞がかなり大きくなってしまったのだ。寧々の使い魔が見て言うには、こんなに大きな空洞は常に愛で埋め続ける必要があり、めぐるの愛情があるからこそ、主人公の体の健康は永遠に続くのだという。
「じゃあもう二度と離れなければいいじゃん、そうすれば君の体は永遠に問題ないよ」
そしてめぐる√は終幕を迎えた。

めぐる√は魔女とはあまり関係なく、むしろ恋愛に大きく関わるルートで、脚本家の恋愛劇の実力がそのまま出ている。おそらく白色永遠の人だと思う。夕凪一夏のルートとあまりにも似ているからだ。個人的にはこのルートの質はかなり高いと思うし、めぐるのCV仙台エリの出色の演技も合わさって、完全にご褒美スイーツって感じだ。
ちなみにめぐる+仙台エリ+後輩属性+活発、もう完全に鈴木加奈の二代目じゃんって感じで、ゲーム中ずっとその既視感に襲われてたわ。
椎葉の√は正統派の魔女もののストーリーだ。なにせ彼女自身が魔女なんだからな。物語は、主人公が先輩から遊園地のチケットを2枚もらって、椎葉を誘うところから始まる。
物語には魔女に関する三つの契約が語られる。それぞれ椎葉、主人公、そして椎葉の使い魔アカギについてだ(安心しろ、赤城じゃない)。
一つは椎葉の契約。ゲーム内で椎葉が出てきた時点で男装していて、彼女は女の子なのに男装が大嫌い。物語の中盤で、契約の理由と代償を明かす。なんと椎葉は子供の頃、欲しい服を見つけてどうしても買いたかったけどお金がなくて、自分でお金を貯めて買えるようになった頃にはもう売られていなかった……

そこで使い魔のアカギが現れ、椎葉は使い魔と契約を結ぶ。あの服を手に入れたい――その代償として、しばらく女装ができないという条件を飲む。だが椎葉の欲深さゆえ、彼女はどうしてもその服が欲しくて、代償を前借りする選択をした。
透支とは何かというと、使い魔が直接服を渡してくれる代わりに、より大きな代償を払わなければならない。その代償は20倍だ。当時椎葉は幼く、后果を知らなかったのだろう。おかげで今に至るまで彼女は女装できないでいる……
というわけで椎葉の契約はこんなにシンプル……完全に使い魔に騙されたと思う。
二つ目の契約は主人公と使い魔アカギのものだ。
遊園地への誘いを受けた椎葉は実はかなり嬉しかったのだが、可愛い女の子の服を着てデートできないという理由で、婉曲に断るしかなかった。主人公は当然納得できず、振られたと思い込む。後に真相を知った主人公は彼女を助けることを決め、心の欠片を集めて借金を素早く返済する傍ら、使い魔アカギを見つける。

「私は君と契約を結びたい。願いは椎葉に二時間の女装タイムを設けてもらうことだ。代償は私が払う」
「他人の代わりに代償を返すのはかなり深刻なんだぞ、これも20倍になるからな?」
「問題ない。」
そこで男主は椎葉を騙し、使い魔に頼んで2時間だけ女装できる時間をもらったと嘘をつく。椎葉は大喜びで綺麗な服を着て遊園地で男主とデートし、最後には二人はついに恋人同士になった。

その代償は大きかった。翌日、男主は椎葉のぬいぐるみ熊にされ、人形態でいられるのは一日一時間だけ。椎葉は男主が勝手に契約を使って自分の女装時間を確保したことを知り、めちゃくちゃ怒る。そこでここで第三の契約が登場する。使い魔アカギに関するものだ。

ゲームの設定では、使い魔は人間と契約を結び、人間の願いを叶える代わりに人間に協力させて心の欠片を集める。使い魔が集めた心の欠片を手に入れれば、人間に転生することもできるし、自分の願いを叶えることもできる。
使い魔アカギの願い、それは50年前に出会ったある友人にもう一度会いたいというものだった。
アカギのモデルは一羽のカラスで、50年前に病院の窓辺に飛んできて、ベッドに横たわる少女とすぐに友達になった。だがある日、少女のカーテンが閉ざされてしまい……カラスはもう少女に会えなくなったが、それでも毎日やって来て、いつか窓が開く日を待っていた。そしてついに窓が開いたとき、少女はいなくなっていた……代わりにいたのは見知らぬ誰かだった。
そのカラスは今日も毎日のように病院へあの娘に会いに行き、そのまま50年が過ぎた。
「どうして彼女は戻ってこないんだろう? 毎日あそこへ見に行ってるんだ。彼女に会いたくて。友達だから、心の欠片でこの願いを叶えたいって思ったんだ」
アカギは男主に自分の願いを語るが、男主は分かっている。50年も経ったのだ、あの娘はもう死んでいるだろう。ただアカギがそれを受け入れられないだけなのだ。
そこへ街に三人目の使い魔が現れる。外見は犬で、契約した魔女に断片を集めさせるルートではなく自ら手を下し、人間の心を直接えぐり取って断片を奪う。行動は暴力的で、人間の生活にも深刻な被害を与えた。二人の使い魔、二人の魔女、そして主人公の共同努力の末、ついにその犬を制圧する。制圧の過程でアカギは重傷を負い、椎葉と主人公に救われる。感謝したアカギは主人公に報いようと、自ら主人公と椎葉の契約の代償を引き受ける。そして永遠にカラスへと戻り、二度と人の姿を偽れなくなってしまった……
「もうずっと前から知ってたんだ、50年前にな。あの友達は……もういないのかもしれない。ただ、認めたくなかっただけなんだ」
アカギは、意味のない願いのために破片を集めるのは時間の無駄だと考え、自分を犠牲にする道を選んだ。
そして物語の最後、主人公と椎葉は恋人同士になり、一緒に椎葉の祖母に会いに行く。そのとき空のカラスは、自分が50年探し続けたあの娘が死んでいなかったこと、つまりこの老婦人こそがその娘だと気づく。あとは完全なハッピーエンドだ。

めぐる√が完全に恋愛の話だとしたら、椎葉√は完全に魔女と契約の話。この二つの√でもうゲームの核心は語り尽くされている。だから…………残りの先輩√と和奏√はそこまで刺さらない。だわ。
先輩√のシナリオはなかなか言葉にできないものがある。これまでの先輩は下ネタを連発する年上女だったのに、ある日いきなり「恋愛って何なのかよく分からない」と言い出して、主人公と一緒に恋愛の勉強をすることになる。勉強しているうちにいつの間にかくっついて、挙げ句に主人公の家で飯まで作る。主人公の父親には「お前の母親の味がする」と褒められ、主人公は気になって問い詰める、という流れだ。
「先輩のお母さんってどこ出身なの?もしかしてうちの母と知り合いだったりする?」
「私は孤児だよ」
続いて、先輩の姿を寧々の使い魔が見ていて、使い魔が男主に告げる。先輩の前世もまた使い魔だったらしく、しかも男主の母親と関係があるという。いろいろ調べた末、先輩は打ち明ける。男主の母も以前は魔女で、自分と契約していたこと。自分の願いは人間になることで、その願いが叶ったあと、先輩として転生し、人間になった使い魔としてできるだけ多くの人間の感情を知りたいと思っていた——恋愛も含めて、と。
ここで問題になるのが、先輩には間欠的な記憶喪失があるということ。原因は先輩の前世、つまり使い魔が転生するときに前世の記憶を完全には手放したくなくて、使い魔の能力を体内に封印してしまったことにある。その能力が定期的に記憶喪失を引き起こすうえ、他人の愛や心の欠片を魔力として吸収して供給する。ところが主人公からの供給が豊富すぎるせいで、先輩の体内の使い魔の能力が暴走し始め、記憶の喪失もどんどん深刻になっていく。
そして先輩は、EFとか『一週間フレンズ。』のあの辛いヒロインみたいに毎日日記をつけて、次の日起きてから日記を開いて読み返す。でも最後には日記でも先輩を救えなくなって、能力が完全に暴走して、先輩は虚ろな目をした人になってしまう。

そして物語はベタベタの展開へ。主人公は他人の助けを借りて先輩の内面に入り込み、その内部の次元の壁を一拳でぶち破って先輩の心と対話を始め、先輩を救い出して、すべてが終わる。
任意のキャラを攻略し終えると和奏√に入れる。和奏√はもっと雑で、まるでキャンペーンのおまけみたいな感じだった。

ってわけで和奏がバンドを組みたいって言い出して、主人公が手伝いに行く。毎日練習、練習、また練習。練習してるうちにいい感じになって、そのまま告白、そしてカップルに。唯一語られるのは、和奏が子どもの頃に主人公と会っていて、その時から好きだったからこそ自分から告白した……という点だけ。
なくなった……
ゲーム全体を通して見ると、ゆずソフトはシナリオの展開面で、以前プレイした天神乱漫と比べてかなり進歩している。少なくとも日常パートはもう退屈じゃなくなって、普通に楽しい。八月社の大図書館っぽい風格も十分に出ている。寧々√の構成はぶっ壊れてるけど、大枠はしっかりしてるから、脳内補完を添えれば受け入れられなくもない。個人的にはめぐる√と椎葉√が最高で、ゲーム全体の精华とも言える。他のヒロイン√は典型的なゆずソフトのよくあるレベルだから、適当に流して遊べばいい。
ここで特筆すべきは、ゲームのギャグ要素は絶対に味わう価値があるという点で、その層において寧々はむしろギャグキャラに近い。

ゲームの音楽はちょっとぼったくり感がある。BGMは全部ヒロインのキャラソンのアレンジばかりだし、OPはフルアニメで良心を感じさせるけど、EDの3D効果は使いすぎで、和奏のライブMVも正直あんまり気合が入ってない。それ以外は特に悪いところはない。CVの演技は全員光ってた。桐谷華も、仙台エリも、又吉愛も、水橋かおりも、高森奈津美も、みんなしっかりやってる。

では、このゲームは実際どうなのか? 俺の見方はこうだ。ゆずのゲームってこれまで完全に「廃萌」のイメージで、ヒロインは可愛い、Hは抜ける、シナリオはクソ、という概念だった。新作『サノバウィッチ』はある意味でその概念から抜け出そうとしていて、新しいシナリオライターも迎えているし、設定や日常パートの質も本質的に上がっている。ただ脚本の構成はまだ少し荒削りで、それでも十分に驚かされる作品ではある。
そう思うと、ゆずのキャッチコピーを見てなおさら奇妙に感じる。いったいどれだけ自信がないのか、「発情」を売り文句に出すなんて。実用性があるかどうかは、CGのプレビュー画像を何枚か出せば十分伝わる話で、わざわざ自分をそんなふうに貶める必要なんて全くない。
最後に一つ言いたいのは、このゲームの唯一の心残りは寧々√が本来の力を発揮できなかったことだ。元々はとても良いシナリオと設定だったんだが、もうちょっと真剣に作っていれば、このゲームは本当にゆずの方向転換を後押しできたかもしれない。
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