『あの日の旅人、ふれあう未来』レビュー
東京ラジオ恋物語
Pulltopはどこかの地方自治体から金でももらったのか、やたら「観光PRシリーズ」とでも言うべきゲームを出している。ストーリーは軽くて甘く、そして何より全年齢向けなのがポイントだ。
昨年『空と海が、ふれあう彼方』があったじゃないか。それが今年、まさかの続編『あの日の旅人、ふれあう未来』である。予想通り、同じ世界観、同じ制作陣、そして同じキャラまで登場する。このゲーム、発売前は完全に空気だった。覚えているのは、ある日Pulltopが出した声明だ。「新型コロナの影響により『あの日の旅人、ふれあう未来』の発売を延期します」という内容だった。
その声明を見た全員がポカーンとした。驚いたのは発売延期そのものではなく、別の点である。
Pulltopはいつからこのゲームを出すことになってたんだ?
存在すら知らなかったんですけど!
しかも延期を発表した時点で、このゲームの公式サイトすらまともに出来ていなかった。その後、このゲームのシナリオライターがATRIの宣伝ついでにこのゲームの宣伝もしてくれたからまだマシだったが、そうでもなければ本当に誰も気にしなかっただろう。
ともあれ、無事に発売はされた。前作の「小笠原諸島でダイビング」という話はなかなか良かった。では今回の新作はどうなのか。

新作『あの日の旅人、ふれあう未来』のメインはダイビングではなく、「小笠原諸島・父島のラジオ局」である。主人公の高校時代の恋人・珠季は当時映画女優をしていたが、仕事が上手くいくにつれて主人公との関係は疎遠になり、連絡も途絶えた。主人公は二人は別れたものだと思っていた。しかし何年も経って、元女優の珠季が突然芸能界を引退し、小笠原諸島まで来てラジオ局に引きこもり、消息を絶った。主人公は元恋人を取り戻すため船に乗って島へ向かう。話はそこから始まる。

序盤は良いのだが、すぐに展開が冗長になる。島に着いた主人公は、島内FMラジオのパーソナリティを募集していた少女・絵理に出会い、わけもわからず小笠原のラジオ局で客演パーソナリティをやらされる。そしてそこで、ゲームに没頭して世間と隔離された元カノ・珠季を発見する。
後で主人公が問い詰めてわかったのは、珠季はある明かしたくない理由で、映画の役が決まった直後に突然引退し、この小笠原のラジオ局に逃げ込んだということ。このラジオ局のスポンサーは珠季の所属事務所だったので、珠季がここで食い扶持をただで得ていても誰も文句を言わなかった。だがそのスポンサーもすぐに降りて、ラジオ局はまもなく閉局。珠季がその後どうなるのかも分からない。
一方、島内FMのパーソナリティを募集していた絵理は、単純に声優になりたいしラジオを聴くのが好きだから、愛で動いているだけ。ラジオ局も給料なんか出せないので、好きにやらせている。

実は主人公がより衝撃を受けたのは、元カノ・珠季の現在の姿だった。かつてはブラウン管の上の青春美少女で、見ただけで勃起して軽く三発抜けるような存在だったのが、今や干物女。髪はボサボサ、体は臭い。主人公の中の女神像は崩壊し、もう疲れて愛せない。
だから主人公は島を出ることにした。しかし小笠原諸島から東京行きの船は週に一度しかなく、ここでは野宿も許されない。行くところがない主人公に、絵理は「ラジオ局に泊まればいい、ついでに最後の放送をやって、船が来たら消えればいい」と提案する。
仕方なく主人公はラジオをやることになるが、ここからこの作品への熱が上がってくる。主人公はこのラジオ局の放送がずっと誰にも聴かれていないこと、聴取率がおそらく0%であることを知る。絵理はこのラジオ局を存続させたい。局長は聴取率が島内30%に達すれば投資が来るかもしれないと言う。主人公は聴取率を上げるために奮闘を始める。番組の質を上げ、インタラクションを強化し、そして何より重要なネット同時配信を提供する。
おいおい、今になって初めて気づいたんだが、このラジオネット配信してなかったのか?
2020年だぞ! ラジオ局なんてネット配信が当たり前の時代に、まだFMかよ。この小笠原諸島の住民だってラジオなんてほとんど買ってない好吗!
最終的にネット配信の機材は整い、放送内容も盛り上がってくる。同時に主人公は元カノ・珠季がラジオに興味を持ち始めたことに気づき、彼女も誘うが、珠季の内心はまだ拒んでいる。そこで主人公は攻略法を開始し、珠季が女優を辞めたのはプレッシャーが大きすぎて、肝心なところでどもってしまい、諦めたからだと知る。

そして主人公は彼女を導いて心のわだかまりを解かせる。しかし島を離れる日はやってくる。聴取率は上がったものの30%には届いていない。主人公はラジオ局を絵理に託し、島を去る。珠季もようやく吹っ切れ、主人公の後を継いでラジオのパーソナリティを続けることを決意する。
こうして東京にいる主人公は、ラジオから小笠原にいる元カノ・珠季の声を再び聴くことになる。そして珠季はラジオで自分の話をし、主人公への昔の想いを語り、二人は実は別れていなかったとも言う。ただ離れただけで、もう一緒にいないとはっきり言ったわけではないのだ。

そして主人公もリスナーからの手紙という形で、ラジオを通じて珠季に告白する。二人はこうして電波の中で再び縁を結ぶ。
数ヶ月後、主人公は小笠原に戻り、彼女の珠季と再会。新たなラジオパーソナリティ番組を始め、聴取率も上昇し30%に近づく。少なくともラジオ局は存続できるだろう。数年後、主人公と珠季は東京に戻り新しい生活を始める。珠季は女優に復帰し、主人公も陸上競技を続ける。全員に明るい未来が訪れた。
冷静に言えば、今回のPulltop『あの日の旅人、ふれあう未来』は昨年の『空と海が、ふれあう彼方』の続編としては、ゲームの「素材」が劣化している。
まずBGMが単調すぎるし、演出効果を構築するためのエフェクトも使われていない。ラジオ局だからハイテク要素はないのは分かる。昨年のダイビングのように魚のアニメーションを動かすこともできない。だがPulltopの長所であるはずのこのゲーム、SDCGすらほとんどないし、多くのCGは使い回しの疑いがあり、半分以上の背景は前作に登場したもので、BGMも前作OPの変奏曲だ。新作はかなりの部分で手抜きの疑いが濃厚と言わざるを得ない。

話自体はまあまあだが、どうも不自然に引き伸ばされている。主人公と元カノの間の感情はもっと早く展開できるはずなのに、ゲームはほぼ数時間も日常を垂れ流す。しかもその日常に大した見どころもない。いかにもPulltopらしい内容で、下ネタは言えず、地獄ネタも使えず、とりあえず軽口を叩いて萌えを売って時間を潰しているだけのようだ。

ゲームには新しいヒロインが二人登場する。一人は主人公の元カノ、もう一人は小笠原島の地元っ子ロリ。当然ルートも二つあるが、どう見ても「元カノと復縁する」のがベストルートだ。しかも今回の新ヒロイン二人のCVも特に知名度がない。元カノのCVはほとんど何もやっていない。比較的有名なのはSummer Pockets REFLECTION BLUEの神山識くらいだが、Keyアンチの私はあのゲームをやらない。やらない。たとえ女装してクソを食ってもやらない……
ゲームの大部分は前作の主人公たちとの絡みに使われている。前作の二人のヒロインも登場し、かなりの出番がある。素材は劣化しているが、全体の雰囲気はなかなか良い。落ち着いた恋愛ゲームをしたいなら、これも選択肢に入るだろう。

最近、ゲームをやっては文句を言っている気がする。たまに落ち着いて考えると、文句を言っているゲームの多くは別に許しがたいほどクソでもなく、「もっと上手く作れたはずなのにやっていない」という印象で、残念でならない。今回の『あの日の旅人、ふれあう未来』も同じだ。Pulltopはこういう「テーマ性のある恋愛」を作るのは得意なはずで、実際に優れた「田舎恋愛ストーリー」も作っている。なのにこのゲームはどうも雑に感じる。雑さが分かるのは主人公のCVにも現れている。ゲームは全年齢向けで、内容の大半は主人公がアナウンサーとしてどうやるかを描いているのに、主人公にCVをつけるくらいで死ぬのか?

そもそもこのゲームは小笠原諸島の観光を宣伝する目的だったはずだ。だが残念なことに、新型コロナの流行以降、小笠原諸島は今も観光客の上陸を拒否している。だからこのゲームを発売してもクソの役にも立たないし、地元の旅行業を引っ張ることもないだろう。しかもゲーム全体からは「もともと企画は二作だった」という印象を受ける。今年発売の二作目は「出資者の任務を果たすため」に作られたようにしか見えない。おそらくPulltopは下半期にもう一つ18禁のゲームを制作中だろう。そちらがPulltopの本命のはずだ。まあ、そのゲームも質は大したことないだろうけど(予感)。そしてこのゲームは、すぐにSteamで見られるようになるんじゃないかな?

最後にこのゲームで気に入らない点がもう一つ。時系列が前作『空と海が、ふれあう彼方』の後なのだが、前作ではずっと主人公の本命はちさ、あのイルカ女だと思っていたのに、このゲームでは主人公が最終的に金髪のエミリを選んだと。ふざけるな!
あのバカでアホな金髪のどこがいいんだ? ちさのどこが悪い?
私はずっとちさが好きだった。CVが高田憂希だからというわけでは全然ない。本当に関係ない。
とはいえ、このゲームをやってからゲーム外の印象が一つ残った。それは:
小笠原諸島って東京都の管轄なのか?

小笠原諸島の位置は東京から十万八千里も離れているぞ!
この感覚は誰かに「普陀山と長島は北京市の管轄だ」と言われるのと同じくらいデタラメだ。
そう言うなら、小笠原諸島も東京都の不可分の一部ということになる。ならこのゲームは『東京ラジオ恋物語』でいいんじゃないか。
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