『お兄ちゃん 右手の使用を禁止します』レビュー
君は僕の手
世界は豊かで彩りに満ちている。どんな闇や不条理があろうとも、人間性の美しさを讃える気持ちは止められない。
蕭煌奇に『你是我的眼』という歌がある。盲目の男が恋人の支えのもと、恋人の目を通して世界を見つめるという歌だ。自分は見えなくても、恋人がそばにいてくれれば、色とりどりの世界は今なお瞳に映り込む。
君は僕の目、季節の移ろいを教えてくれる。
君は僕の目、混み合う人波を抜けさせてくれる。
君は僕の目、広大な書物の海を読ませてくれる。
君が僕の目だから、この世界がすぐ目の前にあると分かる。
歌詞は胸を打ち、涙がこぼれる……
似たような話はよくある。今日語るのは、また別の心温まる物語だ。
『お兄ちゃん 右手の使用を禁止します』は、先に述べたのと近いテーマのギャルゲーだ。主人公の祐人は長男として、幼い4人の妹の面倒を一人で担ってきた。妹たちも感謝し、この兄と良好な関係を築いていた。だがある日、一家で出かけた際、疾走してきたトラックが妹たちに突っ込む。兄は身を挺し、妹たちをかばった。トラックも急ブレーキをかけ大事には至らなかったが、その飛び込みで祐人はうっかり右手を痛めてしまう。


妹たちは自分を救って兄が怪我をしたと知り、皆が深く自責した。積極的に祐人を病院に連れて行く。医者からは「大した怪我ではない、安静にしていればいい」と言われたものの、命を救ってもらった恩返しにと、妹たちは兄が一日でも早く治ることを願う。そして「ちゃんと養生して、右手をむやみに動かさないで」と求めるだけでなく、こう気前よく申し出た。
「今日から、お兄ちゃんの右手が不自由なときは、私たちが手伝うよ。私たちがお兄ちゃんの右手になるから」

こうして物語は始まる。
結末はもちろんハッピーエンド。主人公祐人の右手は回復し、祐人の世話をした妹たちは彼とより深い絆を結ぶ。ゲームはギャルゲーだから、どの妹と絆を結ぶかは当然プレイヤーが選べる。選択できるキャラは全部で4人。それぞれ性格も外見も異なる妹だ。外は冷たく中は熱い子、無邪気な子、元気で熱血な子、優しく淑やかな子。毎日主人公はあるキャラを誘って手伝ってもらい、共通シナリオが終わった後、選んだ回数によってどの妹のルートに入るかが決まる。具体的なルートのシナリオは比較的淡々と素朴で、概ね「毎日お兄ちゃんを看病する」というテーマに沿っている。主人公が不自由な部分は妹が代わりにこなす。妹は苦を惜しまず、汚れも疲れも恐れない。専門的な看護訓練を受けていないのに、特級看護の基準で自分を律する。物を取ってマウスを使う小さなことから、薬を替えたり外出して買い物したりする大きなことまで、兄祐人を至れり尽くせりで世話する。その根気強さと熱心さには、ゲームの外の私も共鳴せざるを得ない。今の私の気持ちは、テレビでよく言う「家族が障がい者を至れり尽くせりで看病する」場面を見たときと一緒なんだろう。

絆を深めた結果、主人公祐人と妹が恋人になるということも実現できる。なにしろこれはギャルゲーだ。親情を越えた恋愛には少し苦味があるが、それもまた大愛無疆の一種だろう。誰にでも自分を大事に思う人がいて、自分が大事に思う人もいる。妹への恋は、ただその二つの役割がたまたま自分の妹だっただけだ。われわれは所詮、道徳や倫理に縛られるべきではない。大胆に自分の感情を表現しよう。この世界はこれほど狂っているのだから、愛する人に出会うことすら難しい。掴んだら、離してはいけない。

ゲームの絵柄はなかなか優秀だ。名手の筆には及ばないにせよ、良心的と言っていい。ついでに言うと音楽も見どころ。祐人が病院で病状の悪化を知る重々しいピアノ曲も、日常で妹のゆきがウサギダンスを踊るときの電子キーボードも、とても耳に心地よい。良い BGM は気づかれないものだが、いつの間にかリズムに引き込み、ゲームの裏にある物語の感情の起伏や人格の魅力を感じさせてくれる。

CV はそれほど有名ではないが、演技は良好だ。おそらくこれがゲーム唯一の短所だろう。このゲームはプレイ時間が決して短くない。共通線はともかく、1キャラ8時間の個別ルートに、いくつかの追加ルートを加えると、押しの一手の CV がいないと満足するのは確かに難しい。とはいえ CV の声も大きな失敗はしておらず、少なくともキャラのスタイルと特徴は保っている。だがもっとプロの妹系 CV に変えれば、より完璧だったろう。

いつでもどこでも、家族の絆は最も強い。だから家族の美しさを讃えることに、いつでもどこでも時代遅れはない。 『お兄ちゃん 右手の使用を禁止します』はそういうゲームだ。主人公と妹たちの深い愛を感じさせ、われわれ一人ひとりが、自分のそばで黙って気にかけ、世話してくれている妹たちに目を向けるきっかけにもなる。

ED は4つあり、各キャラに1つずつ。OP は薬師るりが作詞作曲を手がけた同名曲『お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!』。歌詞はゲームのシナリオと密接に結びつき、OP としての正常な位置づけに合致しつつ、見どころのあるフレーズもある。
猫の手よりも孫の手よりも やっぱり妹の手だね 右手よりも左手よりも やっぱり妹の手だね 一人じゃできない事ならば 私の手を使ってね お菓子よりもお出かけよりも やっぱりお兄ちゃんが好きよ
猫の手も孫の手も、やっぱり妹の手にはかなわない。 右手も左手も、やっぱり妹の小さな手にはかなわない。 一人じゃできないことなら、妹の手を使ってね。 お菓子もお出かけも、やっぱりお兄ちゃんが好きなのにはかなわない。

なぜ私の目に涙が浮かぶのかと問うならば、それはこの家族の絆を讃えるゲームを深く愛しているからだ。
ついでに、『お兄ちゃん 右手の使用を禁止します』の制作会社 Galette の分社 GLace が、オリジナルスタッフを多く引き継いで新作『天ノ空レトロスペクト』を作っている。体験版は今のところなかなか良さそうで、10月の新作ラッシュの中で、この会社がシナリオ重視の道を歩んでくれることを願う。
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