『ネコと女子寮せよ!』レビュー
「最も偉大なエロゲー作品」
先日、「兄貴の中の兄貴」東尼大木(トニー大木)が6年ぶりにニューアルバムを出した。タイトルもやたら大げさで、
『最も偉大な作品』。
ところがこの盤を聴いてみると、なんか妙な感じがした。
「ごく普通のアルバムじゃん。むしろ時代遅れなところも多くて、これまでの先見性が失われてる。なのによく『最も偉大な作品』なんて言えるよな?」
後になってMVが公開されて、ようやく合点がいった。
なんだ、いわゆる「最も偉大な作品」ってのはアルバムのリード曲のことで、この曲も別に自分が偉大だと言いたいわけじゃなく、歌詞の中で芸術史における「最も偉大な作品たち」をいくつか言及してメドレーにしてるだけだった。
つまりアルバムが『最も偉大な作品』なのは、それがリード曲だから。
そしてリード曲が『最も偉大な作品』なのは、この曲の内容が「最も偉大な作品たち」を讃えてるからであって、曲そのものが偉大ってわけじゃない。
そう理解すれば、このタイトルもなかなか筋が通ってるし、大した問題もない。ちょっとわざとらしい「釣りタイトル」なだけだ。俺に言わせりゃ、周杰伦のこのニューアルバムはむしろ缝合怪(寄せ集め)で、彼が「最高にかっこいい」「最も偉大」と思うものを集めて寄せ集めただけ、それ以上じゃない。
実際、こういう業界の「偉大な作品」へのオマージュと缝合はいろんな分野で行われてるし、ほとんど誰も見向きもしないエロゲー市場ならなおさら珍しくもない。
たとえば今回取り上げる『ネコと女子寮せよ!』

このゲーム、発売前に紹介を見た時点でだいたい中身は分かった。猫、女子寮、カフェ、メイド服——どうせ学園寮ものでカフェ経営を絡めたお決まりの展開だろうと。だから大して興味も湧かなかったんだが、暇つぶしにちょっとやってみたら、俺の視野が狭かったことに気づかされた。このゲームは想像以上にスケールがデカい。
ゲーム冒頭の設定は、主人公が妹の「八坂かのん」、そして姉の「八坂柊」と一緒に学園で暮らしていて、親戚が学園の女生徒寮一階のカフェを経営している、というもの。普通なら設定はここまでで終わるはずが、ゲームはいきなり俺に一発食らわせてきた。なんと主人公は魔法が使えるらしい……
この時点でファンタジー要素がぶち込まれる。主人公は魔法で危うく危険に遭いそうになった女子生徒「橘晴華」を救い、彼女もまた主人公が玄術を使える異才だと気づいて、匂いを嗅ぎつけるように主人公のもとへやってくる。もともと知り合いでカフェでよくバイトしている巨乳二人も加わり、これで攻略対象のヒロインは全員登場完了だ。
普通ならこの手のゲームの展開は、一人ずつ攻略して、追加イベントを起こして好感度を上げて、個別√に入って、はいおしまい、って流れだよな。

ところがこのゲーム、キャラごとの個別√が想像とまったく違う。
まず妹√から。ゲーム内で妹と主人公が血縁関係にあるって説明があったかは忘れたが、たぶんそう。だがそれは重要じゃない。この妹√から感じたのは、ほぼ「ピクセル単位のコピー」とも言うべき有名な妹系作品『ヨスガノソラ』のパクリだ。妹は焼きもち焼きで、体力がなくて、兄にべったり。兄が部屋で妹が自慰してるところを目撃する展開まで、ほぼ『ヨスガノソラ』と一緒。もちろんこのゲームは『ヨスガノソラ』みたいに最後に湖に身投げしたりはしないが、突如として主人公と妹はこの学校の人間じゃなく、異世界から来たんだと明かされる……
そう、ファンタジー要素の上に、みんな大好き異世界転生まで追加される。伝説によると主人公の父は異世界の勇者で、魔王と戦った末に姫を救い出して結婚し子供をもうけ、自分の息子と娘をここへ送り込んでこの世界の人間にしたらしい。名前を隠して暮らしていたが、兄妹が恋愛しようとしたところで、異世界の魔王問題はまだ解決していないと告げられ、主人公は勇者の子孫として魔王をぶっ倒す使命を負う。その後ゲームは俺も覚えてないようなデタラメを散々並べ立て、どうやら主人公は魔王(か魔王の手下)と決闘して使命を果たし、妹も魔法の書を開いて愛と平和を交換して、物語は終わる……

続いて残りの巨乳二人とあの女子生徒「橘晴華」の√も、基本このスタイルを踏襲する。最初は恋愛して、エロ画像を挟んで、でもヒロインはいつも偶然あの寮のどこかの書斎で異世界の内容が書かれた書物を見つけて、変な魔法を発動させてしまう。たとえば時間発情とか。最後に異世界の怪物が侵攻してきて、主人公が撃退して、物語は終了。

ここで「このゲーム意味不明だな、どう見てもカフェ経営のゲームなのに、なんで魔法だの異世界だのが出てくるんだ?」と思うかもしれない。
ましてや、このゲームにまさかのTRUE ENDがあるなんて思いもしないだろう。

他のキャラの√を全部解放すると、あのカフェのオーナー、つまり主人公の姉・八坂柊を攻略できるようになる。
そう、このゲームでは妹を抱けるだけでなく、姉にも手を出せるのだ。

ところがこの√を進めるうちに、主人公はこの姉が本当の姉ではなく、異世界の女将だったことに気づく。かつて勇者が異世界で帝国に進軍して姫を救い出した時、とある宿場の女将に世話になった。女将もまたその勇者に気があった。その後勇者は姫と結婚し、危機に遭って自分の子供たちを異世界へ飛ばすことになり、女将は依頼を受けて一緒にここへ来て、自分を主人公の姉と設定したのだった。

つまりこの√の物語は、主人公が自分の父に惚れていた女を抱く話。厚礼蟹(なんてこった)!
実はずっと前から、ちょくちょく俺のブログにコメントやメールで「お前の某ゲームの記事に書いてある筋書きは間違ってる」と教えてくれる人がいる。説明しようとすることもあるんだが、そのゲームの内容をほぼ思い出せないことに気づく。歳のせいかもしれないし、オナニーしすぎで記憶力が落ちたせいかもしれない。
特に『ネコと女子寮せよ!』については、その思いが強い。
ゲームをやったのは半月前くらいのはずだが、「異世界」関係で何を言ってたかほぼ思い出せない。「とてもデタラメで、すごくバカバカしくて、プレイ中はあまりのバカさ加減に笑ってしまった」ということだけ覚えていて、今はもう思い出せない。その上、ゲームは異世界の筋書きにCGをほとんど用意していないから、具体的な画面はなおさら思い出せない。ああそうだ、ゲームに出てくるあの猫も実は異世界の化身だった。ほとんど意味なかったと思うけど。異世界風の銭湯もどっかの世界の入口だとか、そんなことも言ってた気がするが、これも思い出せない。
ともかく、「カフェ」「女生徒寮」「魔法」「異世界転生」「実妹を抱く」「実父をNTR」を融合させたゲームなのに、どの側面も満足できる水準に達しておらず、ほとんど何の印象も残らない。覚えているのは、妹の自慰シーンが『ヨスガノソラ』にあまりにも似ていることだけ。俺は妹好きじゃないけどな。

このゲーム唯一の見どころは絵柄。ヒロインたちはみんなよく描かれていて、可愛いとまでは言わないが、なかなかエロく描かれている。キャラデザには有名アニメキャラの面影があって、特に某西片太太に似たキャラがいる。
シナリオライターや企画がどんな気持ちでこのゲームを作ったのか、俺には分からない。だが東尼大木のニューアルバムを聴いて、なんとなく分かった気がした。優れたエロゲーを作りたければ、業界で最も優れた要素を全部持ってきて寄せ集めればいいじゃないか、と。

異世界転生はとうに売上のパスワード。兄妹相姦、魔法と勇者、姫と王儲、ちょっとしたNTRを添えて、ありきたりなカフェ経営の皮を被せて、さらに超展開を一発。どう見てもこういうゲームは爆点だらけだろう。
だから情商(EQ)高めの言い方をすれば、このゲームこそ「最も偉大なエロゲー作品」なのかもしれない。なにせあんなにたくさんの「偉大」な要素を融合させているんだから。
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