『ソーサリージョーカーズ』レビュー

ソーサリージョーカーズ:実力イキり

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誰だってイキりたいものだが、目の前で他人にイキられるのは基本的に誰も好きじゃない。

「実力イキり」という言葉がある。ニュアンスとしては冷やかしに近いが、要はイキるに足る本钱さえあれば、いくらイキっても他人は文句を言えないということだ。

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「実力」という言葉で、以前友人と料理の話をしたのを思い出した。

当時の俺はマジでアホで、「一流シェフなら、作る料理は全部派手でクソかっこいいものじゃなきゃダメだ」と思い込んでいた。友人はそうは思わないと言った。

一流シェフの凄さは細部に現れる。たとえばトマトと卵の炒め物一つ取っても、料理ができる人と一流シェフでは、同じ材料と同じ作り方でも出来上がりは別物になる。

自分が作ったトマトと卵の炒め物と、親父が作ったそれを思い返してみても、確かにその通りだ。しかも親父のはかなり適当で、ヘタの部分すら取っていないこともあるのに、それでも食感は俺のよりはるかに上だった。

「だから実力さえあれば、一見ありふれたものでも、実力の違いはちゃんと表れるんだよ」

ACG作品でも同じことが言える。設定を奇抜にして注目を集めても、その後の展開が弱くて設定が空っぽの殻になり、完全にクソゲーと化す作品を俺たちは山ほど見てきた。

『アルドノア・ゼロ』を評価した時、こう書いた。「虚淵玄は血を噴き出すのが好きな脚本家なだけで、お前も血を噴き出せば虚淵玄になれるわけじゃない」と。

優れたシナリオのACG作品の成功と好評は、大抵あらゆる面での総合的な実力の賜物であって、設定が面白いとか絵が綺麗とか、ましてや自分の性癖に刺さるとか、そんな単純な話じゃない。抜きゲーだってそう簡単じゃない。黒タイツの豚足見て勃起する奴は、某氏以外にそうそういない。

作品の評価は概ね公平で、総合的な実力が全てを物語る。設定なんて所詮は宣伝文句に過ぎない。どんなにすごい作品でも、宣伝で目を引かなかったり、設定に既視感を覚えたりすることはあるが、制作陣の実力のおかげで、全体として王者のオーラを放つことができる。

そして『ソーサリージョーカーズ』はまさにそういうゲームだ。

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ゲームのタイトルはそのまま sorcery jokers。王牌魔法使いと理解しても、王牌マジシャンと理解しても、テキトーでいい。末尾にSが付くのを忘れずに。物語は主に、未来世界における魔法能力の開発と人間の醜さについて語っている。

あらすじはシンプルだ。未来世界で人類はハイテクを捨て、魔法を主要エネルギーとして使うようになった。しかしエネルギー消費とともに魔法は枯渇しつつある。だが今の人類はもはや魔法への依存から抜け出せない。まるで現在の電力依存と同じだ。そこで魔法を計画・認可し、研究しようという声が上がる。

何を研究するのか?一方では、許可を得た者だけが魔法を使える。こうした魔法使いは正規Casterと呼ばれる。また、非正規ルートで魔法の行使資格を得た者もいて、彼らはOutCasterと呼ばれる。流浪の魔法使いとでも言えばいいか。後者はこそこそと人目を忍んで存在している。

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政府による魔法の規制と管理は、表面上は理にかなっている。一方で人造魔法を研究し、他方で人造魔法クリスタル回路を様々なデバイスに移植してMagiと呼ぶ。これにより一般市民も魔法使いのように魔法を使える(もちろん民生用だ)。魔法の完全普及を目指すわけだ。

だが事はそう簡単に運ばない。物語の始まりは、OutCasterたちの不可解な死亡事件だ。彼らの身体は液体と化し、魔法を行使するring、つまり指輪が破壊され回収されていた。主人公はこのことに気づき、政府側にOutCasterを監視し指輪を回収する専門の人間がいることにも気づく。

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後にわかるのは、政府がこれらの不合理なOutCasterを使って、新たに開発した人造魔法粒子の実験をしていたということだ。粒子を人体に移植すると、身体が変異するか、あるいは即死するか、ほとんどが失敗作となる。正常人を研究材料にはできないから、OutCasterの犯罪者を実験台に使うしかなかったのだ。

そして後半、主人公は調査を通じてさらなる陰謀を知る。政府は人造魔法の研究過程で、特定の魔法資質を持つ人間を観察し無限にクローン化したり、人造魔法天使をエネルギー源として製造しようとしたりと、あまりに多くの見苦しいことをしていた。もちろん表面上は人類の発展のためで、何も間違ってはいない。だが問題は、この計画が悪意ある者たちに利用されたことだ。彼らは魔法で世界の樹のようなものを創り出し、新世界の神になろうとしていた。

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まあ、ベタだろ……最後の結末はもちろん、主人公が陰謀に気づき、ボスを打ち倒し、世界は秩序を取り戻し、人類の魔法への狂った研究も抑制される。

ベタではあるが、俺が前述した通り、これは「実力のある」ゲームで、一見ありがちな物語を、十分に強力な新意で語っている。

まずは二視点。というか、男主角が二人、女主角が少なくとも4人いる。ひとつの視点は高校生の陽斗。政府の魔法計画の犠牲者で、実はある研究者のクローン体だ。その研究者の身体の特異性と魔法体質の優秀さから、政府はその人物を惨無人道的にクローン化したのだ。陽斗は物語上の悲劇そのもので、あまりに弱く、自らが駒であるため、至る所で吊し上げられ利用される。高校生属性も加わって、ほとんど何もできない。脚本家も「高校生が再び地球を救う」的なクサイ展開をわざわざ書いたりはしていない。俺から見れば、陽斗の存在は学校側の視点描写に過ぎない。本当の戦場はここじゃないからだ。

ちなみに、陽斗があまりに弱いため、多くの人が彼を「専門的に負け続ける男主」とツッコんでいる。俺も同感だ。だって彼は…………あまりに悲惨で、力に目覚めようとするたびに、自分が何もできないことを思い知らされる。考えてみろ。ちょっと強くなったと思ったら、お前はクローンで、お前みたいに強い奴がずらりといて、しかもお前は兵器として量産され、雑魚として殺されるためにいるんだと言われたらどう思う?超電磁砲で美琴が妹たちを見た時の気持ち、わかるだろ?マジでメンタルやられる……

もうひとつの視点はゲームの真・男主センリ。センリさんの正体は実は研究者・千里的息子で、名前の発音も「千里」だが、父が陥れられたため、自ら偽名を使って政府側の魔法調査を始めた。ここが面白いのは、陽斗が実は千里のクローン体だということ。つまりセンリは陽斗を見て、こいつが自分の親父の姿だと気づくはずで……

センリの造形は物語の中で非常に完成度が高い。聡明で冷静、戦闘力は測定不能、しかも独自の思考パターンを持ち、強い印象を残す。ゲームはセンリについていくつもの謎を用意している。序盤の「彼は誰だ」、中盤の「なぜこんなに強い」、終盤の「どうしてさらに強くなれるんだ」は、いずれも良い展開の型だ。

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センリ自身は非常に強力な魔法操作能力を持つが、面白いことに序盤はほとんど魔法を使わず、拳銃を使う。そのせいで多くの人が彼を過小評価した。初めて変態ボスのルウと対峙した時、センリがボスが召喚した黒い飛行機を一撃で秒殺すると、ボスは度肝を抜かれ、ついでに「さっきまで弱いふりしてたの?」とツッコんだ。

ここでゲームの二視点について触れておく。大抵は陽斗かセンリか自由に選べるが、最終的には両方見なければならない。個人的には先に陽斗編を見て謎を積み上げ、その後センリ編で一気に謎を解き明かすのが良いし、適切だと思う。

ここで触れるべきはゲームのボスの一人、ルウ。彼女は全編を通して登場する唯一のボスで、最初の神秘的な登場から最後の激戦まで出番がある。性格造形はバットマンのジョーカーに非常によく似ていて、純粋な「悪」であり、他人を苦しめたり混乱させたりして生きている。表向きの身分は政府側が研究したものだが、ある場面ではセンリに多大な興味を示し、自分の目標は政府と「一部同じで一部違う」と言う。彼女にも世界征服などの野望がある。

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世界征服は簡単じゃないが、彼女には確かにその能力がある。能力は非常にヤバい。数本の刀を独立したMagiとして破壊されずに扱い、さらに精神読解能力でこちらの思考を見透かし、強力な魔力も持つ。最強の力は精神操作で、まさにヤバいの一言。

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ルウの演技は的確で、CVは久しぶりの桐谷華。まさか彼女がここまでヤンデレと変態を演じるのが上手いとは思わなかった。これ以上ない。

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ボスがこれだけヤバいのに、センリはさらにヤバい。センリの能力は魔法複製、ええ、わかるだろ。最後にボスが自分のスキルで敗北した時の絶望感は、見ていてスカッとする。このボスを陽斗は何度も戦い、毎回叩きのめされた。一方、俺たちの男神センリは一度爆発して魔法複製を発動すれば、あっという間にボスを艹り伏せて思い知らせる。

最後のボスは六道妹の兄だ。六道というキャラクターの夢の国的な思想の伏線が多すぎたが、正直このボスはルウほど鮮烈ではない。出番が少なすぎるし、最後も典型的な王道展開で、陽斗が覚醒してボスを倒す。ただ、陽斗自身はほとんど役に立っておらず、主な要因はセンリが別の場所でノアを救ったためにボスが気を取られたからだろう……(推測)。

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ゲームには少なくとも4つのOPがある。新曲があるのはOP1とOP2だけで、他はアニメーションだ。異なるOPは異なる段階の展開を表し、中盤のいくつかのルートでは物語を進めながら数人のヒロインの過去を描く。個人ルートと言っていい。フィオナの個人ルートはなかなか面白く、何度も裏切る展開があり、バットマンのキャットウーマンのような感じがする。ただ、このパートはやや冗長で、俺がせっかちで一気にクリアしたいあまり、しっかり読めていなかったせいかもしれない。実際、不可欠な必読点は特になく、フィオナの過去も六道妹の兄と少し関係があるだけだ。

グラフィックは非常に美しく、音楽はOSTとしての役割をよく果たし、雰囲気を盛り上げながらも気づかれにくい。戦闘立ち絵も手抜きなし。男主は重要な劇情の描写時にボイスもある。中二空間のあるレビュー曰く、このゲームの感想は「完成度が極めて高い」。納期に追われた痕跡は一切見えず、あるのは細部まで作り込まれた誠意だけだ。

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このゲームは物語的に超電磁砲+ギルティクラウン+バットマンの影があるが、それは問題じゃない。ゲーム自体の質がそこにあり、既視感のある物語を語っても、十分な心意気と誠意を感じさせる。「丁寧」というのが、俺がこのゲームの全体スタイルに対して抱いた個人的な描写だ。とても正統派で、とてもフォーマル。悪ふざけは見られず、唯一あるのは六道妹が陽斗に春心を抱いた時のちょっとした少女的な展開くらい。他は非常にオーソドックスで、語り口はきっちりしている(俺の日本語はクソで細部の50%は脳内補完だが、それでも感じ取れる)。切り出してSF小説として書いても、なかなかの出来になるはずだ。

ああ、どう言えばいいか。序盤の伏線敷設期は全体にやや退屈だが、それ以外は欠点を指摘できない。退屈な部分も、後半の伏線回収時の爽快感につながっている。

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『ソーサリージョーカーズ』は今年見た中で各面ともに行き届いたゲームだ。シナリオは優秀、作画は良好、音楽は素晴らしく、CVも輝いている。しかもこのゲームは常に孤高の存在感を放ち、ほとんど宣伝もなく、設定も孤高で、既視感は強いのに言葉にできない。別の面から見れば、あらゆる面で「イキり」臭さが満点のゲームでもある。語りの展開スタイル、登場人物、そして人物同士の会話の真面目さ。ゲーム全体から、この作品が持つ、褒めれば清新で俗を脱した、貶せば高慢ちきな、そういう姿勢を感じた。18禁ギャルゲーの中にこんなものがあるのは、まるでキャバクラの嬢の中に、自分は清心寡欲で世俗の人々を見下していると言う高飛車な姫がいるようなものだ。もし取ってつけたようなHシーンがいくつかあるのでなければ、この展開の型はXXの軌跡のようで、ギャルゲーじゃないと思ったほどだ。あとは戦闘システムがあれば完璧だった。正直RPGに改編しても十分向いているが、そうはしなかった。金がなかったのかもしれない。

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「イキり」臭さが濃厚でも、実力がないわけではない。ゲームは優秀だ。中二空間で長年毒に侵された少年たちが、久しぶりに優秀な作品を見て興奮し、こぞって100点を付けている。俺個人は100点とは思わない。正直に言えば、プレイ中はこういうイキりすぎるゲームはあまり好きじゃなかった。どの面も優秀だが、俺はそこまで好きになれない。もちろん品質とは関係なく、単に俺の好みの問題だろう。

もちろん、俺がイキりを嫌っているせいかもしれない。

それでも、『ソーサリージョーカーズ』は実力イキりの存在だ。確かに優秀で、たとえ俺がそれをあまり好きじゃなくても。

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