『海と雪のシアンブルー』レビュー
各方面見てめちゃくちゃ正直なギャルゲーの話
近年、ギャルゲーの宣伝が「不誠実」になっていく問題がどんどん深刻化してる。
要はこういうことだ。あるゲームが「純愛」だと名乗っていたら、警戒したほうがいい。90% の確率で純愛じゃない。
「すごく平淡な物語です」なんて言われたら、これまた警戒必須だ。絶対に平淡じゃない。
百合だと謳っておいて、実はヒロインが男ども専用の肉便器だった、なんてのもザラにある。
「好評発売中」と書いてあって、実はとっくに叩かれまくってる、なんてのもある。
今日はそんな中で、あらゆる面から見て正直すぎるほど正直なゲームの話をしよう。マジで、わしはゲームを何年もやってきたが、こんなに正直なゲームは初めてだ。
CUBE の『海と雪のシアンブルー』である。

まずはこのゲームの紹介文について。紹介ではいくつかキモになる点が挙げられていて、「このゲームに死はない、大きな事件も起きない、あるのは祝福されるべき出会いと別れだけだ」と書いてある。
正直、この紹介を見たときは疑ったね。自分から「死はありません」なんて言い出すゲームなんて見たことがない。せいぜい「平淡な日々を過ごす」くらいが関の山だ。むしろ逆に、このゲームには死もあるし「大きな事件」もあるんじゃないかと思えてきた。しかも CUBE だ。CUBE がネタを仕込んでくるのは一度や二度じゃない。だから……
「これは絶対、メーカーの煙幕だ!」
そう思ってプレイしてみた結果、まさかの展開だった。このゲームは……
マジで何もない!
何の話かというと、主人公の両親が再婚するというありがちな展開から始まり、ありがちに血の繋がらないデキる妹ができ、ありがちに学校で卒業アルバム制作委員会というありがちな委員会に引っ張り込まれ、そのありがちな委員会には性格設定もありがちな超マジメな委員長がいて、主人公はありがちにどこかでバイトをしていて、そこでまたありがちな大層なお嬢様育ちのワケあり少女に出会い、さらにはありがちな謎の魅力でこれまたありがちな攻略対象の女教師を惹きつけ、ありがちな図書館でありがちな文学少女とも出会い、主人公はそれらのありがちなヒロインたちの間をありがちに立ち回り、ありがちな日々を重ねた先にありがちな一日を迎え、ありがちな選択肢を見て、どのありがちなルートに進むかを決める。ルートの内容もありがちな、女の子の家庭事情を掘り下げる話で、ありがちな告白、ありがちなパコパコ、ありがちな結末を迎えて、このありがちなゲームは終わる。

死人が出ないかもしれない、多少は平淡だろうとは思っていた。だが……まさかここまで正直だとは思わなかった。
本当に何もない。あるのは主人公が規則正しく毎日を過ごす姿だけ。朝は妹と二言三言話し、学校では親友と二言三言話し、図書館では文学少女と二言三言話し、バイト先ではバイトで出会った妹分と二言三言話し、学校ではまた委員長と二言三言話し、家に帰って自分の部屋でまとめを二言三言、一日終了……

毎日がこれだ。ここまで規則正しいシナリオを見たのは……そうだな、大学時代にやった『メモリーズオフ』以来か。画面にカレンダーが出る、あのレトロなゲーム。今ではもうない。それに長けていた老舗の HOOK だって別のことをやっている。
CUBE が今さらこんなものを作ったのは、本当に「レトロ」や「懐かしさ」を狙ってのことじゃないのか? しかもゲームには後藤麻衣だの生天目仁美だの、みるを加えればもう揃い踏みといった古参声優を引っ張ってきている。これが 2003 年のゲームだと言われても信じる。しょっちゅうキャラが崩壊する画風も 20 年前の匂いがする。CUBE の同じ絵師が以前こんなに酷いものを描いたか? 五つ子のあれはどれだけ良かったか。しかも OP の旋律がアイドルマスターのあの曲と被っていて、聴いた感じそっくりそのまま。パクリなのか偶然なのか分からない。ましてや妹のモーションは CUBE 前作のピクセル単位のコピーっぽいときている。

このゲームをしばらくやっているうちに、CUBE のこの企画の意図もなんとなく分かってきた。CUBE の人たちは、今のエロゲーはどれも「ネタを振る」のが上手すぎて、伏線や超展開をやりたがる。ならばいっそ逆を行って、ネタに頼らずにシナリオを膨らませる作品を作り、平淡の中から少しずつ心を動かそうとしたんじゃないか。ちょっと「文芸」っぽい匂いもする。実際、ゲームには「文芸」を追求する要素も見受けられる。青春の卒業アルバムだの、しきりに「上京」したいだの。だがそうした要素も、ただ主人公が繰り返し口にするだけで、何の役にも立っていない。
しかし彼らは一点を見落としていた。「平淡の中に真髄を見せる」物語には、書き手に極めて高い処理能力が求められる。超展開で引き込むのは簡単だし、死人を出して涙を誘うのも簡単だ。だが平淡な日常を書いて人を感動させるのは、あまりにも難しい。

そして明らかに、CUBE のこのポンコツライター陣にはその能力がない。だからこのゲームは「何もない」白湯ストーリーになってしまった。
大阪のクロサメちゃんあたりは、ゲーム中のあのアホな大地葉ボイスの妹に発情するかもしれない。だがそもそもあいつは誰にでも発情する。一日に何十回も発情するやつが、このゲームに何か優れた点があることの証明にはならない。

わしは後藤麻衣のおばはん目当てで来たのに、彼女の演技が明らかに下手になっているのにも気づいた。声には歳月の跡が刻まれていて、もう往年の千歳さなのあの感じは出せない。後藤のおばはんはもうお姉さん役をやったほうがいい。妹は夏和小に任せよう……

とはいえ、わしはこのゲームを褒めたい。ありがちこの上なく、平淡この上なく、白湯この上なく、催眠この上ない。だが後藤のおばはんの CV で懐かしさに浸れるし、何よりこのゲームは本当に正直だ。紹介に何もないと書いてあったら、本当に何もない。
世界は嘘で溢れている。正直に話してくれるゲームメーカーには、サルートを送ろう。
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