Cool-Pi CM5 Laptop:買ってよかった点と微妙な点
おそらく最強の「国产ノートPC」:Cool-Pi CM5 Laptop
去年の5月ごろ、3年以上使っていたノートPCを買い替えようと思った。でも当時の新製品といえば、Linux 対応がいまいちな Ryzen 7840HS か、Intel の新しい Metreo Lake アーキテクチャの ThinkPad くらいしかなかった。
11世代からの乗り換えなら Metreo Lake でも十分な進化ではある。ただ Metreo Lake は前世代と比べても進歩が小さく、むしろ後退している部分すらあって、様子見することにした。
そうやって待っているうちに、偶然見つけたのがこの「国产ノートPC」、Cool-Pi CM5 Laptop だった。ARM アーキテクチャの RK3588、Linux ネイティブ対応、32G メモリ、ストレージ拡張にも対応。当時は天猫の店舗で無金利分割もやっていて、ちょっと遊んでみるかという気になり、結局買うことにした。

届いて触ってみると、なかなか驚かされた。他の14インチと比べると明らかに重くて厚いのだが、品質は粗悪という感じではなく、むしろ予想外にちゃんとしている。
筐体は間違いなくプラスチックだが、金属風の塗装がしてある。個人的にはプラスチックのほうが好きだ。重くならないし、粘りもある。実際このマシンは Chuwi GemiBook Pro の型を使っていて、画面まで同じで、中身だけ入れ替えたものらしい。
届いた時点で Ubuntu が入っていたので、1週間ほど軽く使ってみた感想は、おおむね好意的だ:
- まずシステムの動作がとても滑らか。RK3588 はもうデスクトップ級の OS を動かせる性能があるらしく、GPU アクセラレーションも有効にできる
- ガラスのタッチパッドが標準装備で、Type-C 給電にも対応。使ってみるとこれが意外と快適
- ARM Linux で珍しく「本当のスリープ」ができる。従来のノートPCと同じ感覚で、蓋を閉じてスリープ、一晩置いても消費は1%未満
- マザーボードに NVMe SSD を挿せる。拡張の余地は十分
- 完全パッシブ冷却でファン不要。完全に静か
一方、足りないところもある:
- とにかくバッテリーが小さい。14インチのノートPCで38Whしかないのは想像しにくい。しかも RK3588 はフル稼働時の消費電力が低くなく、高負荷だとバッテリー持ちは2時間程度。軽負荷なら8W前後まで落ちる(これも低いとは言えないが)ので、そこまで酷くはないものの、バッテリーが小さいせいで良くもならず、ARM の续航の利点がまったく出ていない。
- 型が安っぽいせいか、キーボード入力で手が速いと明らかな二重入力や取りこぼしが起きる。最初は品質問題かと思ったが、公式サポートで新品に交換してもらっても同じだった。バックライトもない。
- 画面のデフォルト色域がひどい。1080P に定番の45% NTSC で、視野角も狭く、色も見ていてつらい。
- NVMe から直接システムを起動できない。必ず USB か EMMC を優先する必要がある
- カーネルは RK3588 公式の BSP カーネルが前提で、メインラインカーネルの対応は不完全
なので、このマシンを少しでも使いやすくするため、いろいろ改良や「足掻き」をやった。以下、何をしてどうなったかを簡単にまとめる。
1、色域の高い画面に交換
デフォルトは30pinの eDP ケーブルで画面を接続していて、画面自体は B 面をこじ開けて交換できる。しかもノートPCを買ったときにメーカーのエンジニアが40pinの eDP ケーブルをくれた。これがあれば4K画面に交換できる。
最初は画面のファームウェアがカーネルや dtb に書き込まれていて、交換しても点灯しないのではと心配した。でも公式いわくそんなことはなく、収まってピンが合えば点灯するらしい……
そこで探し回り、サイズ的に元のパネルと交換できる上位版を見つけた。
デフォルトのパネルは華星光電の MNF140BS2-3 で、Panelook でサイズを調べられる。同じサイズなら ThinkPad T480 のアップグレード規格に合うものがあり、有名なのは NV140FHM-N66 だ。IPS、100% sRGB、DC 調光で目に優しく、マット仕上げ。唯一の欠点は明るさが足りないことだが、このマシンには十分。
パネルが届いたら B 面を開けて元のパネルを外し、新しいのに交換する。背面の両面テープを丁寧に剥がし、貼り直せば交換完了。
理論上はメーカーがくれた40pinケーブルで4K画面も載せられるが、現状使える4Kパネルは微妙で、消費電力が高すぎるか PWM 調光か。あれこれ考えた結果、必要ないと判断した。
2、システムパラメータを調整して電力効率を上げる
デフォルトの Cool-pi の Ubuntu イメージは、CPU と GPU のスケジューラを全部 Performance に固定している。自分で /etc/rc.local を編集する必要がある。
さらに RK3588 の一般的な調整パラメータを参考に、性能を最適化できる:
現時点で RK3588 に対してできる最適化がほぼ全部書かれていて、テストの比較データや理由まで載っていて非常に詳しい。
续航を伸ばすなら、根本的にはバッテリー容量を増やすしかない。cool pi 公式は大きいバッテリーを出す計画があると言っているが、今のところ音沙汰なし。将来出てくれればいいのだが。
3、Wi-Fi カードを交換し、手動でカーネルをビルドしてドライバを追加
このマシンは分解すると Wi-Fi カードが交換可能なタイプだとわかる。公式ドキュメントによれば、デフォルトの Realtek カードを Intel 製に交換できるが、対応は Intel AX200 のみらしい。他にもモジュール交換できる部品がいくつかあり、対応ドキュメントもある。公式がこれを DIY Laptop と言い続けるのも納得だ:
https://hackaday.io/project/196668-genbook-rk3588/log/230987-instructions-of-genbook-rk3588
Intel カードに交換して起動すると、ドライバが動いていないことがわかる。公式のデフォルトカーネルで Intel のモジュールが有効になっていないからで、公式が公開しているカーネルソースを git clone して、パラメータを変えてビルドする必要がある:
https://github.com/coolpi-george/coolpi-kernel
通常は:
/arch/arm64/configs/rk3588_cpcm5_genbook_defconfig
または
/arch/arm64/configs/rk3588_cpcm5_notebook_v20_defconfig
に一行追加する:
CONFIG_IWLWIFI=m
カーネルを再ビルドして /boot/ のファイルを差し替えればいい。
カーネルのビルドなんて難しくない。公式が build-kernel.sh というとても簡単なスクリプトを用意してくれている。

実行して対応プラットフォームを選ぶだけ。できればこのノートPC上で実行したほうがいい。でないとクロスコンパイルになる。
4、システムを NVMe に移行
内蔵の64G eMMC ではシステムを動かすには足りないので、NVMe 1TB の SSD を追加した。SPI はデフォルトで NVMe 起動に対応しておらず、SPI を書き換えるのも嫌だったので、eMMC から boot パーティションを起動し、boot 内の rootfs パスを NVMe に向けて NVMe システム起動を実現した。
ここでちょっと厄介なのが、cool pi のイメージでは rootfs の指定が UUID などではなくパーティションの「名前」で行われ、デフォルト名が WRITE になっていること。rootfs の設定で、異なる媒体上の root パーティションを別々の名前に変えて設定しないと正しく起動しない。これにかなり時間を取られた。
手動で UUID に変えることも試せるが、効くかどうかはわからない。
5、Panfork と Panfrost
さっきも書いたが、RK3588 はデフォルトで GPU アクセラレーションに対応し、Wayland も有効にできる。ここで触れておきたいのが、デフォルトの BSP カーネルは実は Android のカーネルを魔改造したもので、GPU ドライバは Panfork と呼ばれている。半クローズドソースだったか忘れたが、とにかく性能は良く、その代わり公式カーネルに強く縛られ、何年も更新されておらず、動かすには魔改造版の Mesa が要る。
もう一つが Panfrost で、こちらはメインラインカーネル関連の機能。更新は続いているがずっと不完全で、標準の Mesa で使える。
普通のユーザーなら Panfork でいい。wine などでゲームを遊ぶことだってできる。問題は Flatpak でソフトを入れた場合で、flatpak 上のソフトは標準版の Mesa を使うため、panfork パッチ版ではない。flatpak で動かすプログラムはすべて GPU アクセラレーションが効かず、深刻なクラッシュや黒画面、動作の重さにつながる。
panfrost ならこの問題は起きないが、現状の panfrost が使い物にならないのだからどうしようもない。
つまり二択を迫られる:性能は良いが flatpak が壊れる panfork か、性能はクソだが flatpak はまあまあの panfrost か。
私のオススメは panfork を使って flathub を忘れること。Raspberry Pi の Pi-app を試すといい。
まとめ:
とにかくこのノートPCを半年以上使ってみて、感想はいろいろある。欠点は多いが、少なくとも「使える」レベルには達しているし、自分がこれまで使った中で「最も体験の良い Arm Linux ノートPC」ですらある。前に使った Pinebook Pro はひどくて、スリープも休止もダメだった。世に出回っている「Raspberry Pi ノートPC」や「オープンソース Arm Linux ノートPC」の類は、カーネルが休止に対応していないことなんて教えてくれない。
だから長時間のスリープ・待機に対応していることは重要で、この点で cool pi のノートPCは非常によくできている。
もう一つは cool pi のコミュニティ環境が良いこと。公式フォーラムの公式スタッフは非常に活発で積極的で、問題にも真剣に対応し、正しい答えをくれる:
https://cool-pi.com/ (愛してるよ george)
また、売ったものにはアフターサービスもあり、その許容度は高い。常識の範囲内なら修理も部品交換もしてくれる。この姿勢は評価したい。
振り返ると、最大の不満はやはり高速タイピング時にキーが化けること。これは実使用に響く。他の不満……バッテリーの小ささや GPU ドライバなどは、正直そこまで耐えられないものではなかった。むしろ RK3588 シリーズへの興味をかき立てられ、同類の別製品まで買ってしまった。それはまた後日ということで。
Cool Pi CM5 laptop は現在 Genbook RK3588 の名でクラウドファンディング中で、将来の「正式版」ではより高クロックのメモリと大容量バッテリーを提供すると謳っている。少なくとも今はまだない。
https://www.crowdsupply.com/shenzhen-tianmao-technology-co-ltd/genbook-rk3588
国内なら、拼多多でもメルカリでも私が買ったような「非正式版」が買えて、値段はかなり安い。ただ公式のクラウドファンディングの進み具合を見る限り、「正式版」が本当にいつ出るのかは怪しい。
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