『さくらにかげつ』レビュー
二月桜
俺にはとてもホモなストレートの男友達がいる。
そいつは乙女向けやらBLやらのコンテンツを漁るのが趣味で、見終わった後には嬉々として俺に布教してきて、俺をホモにしようと隙あらば仕掛けてくる。
だが分かるだろ、もし世界に一人だけストレートが残るとしたら、それは絶対俺だ。だから俺はそいつの誘いを全部断って、送られてくる動画の罠も回避してきた。
ただ、二年前に俺がバカみたいに腐女子を追いかけていた時は、この小さいホモ野郎もなかなか頼りになると思った。腐男子として、腐女子のことを深く理解しているからな。
「実はBLとかあんまり関係ないんだよ、分かるだろ、腐女子も女の子なんだぜ」その死ホモが眼鏡を押し上げて、濃厚な甲高い声で続けた。「お前が知るべきは『女の子が思ういい男ってどんなもんか』って問題なんだよ」
「どんなもんなんだよ」
「たとえばお前が見てるクソみたいな萌えアニメ、あれに出てくる女にとって都合のいい妄想、幼馴染が勝手に惚れてきて、料理上手で、心の中にいつもお前がいる、みたいなのと同じ理屈だ。あれはお前が妄想した理想の女の子だろ。同じように、女の子にも妄想の理想の男がいるんだよ」
「余計なこと言ってないで早く言えよ」
「俺が言うのはあんまり適切じゃないんだよな…………」、その死ホモがまた眼鏡を押し上げた(頼むからオカマっぽく眼鏡を押し上げる仕草はやめてくれ、マジで嫌いなんだ)。「乙女向けのアニメを見るべきだな。女の子が思うイケメンってやつをさ……」
そしてそいつは俺に大量のリンクを送りつけてきた。最初はクリックするのを拒否した。開いたらまた『鬼畜眼鏡』とか『熱砂ノ楽園』みたいなBLゲーや、『世界一初恋』『裏切りは僕の名前を知っている』みたいなBLアニメだったらどうしようかと。そんなもん見たことも聞いたこともない。もし見てホモにされたらどうするんだ?
でも仕方ない、女の子を追いかける方が大事だ。結局開いた。中身はまともで、アニメの名前も聞いたことがあった。
『薄桜鬼』……それと『黒執事』。
この二つはあんまりじっくり見てない。じっくり見たら俺のストレート街道が揺らぐかもしれないからな。でもざっとプレビューしただけで、このホモ野郎の言いたいことは大体分かった。
オタク女子もオタク男子と同じで、理想の異性を形作る時に「自分への要求は低く、相手への要求は高い」という特徴を持っている。「女の子の理想の王子様」なんてのも、結局は顔が良くて、金があって、マメなやつ、ってことだ。オタク男子の理想の異性が「顔が良くて、金があって、胸が大きくて、マメなやつ」なのと同じだ……(女の子がチンポがデカいことを求めてるかは知らんが……)。
しかしそんなことを知っても最後には何の役にも立たなかった。腐女子へのアプローチ計画は結局俺が振られて終わった。これについては特に言うことはない。俺は顔も良くないし金もないしマメでもない。仕方ない……。
だがこの一件以来、妄想とデタラメに満ちた作品の見方も理性的になってきた。ACG作品で女の子が全方位から言い寄ってくるのを見ると、逆に冷笑して心の中で思う。「童話は全部嘘だ、現実はもっと残酷なんだよ」と。ギャルゲーをやり始めてからはこの傾向がさらに酷くなった。攻略対象の女の子のほとんどは最初から主人公への好感度がMAXか、友達以上恋人未満の状態だ。見すぎれば当然飽きる。そして主人公は近年ますますダメ人間方向に近づき、エロだったり、クソオタクだったり、グータラだったり、よくて男尊女卑程度。ほとんどは女の子が男を世話する。弁当を作ったり、病床で看病したり、セックスでも「痛くないならそれでいい」とか言ったり……。
まあ考えてみれば仕方ない。これは男性向けのゲームだ。ゲームまで他人の世話をしなきゃいけないなんて、どんだけ窮屈なんだよ。まさか主人公を小姑みたいなオカンに書くやつがいるか?
それがいるんだよ。さくらにかげつ、ってのがそれだ。
さくらにかげつ、この名前は正直訳しにくい。俺のアホみたいな日本語力だと「桜二ヶ月」って意味になるはずだが、とにかくこの名前はバカっぽく聞こえるし、中身もない。もっと大事なのは、この名前に別の意味がありそうだということ。あれこれ考えても答えは出ないから、とりあえず原名のままにしておく。
このゲームの体験版はかなり前にやった。内容はさっぱり分からなかった。体験版の冒頭で「これは体験版で、本編から一部を切り取ったもの」と説明される。やってみたが余計に混乱した。主人公が毎日ドジな女の子たちの世話をする話だけをやって、OPが流れて終わり……。
製品版が出てから、やっとこのゲームの大体のストーリーが分かった……。
このゲームは独特で、主人公を「人間飼育員」と定義している。聞こえは悪いが、まさにその通りだ。主人公は不器用で自立した生活能力に欠ける甘やかされて育った連中を、自立して一人前になるように育てるのが得意だ。
あ…………こういうやつは現実にもいる……何て呼ぶんだ?オカン?ベビーシッター?親?
だからゲームの冒頭で衝撃的な事実が告げられる。主人公のミス(多分目を離した)で、彼が育てていた女の子が死んだ。彼は実はその子のことが少し好きだった。しかし今は自分の責任で罪悪感の方が大きい。苦しんでいると、仮面をつけた女の子が現れる。彼女はサクラと名乗り、特殊能力を持つ天使だと言う。そして主人公にこう尋ねる。
「死んだあの子に会いたくない?」
主人公は当然「会いたい」と答える。すると天使は条件を出す。
「これからの二ヶ月、あなたに4人のダメな女の子を預けます。二ヶ月以内に彼女たちを全員自立して一人前になるように育てられたら、死んだあの子に会わせてあげます」

主人公は散々迷った末に信じるしかなかった。目の前の仮面のやつには天使の翼が生えているのだから。
そうしてゲームはOPに入り、本編が始まる。
サクラの言った通り、すぐに4人の女の子がそれぞれの理由で主人公の家に同居し始める。そして全員がドジで、主人公の世話が必要だ……。
ここでゲームは普通の学園攻略段階に入る。4人の女の子が4つのルートに対応し、攻略情報によると最後のTrue Endは全部クリアしないとタイトル画面に解放されない……。

ここでこの4人の女の子のルートについて言及せざるを得ない。簡潔に評価するなら、二文字しかない。「催眠」。
もうかなり遠慮している。本当は「つまらない」と書きたかったが、さすがに不適切だと思った。俺が本当につまらないと思うところを挙げろと言われても困る。ただ俺個人がつまらないと感じるだけだ。
ゲームの4人の女の子のルートは、ごく普通の毎日のおしゃべりから始まり、日を重ねて情が湧くという流れだ。だがこのゲームは他のギャルゲーとは違い、日常パートの進行にメインストーリーがない。「4人の女の子を自立するまで飼育する」ことがメインストーリーだとしても、その飼育過程が淡々としすぎている。主人公が毎日飯の世話をし、飲み物の世話をし、女の子たちの風呂の世話までする。挙句の果てに寝かしつけまで。

サービスシーンを期待するな。毎日犬みたいに忙しく走り回る主人公を見てたら、抜く気も失せる。あの豚みたいにドジな4人の女の子に「帰り道絶対迷うなよ」とくどいくらい言い聞かせる主人公を見てると可哀想になる。しかも女の子たちは一人残らずお嬢様で、主人公があちこち走り回る。これが宮廷ドラマなら、主人公はお嬢様に仕える宦官だ……。
普通のギャルゲーの展開パターンなら、日常に刺激を加える方法として「ストーリーのエンジン」となるキャラを投入する。例えば『大図書館の羊飼い』の鈴木佳奈とか、『恋愛0キロメートル』のノキアとか……。明確なメインストーリーや起伏がないなら、誰かが漫才をやって画面の前のプレイヤーを寝させないようにしないといけない。だがこのゲームにはそれがない。正直に言うと、このゲームをやってから俺の睡眠の質は直線的に上がった。ストーリーだけじゃない、画面もだ。このゲームの登場人物はほぼ全員が同じ表情で死んだ魚の目をしてこちらを見ている。見ているうちに画面の前の俺も同じ表情になりそうだ。さらに、このゲームのCVは抜きゲー声優ではない。制作側にお金がなくてこういう人たちしか呼べなかったんだろう。演技は「愛らしさ」は出ているが魂がなく、感情がなく小声で話す。完全に同人音声の催眠作品だ。音楽は本当に文句のつけようがない。穏やかで心地よい。だが……そのBGMが平坦なストーリーと魂のないCVと混ざり合って、強力な睡眠薬になる。プレイしているうちに簡単に眠りに落ちてしまう……。

前回この感覚を味わったのは、YouTubeでMariaのASMRテスト動画を聴いた時だ……。
というか、これ完全に催眠曲だろ!
とにかくゲームの4人の女の子のルートは悪くはないが、本当に平坦すぎる。白湯みたいな恋愛が好きなら受け入れられるかもしれないが、俺みたいな濃い味好きには何か物足りない。
とにかく俺は眠気を堪えて見たりスキップしたりで4人のルートを終わらせた。ルートに特別なことはなく、中盤でサクラが現れ、二ヶ月の期限が来たこと、主人公の「4人の女の子を同時に自立させる」計画は失敗したこと、つまり死んだ女の子には会えないと告げられる。そしてサクラも「失敗したなら仕方ない」という顔で、天使のように消える。

正直ここはごく自然だ。二ヶ月で4人のバカの世話なんて、できるわけがない……。その4人がどれだけバカかは、ゲームで実際に確かめてほしい。色々分からない、料理できない、道が分からない、買い物できない、風呂で髪も洗えない、寝る時は誰かに抱っこされて羊を数えてもらう必要がある、那种。
時々思う。このゲームで4人の女の子をロリに変えて、ロリのはしゃぐ性格に合わせたら、共通ルートと4つの攻略ルートももう少し眠くならなかったんじゃないかと。
任務失敗後、主人公は自分がある女の子を好きになったことに気づき、その子と距離を縮め、最後は恋愛エンドに至る。他には何もない。それだけだ。

だからタイトル画面に「さくらにかげつ」の文字が現れた時、なぜか興奮した。True Endはいつだって心躍るものだからな。

だがこのTrue Endは……一本の短刀が、心臓に突き刺さるようだった。
True Endは最初から、主人公が会いたいと願う死んだ女の子の視点で始まる。いや、True End全体がその視点だと言っていい。女の子は死んだ。死ぬ時、彼女が想っていたのは主人公だった。女の子は主人公を愛していた。でも仕方ない、彼女はもう死んでいる。
天使の声が聞こえ、女の子には一度だけ現世に戻るチャンスがあると告げる。
すずという名の神は女の子に言う。現世に戻れるが、いられるのは二ヶ月だけ。二ヶ月後には桜のように儚く消える、と。
女の子は散々考えた。自分は二ヶ月で消える。だったらこの機会に、大好きな男に、より良い相手を見つけてあげよう。そうして女の子は仮面をつけ、サクラと名乗り、主人公の前に現れ、「四ヶ月で4人の女の子を自立させられるか」という賭けを始める。もしかしたらサクラは、それが不可能だと分かっていたのかもしれない。二ヶ月は短すぎる。いや、サクラは主人公に会いたくなかったのかもしれない。
「俺がやったら、あの子に会わせてくれるのか?」主人公はかつてサクラという名の女の子にそう尋ねた。
「ああ、多分ね……確かじゃないけど、もしかしたらあの子もあなたに会いたくないかもしれないし」サクラはすでに男の子に会っている。でも彼に自分だと気づいてほしくない。ただ新しい彼女を見つけてあげたいだけだ。
赤い糸の力で、男の子はすぐに4人の新しい女の子と暮らし始める。サクラは毎日彼らがいちゃつくのを見て、なぜか胸が苦しくなる。それでもあれこれアシストする。
最後に男の子の任務は失敗し、サクラは彼を呼び出してそれを告げる。

男の子はサクラが実は会いたかった死んだ女の子だと気づくが、サクラは必死に否定する。その時、サクラの心は血を流していた。
男の子はため息をつき、振り返らずに去る。その背中を見て、サクラは泣きたくなる。
神すずが現れ、サクラが間もなく消えると告げる。サクラは強い未練と少しの恨みを込めて「なぜ、あなたのそばにいるのが私じゃダメなの」と言うが、それ以上は何も言わず、自分が消える運命を受け入れる。

「どうして運命と戦わないの?」神すずが最後にそう告げると、サクラはただ微笑み、永遠に消えた。

そしてTrue Endはここで終わる。
何だこれ?選択肢を間違えた?でもこのゲームの選択肢は数個で簡単すぎるだろ!これじゃセオリー通りじゃない。クソゲーでも最後まで食わせろよ。半分食って皿を取り返すとは何事だ!これって打ち切り?
探してみよう。信じない、絶対まだエンディングがあるはずだ。
結末は残酷だった。そう、ない。攻略情報、CG達成率、回想を何度も確認した。確かにない。これが全部だ。

胃が痛いか?俺は痛い。
だからこの「True End」と書かれたものは一体何なんだ?Endと言ってるが、実際はただの説明の方が適切だろ?主人公を好きな女の子が、死んだ後自分の代償を払って名前を隠し二ヶ月だけ現世に戻り、その間に大好きな男の子に会わずに、彼の恋を繋いで彼女を選ばせ、最後に男の子は幸せになり、女の子は永遠に消える。
これ絶対バッドエンドだろ!普通のギャルゲーのセオリーなら真・ヒロインのルートを出すべきじゃないのか?
これで終わり?
まあ、まあ。これが小説なら、こういう結末も悪くないと思う。全ての物語がハッピーエンドとは限らない。欠憾を残したり悲劇で終わらせたりするのも悪くない選択だ。
だが!だが!問題はそこじゃない!これはゲームだ、ギャルゲーだ!小説じゃない!この最終展開を踏まえると、このゲームはシナリオライターが最初に「女の子が自分を犠牲にして一時的に戻り、彼氏の幸せを探す」という展開を思いつき、それに無理やり4人の無関係な女の子の恋愛話を詰め込んで水増ししたように感じる。結局あの4人のルートとメインストーリーは大した関係がない。メインストーリーはたった20分ほどの短いシーンで、4人の女の子の中でのサクラの心の内を描き直しただけだ。少し感動的ではあるが……。
しかしそれでも4人の女の子のルートが長すぎて、つまらなくて、眠くて、催眠的だったという事実は隠せない。
絵柄が嫌いと言うなら、それは絵師のスタイルの問題だと言える。このゲームのHシーンは女の子の体の表現がなかなか良い。 CVが嫌いと言うなら、それはストーリーの要請だと言える。このゲームの日常自体が平淡だから。 音楽が嫌いと言うなら、それは雰囲気の問題だと言える。このゲームの季節は怠惰な季節だから。 サクラに自分のエンディングがないのも、悪くない展開だと言える。最後に無理やり真・ヒロインを推すメロドラマが必要なんて決まりはない。
だがとにかく、しかしそれでも4人の女の子のルートが長すぎて、つまらなくて、眠くて、催眠的だったという事実は隠せない。
最後のあの短く平坦なTrue Endと合わせると、まるで桜の咲く丘に寝転がり、春風が頬を撫で、暖かい環境でゆっくり眠りに落ちたところで、突然公園のおばさんが現れて冷水をぶっかけ、「もうすぐ閉園だから早く出て行け」と言われるようなものだ。
このゲームは評価できない。正直に言うと、俺はあの4人の女の子のルートが好きじゃない。そして最後のルートも評価できない。悪いとも言えないし、デタラメとも言えない。ただ、とても不快だと言える。
実は振り返ってみると、ゲームのタイトル「さくらにかげつ」は、サクラという女の子の二ヶ月の物語を指しているようにも思える。そしてゲームのOP「Sakura Route」は、このゲームに本当のSakura Routeはないとプレイヤーを嘲笑っているようにも思える。
まあ、まあ、どうでもいい。このゲームを見ると眠くなる。きっと今後不眠の時にでも起動してゆっくり考えればいい。
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