『サルテ』レビュー
サルテが目を覚ますと、そこは妙な場所だった。芝居の舞台のような空間で、ただ客席には誰もいない。
「こんにちは、サルテ。君はもう死んでいる」
仮面をつけた道化師が現れて、軽薄な声で残酷な事実を告げる。
「私が、死んだ?」
「そう、君はだいたい死んでいる。残念ながら、自分が死んでいることにも気づいていないし、どうやって死んだのかも分かっていないようだ。だからここを用意した」
道化師が指を鳴らすと、舞台の照明が灯る。
「君は生前、女優で、そして王国の王女だった。今から君に復活のチャンスを与えよう。条件は、この誰もいない舞台で君の一生を、死ぬところまで演じることだ。俺が満足したら、復活させてやる」
「でも、自分がどうやって死んだか思い出せない」
「演技が進むにつれて、俺がヒントをやる。そのうち思い出すかもしれないぞ? それとも、この死に戻りのチャンスを諦めるか?」

サルテは諦めたくなかった。頭の中の限られた記憶だけを頼りに、この舞台での独白と演技を始める。そして自分の人生を振り返り始めた。
サルテは王国の王女であり、プロの女優でもあった。国王が突然崩御し、国の実権は宰相ガルニエに渡ったが、王女サルテはそんなことに関心がなかった。本来の予定では、来月ある世界的な演劇公演に参加するつもりだった。サルテにとって、芝居だけが本当に関心のあることだった。
だがその公演の前に、戦争が起きた。宰相は隣国を助けるために出兵が必要だと言い、唇亡びて歯寒しだと説く。サルテは同意するしかなく、さらに自分の恋人ジャンを軍の指揮官として送り出した。大军が出発すれば、あとは朗報を待つだけのはずだった。ところが思いもよらないことが起きる。
サルテが眠っていると、外が騒がしくなった。窓を開けると、そこにいたのは敵国の軍隊で、そのまま皇宫に攻め込んでくる。サルテはわけも分からぬまま捕虜となり、囚人となった。
敵国の兵士たちは王女サルテへの凌辱と拷問を始め、大人しく従うよう迫り、ついには刑具まで使った。
サルテは王女としての高慢な気節を保ち、死んでも屈しなかった。

最後に敵国兵士は、反抗的なサルテを残虐に殺した。彼女の人生はそこで終わりを迎える。
「実に感動的な話だな~」と、傍で観ていた道化師が口を開く。「だが、こんな陳腐な駄作じゃないだろ!」
「よく考えてみろ。当時の君は、本当にそうだったのか?」
道化師に詰め寄られ、サルテはさらに思い出そうとし、物語を修正する。
敵国兵士の拷問に、サルテは本当に死んでも屈したのか?
違う。彼女は怯み、妥協し、最後には兵士たちの肉便器にまでなって、日の当たらぬ地下牢にずっと囚われ、辱めを受け続けた。
「おい、王女。誰かが助けに来るなんて期待するなよ。お前の民も、部下も、大臣も、部隊も、全部お前を裏切ったんだ」
兵士の嘲笑で、サルテは完全に抵抗を諦める。

その時、一人の兵士が、マリーという修道女がサルテを探していると告げた。
サルテは自分の人生に少し光が差した気がした。
マリーは教会の修道女だ。教会では様々な孤児を引き取っており、サルテも幼い頃にはぐれて、その教会に引き取られた。そしてマリー修女と友達になった。
「マリーはきっと助けに来てくれる!」
サルテは希望に満ちた。
だがすぐに絶望へと突き落とされる。
マリーはサルテを見つけたが、自分も地下牢に落ちてしまい、同じ場所に閉じ込められてしまう。

「サルテ、助けに来たかったの。でも、どうしていいか分からなくて、捕まっちゃった」
マリーの話は、自分から罠に飛び込んだように聞こえる。
実際その通りだった。マリーもサルテと同じく、敵国兵士の肉便器に成り下がる。
「このままじゃダメ。だから私たち……」
サルテは二人で逃げる方法を考え始める。
色々試したが、使えるのは自分の身体だけだった。やがて番兵の口からチャンスを聞き出す。数日後、兵士たちが戦争で攫ってきた女たちを集めて「Party」を開くという。サルテは、そのPartyで自分の女の身体を武器にして、逃げ出す機会を作れると考えた。

そして当日が来た。脱出計画はうまくいかず、サルテは自分を犠牲にしてマリーだけを逃がし、自分はまた地下牢に連れ戻される。
サルテはまた、皇宫がこんなに早く落ちた理由も知る。国の宰相が先頭に立って裏切り、道案内になったからだ。部隊は他国支援に送られてしまい、自分の皇宫を守る者などいなかった。すべて宰相の陰謀だった。
だが幸運なことに、送り出された部隊はすぐに戻り、皇宫を攻め落として奪還しようとしていた。
地下牢のサルテは外の戦いの音を聞き、混乱に乗じて逃げ出す。そこにはサルテの部下たちの抵抗を指揮する裏切り者・宰相の姿があった。
サルテはとっさに動き、背後から宰相を不意打ちして、楼から突き落とす。宰相は地面に激しく叩きつけられ、ぴくりとも動かなくなった。

サルテは好機と見て走り出し、両腕を広げて攻めてきた援軍を迎えようとする。
援軍の先頭は、あの出征したジャンだった。王女の恋人である彼は、一目でサルテを見つける。二人が抱き合おうとしたその時、サルテは頭に強い衝撃を感じ、倒れてしまう。
意識を失い目を閉じる瞬間、彼女は自分を襲った者を見た。血まみれの宰相だった。彼は死んでいなかったのだ。
こうしてサルテの人生は、自由を手にする直前で終わった。大きな悔いを残して。
道化師はサルテの独白を聞き終えると、拍手をした。
「実にいい演目だ。いい人生でもある」
サルテは皮肉を感じ、冷たく言う。
「なら、自分の死に方は分かった。もう復活していいの?」
「もちろん。起死回生してやろう」
そう言って道化師が指を鳴らすと、サルテの視界が真っ白になる。次に目を開けると、自分は皇宫の庭に立っていた。
傍らには血まみれの宰相が倒れている。やはり予想通り、死んでいなかった宰相に不意打ちされて死んだのだ。そして今度は無事に復活した。
サルテは両腕を広げ、愛するジャンに向かって走り出す。彼も自分に向かって走ってくる。

だが奇妙なことに、愛するジャンがサルテに与えたのは抱擁ではなく、彼女の胸を貫く一本の剣だった。
「この裏切り者!」
ジャンの怒号にサルテは呆然とする。だが一瞬で、その呆然とした顔は笑顔に変わった。

サルテは思い出した。自分の本当の身分を。
「そうか、私は王女じゃなかったんだ……ずっと」
大きな夢から覚めるように、サルテは再び目を閉じる。
再び目覚めたサルテは、またあの馴染みの場所に戻っていた。誰もいない舞台で、待っていたのはあの嫌な道化師だった。
明らかに、また死んでここへ戻ってきたのだ。
「いい演目だった。また戻ってきたな!」道化師が拍手で迎える。
「全部あなたの思惑通りだったってわけね」とサルテは軽蔑気味に言う。
「これも演出の一部だからな」道化師は拍手をやめない。「では、この偉大な演目に結末をつけよう」
「いいわよ!」
サルテはすべての理由を、自分の本当の身分を、自分の死因を理解していた。何もかも分かっている。なぜ死後にこんな芝居を演じる必要があるのかも、最後の演技の陳述が必要なのだと分かっている。
サルテは舞台の中央に立ち、観客の方向へ深々と一礼して、語り始める。
これは「偽王女」サルテと「真王女」サロメの物語。
サルテは孤児で、元々名前がなかった。幼い頃から教会に引き取られ、教会の修道女マリーと友達になった。偶然なことに、ある日幼い王女サロメもはぐれ、この教会の人に拾われる。サルテとマリーも王女サロメと知り合った。後に王室の者が王女を迎えに来た時、宰相は教会のサルテを見て、王女と驚くほど似ていることに気づき、彼女も皇宫へ連れて行く。

宰相がサルテを引き取った意図は単純で、王女の「影分身」として育てることだった。一方で王女の安全を守り、もう一方で王女の代わりにいくつかのことをさせる。
サルテは基本作法から話し方まで訓練を始める。王女サロメは芝居が好きで、よく国の劇場へ行ってヒロインを務め、サルテも演技の訓練を始めた。
だがすぐに問題が起こる。王女サロメは非常に傲慢で自惚れが強く、演技はうまくないのにいつもヒロインを独占する。劇場の他の者たちは陰で彼女を指さして噂し、結局サロメの耳にも届いた。彼女は不機嫌になったが、自分の実力もよく分かっていた。
ある日、国の劇場が海外公演で大会に参加することになった。サロメはサルテを呼び、自分代わりに大会に出るよう命じ、さらに「成功だけ許す、失敗したら覚えておけ」と難題を押しつける。
だが結果は王女を驚かせた。サルテには演技の才能があるらしく、初めての大会参加で優勝してしまう。
王女サロメは崩壊した。嫉妬と自惚れと傲慢で、彼女は激怒する。

「王女」サルテが演技で優勝したということは、自分、つまり本物の王女がもう外で芝居をできないことを意味する。身代わりを使ったことがすぐにバレるからだ。自分の演技力が低すぎるのだ。
サロメがさらに腹立たしかったのは、自分の「影分身」サルテが「自分より王女らしく」振る舞ったことだった。
偽王女が真王女より王女らしい。なんて皮肉なことか。
サロメ本人だけでなく、皇宫の他の者たちも気づいていた。宰相ガルニエも、護衛ジャンも。
真王女サロメは傲慢で、自惚れが強く、意地が悪い。
偽王女サルテは穏やかで、謙虚で、学び好き。
しかもサロメの恋人である護衛ジャンまで、優しいサルテに心を奪われてしまう。
これがサロメのサルテへの激しい嫉妬を招き、彼女は狂ったようにサルテをいじめる。衛兵に強姦させ、首輪をつけ、犬の鳴き声を真似させ、蹄鉄で顔を焼いた。

サルテはずっと耐えていた。人生の意味を見つけたからだ。劇場で芝居ができるなら、それ以外はどうでもよかった。
だが、ある日宰相ガルニエがサルテを見つけ、一緒に「政変」を起こそうと誘う。
「この国の指導者は器に非ず、残虐非情だ。倒すべきだ」
サルテはなぜ大臣の政変に自分が呼ばれるのか分からなかった。
「君の助けと協力が必要だからだ」

サルテは王女にあまりに似すぎていて、真王女より王女らしい。完全に取って代われる。
「どうした、彼女が憎くないのか? ずっと君を辱めていると聞いたぞ。しかも君の友達の教会への援助を打ち切り、あの修道女マリーを死なせようとしている」
サルテは大切な友を苦しませたくなく、協力を承諾する。
サルテの協力のもと、王女サロメは国の兵力をすべて送り出し、空になった城はすぐに敵軍に攻め込まれる。王女サロメは敵兵に捕らえられ、地下牢に閉じ込められ、辱めを受け続けた。
もちろん、純真なサルテが代わって王女になったわけではない。彼女も地下牢に閉じ込められ、あの大臣が信頼に値しないこと、自分を利用しただけだと悟る。
後にマリーもサルテを訪ねてきて、一緒に閉じ込められる……
後にサルテは自分を犠牲にしてマリーを逃がす……
さらに後に部隊が戻り、サルテは混乱に乗じて逃げ、大臣を突き落として半死半生にする……
そしておなじみの展開。死んだサルテは道化師に会い、その誘導で自分の人生を再び演じ、自分を王女だと思い込み、再び復活し、ジャンに裏切り者として殺される。
実際、サルテは確かに裏切り者だった。王女サロメを裏切り、売り渡し、自分もろくな結末を迎えなかっただけ。
彼女が最初に復活のために思い出した「人生の出来事」は、真偽二人の王女の記憶が融合して作られたもので、どちらか一人に属するものではなかった。
サルテはずっと身代わりでしかなく、本当の王女になったことなど一度もない。最初にそう思い込んだのは、すべてあの道化師の誘導のせいだった。
サルテはがらんとした舞台で自分の言葉をすべて述べ終え、道化師に問う。
「なぜ私を王女だと思い込ませたの?」
「そうした方が、この演目がとてもドラマチックになるからだ!」
道化師は迷わず答える。
「ところで、この演目は一体誰に見せるものなの?」

「もちろん神々に見せるのさ。彼らは暇だからな、分かるだろ。それに……」
「それに……」
「君が死ぬ前に最大の願いだったのは、もう一度あのオペラ演技大会に出ることじゃなかったか?」
サルテは思い出した。本来ならサロメの代わりにその演技大会に出るはずだった。世界大会で、自分もとても憧れていた。だが政変の日が早まり、そこへ行く機会を失ったのだ。
「そこへ行って芝居することが君の一生の願いだった。だから俺は君の願いを叶えるためにこの舞台を用意し、こんな偉大な演目を完成させたんだ」
サルテは満足げな顔になる。だが道化師にはまだ話があった。
「いくつか聞きたいことがある」
「何?」
「本当にマリーを親友だと思っていたのか?」
「正確には違う。私は彼女を利用していただけ。それに彼女のあの聖母みたいな考え方がとても嫌だった。教会を維持するために身を売ったと知って、助けに来た時はちょっと苦しめて、世間の厳しさを教えてやろうと思った」
「だが最後には逃がした」
「多分、まだ彼女が可哀想だったのよ」
「あのジャンを愛したことは?」
「ない。私は一人の女として、あの心の優しい男を利用して、自分の目的を達成しただけ」
「あのサロメを憎んでいる?」
「半分半分ね。痛烈に憎んでいるけど、時々自分自身も憎んで、自分が可哀想にも思える。自分の人生が道化師みたいに感じる」
そこまで言うと、目の前の道化師が仮面を外す。仮面の下にはやはりサルテの顔があり、舞台には二人のサルテが現れる。
二人とも驚かず、むしろ安堵していた。もともとこれはサルテがサルテのために用意した完璧な演目だったから。
サルテは非業の死を遂げ、完璧な演技を披露できない悔いを残した。死後の世界で、自分の仕掛けによって、この「神が見る舞台」で完璧な演技を行い、自分だけの拍手を手に入れた。

この演目の名はサルテ。フランス語でsaleté、日本語では「塵」「埃」、つまりNothingという意味。
サルテの一生もまた「塵」ではないか。人の影として生まれ、死に方も滑稽。悲劇に見えて、喜劇のようでもある。
「人の一生は自分から見れば悲劇だが、他人から見れば喜劇だ」

幕が下り、『サルテ』という名の喜劇はこうして幕を閉じた。
『サルテ』というゲームはしばらく前から注目していた。直感がこれは只者じゃないと告げていた。
だがゲームの流出が本当に遅く、最初のロットは高貴な300の神秘でクラックするわけにもいかず、二番目のロットを待ってプレイするしかなかった。
ゲーム自体の物語は実に回味がある。貧しい家の少女サルテが、王女に似ているため、暴虐無能な王女の「身代わり」として育てられ、最後には偶然から他人に利用され、政変の駒となる。そして捨てられ、とても情けない死に方をする話だ。
主人公サルテが最後に自分をNothingであり「塵」と名乗るのは、ゲームタイトルでずっと強調されるあの言葉に対応させたいからでもある。
「人生は主観的にみると悲劇だが、客観的に見れば喜劇である」 「人の一生は主観的に見れば悲劇だが、客観的に見れば喜劇である」
この言葉は中国大陸の有名な舞台俳優、陳佩斯老師も口にしている。ただし彼のバージョンは「喜劇の核心は悲劇だ」だった。
理解は難しくない。滑稽な出来事や人を見ると、そこにはたいてい不運な誰かがいる。その不運な本人から見れば悲劇だが、外から見ればその不運な誰かが喜劇的效果を生んでいる。

例えば私がよくブログで自分の自嘲や不運な話を書くと、多くの人が面白いと言う。中にはツイッターやXで私に向かって「哈哈哈哈哈」と笑い、私もきっと楽しいはずだと思うバカもいる。理屈は同じだ。
『サルテ』の物語の見どころは、ヒロインが「ひと騒動の末に何も残らない」という悲劇が透かす滑稽さにある。
もちろん、このゲームの物語には欠点も多い。細部の展開は検証に耐えないし、国家間の設定は雑すぎ、政治闘争は単純すぎ、兵士の行動はあまりに「下半身」すぎ、ヒロインの感情の変化は突然すぎ、最後の黒化も訳が分からないなどなど。とはいえ、『サルテ』の語り方を単純な「オペラ風」と捉えれば、理解しやすいかもしれない。ただこれはエロゲーで、会話が多く、会話のスタイルにもオペラの味はない。全体としてはちぐはぐに見えてしまう。

物語には不完全なところがあるが、全体として語りはとても滑らかだ。これは全編に「長々とした日常の与太話」がないおかげで、劇情が非常に緊密で、一気に読めてしまう。長さも短すぎず長すぎず、ちょうどいい。物語への没入感はかなり良い。
言い換えれば、「物語には穴が少なくないが、読んでいてとてもスムーズで爽快だから、自然と穴に気づかなくなる」ということだ。
同時にゲームの音楽も非常に良い。担当はやはり『枯れない世界と終わる花』の雪仁で、両者は同じ感じがある。静かにすべき時は静かにし、音楽を流すべき時にゆっくりと鳴らし、雰囲気をよく盛り上げている。
ゲームのCV、ヒロインは中国語系で有名な女変態声優、御苑生メイ。ただこのゲームでの演技は実はあまり良くない。全力を出し切っていない気がする。でも悪くもなく、金銭で仕事をするタイプだろう。このゲームは本当に予算が限られているのかもしれない。

ゲームの画風はどう評価していいか分からない。可もなく不可もなくという感じ。ただこのゲームにはHCGが多く、ヒロインが多くの凌辱を受けるため、HCGの大半も凌辱画面だ。不快に感じやすいが、一応は物語と関連しており、物語と密接に結びついている。ゲームの不可分な一部と言える。実用性が高いと言う人もいるが、私は性冷淡なので分からない。評価は控える。

『サルテ』のようなレベルのゲームは、試す価値が十分にある。ただし「レイプCG」を排斥しないことが前提だ。ネットで多くの人がこれを批判し、感傷的すぎるとか、めちゃくちゃに書いているとか言う。しかし欠点がどれだけあっても、伝統的な「水増し日常」タイプのゲームよりはるかにマシだ。考えてみてほしい。こんなに直接的に物語を語る作品に、どれだけ長く出会っていなかったか。物語が完璧でなくても、物語を語っているだけで十分だ。
コメントは中国語の本家サイトで受け付けています。このミラーは閲覧専用です。