『トリプルペアリング』レビュー
回る三角:トリプルペアリング
新作を流れ作業で出すことで定評のある老舗・HookSoftの新作が出た。今回のテーマは「三角恋愛」。正直、このテーマを見たときはちょっと驚いた。何しろ「純愛」一筋の老舗ブランドなら、「一発で妃を選べる」ゲームを出すべきであろうに、胃が痛くなるような、二股どころかNTRの赤線に近づく「三角関係」とはこれいかに。
とはいえ日本のギャルゲー市場がじわ下がりしている現状を考えれば、何か爆発的なものを出さねば人気も話題も取れない、というのも分からなくはない。実際、発売後の初回起動はなかなか衝撃だった。まず本作は、あのクソみたいな720p解像度の画面を完全に捨て去り、1080pはおろかそれ以上の画質へと移行している。おまけに動的な表情効果まで搭載し、ヒロインが表情を変えたり瞬きをしたりする(技術的には昔からあるが)。そのうえ使えるかどうか怪しい表組みの演出や顔文字シールで漫画っぽさを盛ってくる。少なくとも見た目は面白く、従来の「平面会話シミュレーター」よりずっと生き生きしている。

一方、シナリオのほうはいたって普通。今作は大ヒロイン3人に小ヒロイン3人という構成で、こんな設定にした理由は例の「三角関係」のため。共通√で選択肢によって三人の間で好感度を競わせ、誰かを選ぶと好感度が二位のヒロインがしょっちゅう乱入してきて、いわゆる「三角恋愛」の場面を作り二択を迫る。ランダム性が高そうに見えて、実際はHookが考えうる全パターンの物語を総当たりで書き並べただけであり、「使い回せる」ものはすべて使い回している。この手触りは実に「手作業」感が強く、HookSoftが「エロゲー脚本の手作業仙人」にでもなったかのよう。最低効率の手段で、どうにか時代遅れに見えない程度のことをやってのけている。実際のところ「遊び」や「映え」では中国産作品や実写ゲームにすら見劣りするが……しかし業界の老人臭がここまで強くなった日本で、この手の変革ができるだけでも大したものだ。山頭が乱立する老舗メーカーに団結と譲歩を期待するほうが無理というもの。

物語そのものは語るほどもない。これは物語志向のゲームではない。大ヒロインの一人はお嬢様で、生活体験と恋を味わうために主人公の学校へ来て関係を持ち、最後は階級の違いから父親に反対されるが、結末はもちろん大団円。もう一人は優しいお姉さんで実家の食堂を手伝い、情緒も安定して人当たりもよく、最後は主人公とともに食堂を続けることになる。残る一人は典型的な地雷女で、昔主人公と何かあったらしく、再会後にまた関係が始まる。気性が荒く他人の目を気にしすぎて生きづらく、無駄に騒いでばかりだが、最後は主人公に宥められて落ち着く。小ヒロイン3人はといえば、メイドはただのギャップ狙い、教師も同じくギャップ狙い、鍵付き√の妹は兄が好きで周囲の目は気にせず、結婚するかどうかも気にしない恋愛至上主義の王道パターン。

シナリオ以上に特筆すべきは「恋愛感」の表現である。超高解像度と豊富な表情、そして優れた「漫画演出」のおかげで、ヒロインたちと一対一で会話する時間は明らかに以前より面白い。ちょっとした小ネタも十分ツボを押さえていて、遊んでいて楽しい。例の「三角恋愛」要素も、要は「プレーオフの二択」のような段階にすぎず、女二号を選ぶ権利は残されているし、選択肢次第で覆すこともできる。先に一人が退場するだけだ。
いつからか、大半のギャルゲーはすっかり「シナリオ重視」の産物、すなわちビジュアルノベルになってしまった。だが本来のギャルゲーは純粋なR18であり、のちに『同級生』『下級生』の革新を経て「合理的なエロス」という考えが提唱され、「恋愛シミュレーション」を主軸にした遊びから「ギャルゲー」という言葉が生まれた。シナリオは確かに重要で、物語を通じてヒロインの魅力を語ることもできる。しかし、だからといってシリアスな超展開がなければ「恋愛感」を描けないわけではない。本作『トリプルペアリング』でHookSoftが自分のコンフォートゾーンを取り戻したのは喜ばしい。特に私のような大齢童貞には、画面の中の二次元美少女とおしゃべりしておちゃらけるだけで十分楽しいのだ。異世界転生やバトルなんて一切求めてはいない。私と同じような好みなら、本作は間違いなく刺さるはずだ。おそらく上半期で、この「恋愛の感じ」を味合わせてくれる唯一のギャルゲーだろう。
しかも本作は「実用性」もウリにしている。実用的かどうかは疑問だが……

ちなみに本作についてHookSoftは世界同時多言語リリース、公式中国語版も含むと発表し、ニコニコ動画のアカウントで大々的に宣伝、一部の連中は大盛り上がりだった。ところが私は日本語版を遊び終えても、公式中国語版はまだ出ていなかった。しかも中国語の翻訳は出来が良くなく、かなり省略されている箇所もある。唯一評価できるのはタイトル『三角园舞曲』で、これだけは確かに言い得て妙だ。
そもそも主人公の名前は「三角円(さんかくえん)」で、周りを三人の美少女が囲んで回る、回る三角。それなら「三角円舞曲」で決まりだ。
ついでに言えば、意図的か偶然か、本作のあるヒロインのCVのキャラが、その人が参加している某有名ソシャゲ(中国出資・韓国制作・日本配信のあれ)で声を当てたキャラとかなり似ている……せいでしょっちゅう幻覚を見る。
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