HP Chromebook X2 11 をしばらく使った感想
一方的な生産性:HP Chromebook X2 11
以前、ChromeOSのタブレットこそが「生産性」の未来なのかもしれないと書いたことがある。ただDuetは性能もメモリも弱すぎて、結局耐えられずに手放した。それからほどなくして目にしたのがこの新製品だ。
HP Chromebook X2 11
3:2の画面、8GのRAM、Snapdragon 7C、着脱式キーボード、マグネット吸着充電のスタイラス……
まさに完璧な「生産性」の姿じゃないか。これってクールだと思わないか……後のことは忘れた。
で、勢いで一台買ってしまった。定価はえらく高いが、BestBuyやHPの公式サイトではしょっちゅう叩き売りされていて、299ドルで購入。中国に輸送する際にちょうど去年の上海ロックダウンと重なり、税関で1か月以上止められてようやく手元に届いた。

半年以上使って、2023年の正月まで現役だった。感想は「愛憎半ば」とでも言うか、自分の需要の大半は満たしてくれているけれど、自分が求める「生産性」としてはあまりにも遠い。
まずは本体の問題から。
第一にキーボード。バックライトなし、そして素材がとにかく「柔らか」すぎる。どれくらい柔らかいかというと、裏からキーボードを押すとタッチパッドを誤爆するレベルだ。
これが厄介な問題を生む。このキーボードで入力しているとき、両手のひらをパームレストに力を抜いて置くと、タッチパッドが勝手に飛び回るのだ。
これは品質管理の問題ではなく、設計の問題。Surfaceではそうならないし、海外のYouTuberもこの点を「Boring」とわざわざ指摘していた。
もう一つはタブレットのスピーカー。HPは何やらのO&B音響技術、いわゆる「ハーマンカードン調音」みたいなものを使っていると宣伝しているが、音はとにかくダメ。聴くに耐えない。低音はなく、高音は耳に刺さる。動画視聴用のタブレットとしては失格だ。
次にタブレット本体の重量。筐体はマグネシウム合金で、とにかく重い。保護ケースを付けても重い。おかげで3:2画面の着脱式設計が微妙な立ち位置になる。縦にして資料や動画を見ようものなら、しばらくすると腕が疲れる。もっと腹立たしいのは、このタブレットに3.5mmイヤホンジャックがないこと。外付けの小さいアダプタが必要で、余計に面倒くさい。

ハード面だけでなく、ソフト面でも血圧が上がる。
ChromeOSの「2-in-1タブレット」対応は吐き気がするほど。Linux開発モードをオンにすると、キーボードを挿すたびに「HammerをLinux仮想マシンに接続しますか」という通知が出る。このHammerというのはキーボードのコードネームだ。この通知は毎回出るし、完全に消すこともできず、黙って毎回手動で消すしかない。本当に頭が悪い。
もう一つ、Linux開発モードの中国語対応もかなり酷い。fcitxなどを入れれば入力できるが、ネイティブのChromeOS入力とは分断されている。さらに奇妙なのは、タッチキーボードがネイティブ環境でひどくカクつくこと。Web版Twitterを使うときは悪夢そのものだ。
ChromeOSの大きな特徴はAndroid仮想マシンでアプリを拡張できることだが、ほとんどのArmデバイスでは相変わらずAndroid 9のままで、約束されたAndroid 12へのアップデートは遠い先の話。性能もぎりぎり足りる程度で、バグも少なくない。中には「Web版を直接使ったほうがマシ」という微妙なアプリもある。そしてWeb版ではタッチ最適化が大きく失われる。ブラウザでジェスチャーを使って動画の再生バーを操作することを考えてみてほしい。アプリ内のように動画上を直接スワイプするわけにはいかないのだ。
このタブレットに求めるものは、Web動画を見る、資料を読む、文字を打つ、この3つだった。
重量とスピーカーの外部出力のせいで、Webと動画は終了。重量のせいで資料読みも終了。残るは文字打ちだけ。
ところが、適切な文字入力ツールがどうしても見つからない。Linux仮想マシン下の入力と文字レンダリングには各種問題があり、Android下で「純純写作」を使うとアプリの互換性問題でいろいろ面倒が起きる。ファイル同期の良い方法もない。おまけにあの「柔らか」すぎて誤爆するタッチパッドで、泣きっ面に蜂だ。
ではHP Chromebook X2 11は何に向いているのか。
普通のネットブックとして、Webを見るくらいか。しかもタッチパッドとキーボードをあまり使わない前提で。中国のメーカーがFyde OSのタブレット、Fydetab duoなるものを出していたのを見た。これもHP Chromebook X2 11と比べて大きな優位性はなさそうで、Type-Cが1つだけ、画面比率は謎の16:10、キーボードは相変わらずバックライトなし、おまけにスタイラスはマグネット吸着じゃない……
Fydetab duoは中国のKOLにたくさん送られていて、かなり持ち上げられていたが、自分の目にはHP Chromebook X2 11が抱える微妙な立場をシステムレベルで解決しているようには見えない。AndroidとLinuxに対応して無限の可能性があるように見えて、入力とファイル共有の壁が各システム間を分断で埋め尽くし、想像するほど美しくはない。
その後、HP Chromebook X2 11という製品を、そしておそらく他のChromeOSタブレット全般を見直した。もともとはもっと生産性をもたらしてくれると思っていたが、結局「Web閲覧」で少し優位なだけで、その他の映像音声面ではAndroidタブレット以下だ。
Androidタブレットは「買う前は生産性、買った後は愛奇芸」と言われる。だが少なくとも愛奇芸はできるし、ゲームだってできる。ChromeOSタブレットに至っては、愛奇芸の資格すらぎりぎりで、ブラウザとして使うしかない。
最後に思うのは、生産性の答えはやはりWindowsタブレットにしかないのかもしれないということ。そしてChromeOSに対して抱いていた好感も、ただの一方的な生産性にすぎなかったのだ。
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