『なついろレシピ』レビュー

二人の調味料

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実は今月、なついろレシピは僕が一番期待していたゲームではなかった。本当はPure X Connectとすみれをやる予定だったのに、あいにく先に流れたのがなついろレシピで、仕方なく先にやったら、これが驚きがデカすぎた……

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ゲームの宣伝を見る限り「妹子が料理をする」がテーマらしく、タイトルだってなついろレシピ(夏色recipe、夏色レシピ)なのに、実際のシナリオはそうじゃない。物語は主人公が田舎に来て、腹違いの妹・柚の面倒を見るところから始まる。柚は長いこと祖母に世話されていて、その祖母は田舎の村で小さな食堂を営んでいた。祖母が亡くなると食堂も廃業同然になり、そこから柚がこの食堂を復興しようと決意するところから話が動き出す……主人公と一緒に。

結末の流れはとても穏やかだ。柚は最初まったく料理ができなくて、兄である主人公がずっと支えて励まし続け、村の人たちも次々と手を貸してくれる。大半は柚の祖母に義理を立ててのことだが、最後にはますます多くの人が柚を新しい食堂の主として認めるようになる。シナリオは中盤で一度小さなどんでん返しがあり、終盤に柚は自分と主人公が本当の血のつながった兄妹ではないこと、腹違いですらないことを知る。柚の母も父も別にいるらしい。祖母はこの恋に反対していた。柚がどうやって主人公の父親に取り入ったのか、それが養子縁組なのかまでは僕にはわからない。ゲーム内の主人公の父親が書いた手紙がマジで意味不明で、まだまだ日本語の勉強を頑張らないとな……。

ギャルゲーとして最も成功している点といえば、何と言っても物語をきっちり語り、人物をしっかり造形することだ。なついろレシピの話はかなりシンプルで、それなりに上手く語られている。そしてより明らかな光点は人物造形、とりわけ八重原柚の妹だ。

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ところで、人物造形が生き生きしているとはどういうことだろう? おおむね、こいつは実在するんじゃないか、本当にこんな奴がいるんじゃないか、と思わせること。たとえば性格に筋が通っていて、行動に理屈があって、虚構の作品の中に生々しい実感がある、そういう意味だろう。

「あー、こういう奴見たことある! 友達に同じ性格のやつがいる!」

そういう感じだ。

現実では触れたくても触れられない人と、ゲームの中でイチャイチャできる。これこそがギャルゲーの魅力だよな!

八重原柚は心根が優しく、少し負けず嫌いだけど兄にはベッタリで、不器用なのに真面目。何かあると紙にメモを取る。タブレットに変わってもそれは同じだ。祖母と村への愛情が半端なく、心から祖母の食堂を復興させたいと思っている。料理に失敗したときの哀れな助けを求める目つきは断れないし、菜園の丁寧な手入れを見せられちゃ放っておけない。

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「あああああ、柚と結婚したい!」

多くのACG作品はキャラの性格を造形するとき、象徴的な動作で単純明快に描く。なついろレシピは日常を選び、しかもその日常を3年間に引き伸ばして見せる。1年目は柚が主人公に妙な感情を抱き、やがて主人公が血のつながった兄ではないと知る。2年目は柚が最後に主人公に隠れた告白をし、主人公は柚の気持ちを理解して正式に告白、香港にいる父親のところへは戻らず村に残ることを選び、恋人になる。そして3年目は二人で村の食堂を盛り立てていく未来で、最後にはHappy Endを迎える。

ゲームは細部の描写にも気を配っていて、一番の名場面は2年目の村祭りで、他人から自分と主人公の関係を誤解されたとき、柚が説明せず、すっぱり彼氏だと認めて、それから仕方なく否定するあのやり取りだろう。

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もう心に刺さりまくり!!!!!!

他にも柚が主人公の料理をじっと見ている場面や告白のシーンがある。あのありがちな「好きです」はなく、主人公は「柚とずっと一緒にいたい」と言っただけ。それでも柚への返事としては十分すぎるほどで、甘々じゃないか!!!

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こうした細部がゲーム全体を通して散りばめられていて、日常パートは絶対に真面目に見る価値がある。生き生きした柔らか妹キャラをどう造形するか、あのポンコツ脚本家どもはよく学ぶべきだ。前回こういう感覚をくれたのはひまわり教会と長い夏休みの月子だった。1年ぶりに同じ感覚のゲームをやって、これが宿命なのか?

ゲームのルートは長く、柚ルートはとても穏やかな恋愛展開だ。ゲーム内での柚の造形が完璧すぎて、他の攻略対象キャラは完全に引き立て役になっている。おかげで僕は彼女たちのルートをやる気が全く起きなかった……すずみは面白いキャラだけど、柚のオーラの前では存在感がなさすぎる。彼女の妹や村の売店を手伝う無口な子はなおさらだ。

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ゲームのBGMは光点の一つで、OSTの最後の曲は料理の音だけで組み立てられた愉快なリズムで、完全に耳が釘付けになった。グルメ番組の壮大なBGMなんかよりずっと良い。これこそ日常系料理ギャルゲーにあるべきBGMだ。

ところで、ゲームは最初「妹子が料理をする」をテーマに宣伝していたのに、終盤になっても柚の料理の腕はまだ一人前とは言えず、作中で料理をする回数も数えるほど。しかもその数回も実写写真を加工したCGだけだ。でも誰が気にする? ギャルゲーとして柚の造形は十分に豊かで、彼女はすでにこのゲームの核心になっている。ゲームのテーマは「夏色レシピ」で、最後に柚は大好きな祖母が作ったラーメンの味とレシピを見つけ、祖母の願いへと少しずつ歩み寄っていく。兄と妹の間の親密さが二人にとって最高の調味料となり、夏の匂いをまとった美味しいレシピとなって、一皿の料理を作り上げる。それがこのゲームの目的なんだろうな……。

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