『幻のディストピア』レビュー

我就是流氓

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俺がこれまでに読んだ「爽文」は二作品だけだ。

一つは最後まで読んだ。Rice Wu の『我就是流氓』、そしてその完結編『我就是流氓:龙战星野』まで追いかけた。もう一つはこれもそこそこ有名な『坏蛋是怎样炼成的』だが、こちらは読み終えていない。

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この二作品を、ACG 界隈で分かりやすい例えにするなら、前者は SAO、後者は Log horizon ってところだ。そして俺はどちらかと言えば爽快な方が好きなので、『我就是流氓』は読み切ったが、後者は途中で投げ出した。

『我就是流氓』の主人公は筋金入りのチンピラで、ほとんど悪事をやり尽くす。だが対外的なことでは中華民族の意地を見せてくれる。インドを殴り、アメリカを蹴り、ヨーロッパを蹂躙し、日本を踏みつける……とまあ、そんな感じだ。しかも第二章でさっさとチートを手に入れ、あちこちで超能力を振り回して人を殴る。ほとんど負け知らずで、負けても倍返しにする。チンピラではあるが、殴る相手も大体チンピラなので、どうにもこうにも黒が黒を食うような感じに見える。作者は社会のクソどもをこれでもかと描写し、自分で生み出した主人公というチンピラにそれを殴らせる。見ていれば当然、スカッとするわけだ。

一方の『坏蛋是怎样炼成的』は、作者がどうも主人公を善人に見せようと必死で、「主人公は悪党だが、情けも義理もある悪党だ」という雰囲気を醸し出そうとしている。しかも物語に起伏を持たせるために、無理やり設定をこねくり回して合理性を保とうとする。さらにアホなことに、主人公に何人も女の子をあてがって恋愛劇を書かせている。『我就是流氓』の主人公が圧倒的な実力で女を落とすのとはまるで次元が違い、妙な気分にさせられる。悪く言えば、この作品の恋愛劇はかなり無理がある。その無理さ加減は『魔法科高校の劣等生』並みで、女性の美貌の描写には吐き気がした。女の子は主人公を見るなりベタベタし始め、主人公も女の子を見ると途端に弱くなる。完全にアホな都市アイドルドラマで、吐きそうになった。

何より大事なのは、もともと全部でたらめなんだから、筋書きや対抗関係でいちいち合理性を保とうとする必要なんてないってことだ。爽文、爽文と言うけれど、合理性なんかあったらどうやって爽快になるんだ? 結果として俺は全然爽快になれず、しかも話が冗長なので投げた。

何年も経った今も俺は爽文を読んでいない。『我就是流氓』を超える作品がどうしても見つからないからだ。あれはもう爽文の最終奥義を極め尽くしたとしか思えない。内に秘めた幻想要素も十分にハイライトになっていて、切り離しても問題ないくらいだ。そのせいで、その後いくら 11 区の少年漫画だの魔裂だの SAO だのを見ても、大したことない、普通だな、としか思えない。何はともあれ、少なくとも俺には全然「爽」とは呼べない。

長々と書いたが、要はこういうことだ。爽文を書くなら、一つだけ守るべきことがある。読んで爽快であること。主人公が四方八方を蹴散らす。たしかに生意気だが、殴る相手はもっと気持ち悪い連中だ。それを逆手に取れば、ただの悶々とした気分にさせられるだけだ。

幻のディストピアは俺が最近やったゲームだ。体験版はかなり前にやった。体験版の物語では、未来世界がスラムと富裕層街に分かれていて、富裕層街にも等級があり、一区が最高で五区が最低。主人公は三区から一区に移ったお坊ちゃまで、かなり金持ち、かなりわがまま、かなりすごい。毎日学校に行かず、家でメイドをからかい、学校でお嬢様をからかい、暇さえあればチンピラの女神を NTR し、事あるごとに金をばらまいて片をつける。

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正直に言おう。制作側はクズを造形して、ちょっと爽快感を味わわせようとしたのかもしれないが、明らかに俺は爽快ではなかった。

ゲーム内で主人公が平然と「学校に行かないのも、そのうち校長に金でも渡せば片がつくだろ」なんて言うのを見て、俺が思ったのはこれだ。

「このクズ、いつやられるんだ?」

そして体験版はここで終わった。

今の感想で言えば、「このゲーム、何なんだよ」と捨てることもできる。だがタイトルに惹かれたんだ。というか、中のカタカナに。

ディストピア:dystopia。簡単に言えばユートピアの対義語、反ユートピアという意味だ。

反ユートピア。各種のイキり作品がこぞって掲げ、使い古されてきたスタイル。それでも、この言葉がゲームのタイトルに入っているのを見て、俺は考え込んでしまった。

「幻の反ユートピアなんだから、体験版の序章は騙しなんじゃないか?」

「反ユートピアなんだから、後半に超展開があるんじゃないか?」

正直、ゲームが主人公の日常を描くときはかなりわざとらしくイキって書いているようで、主人公は完全に「俺は金を持ってるから何でもアリだ」ってな具合だ。オレはお金を持ってXXXXX勝手XXXXXが主人公の口癖になっているし、何しろ礼儀もへったくれもない。むしろ育ちがまったく悪い。見ていて殴りたくなる以外の何物でもない。

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だが物語の中盤で反転が始まる。まず主人公が神楽という彼女を作る。

実は主人公がこの彼女を作ったのは好きだからではない。ある日執事から「若いんだから青春らしいことをしろ、例えば恋愛とか」と言われ、街に出るとチンピラがいて、神楽がそのチンピラの女神だと知ると、主人公は「お前の女神、俺が気に入った。NTR してやる」と言い、やると言えばすぐやる。毎日金の力とあれこれのイキりで攻めたて、神楽は陥落。すぐさま主人公と一緒になり、そしてパコパコが始まる。

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パコパコの後、執事が妙に改まった顔で神楽を口封じにしないかと尋ね、主人公は「いや、記憶を消せばいい」と言う。

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こうして神楽という女の子は不可解に精神に異常をきたし、二度と現れなくなる。神楽を慕っていた少年は私立探偵に依頼し、主人公の身元を調べ始める。なぜ主人公がそんなにイキっているのか知りたくて。

探偵が出した結果は驚くべきものだった。主人公の今のお坊ちゃまの身分は実は偽りで、本物のお坊ちゃまの家族写真を見つけたが、本物のお坊ちゃまは身元不明、ご両親も事故で死亡。今のお坊ちゃまは別人が成りすましたものだった。

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この時点で俺はもう大作展開の匂いを嗅ぎ取っていた。あとは謎解きだけだ! すぐに主人公の黒歴史が暴かれ、最終的な物語の反転が始まるのか?

だが考えすぎだった。物語は分岐に入り、攻略できるヒロインは四人。そして一区のお嬢様来栖川葉子以外は、誰一人として本筋と一銭も関係がない!

一銭も関係がないって意味が分かるか? つまり主人公の黒歴史はそこで打ち止めで、後は純粋な恋愛劇だってことだ。

鈴森朱莉のルートには本筋に近い内容が少しだけある。主人公の学校は恋愛禁止で、主人公と朱莉の恋が来栖川葉子の反対に遭う。彼女は朱莉の親友として、主人公というクズに近づくなと要求し、さらに主人公を調査する。結果はやはり主人公は偽物だというものだった。

来栖川葉子は、主人公が朱莉から離れなければ朱莉に本当の身分を話すと告げる。

結果はどうなったか。主人公はとある日、行為の後に自分から朱莉に話す。

「俺は本当のお坊ちゃまじゃない。昔は貧しい子だった。でも今は金がある。それでもお前は俺を愛してくれるか?」

朱莉は考えるまでもなく「愛してる!」

最後に二人で葉子に会いに行き、「あなたが何をしても私たちは離れられない」と告げて、END。

ふざけんな、これは何のクソだ? 現実はもうこんななのに、ゲームの中でも現実の残酷さを突きつけてくるのか。俺は現実逃避したいんだよ!!!!!

最後に来栖川葉子ルートについて話そう。唯一 True End と呼べるルートだ。このゲームにはルートロックがないので、どれが正規の結末なのか判断に困るが、このルートは内容が少し多いとだけ言っておく。

来栖川葉子ルートは、ある日主人公が突然執事に、彼女を攻略することは自分の人生計画の一部だと言い、やると言えばすぐやる。さっそくこのお嬢様を口説き始める。

なぜ口説くのか? 彼女の父親は一区富裕層街の頂点に立つ人物で、おそらく主人公は高嶺の花を狙っているのだ。

口説く過程は正直言うのが面倒だ。一つは退屈すぎ、二つは現実すぎるからだ。デートしてチンピラを気取り、ヒーローよろしく窮地を救い、金をばらまく。くそ、金があるっていいなあ!

ついでに言うと主人公は弱い。このルートでは別のお坊ちゃまが主人公と殴り合うことになり、主人公はイキること以外何もできず、吊るされて汁が出るまで殴られる。最後は小細工で相手を片づける始末で、悪質としか言いようがない。

そして主人公はついに来栖川葉子を落とすが、自分も葉子に少しは情が移ったと気づく。ここで似たような展開が現れる。生徒会副会長もまた一人の男のチンピラで、葉子に片思いしている。葉子が主人公というクズに落とされたのを見て不愉快になり、同じく主人公を調査する。しかもまたあの探偵だ。(お前ら、この辺りには探偵一人しかいないのかよ?)結果はもちろんあの情報、主人公の身分は偽り、成りすまし、魔法の特技だとかなんとか。

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この時、葉子の父親も動く。一区で名の知れた上流人士、企業家、経済人、政治家とかなんとか。葉子の父親は娘が小悪党にヤられたと知って激怒し、主人公を始末しようとする。

最後は葉子の父親と主人公が対峙し、主人公が突然こう言う。自分は確かにスラム出身で、一緒に来た仲間と共に手段を尽くして本来の三区の資本家の息子の身分を奪い、その資産を動かし続けている。スラム出身だから富裕層が憎い。だから成り上がってから毎日トラブルを起こしている。それは復讐のためだ。ついでに主人公の目標は一区の頂点に立ち、スラムと富裕層が隔てられたこの世界を徹底的に壊すことだ、と。

ここでゲームは言う。そのスラムの場所の名前は………………ディストピアだと。

何だ、反ユートピアなんてなかった。ただの名前だったのかよ。

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ここで葉子の父親は主人公の話を聞き終え、突然こう言う。「ディストピアは貧しい場所だが、そこから出た者には強い絆がある。理解できる」と。最終的に主人公を許し、さらには主人公と手を組むことを選ぶ。主人公は順当に一区で最もすごい人物の娘婿となり、人生の絶頂に登りつめて、完。

ふざけんな、これは一体何のクソ展開だ?

このゲームの意義は何だ? 最後の主人公の陳述以外、俺は何を見ていたんだ? 金持ちがイキるのを見ていた? 金持ちが女を落とすのを見ていた? 金持ちが他人を NTR するのを見ていた? それなら抜きゲーをやった方がよほどマシじゃないか?

ゲームの物語はまったく意味不明だ。打ち切りだと言われれば多少は理解できるかもしれないが、それでもゲームには吐き気を覚えた。まず主人公そのものが気持ち悪い。爽文のような描写に見えて、主人公を徹底的な「悪」に仕上げている。俺たちには多かれ少なかれ正義感がある。本当の「悪」になりたい者なんていない。いや、Batman の Joker でさえ自分の論理とスタイルを持っている。だがこのアホな主人公はどうだ? 何もない。毎日「オレはお金を持って、勝手する」と言う以外に何ができる? イキるにしても、チンピラにしても、小悪党にしても、喧嘩もできない。むしろ吊るし上げられる。口だけ達者で他は全部ダメ。これでは主人公は「悪」でも何でもなく、ただの「アホ」だ。そんなアホを主人公に据えて、人格的魅力がどこにある? ゲームにとって何の意味がある? このゲームは「見ろ、アホでも女を落とせる。お前はアホ以下だ」とプレイヤーに告げるために作られたのか?

ゲームの OP と ED は悪くない。だがゲームには一銭の役にも立たない。絵柄も悪くない。だがゲームには一銭の役にも立たない。CG は驚くほど少なく、ゲーム全体でたったの 1.7G。これがどんなレベルの作品かはだいたい分かるし、そもそも高い期待を持つべきではなかった。だが俺は間違った考えを持ってしまった。今日の俺は本当に運が悪い。どうして思い悩んでゲームのタイトルだけで、どう見てもクソなクソを大口で飲み込んでしまったのか。

ゲームを削除した後、俺はやはり『我就是流氓』という小説を思い出した。小説の主人公も同じように横暴だが、主人公自身はアホではなく賢い人間で、強大な力を持っている。対して幻のディストピアの主人公は、アホが偶然 500 万を当てた後の姿のようだ。根っから金持ちの風格に欠け、知性も欠け、思い上がって行動し、完全に論理がない。

とはいえ、物語も間違ってはいないか。何しろ主人公の身分自体が拾い物なのだから……

ともあれ、このアホが女を落としてイキるのを見て時間を無駄にするのは無駄だ。このゲームをやった俺は、ある日地面にクソが落ちているのを見て、クソにスプーンが刺さっているからこれがチョコかもしれないと思い込み、食べ終わってから「なんだ、やっぱりクソか」と叫ぶようなものだ。

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まあ、自分で食ったクソは最後まで飲み込むしかない。このクソに毒がなかったことを喜ぶべきなのかもしれない。

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