『恋にはあまえが必要です』レビュー
精巧なレトロ馬車:恋にはあまえが必要です
ここ数年、「レトロ」ブームが来ている。人々は「古い」ものに郷愁を抱き、レトロ要素をまとったコンテンツが歴史の古紙束から次々と復活・生産されている。前世紀スタイルのキーボード、パソコン、携帯ゲーム機、その他もろもろのガラクタまで。たとえば最近 FiiO が「カセットプレイヤー」を出したが、値段は安くないし見た目もゴツい。それでも飛びつく人はいて、「レトロ」の代償がこれだけ高くても市場はそれなりに成立している。少なくともこの市場のおかげで、中身を変えずに外装だけ刷新した製品を出し続けるメーカーが食えているわけだ。そこで思い出すのが、同じく「レトロ」の匂いがプンプンするあの産業――「美少女恋愛シミュレーションゲーム」、通称ギャルゲーである。
歴史を少しでも知っている人なら分かるだろうが、最初期のギャルゲーは今の主流製品とは違っていた。最も有名な始祖とされるのが『ときめきメモリアル』シリーズだ。このゲームが『純愛手札』とも呼ばれていたのを覚えている。当時の海賊版CDの頃、俺はいつも『純愛手礼』と読み間違えていたっけ……まあそれはどうでもいい。大事なのは、『ときめきメモリアル』が「シミュレーション」「恋愛」「育成」にこだわった、極めて「マジメ」なゲームだったということだ。
ここで「マジメ」と言ったのは、このゲームにやり込み甲斐と遊び応えがあったからだ。毎日スケジュールを組んで、いろんなヒロインとデートし、好感度を育て、最終的に伝説の樹の下で告白して望むエンディングに到達する。発生するイベントもそれぞれ対応が違い、しかも前提条件がほぼ鬼のように厳しい。計算と計画をきっちり立てないと望む結末にすら辿り着けないこともある……つまりこの手の「恋愛育成」ゲーは、コンプリートするのに攻略本が必須レベルで、ある種のリニアなアクションゲームより難しいまである。
時は流れ、今のギャルゲーはもはや当時の面影などない。看板は「ギャルゲー」でも、本質的な定義は「恋愛育成」から「ビジュアルノベル」に変わり、「小説」と名乗る以上は読書体験が重視され、大きな「ゲーム性」なんてものはない。スケジュール管理は消え、好感度もだんだん薄れ、今では「札をめくる」だけでキャラ攻略ができるまでに簡略化された。今のギャルゲーに「ゲーム性」なんてこれっぽっちもないと嘆かざるを得ない。Steam での分類も Visual novel になり、Reddit で Visual novel のコミュニティを探せば新作の話題で持ちきりだ。ギャルゲーの板もあるにはあるが、あそこにいるのはガキばかりだ。
前置きが長くなったが、そろそろ本題に入ろう。言いたいのは、ビジュアルノベル系ギャルゲーがこれだけ氾濫し、プレイヤーたちもその形式を黙認している今日この頃でも、相変わらず「ノベル」らしからぬ作品を作り続け、古き良き「恋愛育成」の最後の面目を保っているメーカーがあるということだ。もうお分かりだろう、鉄鉤船長の化身、HOOKSOFT である。

今年も HOOKSOFT は新作を出した。タイトルは『恋にはあまえが必要です』。実は最初、俺はタイトルを読み間違えて『恋にはおまえが必要です』だと思っていた。その時は「なんて強気なタイトルだ」などと思っていたが、結局自分が「あまえ」すぎただけだった。
かつて俺は HOOKSOFT に飽きていた。HOOKSOFT とその大副たる SMEE にもはや違いはないとすら思っていた。というのも両者はあらゆる面で重なりすぎていて、ストーリー構成、選択肢の配置、さらにはBGMのスタイル、そして各種の無軌道なツッコミまで……ブランド名を見ずにプレイしたら、HOOKSOFT か SMEE かの区別なんてまずつかない作品も多い。
かつての HOOKSOFT は「学園」「純愛」「ファンタジー」をテーマにしたブランドで、SMEE は「ヒロインとの恋愛」に重きを置いていた。だが以前協働していた絵師が徐々に離れ、HOOK も迷走。数年あちこち彷徨った末、今回の『恋にはあまえが必要です』で少しだけ回帰の兆しが見えた。
端的に言えば、このゲームは「伝統的な HOOK」の匂いに満ちている。十数年前に『Honey Coming』を遊んでいた頃の感覚に近く、その上に SMEE 由来の軽妙な会話の空気が少しだけ加わった、ある意味集大成と言える作品だ。

まず褒めたいのが『恋にはあまえが必要です』の UI だ。俺のようにここ数年の HOOK を追っていれば分かるが、UI デザインは完全に使い回しで、中身も外見もほぼ変わらず、フォントまで一緒だった。ところが本作では UI を一新している。淡い緑のアクセントが操作要素をゲーム全体の配色に合わせていて、こういう細部の作り込みが一気にゲームに「高級感」を与えている。
もちろん、HOOK が万年 720P の解像度を 1080P に上げてくれれば、もっと高級なんだが。
ゲーム内容としては、選べるヒロインは4人。カンフーができる子、満命のウーラに似た子、6歳年上の金持ちのお姉さん、そして義妹になろうとしている子……よくある要素はだいたい揃っていて、普通のオタクなら誰かしら好みの子は見つかるだろう。

本作のプレイ体験はまずまずだ。ストーリーは長すぎず、共通ルートの選択を経てすぐ本題に入れる。「お見合い」に近い流れだ。キャラごとの物語にもそれぞれ特色があり、ゲームは二部構成。共通ルートでは主人公が修学旅行に参加し、ある町を自由に探索して4人のヒロインと出会い、旅の中で好きな相手を決める。第二部は修学旅行の後、主人公が好きな相手とその後も恋愛を続ける話だ。しかもそれぞれの時間軸は異なり、学園生活の続きもあれば、大学卒業後を描くものもある。つまりキャラごとの個別ルートは互いにあまり影響しないということだ。

演出面では、HOOKSOFT がかつての抑制の効いた特色を取り戻したのが分かる。突如拡大する文字でツッコミのエフェクトを入れることも、アフリカの太鼓のような慌ただしい音楽で会話中のギャグを強調することもない。SMEE 的な要素は激減し、その分はゆったりした会話のテンポに置かれ、純愛を好むプレイヤーに多くの楽しみを与えている。

ギャルゲーを何年もやってきた古参の俺としては、もうゲームの恋愛や女の子に感動することはほとんどない。本作も同じだ。それでも HOOKSOFT がかつての路線に戻ってきたのは素直に嬉しい。本作は俺にはもう波風を立てることはできないかもしれないが、多くの「ギャルゲー新規」にとっては非常に良い作品だろう。本作に残された「大地図」「好感度」「スケジュール表」といった要素は、これが純粋な「恋愛シミュレーション」ゲームであることを示しており、先ほど語った「古き良き味」を受け継ぎつつ、「恋愛シミュレーション」の楽しさを直に味わえる機会を与えてくれている。

もちろん、『恋にはあまえが必要です』に欠点がないわけではない。むしろ俺にとっては欠点は大きい。ずばり「突破がない」ということだ。HOOK が十数年前の味を取り戻したと褒めたのは確かだが、皆忘れていないだろうか、今は2024年だと。恋愛育成というジャンルには活用すべき新技術が山ほどある。AI が関与する対話でも、より自由度の高いヒューマン・インタラクションでも、さらにはより良いグラフィックでも、この手のゲームをより画期的に、より魅力的にできるはずだ。

しかし HOOK がやったのは、かつての誤った路線を捨てて10年前の旧道に戻り、レトロな香りしかしない新作を出したにすぎない。
この作品が悪いとは言い難い。ただ今の時代に置いてけぼりなのは本当だ。
さらに皮肉なことに、近年多くのギャルゲーが「リメイク版」を出しているが、その実態は旧作の画面を waifu2x で拡大しただけで、システムも操作感もまったく変わっていない。隣の『ペルソナ3 リロード』と比べれば、ギャルゲーのこうした作業はもはや「リメイク」と呼ぶに値しない。画面がほんの少し綺麗になった以外、何も変わっていないのだから。

自動車の時代に、誰かが交通手段として精巧な馬車を売り出したようなものだ。どれだけ丹精込めても、馬車はとっくに淘汰されている。
せめて HOOK、1080P の解像度くらい用意してくれたら、このゲームも時代に追いついていると認めてやるのに。
コメントは中国語の本家サイトで受け付けています。このミラーは閲覧専用です。