『ゆきこいめると』レビュー
雪恋溶解
ギャルゲーをやる動機のひとつに、いろんな物語を見たいというのがある。でもラノベやアニメだと、厳密なストーリーが語られることは少ない。設定と導入だけ渡されて、あとは展開、展開、また展開。ノリノリで読んでたら追いついちゃって、週イチ更新を待つしかない。作者もずるずる引っ張って、こっちが髭が生えるまで待たされる。ようやく終盤にこぎつけたと思ったら、何も語らないオープンエンドか、クソみたいな打ち切り。そんな気持ちを味わうのは漫画で二回経験したらもうたくさんだ。
多くのギャルゲーには、少なくとも明確なメインラインがある。序盤がどれだけ茶番でも、日常でも、最後のエンディングに繋がる必須のメインラインとクライマックスは存在する。だから俺がこれまでやってきた廃萌系の作品も、終盤にはそれなりのストーリー展開があった。出来はともかく、少なくとも「物語は終わった」と示してくれて、最後はハッピーエンド。
……だが、ゆきこいめると は完全に別枠だ。ゲーム全体にこれといったメインラインがなく、純粋な日常もの。日常以外に何もない日常。
どれくらい純粋かって? 「GJ部」見たことある? 「のんのんびより」は? 「ゆるゆり」は? あれらに設定と世界観以外のメインストーリーなんてあった?
ないだろ!? つまり ゆきこいめると はそういうノリ。できれば「4コマ漫画」スタイルと呼んだほうがいい気がする。

ゆきこいめると の絵柄はすごく可愛くて、俺がプレイしようと思った大きな理由でもある。絵柄以外だと、CVの演技もなかなか。小倉結衣は正直嫌いだけど……実力は凄まじくて、たるひ役にはまんまと落ちた。特にあの天然っぽくて、時々わけがわからず、時々慌てる様子が、不器用で可愛い女の子を完全にリアルに演じている。
ゆきこいめると にメインラインはないが、物語は普通に面白い。日常の面白さで、気軽な癒しアニメ、あるいは娯楽性のある4コマ漫画として見ればいい。キャラたちが「冬部」という冬を楽しむことを目的にした部活を中心に日常を繰り広げ、それぞれの性格が際立っていて、会話もユーモアがある。ただ一つ言っておくと、日常パートには下ネタが満載だ。三橋さんや白雪姫あたりは容赦なく下ネタをぶっ込んでくる。18禁ギャルゲーなんだから下ネタくらい別にいいだろ。「黄ネタ学生会」だってテレビでやってるんだし、問題ない。

もちろん、メインラインが薄いとはいえ、ないわけではない。主人公が学校で冬部(ふゆ部)の部長うさぎに誘われ、部員のkanon、白雪姫、たるひたちに勧められて冬部に入り、そこで冬を楽しむ毎日を始める、という流れだ。
さっきも言ったが、この4コマ漫画スタイルの日常は、終盤になっても「これといって語ることはない」と感じる。だから廃萌系の作品では回想シーンや黒歴史で個別ルートを展開したりするが、ゆきこいめると ではそういう遊びは一切ない! 主人公が好きな相手を選び、二人が付き合い、HをしてED、終わり。

ああ、もちろん絶対ではない。ゲームの標準ルートはたるひのルートだろう。彼女は最初、主人公と同じく冬が特別好きなわけではなかった。しかし冬部での毎日を過ごすうちに、自分も冬が好きになっていく。最後に先輩が卒業するとき、たるひは過ぎ去ろうとしている冬に未練があることに気づく。
「冬を好きになる」。このゲームのメインラインをあえて説明するなら、これが一番しっくりくる。

たるひ以外だと、白雪姫のルートは特に何もない。主人公に一目惚れして、毎日ダーリンダーリンと呼び、主人公とあれこれプレイする。白雪姫は自分が冬の代表だ、自分が冬だと豪語し、冬が大好きだと言う。そして主人公を好きになった後、自分は四季全体を好きになるべきなんだと気づく……要するに簡単な設定を並べて終わり。
たるひと白雪姫以外の、kanonや先輩のルートはもっとシンプル。突然恋に落ちて、あれやこれやして、二人で未来を迎える。超展開もなければ、個人専用の小話もない。告白→恋愛→セックス→END。あまりに直接的、あまりに純粋。
正直、こうも直接的だとすごく戸惑う。普通なら花咲ウオクスプリングみたいな苦しい過去があるだろ? グレイの果実みたいな超絶な個別ルートがあるだろ? 告白してそのままHして終わりって、それでいいのか?
しばらく考えた。別に悪くない。Keep it real。イキらない。これはギャルゲー、Girl and Love のゲームだ。それでいい。

もう一つ特筆すべきはHシーン。抜き狙いの男たちを意識してか、絵がかなり…………刺激的だ。いろんなプレイがあるし、どのシーンでも女の子は白目を向いて舌を出してる……抜きゲーで見るのと同じレベル。もちろん本編には影響しない。むしろ売上アップのための「お互い様」で、抜きたい人はHを、物語を見たい人は日常を見ればいい。
どのルートを選んでも、最後にうさぎ部長が現れてタイトル ゆきこいめると の意味を照らし出す。
ゆき 雪 こい 恋 めると melt(溶ける)

うさぎは、主人公の名前の読みに「はる」が入っていて春を表すこと、そして冬部の女の子と恋をすることが「春が恋で雪のような女の子の心を溶かす」という意味だと指摘する。恋の気持ちを胸に、未来の春を迎える、と。
なんて詩的な説明なんだ。タイトルの意味も一気に深く感じられる。ただ日常の下ネタが多すぎて、タイトルに申し訳ない気持ちになる。

たとえば「ズッコンバッコン」、意味わかる?(笑)
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