『千の刃濤、桃花染の皇姫:花あかり』レビュー
PLEASE MAKE AUGUST GREAT AGAIN
今さらだが、これまでずっと見下していたあの八月社の作品『千の刃濤、桃花染の皇姫』が、実はめちゃくちゃヤバい作品だったと認めざるを得ない。
どこがヤバいのか。設定がファンタジーなのに、妙にリアルなところだ。
俺は最初、こうツッコんだ。「片方が神権封建君主制で、もう片方が共和制、しかも両者が平和に共存していて、君主制国家の上層部の子供が共和国の学校に通えるなんて、世界のどこにあるんだよ? ふざけんなって話だろ!」
もちろん、今はそうは思わない。読者もそう思わないはずだ。この世界には確かにそういう構図が存在する。

しかも『千の刃濤、桃花染の皇姫』にはリアルな内容がふんだんに盛り込まれている。共和国が「自由」や「民主」を輸出するのは実利のためであり、君主制の皇国も独自の民主路線を歩もうと決める……とか。
ああ、語れば語るほど妙に既視感がある。だからこそ何かを暗示していると勘ぐる人も出てくるわけだが、俺は何も言っていない。ただの感想だ。それよりも、『千の刃濤、桃花染の皇姫』のファンディスクが早く発売されてほしいと切に願っている。
『千の刃濤、桃花染の皇姫』のファンディスクは『千の刃濤、桃花染の皇姫:花あかり』というタイトルで、原作の女一号の名前に対応している。ただ……今となってはこの名前、本当に意味がないよな。誰も気にしないだろうし。

このFDの内容は驚くほど短い。全12人のヒロインの追加ストーリーで、一人あたり1時間もない……合計してもプレイ時間が10時間に届くかどうか怪しい。しかも最大の問題はそこじゃない。
このいわゆるファンディスクには、まったく新しい物語がなく、旧作のアフターストーリーしかないのだ。
たとえば女一号の話。皇女が政権を奪還した後、皇国の改革を決意し、共和国の知識を多く学び、同時に自国の悪習も廃止する……魂で鋳造されたあの呪壁とかも。

で、皇女は巫女たちにその呪壁を分解させる。まるで自分の先祖の墓を掘り返すような気分だ……そして物語は、皇女が男主とイチャイチャしながら呪壁を分解していくと、巨大な怨霊が出てくる。ゴジラと同じくらいのサイズだ。
しかもその怨霊は共和国由来のもので、戦死した者の成れの果てかもしれない。最終的には共和国大使を呼んで、一緒に鎮圧する……
そして終わり。
終わり!
他のキャラの話も死ぬほど短い。たとえば皇女の祖皇帝のルートでは、男主が過去にタイムスリップして、祖皇帝が無数の命を犠牲にして救国神器を鋳造した歴史を変え、隣の民族との怨恨の絡みを回避し、……別の世界線の皇女を救い、ついでに元の世界線の皇女を寝取る。

そしてまた終わり。
このFD全体に、メインストーリーと言えるものは一つもない。ほとんどの個人ルートも原作の薄っぺらい個人線をなぞっただけだ。しかもキャラごとに世界観の結末が違う。ある話では皇国が存続し、ある話では皇国が廃止され、ある話では皇国が共和国に改造され、さらにバカみたいな話では皇国が共和国の犬になり、共和国が世界の警察として、皇国にも武人を出兵させるよう要求する。

アメリカがイラクを攻撃して日本に出兵を求めた、あの感じに似てないか?
まあ要するに分かった。このいわゆるFDは、せいぜいDLCだ。新しいOPとEDはあるかもしれないが、内容量は各キャラ3つの小話、それだけ。
そして感慨にふけらずにはいられない。八月社よ、どうしたんだ?

昔の八月社のファンディスクはどれも良心的だった。『大図書館の羊飼い』や、FDのDreaming Sheepなんかは、その容量は爆発的で、今のようなおざなりな態度では絶対になかった……
原作で物語が全部終わったからFDに書くことがない、という意見には賛成できない。原作の八岐雪花の胡の国の分岐ストーリーはまったく詳しく描かれていない。あれを前日譚や外伝として書けばいいのに、なぜか八月社はそれをやらなかった。
まさか八月社は、エロゲーを作るよりブラウザゲームをやったほうが儲かると気づいたのか? しかも皮肉なことに、このゲームのほとんどの話は印象に残っておらず、覚えているのは過去作のデブ猫がカメオ出演しているパロディだけだ……

初心を忘れるな! PLEASE MAKE AUGUST GREAT AGAIN!
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