『ガールズ・ブック・メイカー』レビュー

母書製造者

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『ガールズ・ブック・メイカー』(Girls Book Maker)は、日本のとある大企業の新ブランド・ユメミルが手がけたエロゲーだ。とはいえ普通の「エロゲー」と比べるとだいぶ変わっていて、奇妙な「設定」と「世界観」があり、ちょっとした「文化的な奥行き」まで感じさせる。

物語の設定はこうだ。主人公は読書好きの本の虫で、ひょんなことから「異世界の大図書館」に召喚され、図書館の「司書」として、館長とともに本の中に潜む「本の虫」を退治することになる。この設定のおかげで、主人公はさまざまな世界観の「物語」を気軽に行き来でき、「物語の中のヒロインたち」と交流し、奇妙な冒険を重ねていく。

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作中で引用される書物はほぼすべて名著で、『マッチ売りの小ギャル』『アリス夢遊精神病院』『日中合作の西遊記』『怪盗弱男紳士ルパン』『竹取登月物語』『ホモファウスト』などが並ぶ。どれも耳馴染みのある話だし、エロゲーを遊ぶ層なら大抵知っている。「アリス」「かぐや姫」「ファウスト」「ルパン」なんて、日本の ACG 作品で使い古されているのは言うまでもない。

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これらの物語を描くにあたって、ゲームは章立てを採用している。一冊の本が一章で、主人公はその「本の虫に蝕まれた世界」に入り、手にした武器で「虫」を駆除して物語を正常化する。設定によれば、本の中で主人公を迎えるのは書籍の主人公だけではなく原作者もいる。ただしエロゲーなので、このゲームでは全員が女性に性転換されている。

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だからおかしな点も多い。特に『日中合作の西遊記』のパートでは、孫悟空が女になっただけならまだしも、呉承恩まで巨乳の姉ちゃんになっている。章金莱が見たら怒って勃起するんじゃないだろうか。ゲーテも石原舞ボイスの中二病少女になり、ファウストは逆に男っぽいのに結局は女。もちろん今の寛容な世の中では男女なんて重要じゃない。大事なのは別の点で、これらのキャラは全部犯れるということだ。ネットには孫悟空を犯したい人がたくさんいるのは知っている。このゲームはそういう需要に応えてくれるかもしれない。

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古典を引用してはいるが、日本の著作に対する扱いは海外のものより明らかに緩い。『竹取物語』は完全に魔改造され、かぐや姫はアイドル、しかも Vtuber アイドルになり、ロケットで月に上陸までできてしまう。誇張もここまでくると笑うしかない。それに比べると他の著作は本筋をそれなりに尊重していて、ぐちゃぐちゃに改変されてはいるものの、少なくとも筋は残っているので「元の味」は感じられる。ただ、これは裏を返せば日本の伝承なんてそもそも中身がなく、ほんの一、二行のショボい話で一冊の本が書けてしまうということの裏返しでもあるんだろうか?

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ゲームの本筋は「主人公が司書として物語に入り本の虫を追い払う」というものに見えるが、実は伏線が張られている。主人公が初めて「大図書館」に入ったとき、記憶のない少女に出会い、「テール」と名付けて、さまざまな小説や書籍の世界を一緒に巡らせる。そこで多くの人と出会い、「本の虫を召喚するボス」である女グリモワールとも出会う。実はゲームの最終的な結末は、この「グリモワール」に関わってくる。なぜグリモワールは頑なに「本の虫」を召喚し、さまざまな書籍の世界に侵攻して内容を盗み出すのか。彼女の目的は何なのか。そして最も謎なのは、このグリモワールが大図書館の館長を知っているらしいことだ。

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謎は最後に解ける。この「大図書館」自体が「異世界」のような存在で、現実世界の一部ではない。大図書館の「院長」も人間ではなく、管理を担う役割にすぎない。しかし図書館での管理を続けるうちに、「館長」にも自分なりの考えが芽生え始める。数多の素晴らしい物語を眺めるうち、館長自身も自分の物語を書いてみたくなったのだ。

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彼女は新しい書物、新しい世界、新しいヒロインを創り出し、イーリスと名付けた。だが館長はやはり人間ではない。どれだけ努力しても、創り出した世界は最後までまとまりを欠き、本当の物語にならず、断片だけが残った。しかも館長は自分が創った「物語」(Tale)が何なのかも定められず、ついには「Tale」を具体化して一人のキャラクターにしてしまった。それが後に主人公が出会う少女、テールである。

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結局、館長は自分で物語を創ることを諦め、イーリスも、その世界も捨ててしまう。捨てられたイーリスは悔しさを抱え、本に現れた「虫」に蝕まれてグリモワールとなった。グリモワールの目的はただ一つ、自分の価値を、この本が存在する価値を証明し、自分の「母」である創造主「館長」に正面から認めてもらい、できれば褒めてもらうことだった。

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自分の世界に物語も筋道もないのなら、よその物語から盗んでくればいい。そう考えた彼女は大量の「本の虫」を送り込み、他の書籍を蝕ませ、他人の物語を奪って自分のものにしようとした。もちろん最終的にこの陰謀は主人公たちに打ち砕かれる。そして問題を解決したのは「テール」だった。彼女は主人公とともに多くの物語を巡り、さまざまな冒険を経験した。その協力のもと、彼女は道中見聞きしたことを物語として記録し、グリモワールの世界に捧げる。こうしてグリモワールの世界にも彩りが生まれ、自分の物語が生まれ、すべてはあるべきハッピーエンドを迎える。主人公も図書館を離れ、元の現実の生活に戻り、自分自身の輝かしい人生を歩んでいく。

しかもゲームは最後まで標準的な大団円で、大悪役の「虫」も含めて全員が洗白される。そういえば、この「虫」の「子」は日本語と中国語で意味が違うんだろう。中国語では軽声で読むが、日本語では「こ」と読むから、より可愛く感じる。日本人が「小日本鬼子」と呼ばれて「おにこ」と聞こえて可愛いと思うのと同じだ。


『ガールズ・ブック・メイカー』(Girls Book Maker)は、シナリオに関して言えば正直たいした出来ではなく、伸びしろはかなり大きい。各章は「主人公が本篇の主人公の心の闇を攻略する」話にできたはずだ。初期の『神のみぞ知るセカイ』のような筋書きで、赤ずきんには心病みがあり、孫悟空には自信がなく、怪盗ルパンは目指す目標を見つけられない……といった具合に。だがこのゲームはそうした内容を扱うのがあまりに雑で、厳密さを欠き、悪ふざけに寄りすぎている。見終わったあとに残るのは惜しさだけだ。また、自分の「エロゲー」としての本質を強調するためか、主人公以外の全キャラを女性に変えてしまったのはいただけない。多くのキャラは男のままのほうがよかった。攻略対象は一編に一人で十分だ。巨乳の呉承恩に女性版ゲーテを見せられると、どうしても違和感が半端ない。しかもこのゲームのタイトル、どう訳したらいいのかすら分からない。そこら中に巨乳の姉ちゃんがいるのを踏まえて、私は冗談で『母書製造者』と訳してみた。

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余計な設定も多い。「以前の本のヒロインたちがグループチャットできる」とか。ロードムービー風の話なのにわざわざそんなことをするから、最後はぐちゃぐちゃだ。しかもゲームは面子の豪華さを見せたいのか、大量の絵師を集めてキャラデザをさせていて、見た目は派手。そこにクリックするたびに点滅するマウスカーソルが加わって、マジで目が潰れるんじゃないかと思うほどで、めちゃくちゃ不快だった。

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ゲーム自体の品質は合格点くらいだと思うが、このゲームの意義は大きい。近年のエロゲーが好んでネタにする著作をほぼ網羅しているからだ。「鏡の国のアリス」「かぐや姫」「怪盗と愚かな警部」、そして使い古されてもはや定番の「ファウスト」。こうした作品が残した痕跡は、毎年多くの「シナリオ大作」で見かける。最近だと『タマユラミライ』の「悪魔との契約」なんて、完全にファウストのネタだ。このゲームを遊んで、それがきっかけで原作に興味が湧いたなら、このゲームの価値はぐっと大きくなるかもしれない。「魔改された物語」はプレイヤーを戸惑わせるどころか、かえって好奇心を刺激し、進んで物事の本来の姿を知りたくなるものだ。

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一万歩譲って、この『ガールズ・ブック・メイカー』が『ファウスト』にほんの少しでも興味を持たせられたのなら、それだけでこのゲームの役割は十分に深い。

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