『きら☆かの』レビュー
ここ数年ずっと引っかかってることがある。あざらしそふと、通称「海豹社」って制作会社は一体何者なんだろう、と。毎日のように色んな会社や制作チームとコラボしまくってるくせに、自分とこで作るゲームは「XX彼女」みたいなテンプレ恋愛ゲーばっかり。で、その会社の背景を調べてみたら、これが全然シンプルじゃなかった。面倒な経緯は端折るけど、いわゆる「海豹社」の母体は元々Keyの原型で、比較的知られてる『One』ってゲームも作ってたところなんだよ。
家がデカイからなのか、それとも郷愁なのか、その会社は今もギャルゲー業界で生き続けてて、今は「海豹社」。そんで最近、また別の歴史ある会社とコラボした。どう見ても半死半生にしか見えないLump of Sugar(方糖社)との新作がこれ、『きら☆かの』。若者の流行に乗っかったように見えて、実際は思いっきりスベってる。

今の若者が好きな行動の一つが、Vtuberと配信を見ること。だから『きら☆かの』もこのテーマを選んだ。「主人公がトップVtuberで、それを同級生に偶然見られて、二人だけの秘密になって、恋の火花が散る」という話。今風に言えば、主人公が「開盒」されたってわけだ。
ここまでの話だけ聞くと、なかなか見どころのあるストーリーに思えるかもしれない。でも俺は大事なディテールを隠してる。それを聞いても初心を忘れずにいられるなら、このゲームは本当に優秀だって証明になる。

まず、ゲームの「主人公」、つまり「トップVtuber」で開盒される側のキャラは男だ。お前が想像する「女性配信者」じゃない。しかもゲーム内で何度も強調されるのは、主人公はVtuberじゃなくて「Virtual performancer」(バーチャルパフォーマー)だってこと。主人公が開盒される経路も、学校の屋上に隠れて配信してるところをヒロインに見られる、というもの。んでこのヒロインがよりにもよって、主人公のバーチャル配信者としてのガチのファンで、二人はくっつく。ヒロインもファンとしてバーチャルデビューを目指して、主人公が技術支援をして、最終的にこのカップルは見事バーチャルの世界でバ美肉人になって、視聴者の米をがっつり稼ぐという寸法だ。

ゲームにはもう一本、攻略不可のサブヒロイン用の分岐もある(彼女についての別巻が出るのかもしれない)。このサブヒロインは主人公の正体を知ってるけど普段は口に出さず、しかも主人公の過去も知ってる。主人公は昔デビューしてたけど、アイドル業界の競争の厳しさに気づいて引退し、今のバーチャル配信者になった。
思うんだけど、このゲームの設定は結構リアルなところがある。特に昔アイドルグループで練習生をやってて、後に引退してバ美肉人になったってとこ。恋愛がバレて降格されたり、鬱で逃げ出したり、トップになって中二病こじらせて「中の人は自分の分身」とか言い出したり、元所属先と喧嘩して素の身分で活動できなくなって仕方なくバーチャルの皮を被ったり……。
要するに、バーチャル配信者にはみんなやむにやまれぬ事情があるってのを押し出してる。長くやってると、自分の夢を見るのをやめて、自分がそのバ美肉人なんだと思うようになることもある。
でも、このわずかなリアルさじゃこの退屈なゲームは救えない。展開はベタベタの極みだし、よりによって男の主人公がバ美肉人でヒロインに開盒されるってのがめちゃくちゃ直感に反する。普通は女Vが開盒されるもんだろ。今どき誰が男Vの踊ってケツ振るとこなんて見たいんだよ? どう解釈しても慣れない。さらに意味不明なのが、「VTUBER」って単語そのものを完全に意図的に避けてること。主人公はVirtual Performancer、バーチャルパフォーマーだと繰り返し強調して、挙句VPと略しまくる。著作権回避なのか新しい基準を作りたいのか知らないけど、もたらされるのは違和感だけ。

ゲームのボリュームは長くないし、恋愛の過程もベタ。ヒロインがどうしてもバ美肉デビューしたがる展開も、MyGoのネタじゃないなら脚本の筆が下手でまともな話が書けないとしか思えない。このゲームの制作チームはこの題材を理解してないし、Vも見たことないんじゃないか、Vtuberへのステレオタイプだけで無理やりテーマを当てはめて、流行に寄り添ったフリをして手抜きしただけなんじゃないか、とすら思う。
まあつまりこの『きら☆かの』は、萌木原の獣耳なしの絵柄が見られるってくらい……あ、そうだ、ゲーム内ではバーチャル形象の形で無理やり獣耳も追加してる。やっぱ萌木原は獣耳がないと生きていけないんだな。それ以外は基本可取るところなし。やる価値がある理由を挙げるなら、ゲームが短すぎて年間プレイ本数に1加算できる程度か。
良い点:
- 萌木原の原画/獣耳
- 短い、さっさとクリアできるから時間の無駄にならない
悪い点:
Vtuberがテーマのようでいて、実際は現実離れしてる
恋愛シナリオが古くてベタ
値段が高すぎる
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