『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』レビュー

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Navelという会社はかつて「Navel Honeybell」という別ブランドを立ち上げていた。設定だけはやたら壮大で、ちょっとロマンチックな雰囲気のゲームを専門に出すブランドだ。しかも一番アホらしいのは、そのゲームを全部俺が遊んでいたことだ。『飛翔する羊と真夏の花』だの、『Magical Dear』だの。で、これらのゲームには共通点がある。

  • 設定がやたら面白くて、設定を見ただけで遊びたくなる
  • 絵柄はそこそこ。萌え系路線で、とにかく人を惹きつける
  • 序盤のシナリオが妙にスケール大きくて、この先の展開も絶対面白いと感じさせる
  • 音楽がやたら良い。しかもどれも西又葵が関わっている
  • 中盤から物語が崩壊し、最後は打ち切り

そう、この二本とも打ち切りなのだ。最初はあんなに設定が魅力的だったのに、最後には見事なまでの打ち切りエンドをくらわされる。意味不明すぎて、人生を疑いたくなるレベルで。

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ところが面白いことに、Navel Honeybellというブランドはすぐに消えた。潰れたのだ。だがNavel本体は潰れず、ロボット設定のゲームを一本売ったあと、Citrusという名前のブランドがひょっこり現れた。正直このブランドには最初気づかなかったが、そのデビュー作を見れば親会社がどこかは誰だって分かる。

で、今回の『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』はこのCitrusの第二作目にあたる。価格から見ると短そうなのに、遊んでみるとやたら長く感じる。そしてクリアしたあとに残ったのは、消えにくい後悔の念だった。

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その「後悔」が何なのか、順を追って話していこう。

本作は「人間」と「魂人(こんじん)」が共存する世界観を構築している。無念を抱えて死んだ人間は、現世に未練を残している限り消えず、この世をさまよって「魂人」となる。魂人は本物の人間と見分けがつかないほど同じように振る舞え、人間の生活集団に溶け込むことすらある。魂人は固有の超能力を持っていて、騒動を引き起こすことさえある。そして生前の願いが成就すれば、成仏して転生する。主人公はそんな「渡し守」兼「祓魔師(エクソシスト)」のような役割で、さまよう魂人を見つけては臨終の願いを叶え、転生させてやるのだ。

主人公・風見蒼空は冒頭から「渡し守」兼「祓魔師」としてとある町にやってくる。彼には魂人を成仏させる以外にもうひとつ任務があった。「姉の魂を見つけ、この手で姉を成仏させること」。幼い頃はバリバリの「姉コントロール」だったが、やがて姉は事故で死去。姉は魂人になったと信じた彼は、祓魔師になることを誓い、姉を捜す旅に出たのだった。

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蒼空がやってきたこの町は「魂人が多い」ことで知られる土地。師匠のコネで町の和風旅館に住み込み、同時に町の女子校の保健室の先生にもなった。

蒼空についてきたのはシロバナという小さな女の子。彼女は魂人で、風を操る力を持つ。何のために来たのか、願いは何なのかは分からない。ただゲームの最初から二人は一緒にいて、しかも肉体関係まで持っている。

シロバナは蒼空と共に女子校に入り、蒼空が先生になると自ら名乗り出て、助手になる。

シロバナの趣味はといえば、蒼空にべったりすることくらい。あとはシャボン玉を吹くこと。その神秘的な小さな女の子は、ゲーム前半最大の伏線でもある。

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だが蒼空が女子校の保健室の先生になってみると、この学校には問題があることが分かる。校長は人間ではなく妖狐の血筋らしく、その娘「鈴」も校内で神出鬼没、常人とは異なる存在として活発に動き回っている。そこへさらに可愛らしい女祓魔師が女子校に捕まり、生徒会にまで入り込んでくる。

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その女祓魔師は「七菜」といい、祓魔師一族の末裔を自称している。「できる女」であることを証明したくて家出してきて、この町に来た。祖先の祓魔器まで持ち歩いている。七菜は校内をうろつき回り、腹黒い女子「ゆか」と出会う。このゆか、先ほどの鈴、そして七菜。女子校で一団がやりたい放題やって、笑い話をたくさん起こす。

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学校を知るにつれ、蒼空はこの学校だけでなく、この町そのものに怪しい問題が山積みであることに気づく。魂人の比率が異常に高いのだ。

実はゲームはこの部分の描写にかなりの尺を割いているのに、主人公の「姉」が一体誰なのか、この学校にいるのかどうかは、ずっと語られないままだ。

だがすぐにゲームは核心へ向かう。蒼空は校長から、隣町で「大量の魂人が強制成仏された」事件を聞く。

魂人の成仏とは本来、魂人の願いを叶えて自ら昇天させること。強制成仏は魂人を直接殺す行為で、あまり人道的とは言えない。蒼空は調査を始める。そんな折、先ほどのゆかが、ある夜、校門前で雷に打たれて死んでいた。強制成仏されていたのだ。

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蒼空はついに、強制成仏を繰り返す張本人を捕まえる。そいつは祓魔師ではなく、雷を操る魂人だった。他の魂人に殺されたことで死んだので、魂人全体に恨みを抱いていた。そこで能力を使って他の魂人を殺し、強制成仏していたのだ。

蒼空の説得で、この「雷を操る魂人」は自分の過ちに気づく。ついでに蒼空は、姉を見たことがあるかと尋ねる。あれだけ魂人を殺していれば、姉に会っている可能性もある。もちろん、この雷のやつは蒼空の姉を思い出す。……実は蒼空の姉の魂人こそ、あのゆかだったのだ。

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蒼空が姉を成仏させる前に、姉は他人に成仏させられてしまった。何という悲劇。

ところがゲームはここで急に息継ぎをする。蒼空の姉がまた戻ってきたという。理由は、姉の現世への未練が強すぎて、強制成仏が失敗したからだという。

そして蒼空と姉のついに訪れた再会が演出され、ついでに姉は昇天する。蒼空が姉を捜す物語はここでひと区切りつく。

そこに残ったもうひとつの謎、それは蒼空とシロバナの関係だ。なぜゲーム開始時からシロバナは蒼空についていたのか、なぜ最初から肉体関係があったのか、なぜシロバナはいつも蒼空にべったりなのか、二人はどうやって出会ったのか。ゲームはそれを説明してこなかった。ここからようやく、その点に進展が見え始める。

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ゲームは一連の回想シーンに入る。数十年前、白花という小さな女の子が郊外の家に一人で暮らしていた。そこへ蒼という子供がやってくる。二人はなりゆきで友達になる。

蒼はよく白花と一緒に遊んでいたが、なぜ一人で住んでいるのかと不思議に思って尋ねる。

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白花はあっけらかんと語る。両親は他界し、親戚の家に引き取られたが、変なものがよく見えるせいで白い目で見られ、誰にも必要とされない子になった。頭にきて、昔両親と住んでいた家に戻り、一人で暮らし始めた。時々親切な人が食事を届けてくれて、学校にも行かず、ここで孤独に育ち、そして死を待つだけ。

蒼は白花に、一人で寂しくないのかと尋ねる。

白花は幽霊と話せるから寂しくない、と答える。蒼は友達はいるのかと尋ね、いないと聞くと、蒼と白花は友達になった。

蒼は白花にプレゼントを贈った。シャボン玉が吹けるネックレスだ。白花はそれがたまらなく好きになった。

二人で過ごす時間が増えるにつれ、蒼と白花の関係は良くなり、友達を超える。白花は蒼に特別な感情を抱くようになる。白花はこれまで誰かに愛されたことがなかったから、愛に対する認識がより広く、すべてを超越していた。

たとえこの「蒼」が女の子であっても。

蒼も白花を愛していたが、性別を超えることはできなかった。それでも蒼は離れようとしなかった。遠くに風車が建つから、一緒に見に行こうと白花に告げる。

白花は承諾した。だが白花の体には実は奇妙な不治の病(霊感と関係がある)があり、余命はちょうど風車を見るまで持つ程度だった。

風車を見る日、蒼は白花を背負ってずいぶん遠くまで歩き、風車が見える丘の上で二人はようやく幸福を感じた。しかし不幸はすぐに訪れる。白花が足を滑らせて斜面に落ち、白花を掴もうとした蒼も共に落ち、二人はタンポポ畑に叩きつけられて死んだ。

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蒼は即死。白花はまだ息があった。二人の血は地面一面のタンポポに染み込む。白花は死の瞬間、自分の未練に気づく。蒼と一緒にいたい。

その瞬間、白花は魂人になった。シャボン玉を吹くのが好きな魂人に。

時は流れて40年。蒼の転生である風見蒼空が生まれる。ただし今世は女性ではなく男性。蒼空は成長するにつれ姉を失い、「祓魔師」となって師匠に弟子入りし、祓魔の旅に出ようとする。

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旅立った途端、この白花に出会う。白花はすでに魂人だが、目の前の蒼空が、かつて自分にシャボン玉のネックレスをくれた蒼だと気づく。

蒼空が白花の名を尋ねると、彼女は自分の名を隠し、「白花」を日本語の別の読み方でシロバナと名乗り、それが彼女の新しい名前になった。

蒼空はシロバナを成仏させようと、願いは何かと尋ねる。シロバナはずる賢く「一発やりたい」と言い、蒼空はそれに応じた。だが彼女は消えるどころか、蒼空に完全に張り付いて離れなくなった。

こうしてゲーム冒頭の物語が始まる。

そして40数年前の記憶は、最終的に蒼空の記憶の奥底で呼び覚まされる。

彼は目の前のシロバナが誰なのかを理解する。自分は前世が女の子で、このシロバナとそんな物語があったのだと。そして今の自分は男の子に転生しているのに、シロバナはずっと魂人のままで転生できない。自分への未練があるからだ。

前世の記憶を取り戻した蒼空を前に、シロバナはついに宿願を果たし、幸福を感じながら光の中へ消えていく。

そしてゲームは一転して数十年後、203X年。蒼空は再び転生したシロバナと出会い、二人はようやく結ばれる。


『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』は内容的に二部構成だ。前半は祓魔師となった主人公が魂となった姉を捜す話、後半は蒼空とシロバナの物語。実際、ゲームの語り口はかなり良い。同時にヒロインの可愛さもきちんと描かれ、各キャラの性格がはっきりしていて、キャラの魅力が伝わりやすい。後半は比較的オーソドックスな回想展開だ。「前世の恋人」という設定は散々見てきたが、「主人公の前世が女の子」という思い切った展開はそう多くない。百合好きにも標準的な異性愛層にもきちんと配慮している。

しかも原画のさんた茉莉の絵柄は本当に幼女っぽい。ヒロインのシロバナは魂人で、設定上すでに40歳を超えているのにロリの体を保っている。まさに合法……

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音楽も高級志向で、安っぽい電子キーボードではなく大量の弦楽器を使っている。多くの場面でドラマや映画のような曲の切り替え手法も取り入れられ、ゲーム全体に非常に高級感を漂わせている……

だがそれが別の問題を生む。

「なぜこのゲームはこんなに高級感があるのに、未完成品なんだ?」

お前も気づいたかもしれない。このゲームはルートが一本しかなく、選択肢もなく、最初から最後まで一直線に進む物語だ。なのにその物語は「打ち切り」の要素をあまりにも多く残している。

ゲーム中盤、蒼空が保健室の先生として女子校で活動する時期には、大量のサブヒロインが続々と登場し、さまざまな小話が展開される。学校の七不思議探検、七菜と鈴の生徒会での掛け合い、蒼空と校長の問答。さらに蒼空の姉と雷を操る魂人の話が進む中で、隣村の別派閥の祓魔師まで登場する。これらの話は正直、後の蒼空とシロバナの恋愛関係とは何の関係もないのに、大量の筆が割かれている。蒼空が泊まる民宿の二人の女性従業員、そして民宿に住むもう一人の保健室の先生、高等魂人のオトヒメとの交流も多く、世界観の内容をより深く知ることになる……

だがこれらの内容はすべて、その後が語られない。

俺なりに簡単にまとめて分析すると、ゲームは「共通ルート」と「シロバナ個別ルート」の間に、本筋とは無関係に見えるが、どう見ても「他の個別ルート」の内容を大量に挿入している。

  • 見習い祓魔師・七菜の成長と家族の過去
  • 校長の娘・鈴と校長が、娘のために魂人を専門に受け入れるこの女子校を作った動機と目的
  • 蒼空が泊まる民宿の女性従業員姉妹が、町に魂人が多いせいで体調を崩す反応
  • 蒼空が泊まる民宿にいる謎の魂人オトヒメの真相

しかも各手がかりはそれぞれ専用ヒロインの個別ルートに展開できる。なのにこのゲームは、ちょうど各手がかりの入口で止めてしまっている。これでは「元々はマルチルートのゲームだったのに、何らかの理由で他のヒロインのルートが切られ、シロバナの個別ルートだけが残った」と疑わざるを得ない。しかも元々は「魂人」にもっと関係する壮大なタイトルがあったのに、シロバナのルートだけが残ったので『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』(保健室の先生とシャボン玉中毒の助手)に改名された、と。

その証拠は内容だけではない。ゲーム後半、シロバナの回想が始まる場面でも表れている。ゲームのカットシーンの最初にはキャラの立ち絵がなかったのに、後半のシロバナ回想パートではシロバナの立ち絵が登場する。ゲームをよく遊ぶ人間なら、これが何を意味するか分かるはずだ。

俺がゲーム内に「本来はマルチルート」だった痕跡を探したのは、なぜこのゲームがこんな形になったのかを知りたかったからだ。本来ならもっと良くなれたはずだ。何しろ七菜がとんでもなく可愛いのだから。

もちろん最終的に答えは見つからなかった。代わりに分かったのは、Citrusの第一作『黄昏のフォルクローレ』も同じように「どう見ても未完成作品」だということだった。

むしろそれが少し気を楽にしてくれた。Citrusという会社はそもそも、「未完成だが物語は悪くない」脚本をゲームにする存在なのかもしれない。中途半端なゲームを放り出すより、削って中短編作品にしたほうが、少なくともプレイヤーは遊べる。

ただ俺としては、『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』には完全版があったほうが良かった。脚本も数々の名作を書いてきた人だし、世界観もかなり作り込まれている。このまま中途半端に出すのは、やはり少し惜しい。

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