『泡沫冬景』レビュー

泡沫東京

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1980年代、日本は異常な繁栄を誇る「バブル経済」の真っただ中にあった。

当時の日本はどれくらい景気が良かったのか。だいたいみんなが外国為替をやって、円高をただ待っていれば手持ちの金がしばらくすると勝手に価値を増す。バカでさえなければ、金を突っ込む勇気さえあれば、適当に金融の真似事をやるだけで楽に大金を手にできた。

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当時の日本人はもう「金持ち」の代名詞みたいなもので、国内での消費に飽き足らず、アメリカへと乗り込み、湯水のように金を使う海外遠征の日々を始めていた。日本人のアメリカでの「爆買い」ぶりに白人はあっけに取られた。気に入ったものがあれば迷わず買いまくり、ゴッホの名画まで買っていき、タイムズスクエアの各種看板の所有権まで買い取ってしまった。海外での狂乱だけでなく、日本国内の人々も最後の宴を始めていた。消費主義、享楽主義が横行し、若者たちは最新のポケベルや携帯電話を身につけ、資本家やヤクザは狂ったように外国為替をやり、土地を転がした。実体経済など誰も見ちゃいない。膨大な金が不動産市場に流れ込み、東京の地価はうなぎ上り。東京で家を一軒買う金があれば、アメリカのプロ野球球団を何球団も買えてしまうほどだった……

そんな狂った日本の環境へ、大量の貧しい人々がネオンきらめく東京へと押し寄せ、一攫千金の夢を追い始めた。

その中には日本の田舎から来た者もいれば、海外から、はては中国から来た者もいた。

『泡沫冬景』というゲームは、まさにそういう物語を描いている。

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主人公は中国で大学入試に失敗し、日本の狂った経済を見て、東京なら「寝ていても金が稼げる」と聞きつけ、翌年の大学受験の学費を稼ぐために東の海を渡り東京へ来た。

ヒロインはというと、妹が先天性の心臓病で、家は貧しく、妹の手術費を払えない。それで日本の田舎から東京へ出てきて、少しでも金を稼ごうと決めた。

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しかし東京で一番手っ取り早く金を稼ぐ方法は、女性なら体を売ることで、外国人である主人公にとっては違法就労だった。

とはいえ二人とも明らかにそういう「すぐ金になる」仕事はやりたがらず、最終的には金をもらって「立ち退き拒否者」になる道を選ぶ。古い駅舎に一緒に住み、目的は地価を吊り上げること。古い家に人が住んでいれば、誰も強制立ち退きはできないから、相手は辛抱強く交渉してくるしかない。キャバ嬢やヤクザの下っ端になるより収入はずっと少ないが、日給4000円なら十分に美味しい。

こうして中国人と日本人が一つ屋根の下に住み、「立ち退き拒否」の仕事を一年間シェアするという奇妙な「同居生活」が始まった。長く過ごすうちに二人は次第に心を通わせ、自分たちはどちらも天涯の落伍者なのだと気づく。ネオンきらめく東京郊外を漂いながら、バブルに浮かれるこの都市を眺めていた。

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結末は正直、完璧とは言えない。二人はかなりの金を稼いだが、その途中で盗難に遭い、現場監督に脅し取られ、結局はむだ骨を折っただけに終わる。ヒロインの妹は心臓発作を早めてしまい、すぐに金が必要になる。ヒロインは妹のためにキャバ嬢になろうとまでする。そして主人公は金を貯めて帰国し大学へ行く夢を諦め、彼女を助けるために残ることを決める。監督の情けと助けもあって、二人は妹の手術費を何とか工面する。借金は東京で二年余り飲食業をやって返さねばならないが、それでも貧しいながら、誰もが金では買えない一番大事なものを手に入れた。

『泡沫冬景』は「ギャルゲーっぽい」が実際には「ギャルゲー」とは何の関係もないゲームで、使われているのはむしろAVGや映画的な演出だ。多視点で主人公とヒロインの異なる世界を描いていて、全体の質はかなり良い。そして何より貴重なのは、このゲームの中に「なかなか含蓄のある」ものが多く隠されていることだ。


「すぐ金を稼ごうとする奴はバカだ」

物語はバブル経済真っただ中の東京が舞台。前述の通り、当時の東京は「バカでも稼げる」場所で、多くの人が金を稼ぎにやって来た。中には密入国までして来る者も少なくなかった。彼らが選ぶのは「自分を犠牲にしてすぐ金を稼ぐ」ことだが、このゲームが言いたいのは「すぐ金を稼ごうとすると、より早く没落するだけだ」ということだ。

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主人公の雇い主である江小墨は、ずっと主人公を見下していた。東京に来たのも金のためだろうに、楽に稼げる仕事を放っておいて、わざわざ「立ち退き拒否者」になるなんて、こいつはバカだと。ヒロインも江小墨には軽蔑されていた。女ならキャバ嬢になっても大した犠牲じゃない、しかも立ち退き拒否者よりずっと稼げるだろう、と。

もちろんゲームには善人が報われる的な結末はないが、歴史に照らせば日本の経済バブルは1989年末に崩壊し始め、その時期はちょうどゲームの結末と重なる。日本は「失われた10年」へと突入した。バブル崩壊の反動は実体経済にも及んだが、明らかに主人公とヒロインが選んだ飲食業は影響が最も小さい。かつて金融業で一攫千金を狙った連中はパンツまで失うことになり、享楽主義を奉じていた若者たちも、消費が冷え込んだ世界観の下では快適に暮らせるはずがない。それに比べれば、ずっと清貧に生きてきた主人公とヒロインは、この経済危機をより穏やかに乗り越えられる。

そう考えれば、主人公とヒロインにとってはハッピーエンドだったはずだ。ゲームでは明言されていないけれど。

江小墨と李小牧

ゲームには白も黒も通す華人老板、「江小墨」が登場する。このキャラのモデルが誰なのかはすぐに分かるが、私はずっと明確な証拠がなかった。ゲーム後半で江小墨の過去が語られる時、見覚えのある内容が目に飛び込んできた。「江小墨はかつて生活のために風俗店でポン引きをしていた」

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これでほぼ確定だ。江小墨=李小牧である。

現実の李小牧は日本で伝説的な人物で、白も黒も黄色も三道に通じながら身を守り抜いている。もっとも、このゲームは単に李小牧をモデルにしているのではなく、江小墨は70年代に密入国して日本に来た男、という設定だ。実は江小墨というキャラクターを作ったのは物語を進めるためではなく、「早期の東渡」中国人の生存状況を表現するためだ。中国人は日本で実際かなりうまくやっていて、日本のヤクザを検索すれば分かる通り、中国系の組織は日本で絶対的な発言権を持っている。これもまた、中日関係のグレーな世界をゲームを通して表現する方法の一つだろう。

主人公の父と文化大革命

ゲームの中で主人公はとても「青春」しているように見えるが、実際には1988年に大学受験をした大学生で、当時の中国は改革開放が始まってまだ間もなく、しかもある特別な時期を間近に控えていた。中国の若者は大きな活気に満ちていたが、家庭では大きな苦しみを抱えていた。

その苦しみは親の世代から来ている。つまり「知識青年の下放による再教育」、そして十年の浩劫だ。

ゲームの主人公の父は教授として農村に下放され、夢を失った。しかし主人公は父の若き日の教えを覚えていて、夢を失わず、大学を目指す。

もちろん、ゲームの最後で主人公は大学への執着を捨て、それどころか人生でより大切なものを見つけ、新しい目標に向かって進むことになる。

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ゲームの中では、中国大陸で敏感な「文革」や「8964」の事件についても暗に触れられている。このゲームの開発背景と対象層を考えれば、これが最大限の尺度と言っていい。


では本題に戻ろう。『泡沫冬景』をどう評価するか。

実は『泡沫冬景』というタイトルは「泡沫東京」という意味で、バブル経済下の東京で起きた物語を描いている。日中合作ではあるが、制作陣の中核は日本のねこねこそふとから来たメンバーが大半だ。脚本が片岡ともだからというのもある。片岡とも本人が経済を学んだ人なので、日本のバブルを書かせても問題ない。作中の出来も、彼がこれまで関わった様々なゲームより良い。片岡ともの過去作で一番叩かれるのは画が細かくないことだったが、中国企業の出資後、そんな欠点は消えた。なにせ中国は金持ちだ。おかげでゲーム全体の流れは滑らかで、美しいBGM、どことなく格調高いカット割り、そして久々に本気を出した田口宏子おばさんの演技もあり、このゲームの品質はしっかり保証されている。

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正直に言えば、このゲームは私が遊んだ「国产ギャルゲー」の中で間違いなく最高品質で、大部分の日本産ギャルゲーよりも質が高い。金儲け目的のギャルゲーばかりの中、久しぶりに本気で作られた作品に出会えたことが嬉しいし、片岡ともがようやく「エロゲー」の束縛から解き放たれ、はっきりした告白や恋愛といったお決まりの要素のない、印象的な物語を書いたことも嬉しい。

このゲームをギャルゲーと呼んでいいのか、それとも「国产」と呼んでいいのかは分からないけれど。

それでも「愛が深ければこそ責めるのも厳しい」の精神で、このゲームの足りないところを挙げておきたい:


「中国人」の目に映る「日本人」への理解が足りない

ゲームの主軸の一つは、言葉の通じない二人のコミュニケーションだ。一人は中国人、一人は日本人。日本人のヒロインはもともと内向的でコミュニケーションが苦手なのは分かる。だが中国人の方が日本語が分からないからといって、他人との意思疎通の仕方も分からないというのは、歴史の常識に反する。

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知っての通り、1987年頃といえば中日はまもなく蜜月期を迎える。中国の若者が日本に抱く印象は、たいてい抗日映画に出てくる「小鬼子」程度のものだった。たとえ言葉が通じなくても、せめて手振り身振りは加えるだろうし、ゲーム中の主人公としおりさんのように「中日共通」の漢字で交流するくらいはするはずだ。なのにゲーム中では主人公とヒロインが「それぞれ勝手にしゃべる」状況がよくある。これは外国人同士が意思疎通する時の普通の反応に合わない。

私が書くなら、主人公は抗日映画に出てくるような「お前、ミシミシ、分かる?」みたいなセリフを、ご飯のジェスチャーを交えて言うだろう。そうすればもっと理解しやすい。ヒロインももっと身振りを使えばいい。

そしてもっと大事なのは、そうした表現の方がよりリアルで、「中日二つの文化の衝突」らしい感触に合うということだ。

とはいえ、この部分は日本人が書いたもので中国人ではないだろうから、知らなくても無理はない。しかし中国企業が制作に参加している以上、合理的な提案くらいできなかったのだろうか。

「最初の日本の中国移民」への理解が足りない

ゲームは李小牧に触れ、日本の中華マフィアにも触れている。これらは実際の歴史的事実で、実在した人物や要素でもある。

なのにゲームは、とても場違いなことに、二人の北京訛りの強い声優を起用して吹き替えをさせている。私の記憶が正しければ、主人公の出身は広東で、モデルが「李小牧」である「江小墨」も湖南人だ。どちらも南方人である。実際、日本に密入国する者が一番多かったのは福建からで、世界中にある「福建幇」もそうして形成された。

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しかもゲームの主人公は1980年代の人間なのに、言葉遣いも態度も今の00後のように見える。全然前世紀の人じゃない。脚本には前世紀のドラマをもっと見て認識を深めてほしい。まあ、脚本を担当した部分がやはり日本人なら、これは言わないけど。

こうした点にゲームが触れたことは嬉しいが、よりリアルな表現を見つけようと突き詰めてはいない。もちろん、このゲームが「標準語」らしさのためにわざとやったのなら、何も言わない。


ゲームのシステムが本当にダメ

注意してほしい。私はゲームの画面や音楽、リソース消費(Unity で開発されているが)について言っているのではない。ゲームのシステム、つまり操作インターフェースのことだ。

ゲームのUIは普通のギャルゲーの方式を真似ていて、あるべきものは揃っているが、核心を真似できていない。

私はゲームの制作者がちゃんとギャルゲーを何本も遊んだのか疑っている。

まず、このゲームは「マウス左クリック」でしか物語を進められず、Enterキーには対応していない。スペースキーは言うまでもない。こういうのは理解できない。ギャルゲーを遊ぶ人の多くは、私のようにEnterキーを選ぶはずだ。マウスをひたすら押すより、なにせマイクロスイッチは高いし、マウスのカチカチ音も耳に障る。

しかもこのゲームはメニューバーを「固定」できるが、固定したメニューバーがゲームのテキストを隠してしまう。設計時から固定させる気なんてなかったんじゃないか。

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ゲームの会話では「文字が飲まれる」現象がよくある。つまり音声では言っているのに、テキストとして表示されていない。バックログでは確認できる。意図的なのかバグなのか分からないが、「文字ゲーム」としてはまずいだろう。


おわりに:

全体として、このゲームは期待を大きく上回った。物語には「中国側」の粗が多くあるが、脚本欄に日本人の名前があることを思えば許せる。ただ、今後は中国企業がこの方面でもっと「顧問」として参加し、ゲームをよりリアルで完成度の高いものにし、共感を呼びやすくしてほしい。

このゲームには中国語版しかなく、日本語版も繁体字版もない。これは理解できる。主人公の身分背景と当時の中日関係、その中の妙味は中国大陸の人にしか分からないだろう。他の地域のプレイヤーには理解できない。

なぜゲームが現在の日本ではなく「バブル経済」期の日本を選んだのか、そこには脚本自身の考えがあるはずだ。当時の日本と今の中国は、妙に似ているからだ。

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日本の経済バブルは崩壊し、失われた10年を招いた。中国の不動産バブルが崩壊するかは未知数だ。中国の不動産バブルは当時の日本に比べれば比べ物にならない、しかもインフレでソフトランディングできる、という比較をする人もいる。本当にそうなのかは私にも分からない。ただ、当時日本のバブルを崩したのは日本政府であり、彼らは失われた10年を選んで狂乱を洗い流し、実体経済を発展させた。つまり、政府がバブルを崩そうとしなければ、バブルは存在し続けるということだ。

普通の人間として、「あるようでない」バブル経済の中で生きる中で、できることとは何か。

ゲームはすでに答えを教えてくれている。地道に金を稼ぎ、真面目に生きること。すぐ金を稼ぐのは気持ちいいが、結局は代償を払うことになる。

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