『どっちのiが好きですか』レビュー

その“i”が、せかいをこわす

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「死オタ恋愛マニュアル」みたいな記事を書こうとして放り出したことがある。実は構想はあって、目処も立っていたんだが、ずっと筆を取らずにいた。書くとあまりに複雑になるからだ。本物の恋愛はエロゲーとは違う。相手は画面の向こうの設定された二元キャラじゃなく、生身の人間なんだから。本物の人間にはいろんな性格や特性がある。つまり君が向き合う本物の「女の子」は、何十本ものエロゲーのヒロインたちの集合体みたいな属性を持っているかもしれない。現実で出くわす「イベント」は、別々のヒロインの別々のルートに散らばっていて、使いこなして融通を利かせないと対応できないのかもしれない。

とはいえ、大半のオタクにとって問題はそこじゃない。本人のコミュ力の問題だ。

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何人かの「オタク」と接したことがあるが、彼らはいつも相手が見つからない、女の子が話してくれないと愚痴る。でも実際は……女の子どころか、男だってあまり話したくない。彼らは口を開けば自分ワールド全開で、外界との交流を拒み、自分を身体の中に閉じ込めておいて、他人が自分の内面を分かってくれないと文句を言う。

コミュニケーションは双方向だ。相手に自分を知られることを許さず、それでいて相手を解剖して見せろ、選ばせろというのは、特殊な趣味のエロゲーの世界でしか起きない話だ。

もちろんエロゲーと一口に言っても、こういう「ファンタジー作品」ばかりじゃない。かなり現実に寄り添ったものもある。たとえば HOOK や SMEE の作品だ。

かつて SMEE のゲームは「オタク脱却」を後押しすることに力を入れていた。HOOKSOFT のゲームはどれも伝統的な「学園幻想恋愛」で、なぜ「幻想」かといえば、HOOK の作品には設定上いつも奇抜なアイデアがあるからだ。ロボットとか、仮想現実とか。しかも HOOK のゲームには必ず「学園内チャットシステム」があって、主人公たちの行動をリアルタイムでツッコんでくれる。

ところがここ数年、そういうものが全部なくなった。HOOK の特色はほぼ消え失せて、今では HOOK のゲームを見ても SMEE と区別がつかない。

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だから今回の HOOK の新作は、完全に SMEE の味がする作品だ。『どっちのiが好きですか?』

このゲームは SMEE の作風と似すぎている上に、設定も単純明快。主人公はもうすぐ二年生になるのに童貞であることに悩み続け、脱童貞を決意する。ところが街を歩いているときに大型トラックに轢かれて死ぬ(同じく轢かれた黒髪ロングの女もいる)。そして鎌を持った白髪の女に救われる……

失礼、記憶違いだった。言い直そう……

ゲームの設定は、主人公がもうすぐ二年生になるのに童貞であることに悩み続け、夏休みを前に自ら動き出し、女の子に声をかけて恋愛の第一歩を踏み出すというものだ。

本作では攻略可能なヒロインが四人。まず C 位に居座る、そして私が一番嫌いな石上静香が声を当てる種村小柚子。それからその暴走っぷりが女教師によく似た上ノ山芽愛。日本の民族的な自信のために加えられた、石上静香よりもさらに私をイラつかせる歩サラが声を当てる外国人、四谷・グレンジャー・ハンナ。そしてどう見ても負け犬の風格しかないド S な生徒会長、英摩耶。

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攻略の仕方はちょっと独特で、「勘で当てる」ようなもの。特定の場所に行けば、自然と特定の人物に出会う。出会う回数が増えればその子のルートに入る。しかもゲームの章構成も SMEE とほぼ同じで、共通から個人へと進む。

ゲームの物語設定はごく平凡で、死神がカフェを開いたりはしないから、物語の魅力は完全に各ヒロインの見せ場に委ねられている。正直に言って、ヒロインの描写はなかなかしっかりしている。たとえば主人公の後輩である上ノ山芽愛は、設定上はドジでおしゃべりな性格で、シナリオでもその活発さに重点が置かれ、「手芸が好き」という特殊なイベントが描かれたり、人生の選択についても書かれていて、その選択には当然主人公も関わってくる。

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ここでゲームの主人公について触れざるを得ない。HOOK であれ SMEE であれ、「オタクの恋愛を助ける」作品で主人公の造形は間違いなく成功している。考えてみてほしい。プレイした SMEE/HOOK のゲームの主人公は、いつもやたらとコミュ力が高く、価値観がまっすぐで、肝心なところで逃げず、頼りになる奴じゃなかったか? そういう資質がなければ女の子に好かれるはずもないし、他人に好かれる「人」にもなれない。

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最後にもう一度しみじみ思う。あれだけエロゲーをやって、あれだけ恋愛を眺めてきて、一番多く気づかされたのはゲームの主人公が残した印象だった。もしすべてのオタクがああいう主人公を見習えば、恋愛もそこまで難しい話じゃないのかもしれない。

あ、そうそう。このゲームで私が一番好きなヒロインは四谷・グレンジャー・ハンナの妹だ。

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そしてこの妹が可愛すぎて爆発する。可愛すぎて世界を滅ぼせるレベルなのに、なぜか攻略不可。タイトルの名前は彼女に捧げる。

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