『LoveRec.』レビュー
ALcotのゲームはあまりやっていないけど、大体の作風は同じ路線で、やや低次元(悪い意味ではなく)なツッコミと日常、可愛い萌えヒロイン、そしてそこそこの質の音楽って感じだ。『Clover Heart』の頃はまだそうじゃなかったと思うけど、『Clover Days』あたりでいつの間にかこうなっていて、Clover Daysに抱いた感想と同じで、どう見ても「大したことない」んだけど「悪くもない」。シナリオは少々陳腐だけど、クソ展開で殴ってくることもない。
LoveRec.の宣伝を見た時、キャラデザを眺めて……
「うわ、これ杏鈴じゃん」
そう、ヒトミというヒロインはClover Daysの鷹倉杏鈴とほぼ瓜二つ、髪色と瞳の色を変えただけ。仁村有志先生の画風がそうなんだと言えばそうなんだが、「完全に過去キャラを流用して売ってるだけ」感が出るのはなかなか微妙。ちなみに他の二人のヒロインは仁村有志ではないけど、こちらもやや違和感があって、全体としてはClover Daysほど可愛くはない。

ALcotのこれまでの作風からして、ただの萌え売りゲーだろうと思っていた。実際キャラデザやあらすじを見る限りそうだ。でも、終わってみると本当に違う印象を受けた。
ゲームは最初から、主人公がカメラ好きで、10年使っているカメラを大事にしているところから始まる。ある日、カメラの中に女の子が現れる。現実にはいないはずのその子が笑いかけてきて、こう言う。
「会いたい?じゃあ、私の方から会いに行ってあげる」
光が走り、妖精が主人公の前に現れる。妖精はヒトミ(hitomi、瞳、目の意味)と名乗り、このカメラに宿る妖精で、長年主人公に大切にされてきた恩返しに実体化したと言う。魔法が使えるから、主人公の願いを叶えてやる、と。
そうして物語が始まる。
主人公は学校へ行き、いろんな人に出会い、偶然から映画撮影の同好会を立ち上げ、学園祭で自分たちの撮った映画を発表することを目標に頑張る。ヒロインは4人。主人公の幼馴染、学校の先輩、親友の妹、そしてヒトミ。実はこのゲームにはルートロックがかかっていて、ヒトミを攻略するには他の娘を全員攻略しなければならない。

最初はすごく戸惑った。ヒトミが出現して設定が全部説明されるまで10分もかかっていない。なぜ主人公も周囲も妖精の出現に驚かず「あ、そ」で受け入れてしまうのか。ヒトミが学校に通う設定も魔法一発で片付く。この時は「ALcotはいつもこうだし」と自分に言い聞かせた。あの会社は昔「地球が明日滅びて幼馴染が大統領になる」みたいな設定を出したこともあるんだから、このくらい何でもない。
ヒトミ以外のルートは特に語ることもない、普通の恋愛劇だ。最初の分岐で選べるのは、主人公がカメラを誰に向けるか。向けた相手のルートになる。流れは正統派で、気になる、恋、デート、エロ、と続く。共通点は、主人公が後半で危機に陥り、ヒトミが「恩返し」の要素を発揮して主人公を救い、ハッピーエンドを迎えること。
他の3人を攻略するとヒトミの選択肢が現れる。最初の選択で「ヒトミをパートナーとして見る」を選ぶとヒトミルートに入る。ヒトミルートも序盤は淡々としている。主人公は学園祭で上映する映画を撮ることにし、ヒトミをヒロインに据える。撮る話はこうだ。
「人間界に来た妖精が主人公と恋に落ちて、最後に別れを惜しみながら離れていく話にしよう」
見れば分かる、これはヒトミと主人公の関係を下敷きにした話だ。ヒトミは最初、自分はカメラで撮る側だから撮られるのは違うと拒むが、主人公が条件を出して粘り、結局承諾する。条件は、同好会の中で自分の妖精としての正体を明かすこと。ご想像の通り、正体を明かしても誰も驚かず、妙にすんなり受け入れる。撮影は順調に進み、最後に主人公は江の島展望台で告白して妖精が消えるシーンを撮ることに。夕日の中、主人公はヒトミに告白する。ただしこれは演技ではなく本気の告白。ヒトミもそれを受け入れ、二人は恋人になる。

恋人になってから、ヒトミと主人公は映画の結末をハッピーエンドに変えようとする。周囲も快諾。その前に海へ遊びに行ってリラックスしようということになるが、海に行った日、主人公の周りでおかしなことが起き始める。夕方、一行が帰ろうとした時、主人公は自分と周囲以外の世界が止まっていることに気づく。ヒトミに告げると、ヒトミは慌てて、夕日のこの美しい時間がもう少し続けばいいと思って自分が勝手に魔法を使ったと白状する。
しかしおかしなことは続く。その夜が明けると、主人公とヒトミ以外は日付が一日前に戻っている。
つまり、海に行った日が月曜で、翌日は火曜のはずが、起きたらまた月曜。
ヒトミの説明では、海に行きたい気持ちが強すぎて、寝ている間に無意識に時間遡行の魔法を発動させ、時間をやり直してしまったらしい。だがすぐに、時間は進むどころかさらに遡り続け、遡行の記憶を持つのは主人公とヒトミだけになる。ヒトミはどんどん慌て、主人公は一方的に、ヒトミが過去に執着して魔法を使ったせいだと信じ、彼女をなだめてやめるよう説得する。
ついにヒトミが主人公に言う。
「分かったの。大丈夫、明日はもうこうならないから」

だがヒトミは最後のわがままを言う。最後の日を主人公とデートして過ごしたい、と。デートは楽しかった。その終わりに、主人公はヒトミが元の妖精の姿に戻るのを見る。ヒトミはゆっくりと、なぜこうなったかを話し出す。
主人公が今いる世界は、ヒトミが作った夢の世界。本当の主人公は雨の日に人を助けて水に落ち、意識不明で昏睡している。
「私はカメラの妖精。私の意味はご主人様に恩返しすること」
ヒトミは昏睡する主人公の夢に入り、主人公の未来に存在しうる可能性を見せた(つまり各ヒロインの個別ルート)。
「同じ始まり、違う未来の結末の夢の世界。妖精の恩返しの方法は、あなたに素敵な未来を見せること。どうか強く生きてほしい」

だからヒトミルートで主人公は他の娘の個別ルートの光景をたびたび目にし、既視感を覚える。主人公は自分が幸せな未来を見て、生きる力を得て、目覚める。
「でも、私はただの妖精。してはいけないことをしてしまった」
カメラの妖精であるヒトミは、未来を見せることしかできず、未来に勝手に干渉してはいけない。それなのにヒトミはやってしまった。自分が望む主人公との未来を見せ、新しい夢を作り、主人公と恋人になった。しかし妖精は妖精、人間と恋に落ちることはできず、本当の未来はない。だからヒトミの夢の日付は月曜で終わり、明日が来ない。
「じゃあ……さよなら。もう目覚められるわ、ありがとう」 ヒトミは最後の言葉を残して消え、主人公の目の前の世界は燃えるフィルムのように燃え始める。燃え尽きた後、主人公は目を覚ます。病院のベッドの上で、ヒトミの言う通り、水に落ちて長く昏睡していた。友達が心配していた。
目覚めた主人公はヒトミを探すが、カメラから妖精が出てきたなんて誰も聞いたことがない。カメラも水没で壊れている。他の人が撮った映像でも、本来ヒトミがいるはずの部分は完璧にカットされている。
主人公はヒトミの存在を疑い始める。ただの妄想だったのか、昏睡中の夢だったのか、ヒトミは本当にいたのか。
しかし会話の中で、他のヒロインたちがヒトミという名前に覚えがあると言う。自分の夢の中に……
彼女たちも主人公と幸せな結末を迎える夢を見ていた。その内容は、主人公が夢で見たヒトミの言う「別の可能性の未来」と一致していた。つまりヒトミは魔法で昏睡中の主人公と他のヒロインたちの夢を繋いだ可能性が高い。ヒトミの存在する可能性がぐっと高まる。
その時、主人公のカメラが修理から戻る。中を開くとまだ再生でき、しかもヒトミの声が途切れ途切れに入っている。

これでようやくヒトミの存在を確信した主人公は、ヒトミに会う方法を思いつく。
その頃ヒトミは自分が作った空間で、自分だけの映画を流していた。ここがゲームの始まりでもある。映画の中でヒトミは一人の妖精として人間と恋に落ち、最後には一緒になれずに別れ、孤独に去っていく。
「これが……私の……ハッピーエンド」
ヒトミがつぶやくと、主人公と仲間たちが現れる。説得の末、ヒトミはようやく自分を許し、再び主人公と会うことを選ぶ。妖精と人間だけど、主人公は気にしない。

最後にヒトミについての映画が学園祭で上映され、なかなかの評価を得る。ヒトミは本物の妖精として、主人公のカメラの中に生きる。二人は直接触れ合えないけど、主人公は気にしない。自分のカメラと一緒に世界中の美景を撮って回ることを、恋人のヒトミと一緒に……
ALcotが今回仕掛けてきた展開は正直予想外だった。最初はバカゲーでカメラとエロいことするんだろうと思っていたのに、まさか最後に全部回収してくるとは、大したものだ。物語序盤の、各ヒロインとの薄味な恋愛線は伏線として深く埋められていて、しかもかなりミスリード。親友の妹が「誰かが救急室に運ばれて大勢が祈っている夢を見た」と言うのを、ずっとヒトミのことだと思っていたが、実はその発言者こそが夢で、本当は現実の主人公が救急室で祈られているのだった。すべての真相が明かされてから考えると、全部説明がつく。なぜヒトミは最初あんなにすんなり受け入れられたのか、なぜヒトミの説明は何でも通るのか、なぜ学校に行きたいと言えば行け、何でも思い通りなのか、なぜ主人公はあんなに順調に多くの友達に出会い、望む同好会を作れたのか。全部ヒトミの夢であり、ヒトミが後押しした結果だった。
ここまで、LoveRecのシナリオはかなり良い。特に最後のヒトミの叫びは上原あおいの演技が満点で、本気で魂を削っているのかと疑うほど感情がリアルだった。上原あおい以外のヒロインのCVは少し物足りない。志村由美が今回は妹ではなくお姉さん役で、ピュアXコネクタの妹との差が大きすぎる。親友の妹役の木ノ下ややはなかなか面白く、かすれた声とゆっくりした語りが印象に残った。また彼女に会えるかは分からない。
さらに珍しいことに、ゲームにはやたら時事ネタもある。膝に矢を受けたとか……

もちろん最後に強調しておくが、このゲームのシナリオは「ここまで」は良い。なぜならクリア後にExtraの章が出現するからだ。
章の内容は本編の結末に直結する。ヒトミはカメラの中で主人公と暮らし、残りの娘たちは諦めずに主人公を追いかけて争う。そこでヒトミが解決策を出す。ならばあなたたちの夢を繋いで、みんなで誰が一番主人公を愛しているか見せ合おう、と。

「レッツ、ハーレム!」
そしてゲームは惨無人道的な……数えよう、1、2、3、4、5……そう、5Pへ突入する。強力な5Pシーンの後、主人公はハーレムの主となる。主人公の母親もそれを見て、よくやった、4人も落としたと褒める。
……………………………………
このExtraの章はプレイヤーへのオカズ用福利だとしか思えない。本編と比べて意味はほとんどなく、付け足し感が強い。実際その通りで、Extraの文字はゲームの章の隅にあるだけだ。
だがLoveRecの今回の試みには賛否両論ある。批評空間あたりは大体普通で、多いのは主人公がやたら人を撮る失礼な行為を嫌う声(このゲームがLoveRecだって忘れるなよ、という牽制だろう)、そして主人公が地中海のハゲだという声(まあ僕もそう思う)。シナリオについては陳腐だという人もいれば、まあまあだという人もいる。国内では、わざと貶しているのか分からないが、このゲームを地雷と評する人がいて、理由は二つ。
1、ヒトミが最後まで実体化せず、カメラの中に生きているだけ。『はつゆきさくら』と同じでヒロインを虐げている。 2、最後のトゥルーエンドが、ヒトミが主人公の巨大ハーレムを作るというもの。みんなで集まってエロいことするなんて、地雷すぎる。
ALcotの過去作が穏やかすぎてファンが純粋すぎるのか、日本語が分かるギャルゲーマーは文系ばかりなのか、それとも低年齢層のプレイヤーが多いのか。とにかく、「ヒロインが実体化しない」「最後にヒロインが主人公のそばにいられない」程度で地雷と罵る感覚が理解できない。恋愛物語の本質は恋そのものを謳い上げることにあるはずで、主人公の恋が印象に残り、感動したならそれが良い物語だ。ヒロインの最後の運命なんて、恋愛物語の都合に従う結果でしかない。でなければ姚壮憲なんて何度も袋叩きにされている。
そもそも、ヒトミは本当に死んだわけじゃない。主人公のそばにはいる。何が地雷なのか。無理やり死なせて二人が永遠に会えなくなるよりマシだろ?子供の頃、神仙譚を読まなかったのか?白娘子なんて誰か地雷と言ったか?

二点目については、悪意のある解釈としか言えない。LoveRecの設定では、ヒトミルートを終えるとタイトル画面がALL Clearになり、あのExtraルートは隅にあるだけの存在で、本線でも何でもない。ただの福利として置いてあるだけ。これを本線のトゥルーエンドだと真面目に言われても困る。『グリザイアの楽園』のDave教授のオナニーチャンネルを本線と言うのか?あれは実の母親とやっちゃってるぞ。
ともあれ、LoveRecは期待以上のサプライズをくれた。最初は妹系萌えゲーだと思っていたら、ちゃんと自己完結する展開があった。日常パートの脚本はややぎこちなく、大半が古いギャグとわざとらしい萌え売り、そして主人公がこれまでのALcot主人公の「エロさ」を失っている。脚本家は努力して真似しているけど、あまり似ていない。それでも全体の物語の印象は損なわれない。主人公に愛されたカメラが妖精を生み、主人公の願いを叶えるのを手伝う話は、昔の貝殻の精の話と大体同じレベルだろう。

最後に特筆すべきは、LoveRecには「妄想モード」という機能があり、プレイヤーが脚本や小場景を自分で編集して再生できる。簡単に言えばゲームのマップエディタのようなもの。制限はあるが、良い先例を作ったと思う。今後、プレイヤーが自分で小劇場を演出できるゲームは増えていくかもしれない。
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