『Red:Cherish』レビュー
サイバーパンク、ただし吸血鬼
『Red:Cherish』が発表されたとき、正直そこまで期待してなかった。第一印象は「これ何?」って感じ。
伝説の「サイバーパンク」に「日常系レストラン経営」を足した組み合わせ、どう見てもネタ切れで何を作っていいか分からなくなった企画がその場で思いついたとしか思えない。
それでもこの会社が新作を出してくれたこと自体は素直に嬉しい。ずっと「前作の白髪椿」の遺産で食い続けると思ってたのに、コンフォートゾーンから出ようとしているのは評価したい。
体験版をやってみたら意外と良くて、製品版も買った。なのに、顔の笑みはじわじわ消えていった。
何というか、悪いゲームではないんだよ。ただ、俺の想像とは違いすぎた。

主人公は元・日本の警備員。とある「アリス」という外国人の警護任務に就いていたが失敗、対象は殺され、主人公自身もなぜか最大の容疑者にされてしまう。そんなわけで主人公は「自由の島」を名乗る小国に流れ着く。そこで何人かの同郷の大家と出会い、金を貯めて飯屋を開きたいというユニカ、母親と喧嘩して家出したお嬢様・Rouge、ギャングに身を置くプロの傭兵殺し屋「desperado」と知り合う。そして主人公の助けのもと、彼らは「DDDinner」というレストランを再開・経営していく――という話。

Rouge
Rouge という名前は実に紛らわしい。俺は WoW をやってた人間だから、最初「ローグ」と読むのかと思った。ところがこれ、れっきとしたフランス語の名前で「ルージュ」と読む。で、正統な訳は「魯索」だ。このキャラは結構好きだ。CV が夏和小だからとかではなく、「強そうなのにドジ」というギャップを物語でしょっちゅう見せるし、やたら口汚い捨て台詞でマウントを取ってくるのも面白い。
Rouge の母親は有名な女優で、「夜来香」という洋食レストランを経営している。しかし母女の折り合いは悪い。ある夜、金を盗んでいるところを母親に見つかり、怒って家出。その後、主人公の経営する DDDiner に拾われて、毎日そこでダラダラ過ごすことになる。

その後、物語の都合で Rouge は主人公とくっつく。そして自分の秘密を打ち明ける。自分は女として失格で、子供が産めない。上流社交界では子を産めないという理由で人権を失い、母親に見捨てられ、母女仲もこじれた――などなど。
この台詞、あまりにも男権的すぎる。このゲームが中国で発売されたらフェミに叩き潰されるんじゃなかろうか。「子宮がなければ人権もない」なんて言説、前回見たのは藤太先生の『タマユラミライ』だった。まさか今でもネタとして使えるとは思わなかった。

Rouge が生殖能力を失ったのは、子供の頃に交通事故で下半身を切断されたから。その後、科学技術の発展により Cybog(人工義肢)で下半身を再構築した。体はどうにかなったが、子宮は間違いなく失われた。
主人公は「そんなの屁でもない」と全く気にせず、Rouge と愉快にパコパコする。二人はいい感じになる。ところが花も月も満月のその時、Rouge の母親の側で事件が起きる。この未だに色気が残るオバはんが、Greedfox の首領「コーティス」というヤクザの親分を引っ掛けたのだ。彼はなぜか Rouge の母親に惚れ込み、その娘が家出して DDDiner で働いていることを知る。しかもその DDDiner のオーナーの一人(つまり主人公)と Rouge の母親が何やらイチャイチャしている(実際、Rouge の母は男を見れば誰でも色目を使う、璃月の某娼館の車神並みだ)。そこでこの舔狗コーティスは考えた。Rouge を誘拐して自分の女に差し出せば、女神の機嫌を取れるうえに家庭問題も解決、さらに自分の女に手を出した主人公を叩ける。一石二鳥だ。

こうして Rouge は誘拐され、主人公は激怒する。自分の女に手を出しやがって、しかも店の従業員だ。人手が減ったらまた募集しなきゃならん、面倒くさい。というわけで救助に出動。ところがこの Greedfox、あまりにも弱すぎた。主人公と二人の女副官で楽々と Rouge を救出してしまう。
その後の結末はドラマチック。Rouge と主人公は細胞クローンで子孫を残し、生殖問題を解決する。コーティスは女神の娘を勝手に誘拐したせいで恋愛面でも敗北。Rouge も母親と和解する。舔狗コーティスだけが傷を負う世界がここに完成した。

言わせてもらえば、このヤクザの舔狗コーティスには感謝すべきだ。こいつがいなければ、この話をどう書けばいいか俺には分からなかった。一人でゲームの物語を推し進めた立役者である。
Desperado
desperado の話はもっとシンプル。実は彼女は孤児で、かつて Greedfox 社に拾われ、傭兵・殺し屋として活動していた。その後、desperado を拾った人物は Greedfox 社の内紛で死に、会社も今のコーティスがトップに代わった。だから desperado は出奔し、流浪することになった。

desperado という名前の意味は「デスペラード(命知らず)」。実に直球である。そしてこのルートの話もさらに直球。desperado と主人公がくっつくと、彼女は自分の過去を打ち明ける。主人公が調べると、Greedfox 社の内紛も元リーダーの不審死も、すべて今のコーティスが乗っ取りのためにやったことだった。

自分の命の恩人があの間抜けなコーティスに殺されたと知った desperado は、仲間を引き連れて決闘を挑む。コーティスは戦闘ロボットを出してくるが、Rouge のジャンクラット榴弾砲には勝てず、叩きのめされる。そして desperado はポリコレを発揮してコーティスを許し、その直後にまたしても暗算される……

要するに desperado は復讐を果たし、また一人だけ間抜けなコーティスが傷を負う世界が完成した。
ユニカ
ユニカのルートも比較的シンプル。主人公が彼女とくっついてから、彼女の過去を知る。彼女も孤児で、「DD-Mod」という謎の注入コードを握っているのだ。
ここで DD-Mod の説明が必要だろう。ゲームの設定では、未来の多くの人々が体に「サイバー義肢」を使っている。この人造肢体はプログラミングで制御できる。ゲーム冒頭、島にやってきた主人公は謎の女忍者と戦って一度殺される。そこへユニカが現れ、DD-Mod を使って死んだ主人公を蘇らせる。

ユニカ自身も DD-Mod が何なのか分かっていない。彼女曰く、偶然見つけたもので、スマホの Root のようなもの。サイバー義肢の隠し機能と制限を解除し、何でもできるようにし、無限に蘇らせる……
要するにチートである。
しかし後にユニカと共に調査を進めると、DD-Mod はそんな単純なものではないと分かる。ユニカがネットで調べると、国内最大の「サイバー義肢会社」が心臓を輸送していることが判明する。その心臓は「アリス」という女性のものらしく、大手企業の CEO である金髪の男がこの貨物の黒幕だった。

ユニカの大手企業への調査は相手の注意を引く。会社 CEO が自ら訪ねてきて、ユニカと主人公に会社で働いてほしいと持ちかける。二人が断ると、金髪の男は「せっかくの好意を無にするなら」とユニカを拉致してしまう。
そこで主人公は救出に向かうが、さらに震撼する情報を知る。その「サイバー義肢会社」の CEO は、なんと上古のヴァンパイアの末裔だった。しかもさらに驚くべきことに、かつて自分が警護していた「アリス」もまた、古のヴァンパイアだったのだ。
ユニカは本当の人間ではなく、この会社が作り出したテスト用の人造人間だった。目的は完璧な「ヴァンパイア」の肉体を作ること。アリスは本来、最高のヴァンパイアの眷属だったが、事故で殺され、残ったのは心臓だけ。そこでこの CEO は肉体を創り、アリスの魂をその器に復活させ、ヴァンパイアによる世界支配の野望を実現しようとしていた。

例の「サイバー義肢」も、実はすべてヴァンパイアの肢体から作られている。ヴァンパイアの特徴は無限の再生と不老不死、そしてヴァンパイアの肢体にもその機能がある。サイバー義肢会社の CEO 金髪の男はそのことを熟知しており、ヴァンパイアの肢体に制限プログラムを開発して隠し機能を封じ、普通の「義肢」に見せかけ、対外的にはハイテクだと謳っていた。例の DD-Mod はその制限を突破する Root プログラム(Magisk みたいなものだ)であり、ヴァンパイア義肢の「不老不死」機能を解放する。だから主人公は新たな命を得たのだ。

ここまでくればもう明確だ。金髪の男とアリスはヴァンパイア。金髪の男はヴァンパイアの肢体を使って「サイバー義肢」を作り、市場を開拓して世界中の人間に使わせる。そしてアリスと手を組み、世界中の「サイバー義肢」使用者をヴァンパイアに変える(あるいは死なせる)ことで、ヴァンパイアによる世界支配を実現しようとしていた。
主人公が金髪の男と対峙したとき、アリスはすでにユニカの体で復活を果たしていた。しかし主人公はヴァンパイアが陽光を嫌う特性を利用し、さらに口先でもって金髪の男を倒す。ユニカを救い、アリスも解放するのだった。

最終的な結末は、金髪の男のヴァンパイア陰謀が崩壊し、アリスも自分はヴァンパイアとして人間を支配したくはないと語る。金髪の男の失敗も予想の範疇だったという。そして彼女はヴァンパイアの一族に新たな心の拠り所を見つけたい、たとえばネットワークに寄生して未来の新時代の Cyber ヴァンパイアになる、などと言う。

そして主人公と救われたユニカは DDDinner レストランの経営を続けることを選び、物語は終わる。
正直に言うと、このゲームの物語はどう反応していいか分からない。特にユニカのルートは復唱すら難しい。見た目がやたら複雑で、各脇役が多かれ少なかれ関わり、異なる伏線が絡み合い、全体として「伏線回収」の香りがする。
しかし一方で、その「伏線」がやたら意味なく感じる。物語の核心は、結局「ヴァンパイアが人類を支配する」という陳腐な内容でしかないからだ。敵役にしても、プレイヤーの心を揺さぶるような煽動的な演説を用意しているわけでもなく、ただ「ヴァンパイアは人類より高等、だから人間はゴミ」とだけ言って最終決戦に入る。
ラスボス戦もおかしい。最初は金髪の男がどれだけ無敵か、ヴァンパイアとしてヴァンパイア狩りの聖剣すら操り、主人公を次々と押し込める。ところがそんな「魔法無効」に見えたボスが、日の光で死ぬとは誰が予想できただろうか。

このゲームの一番いいところは、冒頭のプロローグだろう。「ナイトシティへようこそ」的な雰囲気をうまく醸し出している。サイバー肢体と未来風の濃い建築、街頭のグラフィティ、Trap 系の BGM。東海岸のギャングの匂いがする「無政府国家」、自由に満ちていて危険も潜む、という感覚をプレイヤーに抱かせる。
ゲームは「未来感」を強調するために多くのネタを仕込んでいる。Daft Punk、Cyber Food(デジタル技術で味蕾を刺激し食物の味を変える)、Cybog(機械義肢)など。他にもキャラ名には明白な暗示がある。いわゆる「自由の島」はギリシャ語の「自由」だし、タイトル『Red:Cherish』は「血銭」へのオマージュで、Cherish はゲーム内の通貨単位でもある。ゲーム中には大量の「D」の要素があり、これは「ヴァンパイア」の存在、つまり「Dracula」を暗示している。しかしそんな細部とは裏腹に、制作面ではコスト削減と縮小の跡が多く見られる。背景の多くは『魔女こいにっき』の素材を使い、BGM も前作の斬り合いの音源を使い回している。予算の問題か制作の手抜きか、判断に困る。

ゲームの物語は DDDinner レストランの経営が始まると退屈になっていく。まさか本当に「レストラン経営」を始めるとは思わなかった。毎日開店して閉店するだけのゴミ展開で、ヒロインのルートに入るとゲームは元の姿に戻る……
Rouge と Desperado の話は、あの Greedfox 社の社長に復讐してケリをつけるだけ。しかもその社長は舔狗であるうえに臆病で自惚れの強いチンピラで、この二つの話を読んでいるとめちゃくちゃ笑える。そして最後のユニカルートは確かに悪くない出来だが、それでも重大な疑問が残る。
ゲームの設定に従えば、すべての「未来技術」のほとんどは「ヴァンパイアの血統」に依存している。だとすると、このゲームの多くの設定は無意味に思えてしまう。

SF 界の何かの風潮なのか価値観なのか知らないが、多くの「SF 題材」は最後に「宗教」「宇宙生命」「生命の誕生」といった原始的な内容に回帰する。いわく、科学技術の発展とは結局、科学技術そのものではなく、遺伝子変異や宗教や神秘的な未知の力に依拠しているのだと。そういうのはどうもテンションが上がらない。物語の核心が結局は破魔刀を手にした勇者が大魔王を斬るというのなら、そんな大回りして「サイバーパンク」の皮をかぶせる意味は何なのか。
ヴァンパイアと「サイバーパンク」の題材、本当に合っているのか?
合っている作品もあるだろう。少なくともこのゲームではかなり分裂している。
そういえば、ゲームの設定では主人公は『絆きらめく恋いろは』シリーズのキャラと関係があるらしい。主人公は自分の「小姨」か「小姑」が除魔刀を持つ家系の人間で、主人公に武芸のすべてを教えたとたびたび口にする。具体的に誰なのかはゲームでは明言されず、ほとんど示唆に留まっている。
そこで疑問だ。主人公の師匠はいったい誰なのか? まさか前作の透明ヒロインなのか?
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