『ねこツク、さくら。』レビュー
猫神憑き、桜咲く
過去の記事をときどき後悔する。
後悔の主な理由はほかでもない、若い頃にさんざんディスって、当時クソゲーに見えたものを大量に叩いたことだ。真っ先に思い浮かぶのは Lump of Sugar、糖塊社のゲーム。
『運命線上でスイカを切る』はシナリオが知的障害レベルだと書いたし、『恋想関係』はシステムがクソだと書いた。覚えてる。
なのに今回の Lump of Sugar の新作『ねこツク、さくら。』を前にして……
涙が止まらない。俺は深く悟った。間違っていた、と。

まさか俺が、Lump of Sugar が昔作ったあの「クソゲー」どもをこんなに懐かしむとは思わなかった。あいつらはせいぜい物足りない程度で、今の内容よりよっぽどマシだった。今のゲームからは濃厚な……平坦さしか感じない。
『ねこツク、さくら。』の設定はめちゃくちゃシンプルで、しかも意味不明。とある日本の街に学校があって、そこには古い猫神が二匹いる。アキとツキ、黒猫と白猫。二匹の猫神が学校の安寧を、いや街全体の安康と安定を守っていて、おかげで学校の周りには商店街もできて住民は平和に暮らしている。
もちろんこの二匹が本題じゃない。ゲームは最初からこう告げる。ヒロインの穂高文乃は登校初日に、学校の猫神の一匹アキに憑依されてしまった、と。黒かった髪は白くなり、猫のような耳と尻尾まで生えてきた。文乃はめちゃくちゃ困るが、憑依したアキは逆に最高だと感じていて、離れる気もない。そこに another 猫神ツキも現れ、まず姉に代わって謝罪し、それから猫神の力は限られていてこの学園内でしか活動できないから……憑依されたアキはしばらく学校を出られない、と告げる。

俺(主人公)はこの黒タイツがやたらエロいヒロイン文乃の問題を解決すべく、幼馴染の久慈恋花に相談する。彼女の祖母(だったか婆ちゃん)がこの学校の校長なので、口利きを頼んで学園内に一部屋用意してもらい、アキに憑依されて出られなくなった文乃をしばらく住まわせることにする。もう一匹の猫神ツキも転がり込み、オカルト大好きな後輩・上路弥生も「神憑り」を研究するとか言ってやってくる。こうして学園内ハーレム環境が完成する。
そこから共通ルートが始まり、そして妙な形で終わる。校長が二人の猫神に「この学校と街の人々は二人のおかげで十分幸せになった。もう自分たちでやっていけるから、猫神が毎日学校に常駐する必要はない」と告げ、猫神たちは学校の外に出る試みを始め、成功する。学校という範囲に縛られなくなり、憑依されていた文乃も自由になる。共通ルートはそこで終わり、「ワンクリック妃選び」モードへ。キャラ一覧を出して、選んだ子のルートへ一直線だ。

キャラは四人いるが、個別ルートはおざなりで、しかも露骨にテンプレ。だいたい最初に特殊イベントで男女の好感度が上がり、告白し、イチャイチャし、最後に突然「危機イベント」が挟まり、それが解決して ED。
上路弥生
オカルト好きの後輩。ありとあらゆる怪異に詳しく、自分から男主を家に誘っては不健全なサイトを一緒に見て、二人の間にいい雰囲気が生まれる。そして上路弥生は、男主みたいに霊力が欲しい、学園の猫神や幽霊が見えるようになりたいと言い出す。ちなみにゲーム内で上路弥生以外はみんな多少の霊力を持っている。神秘の力に一番興味がある彼女だけ霊力ゼロという。

上路弥生は一つの仮説を立てる。霊力はセックスで伝わるらしい、と。そして男主のところに来て、セックスしてくれと要求する。
男主はセックスにはまず恋愛が必要だ、恋人同士にならなきゃ、と言う……この台詞はクソだが、上路弥生はそれを信じ、恋人になることを承諾し、二人はそういう仲になる。

それから上路弥生は再度男主を家に誘った際に薬を盛ってレイプし、その後はますます濃密にヤりまくる。しかししばらく経っても上路弥生の霊力値はゼロのまま。最後に自宅で謎の「ピラミッドパワー」を発見し、なぜかそのせいで霊力が手に入る(つまり男主とのセックスは何の役にも立っていない。封建迷信は人を殺す!)。霊力を持ったことで学園の猫神は見えるようになるが、上路弥生の身体は脆すぎて、どんな小鬼でも勝手に憑依してくる。おかげで彼女は幽霊のバス扱いだ。猫神の意見では、上路弥生の安全のため霊力を消す必要がある。しかし上路弥生は同意しない。せっかく手に入れた霊力、捨てられるか!

最終的に男主は、彼女・上路弥生を守るため、除霊グッズを山ほど抱えて、満月の夜に街中の大鬼小鬼をまとめて A ることを決意する。天下無鬼を実現すれば、上路弥生は浮遊霊に憑依されなくなる。

もちろんこのクソ判断は上路弥生に止められ、彼女も理解を示し、自分の霊力を放棄する。安全のためだ。最終的に平凡に戻り、男主と幸せな家庭を築くことを選ぶ。そして最後には神秘の力を研究する「教授」になる。おそらく民俗学か何かだろう。
ツキ
ツキは猫神の一匹。しかし姉と違い、実体があり常人にも見える。男主の攻略はめちゃくちゃクソで、無理やりフラグを立てただけで落ちる。そこから延々とセックスが続き、そして超テンプレな流れ。「神」と「凡人」がセックスしすぎると問題が起きる、神の存在の安定性とか、そういうやつ。最後は当然、愛の力がすべてを突破し、ツキは厄災を乗り越え、男主と幸せに暮らす。中で何があったかは正直忘れた。頭を絞っても、このルートが何を言っていたか思い出せない……途中で寝落ちした回数が多すぎたせいだろう。

久慈恋花
久慈恋花は発情女で、最初から男主が好き、つまり男主の舔狗。ある日突然、男主がおばあさんを階段で支えたせいで右手を骨折。久慈恋花はチャンスとばかりに叫ぶ!
「お兄さん、右手の使用を禁止します!」
そしてそのまま男主を自分の家に引き取る。ただの骨折なのに、まるで末期ガン扱い。ここまで来ると笑うしかない。同居生活中に久慈恋花と男主は恋に落ちるが、一番不思議なのは、あれだけ同じベッドで寝ておいて何もしなかったことだ! 本当に男主の骨折は右手だけじゃなかったんじゃないかと疑う。

最後は男主が告白に成功。壁ドンまでする。障子に思い切り壁ドンして家を押し潰さなかったのが奇跡だ。

恋人になってから、久慈恋花は自分の問題と向き合う。祖母(婆ちゃん)である校長が体調を崩してしばらく不在になり、学校運営を引き継いだものの、めちゃくちゃで、学園にいる様々な幽霊にも対処できない……

(おい、今の校長は除霊師の兼業まで必要なのか!?)
もちろん最後は二人の猫神の助けで、久慈恋花は一人前になり、学校運営も引き継ぐ。めでたしめでたし。ある噂を信じざるを得ない。ほとんどの学校は乱葬崗の上に建っている、というあれだ。

穂高文乃
男主と穂高文乃の恋愛はおそらく最も正統派。このルートで男主は「ナンパ学の宗師」と化し、弁舌さわやか、SMEE のゲームの男主より 6 ってやつで、最終的に穂高文乃の心を射止める。
しかし穂高文乃が男主に本気で惹かれようとしたとき、問題に気づく。自分はアキという猫神に憑依されている。そしてアキは男主のことが無限に好きだ。

だから穂高文乃は沈黙する。「私は自分で彼が好きなの? それともアキが私に憑依していて、アキが彼を好きだから私も好きになったの?」
最終的にアキのめちゃくちゃな感傷の後、穂高文乃は男主に告白する。しかも「客観独立第三者」を演出するため、告白のときアキは彼女の身体から抜け出せる。自分の気持ちを表明するために。

結局男主は一石二鳥。一本のデカいチンポで女一人と牝猫神一匹を手に入れる。
イチャイチャが続いたある日、アキは自分が穂高文乃に憑依できる力がどんどん弱まっていることに気づく。セックスや恋愛の影響だろう。アキはだんだん穂高文乃に憑依できなくなり、しょっちゅう抜け出すようになる。

考えてみてくれ。物語は何から始まった? 穂高文乃がアキに無理やり憑依された、だろ? 今、抜け出せるようになった。めちゃくちゃいいことじゃないか? 寄生虫がやっと出ていけるんだ。祝うべきことだ!
しかし穂高文乃は根っからのド M でストックホルム症候群末期患者。彼女は逆に、アキに憑依されるのが習慣になって、アキがいないと落ち着かない、アキから離れられないと言う。

最終的にクソみたいな「愛は偉大」舞台劇の中で、アキは永遠に残り、穂高文乃は白毛のまま男主と子供を作る。子供も白毛。これって男主は寝取られた扱いになるのだろうか。
物語はそこで終わる。
評価と感想
このゲームのメインストーリーをどう総括する?
だいたい、一人の少女が学校で猫の神様に無理やり憑依され、抜け出せなくなり、最後にはどうしようもなく、長時間の憑依で逆に気持ちよくなって依存し、二人に感情が芽生える話。
日本の一時期流行った「禁室培欲」シリーズそのものだ。ストックホルム症候群の正しい表現とはこういうもの。

しかしこの、いわゆる重要でないメインストーリーを捨てると、このゲームが何を表現したいのかすら分からない。
たぶん四つの恋愛話を描いたんだろう、しかも大したことないやつ。神棍の弥生ルートが少し面白いだけで、他は本当に全編白湯。見てると眠くなり、見てると眠くなり、最終的に話の印象すら残っていない。

Lump of Sugar がこの数年何を経験したのか知らないが、『タユタマ2』あたりから会社は新しい方向性を見つけたようで、キーメーカー「水月紗鳥」の台頭で糖塊社のゲームはテンプレと鋳型まみれになった。絵師の萌木原ふみたけが獣耳を描くのが得意だから、毎回適当な理由をつけてヒロインに獣耳を生やし、残りは外注の脚本家に適当に書かせて終わり、と。
ゲーム全体が流れ作業の匂いで、ED すらアニメを作るのが面倒くさいのか、ゲームエンジンで直接実装している。このゲームのコストで一番大きいのは絵師と声優だろう。少なくとも脚本は省けるだけ省いたはずだ。

何度も言ってきた。流れ作業の製品が一番嫌いだ、このゲームが嫌いなように。たとえ流れ作業でも、その業界のトップである ゆずソフト には及ばない。
方糖社の次の作品すら予想できる。どうせまた適当な設定をこねてヒロインに獣耳を生やし、あとはデタラメに書けばいい。昔の Lump of Sugar がめちゃくちゃ懐かしい。少なくとも「獣耳」に縛られていなかったし、システム面でもあちこちに新機軸があった。今の Lump of Sugar に残っているのはテンプレートだけだ。

ねこツク、さくら。とてもいい名前だ。前半は猫憑き、後半は桜咲く。
猫憑きは見た。桜咲くは? ゲームではほとんど触れられていない。タイトルに入れて、CG にまで花を描いておいて、なぜ一言も語らないのか? たぶん一言語るだけでもシナリオに筆を加える必要があり、脚本コストが増えるから、省けるものは省こう、やめとこう、ということだろう。
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