『箱庭ロジック』レビュー

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日本語を学んで気づいたんだが、日本語由来の漢語ってけっこう多いよな。「暴走」とか「違和」とか、まあ「箱庭」もそのひとつだと思う。

「箱庭」って言葉はアニメ作品の………………歌詞でよく見かける。はこにわのせかい(箱庭の世界)とか、そういうやつ。別に難しい言葉じゃない。箱庭、箱庭、箱やら盒やらのなかの中庭。欧米風の言葉で言えば SandBox、サンドボックスか砂盤。もっと中国っぽい言葉なら「盆景」もある。じっさいこの概念のもともとの出自は欧米で、日本が取り入れたあとに「箱庭」と呼んだだけ。ここでその日本人に本気で感謝したい。サンドボックスとか、ほかの何かしらにしなかっただけで、もう嬉し涙が出てくる。

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もちろん「箱庭」と縁が深いのは箱庭療法ってやつだ。箱庭療法は心理診断に関わる療法で、患者に「箱庭」を与えて理想の小さな世界を構築させ、その世界の要素からその人の心理状態を推測する。

ざっくり言えば、わりと高度な心理テストみたいなもの。

だから箱庭ロジック(箱庭 Logic)を初めて見たとき、探偵とサスペンスの看板を目にして、このゲームの裏にはただならぬものがあると感じた。

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箱庭ロジックの制作会社は翠の海とソラの花を作った Cabbit。この作品で Cabbit のゲームは全部やったことになる。この会社のシナリオ設定はけっこう俺の好みで、実際そうだった。ただ、思ってたより一歩足りない。

箱庭ロジックの設定は、主人公が特定の人物しか入れず住めない独立区画の実験都市「箱庭市」で暮らしているところから始まる。最新技術とルールを採用した街で、住めるのは抽選に当たった者か、特定の招待を受けた者だけ。主人公は母親が学校の教師なので、その縁で入居の機会を得た。ところがゲームが始まると、主人公は学校の紅鶴会(生徒会みたいな地位)から箱庭市の少女失踪事件の調査を依頼される。

「6人の女の子が箱庭市で失踪している。真相が明らかになるまで調査に参加してほしい」

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主人公はよくわからないまま引き受け、そこへ探偵服を着た少女が現れる。前園霧架と名乗る。最後に失踪した少女の親友だという入谷瑚子も現れて、ふたりは一緒に真相を調査しようと言い出し、物語が動き出す。

ここで言っておくと、箱庭ロジックは調査の冒頭で煙幕を張りすぎていて、全体の流れがわかるまでかなり惑わされた。調査の最初、途方に暮れた主人公は最後に失踪した人物から調べ始める。その人物は小太妹で金に困っていて、よくバイトを探し回っていた。やがて主人公は「箱庭市」で「箱庭」というスマホゲームが流行っていることを知る。スマホで「箱庭ゲーム」が遊べて多くの人が参加しているが、大事なのはそこじゃない。主人公は「箱庭」のゲーム内で、私的な仕事やバイトの斡旋人がスマホから直接連絡してくることに気づく。

最後に失踪した小早川は金を切実に必要としていた人物で、彼女も「箱庭」をやっていた。だからこのゲームを通じてバイトを探していた可能性が高い。

そこで主人公はえいやとバイト希望者を装って斡旋人が釣れるのを待つ。するとすぐに斡旋人が来た。よく見れば、主人公が通っている箱庭市のバーのオーナーの娘で、そのバーでバイトしている子だった。

バイト娘は最初、黒幕扱いされたが、のちに自分は仕事を紹介しているだけだと白状する。オーナーのこともよく知らないし、自分も母親の破産で身売り契約を結ばされて箱庭市で働くことになったのだという。彼女の話では、自分は誰かに興味を持たれたはずで、実際には後ろの事情をまるで知らない。ただ普通にバイトを紹介する紹介人をやっていただけだった。

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そのころ主人公と霧架は路上で奇妙な少女を見かける。霧架は彼女を知っていた。りるという名前の孤児で、さらにぞっとするのは、彼女はとっくに失踪した、というか死亡したと見られていたことだ。主人公が見たりるが幽霊かどうかは正直わからない。そのりるは何度か現れては主人公に「もう調べるな」と警告し、霧架にも「自分にはやむを得ない事情がある」と告げていた。そして霧架に暗号化された手紙を渡す。解読すると Ruins of the hospital。霧架と主人公は郊外の病院跡へ行くが、中には何もなかった。

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ある日、霧架が主人公の目の前で、ふっと消えてしまう。

主人公は霧架がどこにいるか考え始める。そこで Ruins of the hospital の暗号のメモを思い出す。階段状の文字が主人公にひらめきを与え、以前の病院跡の地下室で、麻酔をかけられ縛られた霧架と、精神操作を受けて霧架の両脚を切り落とそうとしているりるを見つける。

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ひと通り格闘したあと主人公はふたりの少女を救出する。りるは自分が操られていたとしか言えず、目覚めたあとのことはよく覚えていない。ただ、自分は多くの人の腕や脚を切ったらしいという記憶だけがあった。精神操作薬を投与され、意識は朦朧としていたのだ。

調査は続く。少女失踪事件の真相が少しずつ明らかになっていく。やがて主人公は、依頼してきた生徒会にも隠し事があると気づく。たとえば少女失踪の件で生徒会長は嘘をついていた。

実際に失踪した少女は3人だけ。先の3人は生徒会長が学生会の寮に隠していて、毎日学校にも行かず授業も受けず、のんびり遊びまくっていた。

主人公と霧架に迫られ、生徒会長は3人を隠していた事実をしぶしぶ認める。

「あの子たちは家族とうまくいってなくて、学校にも行きたくないって言うから、隠して毎日遊んでた……まあ家出みたいなものだと思ってくれ」

「外には失踪したと伝えた……最初はひとり隠しただけだった。それからふたり目、みっつ目。そしたら突然4人目がいなくなった。でもそれは私が隠したんじゃなくて、本当に失踪したんだ。続いて5人目、6人目……怖くなって、君に調査を頼むしかなかった。前のことをばらさないように、多かれ少なかれ嘘をついた」

「じゃあ生活に必要な資金はどうするんだ? このままだと飯も食えなくなるだろ」

「見てのとおり、うちの父は私立病院をやってる。最近病院で血液が足りなくてね、献血に行くんだ。売血は違法だし病院もそんなことはしないけど、多少献血すればコネでおつまみの食料を多めにもらえる……死なない程度でいいんだよ」

そこで主人公は、会長の腕に注射の跡を隠す絆創膏があることに気づく。

「頼む。私が生徒を隠してたのは悪意なんてなかった。でも後の失踪は私の仕業じゃない。調査を続けるなら、必ず黒幕を捕まえてくれ」と会長は最後に懇願した。

「血液が足りなくなる理由、わかるか? 誰かが生きた人間に麻酔をかけて腕や脚を切り、殺さないように救急用の血が必要なんだよ」

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会長は呆然とした。

調査は続く。新たな人物、桜庭萌美が現れる。主人公の目の前で無理やり拉致されそうになり、主人公が救出。彼女は次に失踪するかもしれないターゲットと見なされ、調査に加わることになる。

調査の結果、失踪した最後の3人のうち2人は隣の貴族女学校の生徒だとわかる。その女学校を調べるなかで奇妙な人物、腕のない少女が発見される。

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「私は腕を先生に捧げました。ふふふふ、私ほどの覚悟を持つ人はいません。先生にとって私の重要性は必然なんです」この少女は精神が少しおかしいらしい。彼女の言う「先生」とは、霧架の兄だった。

霧架の兄は少女の話を意味不明だと否定する。自分はその学校の美術教師にすぎず、何も知らないと言う。

霧架も兄を信じたい。自分も先日脚を切られかけたし、この少女も同じような経験から精神がおかしくなった可能性が高い。

そのとき主人公は桜庭萌美に秘密があることに気づく。たとえば彼女には別の顔がある。それは主人公が彼女の家を訪ねたときにわかった。

桜庭萌美はあっさり認める。自分は普通の生徒ではなく研究者で、学校で女学生の日常生活の心理や犯罪動機なんかを研究している。以前自分を拉致させたのも自分が手配したもので、周囲の人間が自分が拉致されたらどう反応するかを見るためだった。

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「この箱庭市自体が研究者の楽園で、みんなここで研究してる。私がやったってどうってことない、別に珍しい話でもない」そう言い残して、桜庭萌美は調査チームを去る。

おかげで主人公の調査はますます奇妙になる。バイト娘は紹介した仕事が研究だと言い、りるは他人の臓器を切ったのも研究のためだと言い、桜庭萌美も自分は研究をしていると言う。しかもこの街には大量の奇妙な研究がもともと存在するという。じゃあ失踪した少女たちも何かの研究のため連れ去られたのか?

霧架は主人公を連れて箱庭市最大の大学、つまり研究センターへ直接話を聞きに行く。着いてみると、主人公の母親が待っていた。

「やっと来たのね」主人公の母親は一冊の日記を取り出し、その日記には主人公と、主人公がここに来た真相が書かれていた。

主人公の母親は心理医で、箱庭療法を得意としていた。箱庭療法の最適な研究対象は幼児なので、ある幼稚園で子供たちに箱庭を組ませる遊びをさせ、自分は観察とデータ収集で研究していた。ただ子供同士のトラブルは避けられず、ある子が組んだ箱庭の中のものが盗まれた。同じクラスの女の子が最も疑わしい犯人とされたが、主人公が擁護して無実だと主張した。すぐに主人公は疑問を持つ者たちと殴り合いになり、突き倒されて後頭部を打ち、重傷を負って意識が朦朧とした。その女の子こそ霧架だった。

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主人公の母親は胸を痛め、これ以上主人公が幼稚園でいじめられないよう願って、こっそり教師に会い、金を渡して主人公を多めに見てほしいと頼んだ。

その行為を他の子供が見ていて、すぐに多くの人の耳に入り、最後には教師の収賄、主人公と母親の贈賄という話になってしまった。子どもたちを騙してゲームをさせ研究するという話も漏れそうになり、その教師は多くの疑念に耐えきれず自殺した。

主人公の母親はその件で脅され、箱庭市構築計画に加わった。この街の目的は研究で、研究者たちは自分の条件に合う人物を選んで住まわせ、各方面で便利な条件を提供する。その代わり、ここに住む者たちはみな研究対象で、さまざまな非道な研究も行われていた。四肢の切断、萌美のような犯罪心理研究、そして主人公の母親のような箱庭療法研究。

「じゃあ、失踪した少女たちは……」

「ええ、失踪を口実に、おそらくもう死んでいるでしょう」

真相を知った主人公と霧架は、その事実を受け入れるのに長い時間を要した。箱庭計画の闇はふたりでは止められない。だがその前に、霧架にはもっと気になることがあった。自分の兄だ。

自分の兄も研究をしているはずで、主人公の母親が言うことが本当なら、その兄にも隠すことのできない何かがあるはずだ。兄に腕を捧げると言った少女は、精神の問題だけでは片づけられない。

最後に霧架は主人公を連れて兄に白状させる。兄はあっさり認めた。女性の四肢を切断して生体彫刻を作っていること、そして最も欲しい彫刻は妹の霧架の彫刻だということ。りるを操ったのも兄で、りるに霧架を切らせようとしたのも兄だった。

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霧架の兄が正気を失って今にもという瞬間、入谷瑚子が警察を連れて駆けつけ、兄は逮捕される。兄が失踪少女たちのすべての罪をかぶり、事件は終わる。

こんな結末はあまりに暗い。本当に研究をしていた者が誰なのかまだわからないし、箱庭市の闇はまだまだ終わらない。


箱庭ロジックは鍵を使ってルートを解放する方式を採用している。つまり分岐を進めると分岐ヒロインから鍵をもらい、それで本編を進められる。要するにシナリオロックで、RPGの迷宮探索に少し似ているだけだ。

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全体を見ると、箱庭ロジックはシナリオ的に大きな煙幕で、前半の調査はほとんど意味がない。最初から主人公の母親に直接白状すれば解決した話だ。長々とした調査も、結局は主人公がうろうろしていただけで、箱庭市に闇の研究が存在すると最後に信じたところでようやく物語が本当に動き出す。

とはいえ箱庭ロジックの最後のどんでん返しに伏線がないわけじゃない。共通ルートでは、各場面の合間に謎の日記の内容を1日ずつ閲覧できる。この日記が、最後に主人公の母親が出す、泥棒とされた霧架の日記に対応している。だから最後に真相が明らかになっても、俺はそれほどクソ展開とは感じなかった。むしろ霧が晴れるような爽快感があった。ただ前半に何かが足りない気もするし、最後の突然の展開と調査の断絶はあまりに大きい。

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それに何より、この鍵で解放するシナリオロック……マジで鬼畜すぎる。全部クリアしないとダメなやつ。

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ゲームは探偵謎解きの看板を掲げているが、謎解きらしい謎解きは Ruins of hospital くらいで、あとはほとんど当てずっぽうに進めてシナリオを解放していくだけ。本編は霧架と瑚子の2ルートに分かれ、瑚子ルートは側面からの調査、霧架ルートは True End へ続く。ただ振り返ると、瑚子ルートの内容はほぼ栄養がなく、萌えとでたらめばかり。むしろ入谷瑚子というキャラ自体が萌え担当で、彼女が出てくると調査はほぼ停滞する。彼女のドMで節操がない性格にもツッコミが追いつかない。小倉結衣の声も相まって、もう…………

ゲームの結末にはけっこう言葉を失った。最後には何も解決していないし、失踪した少女たちは死に、ヒロインの兄は罪をかぶっただけ。でもよく考えれば筋は通っている。ふたりの学生がこんな大きな計画を調査して、何ができるというのか。炮姐でも一方通行でもないし、超能力ゲームでもない。こんな結末にも一理あるのかもしれない。

ゲームは Cabbit のいつもの特徴を引き継いでいる。日常は癒やし系、音楽はいい、OPはクソ、分岐は面白い、そして…………黒化すべきとき、血を見せるべきときは容赦しない。

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全体的に見ればこのゲームはなかなか面白い。これが Cabbit のゲームすべてに共通する俺の感想だ。シナリオにちょっと捻りがあるが、どこが具体的に捻っているのかは言葉にできない。それでも遊び終えると面白かったと思える。ゆきえ先生の絵柄はかわいくて、これもセールスポイントのひとつ。ただ先生が最近出した「中二病少女恋愛方程式」はマジでクソで、抜きゲーとしてもクソだった。先生には早く cabbit に戻って、こういう設定が面白く、展開が速く、選択肢も多いゲームをまた出してほしい。

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