『ぼくの一人戦争』レビュー

脚本家自身の一人戦争

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我的一人战争(ぼくの一人戦争)はAB2の新作だ。この作品に惹かれた理由は単純で、シナリオライターと原画担当がそれぞれ『車輪の国、向日葵の少女』と『G線上の魔王』という二大傑作を手掛けた組み合わせだからだ。どちらのギャルゲーも結末はやや強引かなと思ったけど、中盤の光っている部分は間違いなく見どころで、高等人試験での各ヒロインの性格造形しかり、G線での心理対決の描写しかり、今でも結構影響を受けている。

だから『ぼくの一人戦争』が発表されたのを見たとき、胸の高鳴りを隠せなかった。新しい名場面の描写があるはずだと期待してしまった……

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残念ながら、そうはならなかった。

先に言っておくが、今日は慎重にこのゲームをディスらせてもらう。慎重に、というのは、このゲームの日本語が半分も理解できなかったからだ。話の流れと大体の意味はつかめたけど、細部や含みのある表現までは分からない。ただ、俺が十分に理解できた範囲で見ても、このゲームには欠点が山ほどある。俺に残ったのは、訳の分からなさと、果てしない失望だけだった。

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ゲームに分岐はなく、ルートは一本道で、最初から最後まで選択肢もない。この点はSINCLIENTと同じだが、物語の描き方に関してはSINCLIENTにも劣る……

まずは脚本家の失敗したイキりから。

ゲームのプロローグは三人称視点で、しかも全編が縦書きという時点で、見ていて正直かなりキツかった。プロローグの内容はというと、障害を抱えた里見蓮司の弟・里見永治が、大都会から小さな島の田舎へ転校してきて、新しい転校生として兄と一緒に暮らすというもの。その間にいろんな人と出会う。兄と仲のいい彼女の犬塚るみや、さまざまなクラスメートたち。そして延々と続く終わりのない日常、日常、また日常。日常が積み重なったプロローグの最後で、弟の永治は突然本性を現す。実は彼は不良でチンピラで、ろくにまともに育っておらず、転校させられても真人間になろうとしない、などなど。激怒した兄の蓮司は永治を謹慎させたが、それでも効果はなく、最終的には弟を送り返すしかなかった。

そして……プロローグが終わった。プロローグでは蓮司にCVが付いていたのに、永治にはCVがなかった。だから永治こそが主人公だと思うじゃん? プロローグが終わると永治はどこかへやられて、そこから全部蓮司の一人称で語られていく。蓮司のCVも消えた。縦書きの文字も消えた……

そして最後に永治がチョイ役で出てくるまで、ゲーム全体は永治と何の関係もない……

この序章でこれやる意味、マジで何なの? プレイヤーを引っかけたいのか?男主を弟だと思い込ませておいて、いきなり「神展開」で驚かせてデカいの叩きつけたいだけなのか?

驚きはない。脚本家がマヌケだとしか思わない。

幸いここはまだ序章にすぎないので、物語はそのまま進んでいく。主人公と彼女のるみは相変わらず毎日ラブラブで、だがある日の夜、主人公は突然異世界に飛ばされてしまう。その異世界でるみは性格が一変していて、しかも主人公のことを「王」、自分は「兵」だと言い出し、主人公を守ると宣言するのだった。

この世界はゲームの設定では「会」の世界と呼ばれている。会の世界、それっていったい何なのかというと、現実世界では時間が止まっていて、「会」の世界では主人公が王として動く必要はなく、自分の「兵」を操作して召喚するだけでいい。同時に「王」は今回の「会」の世界にモンスターが何体残っているかを見ることができ、そのモンスターたちは列をなして主人公という「王」に迫ってくる。そこで「兵」たちが武器を取ってモンスターと対抗し戦い、王を守り、今回のシーンにいるモンスターを全滅させると「会」の世界は終わり、現実世界が続いていく。

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ゲーム中でのこの「会」という世界についての説明はものすごく曖昧で、具体的に何なのか全く理解できなかった。だが、主人公のツッコミのおかげで分かった……

これってまんまWarcraft RPGの「Guardian of Athena」じゃん……?

そう、主人公はアテナであり、主人公の兵士はその守護者たちなのだ。

そしてゲームはシナリオ上、退屈な設定を増やすために、さらにこう付け加える。主人公である「兵」はそれぞれ「会」の世界で性格が変わるのだと。たとえばるみはすごく男らしくなり、工藤先生はすごく柔らかくなり、沙代はすごく臆病になる、などなど。主人公を守る「兵」として「会」の世界で犠牲になったり、怪物に殴り殺されたりしたら、現実世界でも何かしらの変化が起きるかもしれないが、必ず死ぬとは限らない。確かなのは、その「兵」は現実世界で自分の「王」を忘れてしまうということだ。

つまり、俺たち二人でゲームをオンライン協力プレイしてて、突然お前が死んで、そのままゲームを抜けたら、俺に関する記憶を失っちゃう、みたいな……

だから物語の中盤、最初の「会」の事件が始まったあたりから、シナリオが妙にチグハグに見え始める。まず主人公がるみを連れて「会」の世界で悪戦苦闘し、そのあと主人公は自分のクラスメイトや教師まで含めた大勢を自分の「兵」として召喚する。ところが主人公がマジでバカすぎて、そいつらが一人また一人と死んでいく。おかげで現実では順番に主人公の存在を忘れられていき、かつての親友も他人になってしまう。

ゲーム中盤のシナリオはまるで砂の城のように崩れていて、あっちを叩けばこっちが崩れ、何を言いたいのかさっぱり分からない。しかも「会」の世界が一体何なのか、相変わらず理解できないままだ。分岐も他のルートもないから、章ごとに人物の視点で語る方式を採っているわけだが、どういうことかというと、アニメと同じで、各キャラがそれぞれ一段落ずつシナリオを担当する形だ。その間に先生の兄妹関係、沙代の感情、そして学級委員の少女が自分に自信を持てない一連の問題が順に描かれ、問題は一つずつ解決されていく。ところが、そこで突然「会」の世界の最終戦が来たと告げられる。

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ここで言い忘れていたが、物語全体のヴィラン、それは長門大地という名のジジイだ。最初から登場していて、政界の政治家だと言い、同時に「会」についても知っている。最初は主人公に対して嫌味を言いながらも助けを提供し、主人公が何度も「会」とは一体何なのかと問いただそうとするが、彼ははぐらかしてばかりでまともに答えない。最後に主人公に「会」の世界の最終戦を告げるのも、このジジイである。

そして主人公は装備を整えて仲間を連れ、最後の一波となる“アテナ防衛”に挑んだ。長門大地のジジイが言う。「もういい、もういい、最後の戦いは終わった。“会”もなくなった」と。

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そして物語はまたもや訳のわからない日常と引き延ばしに突入し、さんざん引っ張った挙げ句、主人公は自分の彼女であるるみが「会」の世界に巻き込まれ、毎日苦しみながら生きていて、しかも記憶喪失まで起こしていることに気づく。

長門のじいさんがまた出てきた。全部お前のせいだと言う。具体的に何が悪いのかは回りくどくてさっぱり分からん(だからあのじいさんの喋り方はマジで嫌いなんだよ)。そして彼女と別れろと勧めてくる。

男主は迷った末に結局別れることができず、彼女のるみも男主を愛している。そして二人は結ばれた……が、長門の爺さんがキレた。突然現れて男主を蹴り飛ばし、るみをさらって連れ去ると、男主に告げる。「会」はまだ終わっていない、と。自分に協力しろ、そして「会」の世界を利用して現実社会で利益を得るのだ、と。

「俺は『会』を越えた世界の、現実社会における王になるんだよ」長門大地のジジイが中二病全開でそう言った。

物語はここまでを簡単に言えば、長門大地というこのジジイがずっと主人公を利用し、騙して、主人公と手を組んで自分の悪事を手伝わせようと目論んでいた、とかそういう感じ。軟らかい手口が通用しないと見るや、最後は力ずくに出ることを決めた。

里見蓮司は身体障害者で、あのジジイにはどの面でも敵わない。ジジイには権力も金もある。最後にジジイは条件を突きつけた――俺を助けねえなら、お前の彼女を殺して焼いちまう、期限は明日だと。

そのとき、主人公の弟である永治が島の外から戻ってきて、自分は更生して良い少年になったと言い、さらに主人公に母親が残したある形見を手渡した。後の爺さんの話によると、この形見は「骨」と呼ばれ、自分を強制的に新たな「王」にすることができるのだという。

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そして主人公は老人と直接対決するために会いに行き、この形見を使って「会」の世界で「兵」の名のもとに老人という名の「王」を殺し、老人は消えた。続いて主人公は「王」の名のもとに、かつて犠牲になったすべての「兵」を呼び覚まし、物語は終わる。最後に主人公はるみと結婚した……

まとめると、主人公は小島で怪しい事件に巻き込まれる。あのジジイが敵役として、主人公のその能力を悪用しようと企んで、主人公が従わないから彼女を誘拐し、そこで主人公が覚醒してボスを逆にぶっ倒す、という話だ。

じゃあ、このゲームの問題はどこにあるのか?

1、「会」の設定は詳しく説明されていない。ゲーム内でじじいがエロい感じにいろいろ匂わせてはいるが、結局ちゃんとした完全な説明は一度もなくて、今でもあれが何なのか分からない。最初は自分の日本語が足りないせいで理解できないのかと思ったが、他の人の感想を見たら、その人たちも分かっていなかった……

2、本編がめちゃくちゃ。ゲーム本編は主人公がジジイを打ち負かす話で、その過程で友情を謳い上げる。ただ、その友情の賛美が散らかりすぎていて、章ごとの語り口で友情を讃えるもんだから、あっちこっちに散らばって話がどこへ繋がってるのかさっぱり分からん。しかもプレイヤーはずっと「会」っていったい何なんだよ、と気が散らされてイライラしているはずで、お前の友情ごっこなんて落ち着いて見てられない……

3、ビジュアル面に問題がある。「会」の世界で、主人公は数字が見える、召喚された「兵」が見えると言っていたのに、ゲームのCGではそのへんが一切表現されていない。るみが斬り捨てた「見えない怪物」とやらも然り。戦闘すら静止画一枚きりで、見れば見るほど混乱して困惑するばかり。マジで金がなかったんじゃないかと疑ってしまう……

4、最初はのんびり進んで、最後に急展開。最初にも言ったけど、序盤は完全に無駄話ばかり。序章から最初の「会」の時刻が出るまでは、ゲームの中身は全部どうでもいい話で、メイン筋とは関係ない。あの弟の永治に至っては、今でもなんでゲームに組み込んだのか分からない。最後の1時間でジジイが本性を現したあたりから、シナリオが一気に加速する。突然主人公がアホになって、突然永治が戻ってきて、突然主人公がタイマンして、突然主人公が勝って……突然ゲームが終わる……

もちろんゲームにいいところがないわけじゃない。葉先生の絵はさらに成熟していて、やや写実的にもなり、女性の体はより豊満に、男性はよりかっこよくなっていて、見た目はかなりいい。ゲームのOSTは間違いなく最大の見どころで、そのクオリティは怖いくらい高い。ピアノ曲にしても、戦闘時のギター曲にしても、何度も聴き返す価値が間違いなくある曲ばかりだ。

最後はシナリオの話。かつて少女神域少女天獄が、描写が分かりにくいせいで地雷扱いされて叩かれたのを覚えている。ならば『ぼくの一人戦争』はどうかというと、「会」の描写で脚本家は少女神獄とまったく同じ過ちを繰り返している……。三人称視点で話を広げようとあれこれ試しているのに、それがうまく説明されていないんだ。

小説家には三つの等級があるという話をどこかで見た覚えがある。三流の小説家は設定をそのまま説明して物語を進める。並の小説家は作中キャラクターの口を借りて設定を説明してから進める。一流の小説家は設定を説明せず、設定の謎を読者に委ねる、と。脚本家がさらに一歩踏み込んだ描写をやりたい気持ちは分かるが、このやり方は難易度が高い。それなりの腕がなければ、結局読者をより一層迷わせるだけだ……

ゲームのタイトルは「ぼくの一人戦争」。おそらくこれは「王」だけの孤独な戦いを意味しているのだろう。車輪の国、そしてG線上の魔王という二大傑作を書いてきたシナリオライターにとって、このゲームのシナリオは新たな試みでもあり、彼自身の一つの戦争でもあるのかもしれない。

ただ残念ながら、現時点では戦争は敗北に終わったように見える。

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