『虹彩都市』レビュー

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Keyがテンセントに買収されてから、ビジネスの方向性は完全に変わった。妙な……しかし妙に現代的なやり方に舵を切ったのだ。

ひとつは古いIPの熱に便乗して残りカスを絞り取ること。もうひとつは「短くて早い」小規模作品を次々と出し、高速でイテレーションを回して全体の売上を押し上げること。たとえば「Kinetic Novel」という新シリーズは「選択肢なし」のビジュアルノベルを売りにしていて、シナリオと演出を主軸に、より立体的なゲーム体験を提示する。

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まあ、これも理解はできる。ゲーム、とくにビジュアルノベルってのは一度開発してしまえば複製コストはほぼゼロだ。作品数さえ多ければ、定期的にセールを打てば多少は売れるし、後の不労所得も期待できる。伝統的なギャルゲーメーカーにとっては悪い話じゃない。だから昨年から今にかけて、Keyの新作が次々と出てくるわけで、今回の新作が『虹彩都市』だ。

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物語の舞台は未来社会。ARやMRに近い仮想複合現実技術が普及し、人間は「Plant」と呼ばれる人工虹彩を埋め込むことで、現実に仮想映像の投影を簡単に見られるようになっている。ネットと科学の発展に伴い、その手の犯罪も増加の一途。主人公はサイバーセキュリティ案件を扱う捜査官で、日々の仕事は関連犯罪の処理と追跡だ。

そんな主人公が奇妙な事件を追っていたところ、謎の犯罪者を偶然見つける。そいつは追跡も制御もできない特殊なPlant虹彩を持っていて、警察は「Cheat Plant」と呼んでいた。主人公はその逃亡犯を追ううちに頭に血が上り、許可なくネット遮断ツールを使ってしまう。結局犯人は捕まらず、区域の住民の生活にも迷惑をかけた。

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警察は主人公の違反行為を厳しく叱責し、郊外へ左遷する。郊外で主人公は自分のARの中に「百花」という少女の投影を見る。百花には覚えがあった。かつて同じ病院で入院仲間だったのだ。だがその後、百花は病気で死んだと聞かされていた。まさか百花が投影の中に「復活」しているとは。

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この百花の投影の助けを借りて、主人公はあの「Cheat Plant」を持つ犯罪者を追跡し続けられる。さらには、そいつが「Cheat Plant」を量産して何かを企んでいることまで掴む。しかも不思議なことに、主人公も犯罪者も、この「百花」の投影が他人のPlantを制御し、「Cheat Plant」すら無効化するスーパー権限を持っていることに気づく。犯罪者は百花を「神の目」だと言いかけたが、言い終わる前に主人公の上司に光速で逮捕され、主人公にはこの犯罪者と関連事項を口外するなという封口令めいた措置が下される。主人公は納得がいかず、調査を続けながら「百花」の身元も調べる。そして驚くべき事実にたどり着く。百花は何年も前に珍しい病気で死んでいた。父親は「研究」を理由に百花の復活を試み、その方法のひとつとして百花の目を基盤に「Plant」という投影虹彩を開発し、百花を投影の中で生きながらえさせようとした。結果「Plant」は成功し、百花も死に、さらには自我を閉ざして、高度な権限で自分が死んだ病院を封鎖し、誰も近づけなくしていた。何年も後に主人公が再び百花と出会ったことで、その制限が破られたのだ。

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これが「Plant」という投影虹彩が生まれた因果であり、百花がスーパー権限を持つ理由も、虹彩そのものが彼女の目を基に作られたからだ。あの犯罪者の「Cheat Plant」は、虹彩の生産過程で管理者権限を持つプロトタイプが紛失・流出し、それを拾ったにすぎない。

物語の終盤、主人公は会社上層部で黒幕、すなわち百花の父親と対峙する。今になっても百花の父親は百花の復活に執着し、仮想現実投影で娘を永遠のものにしようとしていた。しかし主人公は弁証法的な見方を突きつける。百花はもう死んでいる。今の「百花」は百花の元の性格を人工知能で模倣した「投影」にすぎない。その「投影」を永遠のものにしたところで、それは元の百花本人なのか?

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百花の父親はしばらく考え、手を放つことを選ぶ。主人公は百花の投影と別れを告げ、百花は消え、花びらとなって空中に散り、都市全体の虚構投影の一部となった。それ以降、Plantという虹彩技術は完全にオープンソース化され、誰もが自分の投影虹彩を作れるようになる。ある者はより良い夢の実現に使い、ある者は良からぬことに使う。だが結局のところ、「Plant」という技術は大企業の独占ではなく、一人ひとりのものになった。「百花」もある意味で本当の永遠を手に入れたわけだ。そして主人公は捜査官を続け、街でさまざまな犯罪を叩き、社会は新たな段階へと進んでいく。


今回の『虹彩都市』の脚本を担当したのは、愛憎入り混じる松山剛だ。この男、SF設定のリズム感はなかなか悪くない。説教くさくもならず、退屈にもならず、「SF」と「情感」の間でいいバランスを取る。ただ、こいつは話を放りっぱなしにする、いわゆる穴を掘って埋めないタイプでもある。今回のゲームでも細かく語られない穴がたくさんある。主人公が子供の頃に百花と知り合った経緯も詳しく語られないし、背後にある大企業の人体実験も語られない。あのCheat Plantの犯罪者と企業上層部の複数の管理者の多重人格めいた話も語られない。Keyの短編だから尺の都合で削ったんだろうと多くの人は思うかもしれないが、俺の松山剛に関する理解では、長編でもこいつは詳しく語らない。過去に彼のライトノベルを読んだとき、それが非常に腹立たしかった。

とはいえ今回のゲームにもテーマはある。主人公が捜査官という設定から『PSYCHO-PASS』を連想しやすいが、最終的な主旨はある程度違う。人工知能技術で「復活」した死者は、本当の復活と言えるのか?

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この話題はなかなか深い。現実でも、死んだ人を人工知能で復活させて想いを緩和しようとする人をよく見かける。ある程度の効果はあるかもしれないが、そんな「偽者」に本当に慰めを得られるのかは議論の余地がある。ゲームの中でも作者なりの答えが出ている。人は死んだら戻らない、前を向くしかない、と。まあ前向きではある。

ここで面白い話をひとつ。『虹彩都市』の開発は実は『Summer Pockets』の制作と同時期に進められていて、最初のコードネームは「Flower」だった。違うのは、制作チームに「伝統的なKey」の要素がほとんどないことだ。麻枝准の脚本も、Key顔の絵師も本作には一切関係ない。作曲は多少あるかもしれないが、比率は大きくない。ところが意外なことに、本作には濃厚な「Keyっぽさ」が残っている。後から追加された脇役たちの「仲間」設定や、オマージュかどうかわからない泣かせの橋段など、多かれ少なかれKeyの影が見える。Keyがゲーム制作の際に関連の議論をして、わざと似た内容を入れてプレイヤーに親しみを感じさせているのか、とても気になる。Keyがこういうことをするのは初めてではない。以前の『Loopers』もKeyのオリジナルスタッフではなく、同じように既視感を生んでいた。

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ゲームシステム面では、なんとゲームパッド対応が内蔵されている。さらに「コンシューマ級」の設定項目も各種揃っていて、将来Switchに移植される可能性も排除できない。本作は企画から制作、発売に至るまで、現代市場に合わせた改良が多く見られる。Keyという大企業にとってこのやり方は正しいとしか言いようがない。自ら変革しなければ、待っているのは渦社やAlcotのような緩やかな死だけだ。

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