『ファタモルガーナの館』レビュー
暗闇の中で目を覚ます。そこは黒い洋館で、目の前にはメイドが立っている。
メイドはあなたを「この館の主」と呼び、帰ってきたことを歓迎する。
自分が誰なのか思い出せない。メイドもそれは分かっているが、召使いとして、あなたの記憶を取り戻す手助けをすると言う。
この館の過去にまつわるいくつかの物語を聞かせてやる、聞き終わればきっと本当の自分が分かる、と。
メイドは館のとある扉の前へあなたを連れて行き、扉を開けて、その先で起きた物語を語り始める。

一、
1603年の話だ。
この館にはRhodes家が住んでいた。一族にはMellとNellieという兄妹がいて、二人は幼い頃から仲睦まじく、そして妹のNellieは兄のMellに対して兄妹以上の感情を抱いていた。要するに恋だ。
兄妹は次第に大人になり、妹のNellieは家の都合で社交界デビューの準備をさせられ、さらには釣り合いの取れた家との見合いまで始められる。だが彼女はちっとも嬉しくない。好きなのは兄のMellなのだから。

一方、兄のMellは別の女の子に惚れていた。この家に召使いとして入ったばかりの、白髪の娘である。
Mellが白髪女に会ったのは家のメイドに案内されたからで、一目惚れだった。しかし白髪女は口数が少なく、Mellを意識的に避けている。話を聞いてMellはようやく理解する。白髪女の父親は以前このRhodes家の絵師だったが、何らかの理由で追い出されたのだと。

Mellはそれは親の代の話だと告げる。自分と白髪女が付き合うのには何の影響もない、と。
妹のNellieはすぐに兄の異変に気づき、白髪女の素性を調べ始める。ある深夜、彼女は一人で兄のところを訪ね、調べた内容を伝える。白髪女の父親はRhodes家の絵師で、しかもかつてMellとNellieの母と関係を持っていた。白髪女は絵師と母親の不倫の産物であり、それが理由で絵師は追放されたのだ、と。

古い真実が暴かれたことで、この家は再び狂気に陥る。やがて兄は神父になる道を選び、かつての貴族であるRhodes家も崩れ去り、ばらばらになった。

かつて恋し合った兄妹は、最後まで結ばれることはなかった。
物語が終わり、真っ暗な館に戻る。メイドは淡々とした口調で最初の扉の先の話を語り終えた。だがあなたにはまるで見当がつかない。自分が誰なのか、やはり分からないままだ。メイドは驚きもしない。ゆっくりと館の二番目の扉を開け、次の話を始める……
二、
1707年。館はすでに打ち捨てられ、中には誰もいない。だが……あのメイドを除いては。
メイドは一人で館に暮らしていた。ただし違うのは、この館が海辺のとある町の近くにあるということだ。
ある日、黒い影が館に闖入してくる。影は言葉を話さず、ただ狂ったように殺戮し、咆哮するだけだった。

影はかつて自分をゆきまさと名乗ったことがある。だがそれも一度きりで、やがて影にはBestiaという名がつく。この言葉は野獣Beastに由来し、影の本質を証明していた。
影は言葉を話さない。だが館に来た以上、メイドは影を新たな主として扱う。やがてBestiaという名の獣は、言葉まで覚えてしまう。
話せるようになったBestiaは館を利用し、行き場を失った旅人たちを住まわせてやり、そして彼らが油断しきったところで殺す。己の獣欲と血への渇望を満たすためだ。そんな折、白髪の女が館にたどり着く。記憶がないと自称する女を、主としてBestiaは迎え入れる。もちろん殺すつもりで。

だがBestiaが手をかけようとしたとき、この白髪女は死を恐れず、恐怖も見せないことに気づく。Bestiaの欲望は解放されない。結局彼は白髪女を殺すのをやめた。そして共に過ごす時間が長くなるほど、Bestiaは白髪女に特別な感情を抱き始める。守ってやりたいとすら思うようになる。
ある日、Bestiaに似た風貌の何かが闖入してくる。まるで獣のような姿だった。白髪女を傷つけに来たと思ったBestiaは、一戦交えた末にそれを殺す。やがて冷静になると、自分が殺したのは……「獣」などではなく、女だったことに気づく。どこか見覚えのある女だった……

場面は海辺に変わる。Paulineという娘がこの港町にやってくる。婚約者を探すためだ。婚約者は商売で海に出たきり長らく連絡がなく、最後に確認されたのがこの町だった。
海辺で出会った子供に教えられ、Paulineはこの町の近くに館があり、そこにBestiaという奴がいることを知る。その獣は大勢の旅人や町の人間を殺しており、婚約者も被害に遭っているかもしれない。

結局Paulineは館を確かめに行くことを決める。館の扉が開いたとき、応対に出たBestiaは他でもない、彼女の婚約者だった。
BestiaはPaulineの婚約者ゆきまさであった。しかしBestiaはそれを認めようとせず、逆に慌てふためいてPaulineを殺してしまう……

かつてのゆきまさは、殺戮と血への渇望のため理性を失い、獣Bestiaとなった。白髪女への感情も彼を正気に戻すことはなく、彼は婚約者Paulineすら「もう一匹の獣」と見間違えて殺してしまった。正気に戻ったときには後の祭りだった。

獣は完全に狂った。Bestiaは館を飛び出し、近くの町へ殺到する。村人たちが次々と殺され、血生臭い記憶だけが残った。
血の惨劇のあと、目を開ける。また暗い館、またあのメイド。
どの物語にもメイドは必ず現れていた。だが彼女は今、あなたの目の前にいる。そして自分が誰なのか、やはり分からない。
メイドは多くを語らず、次の扉へとあなたを連れて行く。この館にまつわる次の物語を始めるために。
三、
1896年。この館はアメリカに現れた。
館の主はJacopo。若く、金に貪欲な小商人で、美しい白髪の妻がいた。館にはメイドが二人。一人は……あなたもよく知るあのメイド。もう一人はMariaといった。

Jacopoは毎日どうやって大金を稼ぐかばかり考えていた。商人として疑い深いところがあり、金と事業のためには誰も信じなかった。妻でさえも。

Jacopoの妻が不貞を働いているという噂が流れる。証拠は何もない。それでもJacopoは「ある」方を信じ、結婚したばかりの美しい妻を閉じ込めてしまう。妻は手紙で弁明しようとするが、メイドのMariaが邪魔をして、妻の手紙の内容を書き換える。Jacopo宛ての名前を別の男の名前に変えてしまったのだ。これでJacopoは妻の不貞を完全に確信する。二人は完全にこじれ、Jacopoの妻は夫に絶望し、家を出て二度と戻らなかった。

そしてJacopoは、裏でMariaが糸を引いていたことにも気づく。MariaとJacopoは幼い頃からの遊び仲間だった。だからこそJacopoの信頼は、彼女の復讐で返ってきた。怒ったJacopoは裏切ったMariaを殺し、妻を探す旅に出る。それは余生を費やす旅となり、最後は思うような結末も得られないまま終わったようだ。

Jacopoの話は前の物語とさらに掛け離れていて、聞き終えたあなたはますます訳が分からなくなる。
メイドは驚かない。最後の扉が決定的だと言う。その話を聞けばすべてが明らかになる、と。
あなたはメイドについて最後の扉へ向かう。だが途中、壁の一枚の絵に気づく。それは黒い絵で、その中にも記憶があった。時間がないので簡単にしか見られない。記憶の内容は、黒髪の少女がとある理由で追放され、この館にやってきた、というもののようだった。

記憶を読み終える前に、メイドがあなたがいないことに気づいて迎えに来る。最後の扉へ連れて行かれ、扉が開き、最終的な物語が明かされる。
四、
1099年。やはりこの館。
白髪の少女が、その容姿があまりに異様だという理由で村人たちに追放される。「魔女」という理由で。
行き場を失った白髪の少女はこの館にたどり着く。館にはもう一人、白髪の男が住んでいた。男はMichelと名乗り、貴族の末裔で、自分も「呪われている」と言う。

白髪女が「魔女」と呼ばれる理由が白い髪と赤い目なら、Michelの呪いの理由はもっと明白だった。Michelが触れた生きとし生けるものは、その命を吸い取られ、枯れ果てる。
Michelが触れた花は枯れ、Michelが触れた人間は血を涸らして死ぬ。
だからMichelはここへ追放された。呪われているからだ。
だが白髪の少女は気にしなかった。二人は共に過ごすうちに惹かれ合い、一緒に本を読み、語り合い、魂の伴侶となる。だが恋人めいた関係になっても、Michelは彼女に触れることができない。呪われているから。

ある日、数人の追剥が館に押し入り、白髪の少女をさらおうとする。Michelはやむを得ず手を出し、呪われた身体で、少女を犯そうとした追剥たちの血を吸い尽くす。その光景を逃げ出した追剥が見ていて、近くの村へ走り、「館に怪物がいる」と触れ回った。
やがて村人たちは討伐隊を組み、館の前にやってくる。あの「怪物」を討つために。

Michelと白髪の少女は逃げ場を失い、館で一番高い展望台へ追い詰められる。少女は最後に、Michelと心中したいと願う。Michelに抱きしめてほしい、と。そして二人の身体はついに触れ合う。その後Michelは登ってきた村人に刺し殺され、流れた血が床に染み、村人の身体にもかかる。討伐に来た村人の大半がそのために死んだ。
不思議なことに、Michelに抱かれた白髪の少女は死ななかった。すでに死んだMichelを見つけて、悲痛に暮れる。

そこにあの「メイド」が現れる。自分はMorganaという魔女で、白髪の少女の願いを叶えられると告げる。Michelと再び会えるようにしてやる、と。

もちろん今生ではない。来世だ。Michelは輪廻転生し、いつかの世で必ず白髪の少女と再会し、恋人になる。
白髪の少女はMorganaの提案を受け入れる。それから幾百年、白髪の少女は次々と異なる身分の「白髪の少女」に転生し、何度もこの館へ戻り、求め続けたMichelを探す。だがMichelは現れない。今もなお……白髪の少女はMichelを待っている。
そして最初の白髪の少女の名は、Giselleといった。
物語が終わる。目の前のメイドが微笑みながら告げる。あなたこそがあの「Giselle」なのだ、と。長いこと転生を繰り返し、今回またこの館へ戻ってきたのは、あなたのMichelを待つためなのだ、と。
メイドはここに残り、自分と一緒に待ち続けようと勧める。あなたは選択を迫られる。館を出るか、ここに残るか。
メイドが物語の白髪の少女の名はGiselleだと言ったとき、あなたは何かを思い出す。Giselleは自分ではない、別の誰かだ。あなたはメイドの話の矛盾を指摘する。自分の身分を少しずつ思い出し始めており、物語で最も重要な点を口にする。
最後の物語に登場するあの白髪の少女は、元から存在していない。
つまりこの1099年の物語は、まったくの虚構だ。

そしてあなたは、壁で見たあの絵の中の黒髪の少女の物語を思い出す。本当はあの黒髪の少女こそがGiselleで、Giselleは白髪ではない。あなたはメイドに真実を話すよう迫る。どうにもならなくなり、メイドは本当の「四番目の扉」を開け、本当の1099年の物語を始めるしかなくなる……

五、
1099年。Giselleはこの郊外の館へ追放される。
Giselleの家は貧しく、家計のために金持ちのBollinger家でメイドとして働き始める。だがすぐにメイドの仕事に危機が訪れる。Bollinger家の主人Antoninが、メイドのGiselleに目をつけたのだ。彼は彼女を犯し、口外しないよう脅し、家に十分な金をやると約束した。
やがてGiselleと主人の関係は奥方の耳に入る。そのとき主人のAntoninは責任をきれいに逃れ、Giselleが自分からだらしなく振る舞ったのだと言う。主人と奥方は、このふしだらなメイドGiselleを追放すべきだと考え、彼女を郊外の館へ追いやった。

館にはBollinger家の末の子孫、Michelも住んでいた。彼もまた呪われているため、ここに軟禁されていた。
Michelは突然館にやってきたGiselleを疎ましく思う。口うるさく、こそこそしていて、泥棒のようだ、と。
そしてMichelはGiselleが無断で自分の部屋に入ったことを咎め、Giselleを館から追い出す。

Giselleは野宿を余儀なくされ、近くの村の村民に引き取られる。
村民たちは最初こそGiselleに親切で、家族のように接してくれた。だがやがて上の領主の徴税が厳しくなり、村民の暮らしは苦しくなる。彼らはその鬱憤を余所者のGiselleにぶつけ、泥棒だと決めつけ、金を返せと迫る。
Giselleは弁解のしようもなく、追い詰められて、近くに館があり、そこには金があると口にしてしまう。

村民たちは驚く。村の言い伝えによれば、あの館にはかつて魔女がいて、近づく者には不幸が訪れるという。だがGiselleは、館に魔女などいない、白髪の普通の人間が一人いるだけだと主張する。
村民はGiselleに道案内をさせ、ぞろぞろと館へやってくる。Michelの前に。
Michelは自分の白髪と赤目の異様な容姿で村民を追い払い、Giselleだけを残す。そしてGiselleを問い詰めようとする。なぜこんなことをしたのか、なぜ泥棒を働いたのか、なぜ村民を嗾(けしか)けてここを荒らさせたのか、と。

Giselleは泣く。すべては追い詰められた末のこと、もうMichelに殺してくれていい、誰も自分を信じてくれなかったのだから、と。
Michelは少し興味を持ち、Giselleに知っている話をさせてみる。
そこでGiselleは語る。家計のためにBollinger家で働き、主人に犯され、汚名を着せられ、ここへ追放され、さらにMichelに追い出され、次は村民に疑われる、といった一連の過去を。

その内容にMichelは酷く驚く。自分の何かを思い出しかけ、最終的に信じることを選び、Giselleに謝罪する。

それからMichelとGiselleの関係はどんどん良くなり、恋人のような間柄にすらなる。

Michelは自分が呪われた人間で、「魔女の声」がいつも聞こえると話していた。Giselleはずっと、それは長い孤独な生活が生んだ精神の分裂と幻聴だと思っており、もっと彼と関わり、救いたいと願っていた。

何年経ったかも分からない頃、MichelはBollinger家の主人Antoninが亡くなったことを知る。家に手紙を書き、Giselleを連れてこの館を出たいと願い出る。だが待っていたのは家の馬車ではなく、騎士たちの率いる部隊だった。
騎士たちは館に攻め入り、MichelとGiselleを館の展望塔の最上階へ追い詰める。
最後にMichelはGiselleを最上階に閉じ込め、自分一人で攻めてきた騎士たちの前に立つ。そして「魔女の声」がそうさせたのだと名乗る。

Michelは騎士たちに処刑され、死体は引きずり去られ、Giselleだけが生き残る。
絶望の底でどうしていいか分からないGiselleの前に、形のない声が現れ、語りかける。
声は自分をMorganaと名乗り、この館に潜む魔女だと言う。

「魔女の声」は本当に存在した。Giselleはここで初めて、Michelは精神分裂でもなければ、嘘をついてもいなかったのだと知る。
魔女はGiselleに尋ねる。まだMichelに会いたいか? 望むなら手を貸してやれる、と。
Giselleは驚く。魔女はMichelを生き返らせられるのか?
「死んだ者を生き返らせることはできません……でも、来世で会わせてあげることはできるわよ」
Morganaは条件を提示する。
1、MorganaをGiselleの身体に宿らせること。これまでずっとMichelに宿っていたが、Michelはもう死んだ
2、MorganaはGiselleに不老不死の命を与える。その代わりGiselleはこの館のメイドとして暮らし続け、メイドとして、今後この館にやってくる歴代の主にきちんと仕えなければならない
3、Giselleは不老不死だから、未来のいつか、Michelの転生した者も必ずここへ戻ってくる。そのとき自然とMichelと再会できる
GiselleのMichelへの愛は強すぎた。彼女は結局承諾する。

だがそれが悲劇の始まりだとは、知る由もなかった。
六、
Michelが連れ去られてから、館には誰もいなくなり、Giselleと、彼女に宿るMorganaだけが残った。
Morganaは毎日Giselleに囁き続け、やがてGiselleは狂気の淵に立たされる。
そうして幾百年が過ぎ、1603年。ある一族が移り住み、この館に入る。
一族の名はRhodes家。兄妹がいた……MellとNellie。

同時に、一族には新しいメイドとして白髪の少女もやってきた。メイドのGiselleが名を尋ねると、彼女はMichelと名乗り、しかも過去の「Michel」に関する記憶を何も持っていなかった。
メイドのGiselleはようやく確信する。このMichelはあのMichelの転生だ。だが……今世、彼は女に生まれた。

その後の物語はもう知っている通り。一族に悲劇が起きる。
どうしようもなくなったGiselleは諦め、Michelの次の輪廻を待つことを選ぶ。
そして再び1707年……
野蛮で血に飢えた男が館にやってきて、Bestiaと名乗り、多くの者を殺した。メイドのGiselleはMorganaの指示に従い、Bestiaを主として丁重に世話する。
やがてまた白髪の少女がやってくる……メイドのGiselleが尋ねると、彼女もMichelという名のようだった。

Giselleは今度は何も言わない。もう分かっている。ただ傍観者として、物語の成り行きを黙って見ているだけだ。
「Bestia」が自分の恋人を殺し、そして発狂してさらに多くの者を殺すまで。
もういい。どうせ今世もMichelと自分に可能性はない。次の輪廻を待とう。
1896 年、洋館に新しい主人が現れた。Jacopo だ。
メイドの Giselle はこの世の Michel を見た。相変わらずの白髪の少女で、しかも結婚している。Jacopo の妻になっていた。
つまりこの世では百合すら成立しない。

Giselle はもう絶望することにも飽きていた。長い歳月の中で、自分が誰なのかさえ忘れてしまっている。
自分はこの洋館のメイドで、歴代の主人をもてなす。それだけだ。
Michel? まだ来るのか? 来るだろう。たぶん。
Jacopo の悲劇の後、洋館は再び沈黙に包まれた。
メイドの Giselle はもう絶望していた。Morgana に、Michel はまだ来るのかと尋ねる。
「来るでしょうね。でも仮に来たとして、あんたのことが分かるかしら? 自分が今どんな姿か分かってる?」
Giselle は鏡を見た。血の気のない青白い顔。自分はもうかつての自分ではないと感じた。
Giselle はあれこれ考えた末、もう待つのをやめようと思った。Michel は来ない。そう結論して包丁を手に取り自殺しようとしたが、いくら体を傷つけても血は流れず、痛みすら感じない。
「無駄よ。あんたはとうに人間じゃない。諦めて、おとなしく私のメイドをやってればいいじゃない!」
Morgana が嘲笑う。そうか、最初に Giselle が永遠の命を承諾した時点で、彼女はもう死んでいたのだ。

結局 Giselle は希望を捨て、Michel を待つのもやめ、まるで傀儡のようにこの洋館でメイドとして、歴代の主人を迎え続ける。自分の名前さえ忘れ、ここが自分の職場でメイドであることだけを覚えて。
ある日まで……
「あなた」が目覚め、ここの新しい主人になった。そして目の前のメイドが、この洋館で起きたすべてを話し始める。長い歴史と輪廻のせいで、メイドは自分が Giselle であることも、あの白髪の少女の正体も忘れている。だから彼女の語る物語には誤りが混じっている。

そして「あなた」は自分の正体を悟る。あなたは Michel。転生した Michel ではなく、ここに囚われた Michel の魂そのものだ。
あなたはここに来たことがあるし、ここから離れたこともない。
自分を取り戻したあなたは Michel。そしてメイドも自分を取り戻す。彼女はかつての恋人 Giselle。二人は魔女 Morgana の仕業でこの洋館に閉じ込められ、抜け出せなくなっている。ならば出る方法を探すしかない。
そこへ Morgana が現れた。
彼女はメイド Giselle の魂を引きずり出し、隠してしまった。

この洋館の歴史から、Morgana は最上階の展望台に隠れている可能性が高いと分かる。そして展望台に入るには三本の鍵が必要だ。
暗い館の中を探し回ると、何人かの「見知った顔」の魂が見つかる。Mell、ゆきまさ、Jacopo。彼らはそれぞれ違う時代の人間だが、魂はみなこの館に囚われている。面白いことに三人とも鍵を一本ずつ持っている。


三本の鍵で最上階の展望台を開けると、伝説の洋館の魔女、Morgana がいた。

顔中血まみれで、片腕もない Morgana が凄まじい形相であなた、Michel に条件を突きつける。Michel の死により、Morgana は Giselle を「この洋館の不老不死の生きた屍」に仕立て上げて代替にした。Michel が Giselle を解放したいなら、代償を払えという。
1、自分一人でこの洋館を出ていく
2、自分が Giselle の代わりにここに残り、Giselle を自由にする
あなたは選びたくない。全部欲しい。なぜ他人をそんな風に呪うのかと Morgana に問う。Morgana は自分の過去を見せて、そうする理由を教えると決めた。
つまり「聖女」Morgana から「魔女」Morgana へ至る道のりだ。
七、
Morgana はとある辺鄙な山村で生まれた。生まれた瞬間から、非凡な存在になる運命だった。
Morgana は神の恩寵を受けていた。「聖女」であり、他人のために祈り、傷を癒やすことができる。彼女の血は、ほとんど万能の薬だった。
「村に Morgana という少女がいて、その血は万病に効くらしい!」
噂はあっという間に広まった。Morgana は自分の体の血で他人を癒やすことを惜しまなかった。

それでも Morgana の母親はこの「異形」を嫌い、地元の領主から大金を受け取って Morgana を売り飛ばした。
「伝説の聖女」を手に入れた領主は、彼女を聖女として扱わず、残酷に幽閉し、毎日皮膚を切り裂いて血を飲んだ。
領主は病気ではなかった。ただ Morgana の「万病に効く」血が好きで、その血で他人をもてなした。Morgana はすぐに体中傷だらけになった。

やがて暴虐な領主に報いが訪れる。領主の奴隷たちが蜂起し、暴動を起こした。Morgana もその混乱の中で救い出された。
若い男の奴隷が Morgana を連れ出し、ある妓楼で暮らすことになった。
Morgana は娼婦にはなれないが、領主に血を抜かれるよりは妓楼の生活の方がましだった。
救い出した若い男は献身的に世話をし、薬を塗り、傷を癒やしてくれた。Morgana は束の間の平穏を得た。
しかし平穏は長く続かない。まもなく山賊が妓楼に押し入り、Morgana を含む多くの者を拉致した。あの若い男の行方も分からなくなった。
山賊たちは略奪した捕虜を奴隷として売り飛ばそうと運んでいた。Morgana は捕虜を運ぶ馬車の隅でうずくまり、口を利かなかった。
捕虜の中に剣客がいたらしい。彼は突然自由になって山賊の剣を奪い、山賊を斬り殺した。しかしその剣客は殺戮に目がくらみ、山賊だけでなく捕虜も Morgana 以外は皆殺しにした。
剣客が Morgana を殺さなかった理由は、彼自身にしか分からない。
逃げ延びた Morgana は川辺の小屋に隠れ、淡々と暮らしていた。ある日、一人の少年が訪ねてくる。妹が病気で、妹は自分にとって大切な存在だ。Morgana が治病できると聞いたから頼みに来た、と。
Morgana は承諾し、少年の妹に何度も自分の血を飲ませた。妹の病は奇跡的に良くなった。
しかしある日、剣客が現れる。「湖の魔女」を領主のところへ連れていく、と。その剣客こそ、あの山賊を皆殺しにした男だった。

少年は剣客を連れてきて、Morgana に門を開けさせた。反応する間もなく、Morgana は剣客に片腕を一刀のもとに斬り落とされる。剣客はその腕を軽蔑の目で少年に投げてよこした。
「魔女の血が必要なんだろう? この腕をくれてやるよ。」

その後、剣客は乱暴に Morgana を捕まえ、郊外の洋館へ運び、領主に差し出した。
今回の領主は前の者ではなく、新たな領主、後継者だった。
領主は再び Morgana を幽閉し、さらに修道女を連れてきて「聖女」だと宣言した。「万病を癒やす聖女」であり、その治療法は「神薬」を与えること。その「神薬」とは囚われた Morgana の血だ。信者は「神薬」を買うのに金を払い、領主と教会は大いに儲けた。
Morgana の秘密を知る者は三人だけ。領主、剣客、そしてあの少年。Morgana は洋館の最上階の展望塔に閉じ込められ、扉は固く施錠され、三本の鍵を同時に使わなければ開かない。
Morgana の血の供給で教会の運営は絶好調、儲けも上々。領主も満足し、大規模な祭典を開こうと準備していた。

ところが祭典当日の昼 12 時、Morgana は血を抜かれた後に死んだ……
Morgana は大きな絶望の中で死んだ。自分は聖女なのに魔女に汚名を着せられた。自分の血は無数の人を救ったのに、偽物の「修道女」が称賛を浴び、しかもそれを売って大金を稼いでいる。
Morgana は領主を、あの剣客を、自分を売ったあの少年を恨み始める。

死の瞬間、Morgana は呪いをかけた。
妹を愛するあの少年が、永遠に妹と幸福な結末を得られないように。
血に飢えたあの剣客が、永遠に血に飢えた狂気に陥り、自我を取り戻せないように。
金に貪欲なあの領主が、永遠に己の欲ゆえに大切なものを失うように。
そして Morgana の血を飲んだ者は全員即死した。
呪いを終えた Morgana はもう聖女ではなく、真の魔女となった。魂は永遠にこの洋館をさまよう。
もうお分かりだろう。あの少年、あの剣客、あの領主が誰なのか。
彼らは皆この洋館に戻ってきたことがあり、その魂は Morgana の呪いを受けて、生まれ変わっても永遠に幸福を得られない。
少年の転生が Mell。彼と妹は永遠に幸福を得られなかった。
剣客の転生があの Bestia。彼は結局正気を失い、真の Beast となった。
領主の転生が Jacopo。どんなに事業で成功しても、最後は虚しい。
あなたが Michel の転生であるように、あなたは最後の扉を開け、Giselle を取り戻す必要がある。
再び Giselle と会うと、彼女はあなたに嫌悪をあらわにしていた。
「どうして騙したの? あなた、男じゃなかったの?」
Giselle はあなたに咆哮し、それきり相手にしなくなった。
「あなたが母親に書いた手紙を読んだのよ。」
耳元に Morgana の囁きが届く。Giselle があなたの秘密を知ったのだと悟る。
あなたが深く隠しておくつもりだった秘密を。

あなたはもともと女だった。そう、Michel は元々女の子だった。
そしてあなたは目を背けたい過去を思い出さなければならなくなる……
八、
あなたは Bollinger 家に生まれた。末の子で、生まれた時、母はあなたを「Michelle」と名付けた。天使の名前だ。
皆あなたを女の子だと思い、末の妹として家族に大いに可愛がられた。
ところがあなたはいつも奇妙だった。趣味がだんだん女の子らしくなくなり、二人の兄に憧れ、彼らのような男性的な気質に憧れ、逆に……女の子が少し好きになり始めた。
あなたの性指向はますます奇妙になり、男になりたい、女の子が好きだ、声も低くなり、体つきも男性的になっていった。そして名前を「Michel」に変えた。母はあなたの変化を見て気が狂い、「呪われた」と言い、こんな男女半端な者は家族の恥だとし、あなたを幽閉し、祈りを捧げ、早く「女の子」として呪いが解けるようにと願った。

当然効果はなく、体はますます男性化していった。とはいえあなたは本当の意味での男性ではない。たとえば、両脚の間には男にとって最も重要なものがないことに気づいていた。
未来の言葉で言えば「インターセックス」か「無性」。だが古代では、あなたは「呪われた者」だった。

最終的に父はあなたを処刑しようとした。二人の兄はあなたを密かに連れ出し、この洋館で一人暮らしをさせ、家族が再び受け入れる日を待たせた。
そしてこの洋館で、あなたは Morgana の怨霊に出会う。
Morgana はあなたの境遇に深く同情した。ある意味彼女の人生と似ている。信じられず、親に裏切られ続けた……彼女はあなたに憑依し、力を与えた。呪いの力だ。復讐するようにと。
「Michel」と Morgana は耳元で囁く。「彼らを呪いたいなら言って。あなたの復讐を叶えてあげる!」
しかしあなたは誰も呪わないことを選んだ。家族に裏切られても、彼らを恨めなかったから。その態度に Morgana はひどく失望したが、諦めず、いつも耳元で囁き、彼女の力でより多くの者を呪うよう求めた。

その後の物語はもう語るまい。Giselle と出会い、恋に落ち、父の死を知り、母に手紙を書いた。母に「男の子」として認めてほしいと。あなたをずっと女の子だと思っていた母はついに精神が崩壊し、父と同じくあなたを処刑しようとした……
あなたを処刑する騎士の一団が来て、先頭は兄だった。そしてあの悲劇が起きる。
皮肉なことに、あなたを処刑した兄の魂もこの洋館に囚われている。壁にかかったあの黒い絵だ。
あなたの悲劇的な人生はここで終わり、Morgana が嘲笑の笑みを向ける。
「Giselle はあなたをずっと男だと思ってた。でもあなたの最初の二回の転生が白髪の少女だったのは偶然じゃない。あなた自身が女だったからよ。」
「あなたは Giselle に真実を話さなかった。彼女を裏切ったのよ。」
「なぜ自分を裏切り、分かろうとしない者たちを呪わないの?」
「この期に及んで、まだ誰も呪わないつもり?」

結局あなたは一人で背負うことを選び、誰も呪わなかった。Morgana は大いに失望したが、Giselle が再び現れ、あなた、Michel の立場を完全に理解したと告げ、これからも一緒にいたいと言う。
しかし Morgana はもう少し狂っていた。あなたと Giselle を阻もうとし、さらに重要なことに……
Michel と Giselle は実はもう死んでいる……そして二人の魂は、すでに Morgana に支配されている。

逃げられない。ただ一つの手段を使うしかない。
この洋館の Morgana を解放する。

九、
あなたと Giselle は共に展望塔の最上階の最後の扉を開けた。
空間が崩壊し、時空を超えた。
目を開けると、奇妙な場所にいた。洋館は存在し、中には「聖女」がいて、その「聖女」は 3 日後に領主が「祭典」を開くと宣言している。
思い出した。ここは歴史上 Morgana が死ぬ 3 日前。3 日後の祭典で Morgana は絶望の中で死に、同時に聖女から魔女へと変わり、すべての者に呪いをかけ始める。
何ができる? 当然、この悲劇を止めることだ。
館の中をうろつくと、見覚えのある者が多い。Mell と妹の Nellie、二番目の扉の物語の Pauline によく似た修道女、そして最上階を見張る剣客。最後に館の領主にも会った。三番目の扉の物語の Jacopo そっくりで、名前も Jacopo だ。

Morgana の記憶によれば、彼女は洋館の最上階の展望塔に幽閉されている。展望塔には三本の鍵があり、一つは剣客、一つは Mell、一つは Jacopo が持っている。
つまり、三人に鍵を出させなければ Morgana を救えない。時間はもうなく、残り 3 日。とても無理に見える。
まずは狙いやすい Mell から。Mell は妹を気にかけている。妹 Nellie に Morgana が囚われ血を抜かれていることを話し、Mell の口を割らせることに成功した。

Mell は Jacopo とあの東洋の剣客に脅され、やむなくやったのだと言う。あの川辺の小屋で囮になって Morgana に門を開けさせなければ、妹が危なかったと。

Mell は自分も一念の差で引き返せなくなり、今はもう二人の悪事に加担し続けるしかないと打ち明けた。

Mell を落とした後、次の目標はあの東洋の剣客。
二番目の扉の歴史で、東洋の剣客は Bestia だが、Bestia には名前があり、ゆきまさという。恋人の Pauline もいる。そして「聖女」という修道女は Pauline によく似ている。

最終的に Pauline と東洋の剣客の関係を利用し、剣客から事情を聞き出した。
あの修道女の本名は Pauline。東洋の剣客の命の恩人だ。剣客は殺人と血に飢えた性分だが、不思議と Pauline の前では嗜血の欲が抑えられる。Pauline は修道女として教会を運営しているが、経営は惨澹としていた。そこへ地元の領主 Jacopo が条件を出した。「伝説の湖の魔女」を捕まえてくれば、Pauline の教会に資金を出し、もっと繁盛させてやると。
剣客は Pauline のためにそれをやった。Pauline も望み通り「聖女」になった。もちろん、本当の「聖女」が別にいることなど彼女自身知る由もない。

剣客も本気で Morgana を害そうとしたわけではなく、修道女 Pauline のためだった。
剣客の理解を得て、残るは領主 Jacopo。
Jacopo に会う前に、洋館の近くで金髪の女を見た。Maria と名乗る。Maria という名前には覚えがある。三番目の扉の物語で、Jacopo のメイドとして最後には Jacopo を裏切った。この時代の Maria も Jacopo が嫌いだが、面白いことに、館に入ったこともないのに Jacopo も Morgana も知っている。

Maria はもともと Morgana が寄宿していた妓楼で働く娼婦だった。
彼女はあなたの来歴と目的、そして Morgana がまだ生きていることを知った。彼女はあなたに髪飾りを渡し、これを Morgana に渡せばすべてを許すだろうと言う。
「この髪飾りは、あの時 Morgana を救い、妓楼に連れて逃げた青年が彼女に贈ろうとしていたものよ。」
「じゃあ……その青年は?」
「死んだわ。」Maria は無情に言った。
あなたは Mell と剣客を連れ、二人で領主 Jacopo を脅し、鍵を出すよう、Morgana を囚禁した理由を話すよう要求した。
Jacopo は最初抵抗しようとしたが、最後には本音を漏らした。
Jacopo はもともと奴隷だった。やがて蜂起を指導して旧領主を倒し、新しい領主になった。しかし領主になってから権力に酔いしれ、どんどん増長し、金儲けと地位の安定のため、伝説の「川辺の奇跡の血を持つ魔女」を利用して教会を支配し、もっと金を得ようと考えた。

そこで剣客を呼び、魔女を捕まえに行かせた。そしてあの悲劇が起きた。
Jacopo の懺悔は簡潔だったが、何かが足りない気がした。これを見る限り、Jacopo の悪行は以前 Morgana を苦しめた領主と大差ない。なぜ Morgana は彼を呪わず、Jacopo だけを呪ったのか?
Jacopo に Maria という女を知っているかと尋ねると、Jacopo は驚き、なぜ知っているのかと逆に問う。

あなたは髪飾りを取り出した。Jacopo はようやく理解し、隠されていた最後の部分を話さざるを得なくなった。
なんと Jacopo こそ、あの時 Morgana を救い、妓楼に隠した青年だった。
Maria はあの青年が死んだと言ったが、実は死んでいなかった。青年は蜂起して領主を倒したが、領主家の使用人がもたらした知らせを受けた。
孤児だった Jacopo には領主の後裔の血筋があり、実は領主の地位を完璧に継承できるのだった。
最終的に Jacopo はそれを利用し、新たな領主となった。
しかし領主になってから、贅沢三昧の日々が Jacopo を堕落させ……ついには自分がかつて救った Morgana を裏切り、彼女の仇となってしまった。

そして祭りの前、領主 Jacopo、剣客、Mell の三人は Morgana の牢房へ来て、そろって彼女に懺悔し、あなたは Morgana に Jacopo のあの髪飾りを付けてやる。傷だらけの Morgana はあなたの腕の中で息を引き取った。幸いなことに魔女にはならず、そのまま安らかに眠った。

視界が再び歪み、あなたは時空を超えて現実へ、暗い洋館へと戻ってくる。

歴史を一度変えたことで、すでに魔女化した Morgana を救えるのだろうか?
十、
あなたは天使を見た。
白髪に赤い瞳の少女が、天使の佩剣を手にしている。
天使は自分が Morgana の魂の一部であり、彼女が「聖女」になれた理由でもあると名乗る。天使は今の Morgana はすでに魔女化していると言い、あなた、つまり Michel にこの天使の剣を取って Morgana の魂を安らかに眠らせてほしいと頼む。

あなたは佩剣を受け取り、魔女 Morgana の体を刺し貫く。彼女の魂はもう狂わず、ついに呪いから解放された。
Morgana はあなたに感謝し、自らあなたに付き添って、この洋館に囚われた他の魂たちを解放していく。Mell、ゆきまさ、Jacopo、そしてあなた……Michel、そしてあなたの愛する Giselle も。

これらの魂は転生輪廻の中で何度も苦しむことはない。きっと次は、みんなそれぞれの幸せな結末を迎えられるはずだ。
洋館の魂はすべて消え去り、次の輪廻へと落ちていく。
Mell、Nellie、ゆきまさ、Pauline、jacopo、maria、michel、Giselle……そしてあなたの兄……壁に掛かったあの絵……
魂が少しずつ消えていく。彼らは幸せになれるのだろうか?

次の世でわかるのだろう。
十一、
Michel と Giselle の物語はすでに終わった。しかし物語にはまだ答えのない謎が残っている。
なぜ Jacopo は狂気と堕落に陥ったのか?
おそらく Morgana に説明してもらう必要があるだろう。物語の中で得た断片を寄せ集めれば、その真相を探れるはずだ。

Morgana が領主に虐待されていた頃、Jacopo はただ領主の下僕の一人にすぎなかった。

彼は領主のやり方を許せず、蜂起を企て、そして Morgana を救い出した。
Morgana は娼館へ送られた。娼館とはいえ、Jacopo は彼女に対して至れり尽くせりの世話をした。

Jacopo は Morgana に生まれつきの魅力、自分を惹きつける魅力があると感じ、また自分は彼女に対して抑えきれない感情を抱いていた。
その感情はおそらく恋だった。
Jacopo は Morgana を手厚く世話するうちに、ますます彼女を気にかけるようになる。

しかし Morgana は Jacopo に対して恋愛感情など一度も抱いたことがなかった。Jacopo が嫌いというわけではなく、そんなことを考えたこともなかったのだ。彼女が考えていたのは民を救うこと……

もうすぐ Morgana の誕生日。Jacopo は娼婦 Maria の勧めで、Morgana に髪飾りを贈り物として買い、直接手渡そうとする。
しかしその瞬間が来る前に、山賊の一団が娼館を襲い、Morgana をさらっていった。

Jacopo は茫然自失。彼は Morgana がもう死んだと思った。
その時、ある神秘的な人物が Jacopo を見つけ、自分はかつてある領主の子孫であり、領主の血統を持つ。証の品があれば領主の座を継げると告げる。
Jacopo は孤児で、その神秘的な人物は領主のかつての召使いだと名乗った。

最終的に Jacopo は心が動いた。せめて自分が領主になれば、前よりはきっとマシになると思ったのだ。
Jacopo が新領主に就任した時、かつて共に革命を起こした奴隷たちが祝いに来た。ただ Maria だけは来なかった。
ある人が Maria に尋ねる。
「あんた Jacopo と仲いいだろ、友達みたいなもんじゃないか。なんでそんな態度なんだ?」
Maria は冷ややかに嘲るように言った。
「だからこそよ。誰であろうと、領主の座に座った者は最後はみんな同じ結末を迎える。特に Jacopo みたいな人間はね」

Maria は新領主の住まいを去り、振り返って最後の言葉を残す。
「Jacopo は領主になった瞬間……もう死んだのよ」
領主となった Jacopo は新たな統治を始めたが、すぐに領主は自分が思っていたよりずっと難しいと気づく。
管理すべきものが多く、処理すべき問題も多く、地域の安定のためには金銭収入も考えねばならず、いつしか Jacopo も貧しい民への搾取を始める。
それが領主として、やむを得ないやり方だったからだ。

いつしか Jacopo のやり方は前の領主と何ら変わらなくなっていた。
前領主の亡霊が Jacopo の前に現れ、嘲笑うかのようだった。
「見ろよ、お前は俺はダメだと言ったが、お前がやっても同じだ!」
ついに Jacopo は前の領主と同じ道を歩んでしまう。
かつて共に革命を起こした奴隷の友人たちが Jacopo のところへ来て、なぜお前もこんなに残虐になったのかと問い、挙げ句に Jacopo の正体を暴くとまで言い出す。お前は本当の貴族の血統なんかじゃないと。

Jacopo はすでに権力と金を手に入れた。もう失う気はない。だからかつての兄弟たちを残酷に殺した。
民を支配するには金が要る。そこで Jacopo は一計を案じる。「奇跡の血の魔女」がどこかにいると聞き、剣客を呼び、その魔女を捕らえてこいと命じた。その魔女の血を使えば宗教で儲けられるかもしれない。

魔女が捕らえられてきた時、Jacopo は呆然とした。
「Morgana、なぜお前なんだ!?」
Jacopo はあの「奇跡の魔女」が Morgana だとは思ってもみなかった。
しかし Morgana はもう今の自分を認識していない。
兄弟を殺した時と同じように、Jacopo はあまりにも多くを手に入れ、もう失うことも、過去の生活に戻ることもできなかった。

彼は決心し、Morgana を監禁。さらに他の二人の事情を知る者たちと鍵を握り、三人で結託して教会を運営し、それぞれの利益を得た。
そして祭りの昼12時。Morgana は絶望の中で死に、呪いの魔女と化す。

Jacopo と剣客、Mell と Nellie は、魔女の呪いで死んだ。
そして Maria は後に Jacopo の異変を聞きつけ、呪われたこの洋館へやってくる。
洋館の扉を開けると、Morgana が自分に微笑みかけ、皆で宴会を開いていた。Mell も Jacopo も、多くの懐かしい者たち、かつて死んだ者たちがここで微笑んでいる。

Maria も宴会に加わる。これは Morgana と彼女たちの最高の時間。
画面が止まり、やがて薄れて、幻想は終わり、現実が残される。残ったのは喉を切った Maria の冷たい死体だけが、洋館の床に転がっている。

何もない。すべては悲劇だけ。これがすべての物語の起源であり、Morgana の呪いの始まりでもある。
物語はもう終わったはずだが、いつも心残りが残る。
Michel、Mell、Nellie、ゆきまさ、Pauline、Giselle、Morgana、Jacopo、Maria……
彼らは最後には皆死んだ。幸いなことに、彼らは魔女 Morgana の呪いから逃れ、来世ではきっと幸せな未来があると信じている。
しかし来世の彼らはどうなったのか?

ここには最後の結末がもう一つ用意され、あなたが明らかにするのを待っている。画風は少し違い、環境もキャラも見た目は違うかもしれないが、「彼ら」はかつての「彼ら」で、ただ時代が変わっただけだ。
十二、
ヨーロッパのある小さな町で、恋人同士の Michel と Giselle が一緒に暮らしていた。二人の生活はとても甘く、デートも日々の暮らしも、幸せに満ちていた。

しかし Michel はそれがどれほど貴重かよく分かっていた。彼は「特別」だったから。
Michel は以前の每一世の記憶を受け継いでいる。彼は前の魂が消える前に、Morgana の魂と交わした会話を覚えていた。

「Morgana、もし……もし来世でもまた会えたら、僕たちは幸せになれるのかな?」
Morgana は肯定も否定もしなかった。おそらく彼女自身も分からなかったのだろう。
……
Morgana もこの時代に転生しているのだろうか?今の彼女はどこにいるのか?
Michel は物思いにふける。
…………
……
Nellie は高校生で、普通の暮らしをしていた。ある日、街で一人のイケメンを見かける。その彼は自分と同じ色の髪をしていて、Nellie は一目で惹きつけられた。
Nellie は友達との約束をキャンセルし、そのイケメンと話す。二人は話すほどに意気投合し、Nellie の彼への想いはもう告白したくてたまらないほどになっていた。

イケメンは Mell といい、同じ学校の生徒だった。
しかし不久后、Nellie は再び Mell と出会う。母が再婚したのだ。再婚相手は Mell の父で、しかも母は Nellie と Mell が実の兄妹だと明かす……

実の兄妹。それは二人が結ばれないことを意味し、Nellie は苦しみに陥る。

Nellie と Mell の間にも軋轢が生じる。Mell も最初は、自分が兄になったばかりなのに妹がなぜ不機嫌なのか理解できなかった。
しかし最終的に Nellie の Mell への愛の告白が兄の心を動かし、二人は禁忌の線を無視し、幸せを追い求めることを決める。

兄妹でも、恋人でも、幸せならいい。
…………
……
ユキサマは流浪の身で、心に大きな抑圧を抱え、暴力を好んでいた。

彼は殺戮を望んでいた。そんな彼がバーで Pauline という名の少女と出会う。

Pauline は彼の心の「鍵」となり、暴力と血への渇望を抑えた。
Pauline の優しさに触れ、ユキマサはもう狂暴ではなかった。

二人は恋人でありながら、互いを必要とする阿吽の関係を保っていく。

もう決して離れない。
…………
……
ある真夜中、商人の Jacopo は庭で赤毛の少女に出会う。神父のような服を着て、静かにそこに座っている。

Jacopo は彼女を見てどこか見覚えがある気がしたが、どこで会ったか思い出せない。
もうすぐ雨が降りそうなのに、その少女は全く帰る気配がない。仕方なく、Jacopo はまず自分の家で雨宿りしないかと誘う。

少女は後に正直に打ち明ける。自分は奇妙な病気にかかり、おそらく前の父に虐待され、体中傷だらけで、家出してきたのだと。

Jacopo は腹を立て、元凶と話をつけてやると言うが、少女は淡々と、静かに言う。
「たぶん私は前世でたくさん悪いことをして、たくさんの人を呪って、この世で報いを受けてるんだと思う」

Jacopo が少女の名前を尋ねると、少女は自分は Morgana だと答える。
結局 Morgana は家族に見つかって連れ戻され、Jacopo も彼女を救う立場にはなかった。何しろ知り合って間もない、ただの他人だったから。
Morgana は帰る時、体から一枚の紙切れを見つける。そこにはある住所が記されていた。もしまた家出したら、そこへ行って避難していいと。

その住所は、Jacopo がよく行くバーで Maria という奇妙な女が推薦したものだった。
Morgana は結局その場所へ行った。それは大きな洋館で、主人は今 Michel といい、婚約者と一緒に住んでいた。

住人にはもう一人、東洋人のユキマサがいて、恋人の Pauline と一緒にいた……
Morgana の入住で、この洋館は活気に満ちあふれた。
もちろん、最も欣慰を感じたのは Michel だ。彼だけが、目の前のこの赤毛の少女が誰で、彼女の過去に何があったかを知っている。

Morgana は確かに前世で多くの人を呪ったが、最終的には解放された。Michel も考えたことがある。もし Morgana が転生したら、当然の幸せを手にできるのだろうかと。
今見る限り、この世界では幸せはすぐそこにある。

Jacopo も最終的にこの洋館へ Morgana を探しに来た。Jacopo の友人である Maria という女を連れて。
Jacopo は Morgana が好きだが、Morgana は彼に対してより特別な感情を持っているようだった。
「最終的に君を救ったのはやはり僕じゃなかった」Jacopo はその現実を受け入れることを選ぶ。

Morgana も jacopo を受け入れた。
Michel はそのすべてを見て、本当に欣慰を感じた。
………………
…………
……
最終的に、Michel と Giselle は結婚式を挙げた。

最終的に、ユキマサと Pauline は長く寄り添い合った。

最終的に、Morgana は Jacopo と Maria と共に、遠方への旅に出た。

最終的に、物語はその結末を迎えた。

後記、
『ファタモルガーナの館』というゲームは随分前に人に勧められていた。しかしどれくらい経ったか、ようやくクリアした。
実は数年前、『ファタモルガーナの館』が Steam に登場した時にもプレイしようとしたことがある。だが四つ目の扉で止まってしまった。というのも、物語がどうにも読み進めにくく、ゲームにボイスがなく、画風も大半のギャルゲーとは異なり、しかも最初の四つの扉では物語が全く筋が見えず、「主人公」の正体とどう関係するのか皆目見当もつかなかった。挙げ句、当月の新作発売も重なって、結局積んでしまった。
当時、このゲームを強く勧めてくれた「G+方太」が意味深に言っていた。「このゲームの最初の四つの扉の物語はただの序章だよ、後からが面白いんだ」と。

私も気に留めなかったが、今思えば「方太」の言う通りだった。
私がプレイしたのは PSV 版で、正式名称は『ファタモルガーナの館 -COLLECTED EDITION-』。2017年発売で、元の『ファタモルガーナの館』本編に加え、前日譚のファンディスク『ファタモルガーナの館 Requiem for The Innocence』を収録し、さらにゲーム全体の最終結末「現代篇」を追加。しかも元のゲームのドラマCDの各 CV を呼んで、現代篇にフルボイスを付けたという、非常に誠意のある内容だ。
PSV 版は最初の作品と比べて画面が大きく刷新され、当時の 3DS 版の画面上昇を取り入れ、さらに PSV 発売元の要望に応じてゲーム OP と新 CG を追加している。少なくとも自分が見る限り、当初の簡素な PC 版よりずっと良い。原作最終章「Morgana の死の三日前に遡る」の演出効果など、もう完全なゲームにかなり近いと感じた。

多くのギャルゲー(特に恋愛育成)をプレイしてきたプレイヤーなら、このゲームの最初はかなりの違和感を覚えるだろう。ボイスなし、奇妙な油絵風の画面、真っ暗な背景、不気味で少し怖い設定、そして筋の見えない最初の四つの扉。思わず「なんだこれ」となる。
しかし転機は四つ目の扉の後にある。主人公 Michel が物語の偽りに気づくにつれ、どんどん内容が糸を紡ぐように解き明かされ、真相が明らかになるにつれて物語もクライマックスへ。次にどう展開するか永遠に想像できない。謎が解けるたびに意外に感じるが、同時に理にかなっているとも思う。何しろ最初から伏線が張られ、この瞬間に明かされるのを待っていたのだから。
『ファタモルガーナの館』全体を通して、ゲームの主旨は実は目新しくない。惨殺された聖女が魔女に変わり、仇たちに復讐する物語。そして問題解決の鍵は偶然巻き込まれた主人公たちで、魔女の怨霊を安らかに眠らせる。そんな筋書きは、欧米や日本の映画はもちろん、香港の B 級ホラー映画でもよくある……
主人公たちが偶然お化け屋敷に迷い込み、中で様々な奇妙な出来事に遭遇し、ある少女がかつて屋敷で惨殺されたことを知り、最終的に屋敷の怨霊と和解して安らかに眠らせる……blah blah blah……

『ファタモルガーナの館』の核心は、そんな B 級ホラー映画に似た枠組みだが、それをここまで読むのをやめられない体験に書き上げている。脚本の「語る力」を称賛せずにはいられない。

そう、やはり「語る力」。何度も言っているが、物語が面白いかどうかは、物語自体の設定にもよるが、語り手により大きく関係する。私がルクルを評価する理由は、その語る力が強く、物語を面白く深く語れるからだ。そしてルクルと比べても、『ファタモルガーナの館』の脚本は明らかに一枚上手で、どこか「上位版ルクル」のような感じがある。
ゲームの視点はずっと一人称で主人公 Michel なので、物語の提示はより「限定的」で「面白く」見える。私たちが神の視点ではなく、一人の人間に感情移入しやすいからこそ、多くの謎と伏線が本来の効果を発揮する。
『ファタモルガーナの館』が成功したもう一つの要因は、元のギャルゲーの枠組みから飛び出したことだ。
- 主人公が一人ではない
- 必ず存在する告白やえっちがない
- 長い「日常篇」や「ネタ篇」がない
- 馬鹿げた日本風の会話が少ない(後半には多少あるが)
- グロや胸糞要素を意図的に避けていない
ほとんどのギャルゲーはさまざまな型にはめ込まれていて、そのせいでシナリオの構造がどれも大同小異に見えてしまう。俺も何度となくツッコミを入れてきた。この型がビジュアルノベルの健全な発展を大きく阻害している。実に皮肉な話で、『ファタモルガーナの館』の脚本家は最初から媚びるようなギャルゲーを作るつもりなどなく、目指していたのはビジュアルノベル、つまり小説として作ることだった。だからこそ意図的にあの文体と油絵調のCGを選んだわけで、それが結果として自由な創作を保証し、极高い脚本の質を生んだ。そういえば『ファタモルガーナの館』の因果関係の描写は、以前の『櫻の詩』と非常に似ている。だが……『櫻の詩』は上に書いたような型から抜け出せなかった。だから『ファタモルガーナの館』のゲーム体験には及ばない。

もし『ファタモルガーナの館』をギャルゲーにカテゴライズするなら、そのシナリオの質は俺の中では間違いなく第一位だ。
『ファタモルガーナの館』の音楽は大きな見どころで、シナリオや画風と同じく、大半のギャルゲーとはまるで違うスタイル。オペラ風? たぶんそう呼ぶんだろう。質が高く、余韻に浸れるし、ゲームとの相性も抜群だ。しかもゲーム自体に多少の操作性があり、いくつかの選択肢には制限時間がある。選ぶのが遅いとBad Endに突入する。

最後に特筆すべきはPSV版で追加された『現代篇』だ。もう気づいたかもしれないが、最後の章に入ると画風がかなり変わる……
もはや標準的なギャルゲーに見える。元の油絵調もなく、元の声なしもなく、元の「悲劇の内核」もない。Staffを見ると、実は同じメンバーで、ただ彩色担当が変わっただけ……アニメ化後の画風変化って感じだ。それにゲームの最後の『現代篇』の内容の一部は、すでにFandiskで触れられていた。再度制作され、フルボイスが付いたのは、やはり物語の全キャラにハッピーエンドを与えるためだろう……
物語の登場人物たちはあまりにも悲惨すぎる。ハッピーエンドなら、この『現代篇』の画風に文句を言うのはやめよう。何しろMorganaも自分の幸せを手に入れたんだから。これが全ルートクリアしたプレイヤーにとって最大の慰めのはずだ。
プレイして気づいたのは、このゲームには核となる思想があるということ。それは人に善を勧めることだ。

Morganaのように、世界に何度も裏切られても神に祈ることを忘れず、誰にでもやむを得ない事情があると信じている。Morganaを囚えた三人も、さまざまな行き違いから過ちを犯し、同時に取り返しがつかなくなり、後戻りできず、すべてを諦めた。
主人公Michelの穿越も証明している。多くの悲劇は、誰かのちょっとした心の動きから生まれるのだと。
世界には愛があると信じ、この世の善良さが来世の幸福をもたらすと信じること。それがこのゲームの伝えたいことなのかもしれない。

(なんだか仏教思想に似ている気がする……)
そうだ、面白い話を一つ:
『ファタモルガーナの館』の脚本家はWikiで認めている。ゲームの構造設計はかなり……『ダンガンロンパ』を参考にしたと。これを知って俺は驚いた。でもよく考えれば不思議でもない。輪廻の中での絆の描き方は確かに『ダンガンロンパ』に似ている。でもなぜ『ダンガンロンパ』はあんなにバカっぽく感じるのに……『ファタモルガーナの館』は全くそう感じないのか?

おそらくこれが脚本家と脚本家の本質的な差なのだろう。
(完)
コメントは中国語の本家サイトで受け付けています。このミラーは閲覧専用です。