『紅い瞳に映るセカイ』レビュー

耄碌ジジイが昔話をする

広告

月明星稀、秋の夜はもう冷たさを帯び始めている。

一人の老人が半袖とジーンズ姿で、暇そうにスマホをいじっている。

広告

「おじいちゃん」——少女の声がした。どうやらこの小さな子はしばらく前から老人を見つめていて、ようやく勇気を振り絞って話しかけたらしい。「夜はこんなに冷えるのに、外にいて寒くないの?」

「冷たくねえよ。」老人だが、口調には明らかに軽薄さが混じっていた。だが顔を上げて目の前の少女を見ると、こんな話し方は自分のイメージに合わないと気づいたのか、表情を整えて、お世辞にもいいとは言えない笑みを浮かべ、少女に向かって言った。「寒くないよ~ありがとう~。」

少女は老人の話し方など気にしていない様子で、ただゆっくりと続けた。「おじいちゃんおじいちゃん、何見てるの?」と言いながら、老人の手元のスマホを覗き込み始める。

老人は少し気まずそうに、急いでスマホをしまった。彼は少女にスマホの画面の中身を見せたくなかった。なぜなら彼の目には……いや、大部分の人の目には、そのスマホの画面の中身はとても他人に見せられるものではなかったからだ。

「坊や~」老人は平静を装った。「なあ、わしが昔話をしてやろうか。」

「物語ね、どんな物語?」 少女も断らず、むしろ何でも知ってる風な顔をしている。

「どんなのが聞きたい?」

「イケメンも美女もいるし、恋愛もするし……」

「ちっ」と老人は舌打ちを一つすると、すぐさま笑顔を作り直した。「織姫と彦星の話は知ってるか?」

「流…………氓…………姪っ子?」少女はきょとんとした顔で首をかしげる。

最近の若いもんは織姫と彦星も知らねえのか? 老人はしみじみとつぶやいた。「聞きたいか?」

「うん!」 少女はとても興奮していた。

「さあさあ、ここに座りなさい。」老人は自分の隣の綺麗な場所をポンと叩いた。「物語は最初から話さねばならん……」

……………………


『いろとりどりのセカイ』は FAVORITE が出したゲーム……いや、シリーズ作品だ。自分はどちらかというと新しめの『アストラエアの白き永遠』を先にやったんだけど、明らかに『いろとりどりのセカイ』のほうが評価は高い。このゲームは「色鳥鳥」とも呼ばれていて、たぶんタイトルの いろ=色、とり=鳥 から来てるんだろう。本編に加えてファンディスクの『いろとりどりのヒカリ』、さらに今年はそのファンディスクのファンディスクである『紅い瞳に映るセカイ』まで出てる。シナリオライターが違う以外は、BGM も絵柄も、いろんなエンジンの演出面も、アストラエアの白き永遠とほぼ同じ雰囲気。ゲームは長い……長い……長い……。『いろとりどりのセカイ』は章立て構成で、第何話って分け方がアニメっぽいんだけど、共通ルートだけで全 12 話、しかも 1 話 1 話が冗長すぎるくらい長い。共通ルートが終わると個別ルートに入るんだけど、ここにクソみたいなシナリオロックがあって、他のヒロイン全員のルートを全部クリアして個別ルートを完走しないと、最初からやり直しても TRUE END には入れない。

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別に普通のことなんだが……とにかくゲームが長すぎる。共通ルートだけで恐ろしい長さで、普通に飽きる。正直、このゲームにはかなり時間を食われた。まず本編、次にFD、最後にFDのFD。物語が最後のいわゆるエンディングを迎えたあと、感慨は色々あったのに、なぜか言葉にできない感覚だけが残った。

このゲームには、はっきりした評価を下せない。個人的な感情としては、ちょっと嫌いなのだ。でもよく考えてみると、好きだからこそ嫌いになったような気もする。実は名実相伴うほど優秀とは言えないんじゃないか、と言いたくもなる。だが、よくよく考えれば別におかしなことをしているわけでもなく、むしろ個人の感情のほうが邪魔をしているだけなのだ……

まあ、まあ……いっそ落ち着いて、ゆっくりこのゲームの話をしたほうがいいのかもしれない。

ゲーム全体を俯瞰すると、このゲームのシナリオの進展度は三段階に分けられる。

第一段階は全体の共通ルートと観波加奈、その他のサブヒロインの個別ルートからなる。主人公は「いくつもの並行世界を行き来できる」うえ、「神様から消えるよう告げられた人々を各世界で救う」ことを生業とする「解脱者」で、これがメインの筋となる。さらに主人公・鹿野上悠馬には「半透明の魔法使い」と名乗る二階堂真紅が協力しており、登校し、仕事をし、人を助ける毎日を送っている。ちなみに寮の密室には世界も時空も越えられる古時計があり、針の位置によって行ける異世界が変わる。主人公はよく様々な異世界へ仕事を探しに行き、同時に夢でよく聞こえる「助けて」という声の在り処を求めて世界を渡ることもしばしばだ。

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ここで分かる情報のほとんどは、主人公の物忘れがひどいってことと、二階堂真紅に超能力があるってこと。そして主人公が真紅の超能力を使うと自分の記憶を消費してしまうので、どんどん物覚えが悪くなって、いろんなことを忘れていく。周りはそれを不思議に思う。幼馴染も含めてな。実際、ゲームの共通ルートで主人公は「解脱者」の任務を二回やってる。ただ全部失敗してる。しかも主人公自身、解脱者の仕事の成功率はほぼ0だと言ってるのに、人を助けるために二階堂真紅の能力を使い続けて、記憶もどんどん怪しくなっていく。真紅は主人公がそんなに忘れっぽくならないように、毎日日記を書くよう促して、たまに見返させている。

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共通ルートの最後では、真紅の記憶の一端を覗くことができる。真紅の記憶によれば、世界は空を舞う羽根によって滅びたという。共通ルートを終えて加奈ルートに入ると、この羽根の出番はますます増えていく。ここで、この羽根が各キャラクターの運命と結びつき始めていることに気づくだろう。

羽は「選ばれし者」を探すためのものだ。神に選ばれた奴が空から降ってきた金色の羽に触れると、消えてしまう。どこへ逃げてもこの厄災からは逃れられない。主人公の仕事は、そんな「選ばれし者」たちが羽の呪縛から逃れて消えるのを防ぐこと。だが、成功したことはほとんどない。羽に選ばれた者は、たいてい最初は逃れようともがき、やがて諦めて運命を受け入れる。そして主人公に説得され、もう一度運命に抗う気になる。――そうして抗争に敗れ、目の前で呆気なく消滅するのだった。

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ゲーム中には「運命への反抗」という場面が何度も出てくる。ここでいう「羽」はいろいろなものの隠喩になりそうだが、それ自体はむしろ「運命」の隠喩に近い。誰にでも天から定められた運命があり、それが死であれ失敗であれ、我々はいつも反抗しようとする。だが結局、反抗は徒労に終わるしかない。運命そのものが存在する時点でもう決まっていて、ただ黙って受け入れるしかないのだ。

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加奈√で主人公は「解脱者」として、異世界で狐と人間の恋が運命に引き裂かれるのを目の当たりにし、加奈が一時のわがままで運命に弄ばれるのを見て、白が運命に抗って完膚なきまでに敗れるのも見てしまう。この点でプレイヤーも主人公と同じ、ただの傍観者だ。運命の皮肉に嘆くしかなく、自分には何もできない、このすべてを変えられないとため息をつくしかない。

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加奈の結末は美しいものだったが、同時に険しい道でもあった。おそらく加奈が初めて死を望み、悠馬に救われたあの時点で、この結末はすでに定められていたのだろう。

加奈のエンディングの後だと、如月澪のルートはよりいっそう平坦に見える。個別ルートはただ萌えを売っているだけで、肝心の中盤以降になってようやく話が動き出し、主人公の共通ルートで何度も強調されていた「多重並行世界」の存在が解析されていく。そして副次的に、テーマである「五彩斑斓的世界」にも触れている(当時の俺の勝手な思い込みだが)。世界は色とりどりで、たとえ一つの可能性であっても、別の並行世界が存在するのだ。如月澪のエンディングもそれほど良いとは言えない。悲惨な運命を逃れた後、如月澪は主人公と二つの異なる世界に分かれてしまう。会うことはできても、それ以上の触れ合いはできない。これを Happy End と言われても同意しかねる。だってこれは明らかに Bad End 級の扱いだろ……。まあ、ルートの描写自体は割と明確だったし、加奈ルートほどテーマに寄り添っていないと感じただけだ。

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敷島鏡と東峰司の√については、正直言うことがない。無理にまとめるなら「オマケで付いてきた」ってところか。東峰司の扱いはゲーム中最悪と言っていい。設定でもシナリオでも√でも、彼女が一番ひどい目に遭う。普段は腹も満たされず、ろくなことがなく、金のためには外で恥をかかされる。シナリオライターがこの緑髪の子に何の恨みがあるのか、とにかく虐め続けずにはいられないらしい。それに、このゲームの√ロックが FAVORITE 社の要請なのかは知らないが、シナリオライターは加奈と如月澪の√を書き終えた時点で、もう何を書けばいいのか分からなくなっていたのは明らかだ。この二人の√はテーマとほぼ無関係な萌え補給と時間稼ぎにすぎない。いや、時間稼ぎにもなってないか。短いし、サクサク進む。よほどのキャラ愛がない限り、この二つの√は八割の人間が skip するだろう。何しろ多くの人が気になるのはゲームの真相と二階堂真紅の物語なのだから。

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しかしTrue Endに入るその瞬間が来るまでが、第二段階の始まりだった……

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「それでな、その後で牛飼いと織姫は恋に落ちたんだが、天の神々に反対されてしまってな」と、老人はもう嬉しそうに牛飼いと織姫の話をしていた。

「でもおじいちゃん、なんで反対するの? 好き合ってる二人なのに」 少女は無邪気そのものだった。

「だって神様は神様としか恋愛できないんだよ、凡人とは恋愛できないんだよ」

「えー?そんな面倒くさいの」少女は口をとがらせて不満げに、「神様ってホント嫌い……」

「そうだな、俺も神様は嫌いだと思う。」老人は笑った。

「それで、その後は……牛飼いと織姫は…………どうなったの?」

「それからなあ……………」と、老人は声を伸ばした。「それから、とんでもないことになったんじゃ…………」

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『いろとりどりのセカイ』の第二段階のシナリオは、TRUE ENDに入った途端にプレイヤーへとんでもない違和感を叩きつけてくる。なぜなら、それまでの共通√や個別√で脳内に築き上げてきたこのゲームの世界観が、ことごとくひっくり返されるからだ。

主人公はもはや主人公ではなく、空から降ってきた見知らぬ他人。彼はゲーム本来の町へやって来て、二階堂真紅を見かけ、さらには何人かの子どもたち——これまでの個別ルートのヒロインたちの、子ども時代の姿——も目にする。

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二階堂真紅はここの教師で、子どもたちに授業をしている。名前のない男主も一緒に来るよう誘われ、ついでに男主に……と告げる。

「世界が滅びる。」

世界が滅びた原因は、空から降ってくる羽根だった。羽根の一枚一枚が神様の召喚であり、羽根に触れた者は消えて神様のもとへ行く……要するに、死ぬ。

二階堂真紅は、町の風車は羽根の動きを検知するためのものだと言う。誰も理由もなく死刑を宣告されたくはない、誰もが不安を抱えている。そしてほどなくして、人間はこの辺り一面に溢れかえる羽根によって、すべて消え去ろうとしていた。

二階堂真紅は、名前のないこの主人公を連れて、「理不尽な神」との対決を始める。

二階堂真紅は主人公に、妹の二階堂藍がつい先日連れ去られたと告げる。彼氏の鹿野上悠馬と一緒に。主人公はわけもわからず、自分も悠馬だと言い張る。ただの同名異人かもしれないが、真紅も特に何も言わなかった。無理はない。なにせ世界はすでに危機的状況で、そんな話をしている暇などなかったのだ。

総じて、第一段階では主人公はただの傍観者であり、そばにいる他の者たちが「理不尽な神」によって最愛の者を失っていく。だが第二段階のシナリオでは、主人公自身がその中に踏み込み、「理不尽な神」に最愛の者を奪われた被害者となる。

真紅は研究者で、神学やその他の科学を研究している。だが、あの羽が落ちてくるのを止める方法も、地球が滅びるのを防ぐ方法も見つけられない。やがて羽は残った子どもたちを次々と連れ去っていく。主人公は加奈を連れて逃げようとするが、羽はむしろ増えていくばかり。最後の最後、加奈も連れ去られてしまい、世界にはついに真紅と主人公の二人だけが残された……

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主人公は、魔女を自称する人物に出会った。この人物にはみんなも見覚えがあるはずで、共通√で主人公の師匠を務めた人だ。そして魔女は主人公に事の真相を告げ、ついでに主人公へ自分が一体何者なのかを思い出させた。

主人公は別に悠馬なんかじゃない。主人公の正体こそ、あのいわゆる「理不尽な神」だ。

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世界の果ての図書館は実在していて、主人公の神格としての身分はそこの守護者だ。長年退屈な守護生活を送るうちに、神は次第に下界へ興味を抱くようになる。下界のあらゆることを知りたいのだ。美味いもの、面白いもの、感情、娯楽、そして……恋愛。

あの芸能人が亡くなったとき、よく「神様が落語を聴きたかったから〇〇を連れて行った」なんて言うけれど、この言葉はここにこそふさわしい。神様はいろんなことを知りたくて羽根を撒き散らし、さまざまな世界のさまざまな人を連れ去った。そのせこさが世界の混乱を招き、世界はそのせいで滅びようとしている。

神様は「恋愛」とは何かを知りたくて、羽根で二階堂藍を連れてきた……「恋愛って何?」と問われた二階堂藍は、笑顔でこう言った。「それは私には言えないかな。知りたければ、自分で体験してみればいいよ。そうだ、私の姉の二階堂真紅と恋愛してみてもいいよ」

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ほんの少しの好奇心から、神様はさらに大勢の者を呼び寄せ、下界へ降りるのを手伝わせた。ひとりの凡人になって、いわゆる「恋愛」というものを味わってみるためだ。

だからここに立っている主人公――思考がいつも混乱している主人公――こそが、その「目立たない神」本人なのだ。皮肉なことに、目立たない神は二階堂真紅を愛したわけではなく、世界が自分のわがままのせいで滅びようとしていることに気づいてしまう……神はそれを救いたい、懺悔したいと思うが、すでに感情を持ってしまった自分が天に戻るのもそう簡単なことではない。

「忘れないで、あなたは神よ。新しい世界を創り出し、天国へ送り返す——それくらい難しくはないでしょう……」魔女はそう提案した。

そこで神は自分の手帳を手に取り、思い描く筋書きを書き記し、自ら書いた物語を具現化した。物語の中の神は「解脱者」で、名を鹿野上悠馬といい、解脱者の相棒は半透明の魔法使い、名を二階堂真紅という……

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ここまで来ると、プレイヤーは気づく。第一段階のすべての物語は、実は神の日記が創り出した世界であり、本当の世界は、今この人類がまさに絶滅しようとしている、まさに滅びようとしている世界なのだと。

神の日記の中で、鹿野上悠馬は能力を使うたびに自分の記憶を消費し、物語の最後には鹿野上悠馬の記憶は完全に消え去り、半透明の魔法使いである真紅もまた願いが叶ったことで解放された……

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簡単に言えば、この日記の最後で、神はすべてを忘れてしまう。そうして初めて、彼は再び俗世を超えた神となり、天へと戻ることができるのだ。

だがな……話はそう単純じゃない。魔女がその神の完璧な計画を破り捨てたんだ……

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「それでな、織姫と彦星を罰するために、天の神様は二人を引き離して、天の川を隔てて会えなくしたんじゃ。」老人はゆっくりと語った。

「かわいそうに……」

「そうだよな、恋人が会えないのはキツいよな」

「おじいちゃん、どうして空の神様はこんなに残酷なの。」

「まあ悪くないよ、規則どおりにやってるだけだし」

「じゃあおじいちゃん……」少女は老人の腕を揺らした。「その後の話は?織姫と彦星は、ほんとうにもう二度と会えないの?」

「聞きたい?」

「思う!」

老人はため息をつくと、スマホを取り出して時刻を確認し、ポケットに戻してから話を続けた。「実は、織姫と彦星が会える方法ならあるんだ…………」

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True End で魔女計画が明かされる瞬間、ゲームのシナリオは第三段階に入る。これが何より俺を気持ち悪くさせた段階だ……

なぜそう言えるかというと、本来なら神の計画通り、日記の物語が佳境を迎えたところで神は真紅を忘れ、神の世界へ戻り、再び神としてこの壊れた世界を修復し続けるはずだったのだ。

だが肝心なのは、その日記の中の物語が進む過程で、ひとつの可能性があったことだ。すなわち、神と二階堂真紅が恋に落ちる可能性。二人はなんせ日久生情、長く過ごすうちに情が移る。そこで魔女は日記のほんの一部を書き換えた。神に二階堂真紅のことを完全に忘れさせず、思い出させるように……思い出せば、恋人同士にとってはいいことだが、世界にとってはいいことではない。世界はやはり滅びる。なにせ空には主宰がいなくなってしまったのだから。

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主人公が神として天国に戻るのは既定路線で、告白後に二階堂真紅と別れるのも既定路線。神と人は恋愛できない。だが魔女が計画をぶち壊したせいで、神は天で真紅を忘れられず、むしろ想いは募るばかり……

神様の思念と人間の思念は違う。人間の思念はせいぜい夢の中でいい思いをする程度だが、神様の夢は新しい世界を創り出すことができるのだ。

だからこそ True End の後半、鹿野上悠馬が再び現れ、二階堂真紅とデートをする……カップルがやるべきことを一通りやってのける。だけどな……その二階堂真紅が本物なのか偽物なのか、これは実在するのか、それとも神の脳が生み出した夢なのか、神への二階堂真紅の想いは本物なのか、それとも神の妄想から生まれた洗脳効果なのか、お前には見分けがつかない。

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神とは悩める者、ちょっとしたことで世界を一つ創り出しては妄想する。しかもその創造があまりにリアルで、元の世界がどうなっていたか分からなくなるほどだ。

ここに至って、《いろとりどりのセカイ》のシナリオライターは逆転を果たした。今の設定なら、彼がどんな物語を書いても構わない。なにしろ主人公はすでに神になったのだから、好き放題に書けばいい。神の夢なのだから、どう解釈したところで筋は通る。

噛み砕いて言えば、シナリオライターが今テキトーなこと書いてても全部筋が通ってるってこと。嘘いつわりじゃない。なにせ夢だと言い張ればいつでも後からいくらでも誤魔化せるし、しかもそれが妙に説得力あるんだから。

神の夢の具現化は凡人と比べ物にならないほどヤバい。世界にいる他の人間の考えすら変えられる。たとえこの世界が実在していても、それは神の手帳に記された物語が主導して発展しているのかもしれない。

もっとわかりやすく言えば、たとえ物語がもう夢ではなく現実だとしても、それは偽りかもしれない。世界は本来の成り行きどおりに滅んでいて、神は救済に乗り出して二周目を始めたけれど、神にはすでに感情があり、偏りがあった。創り出された新しい世界そのものが、ある種の展開のために用意されたものであって、時空を超えているというだけで、単なるパラレルワールドかもしれないのだ。

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別にそれだけならまだよかったんだが、この作者は「この神が創り出した世界」について延々とくどくど語り始める。これは偽物だ、特殊効果だ、duang なんだ、神の夢なんだと、とにかくしつこく言い続ける。

そしてこれが、僕がゲームのシナリオに不満を覚え始めたきっかけでもある。

『いろとりどりのセカイ』の結末は悲劇だ。元の世界線では世界は滅びることになっていて、主人公は天に戻り、孤独に残りの日々を過ごす。たとえ「鹿野上悠馬と二階堂真紅」がいちゃいちゃするルートの物語があったとしても、最後には強調される——これは夢だ……現実じゃない。これは神が自分の日記帳に書きつけた一ページにすぎないのだ、と。

これはつまり、ある物語を読んで「なかなかいいじゃん」と思った矢先、どこぞのクソ野郎が最後になって「これは嘘、フィクションです」と告げてきて、原作を読めと言ってくるようなものだ。原作は書き終わってすらいないのに、書かれている範囲のラストは悲劇。原作の結末はどうなるのかと聞けば、そいつは言葉を濁して頑として答えず、何か言いたげなそぶりを見せる。もう拳を振り上げてケツをぶん殴りたくなる。だいたいそんな感じだ。

そして神が創ったこの世界で、魔女の妨害もあって、神は物語の最後にやはり真紅と別れ、神の想いを抱えたまま天へと還っていった。

凡人と恋に落ちるわけにいかない神様と、地上に降りた神樣と日を重ねて惹かれていった凡人。結ばれるはずがない。少なくとも二人は同じ種族じゃない。魔女の妨害のおかげで、神樣は真紅のことを完全に忘れて天界に戻ることはなかったけど、とりあえず神樣は帰ってしまった。真紅への想いを抱えたまま。

愛し合う二人は二つの世界に隔てられ、次に会える日を待ちわびている。

物語がこれで終わっていたら、せいぜい胃が痛くなる程度で、そこまで不快感は残らなかっただろう。すべての物語にハッピーエンドがあるわけじゃないし、悲劇だって十分に良い印象を残せる。

だがね……金儲けのためかプレイヤーをなだめるためか、このゲームは FD を出してヒロインたちに決着をつけてくれた。別に悪い話じゃない。ただ、脚本家がいつも余計なことばかりするのが間違いなんだよ。

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「そこで王母娘娘は、牛郎と織女が年に一度だけ会うことを許したんだとさ」 老人はゆっくりとそう語り、言葉が終わるやいなや、そばにいる小さな女の子のほうへ振り向いた。

「一回だけって……一年だぞ?」 少女は不満げな顔をしていた。

「仕方ないよ、神様と人間が恋愛するんだもの。会えるだけでも御の字さ。」

「まさか……これからずっとずっと、二人で年に一度しか会えなくなっちゃうの? ずっとこのままなの?」 少女の声には期待が溢れていた……

「いや……そうとも限らない……別の言い方もあるんだ……」

「なになに……?」少女は急に目を輝かせた。

「あの話の中では……織姫と彦星の恋は、西王母に認められたものだったんだよ……」

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『いろとりどりのヒカリ』と『紅い瞳に映るセカイ』は本編後に出た2つのファンディスクで、前者は全ヒロインを対象にしているが、後者は二階堂真紅ただ一人を対象にしている。

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元々の物語は悲劇で、好きなキャラにはいい結末を見せてやりたいと思うのは理解できる。製作側がそれに応えて相応のゲームを作るのも理解できる、むしろ気が利いてる。ただ、間違いはそこじゃない。脚本家が自分は賢いとばかりに小賢しい真似を好むことにある。

『いろとりどりのヒカリ』のストーリーは、一周目で強制的に二階堂真紅のルートに入る。このルートは最初、非常に掴みどころがなく、いきなり主人公・鹿野上悠馬と真紅が再会したところから始まる。『いろとりどりのセカイ』の物語を引き継ぎ、主人公は相変わらず解脱者で、師匠もいて、寮の管理人もいて、真紅と一緒に過ごす二人だけの世界が始まる。ゲームが始まると、長さは呆れるほどで、甘さは嫉妬を誘うほどで、ひたすらイチャイチャが続く……

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そう、イチャイチャぶりを見せつけられて、もうこれはマジもんだと信じていたのに、そのラブラブの果てで急に筆が転じて、これは真紅が主人公への想いが高じて見た夢で、あの神の日記の力によるものだと明かされる。

だから、嘘だ。そしてゲームはこの一言で君の顔を思いっきりひっぱたいたあと、日記には真紅以外の人間も書けると告げ、同時に他のヒロインのファンディスク後日談を解放する。

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俺の脾气はいいほうだと思う。だがこの時点で、もう少し……いや、むしろかなり不機嫌になっていた。Galgameのマルチエンドの多くがパラレルワールドを採用するのは理解できる。元の世界が滅びた後、主人公が神力で世界を再創造し、完璧な新世界を作り直す——というのもよく見かける。しかし、元の世界をグチャグチャのまま放置して、ひたすら新しい夢を開き続け、しかも夢がエンディングに向かう一番感動的なところで男女主人公を強制的に引き離し、「現実に戻れ」と勧めてくる——こんな行為はマジで初めて見た。

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これはもう、童貞がせっかく夢の中で童顔巨乳ツインテールのツンデレ献身JK軟妹と恋愛して、あとは告白するだけ……あるいは押し倒すだけってところで、クソ野郎に揺り起こされて「これは夢だ、夢見てんじゃねえよ」って言われるようなもんだ。

「誰がどう見てもこれ夢だろ? せめて夢くらい痛快に楽しませてくれよ。一番ムカつくところで『これは夢です』って強調すんのやめてくんね?」

でも残念ながら、その脚本家はそこまで嫌なやつなのだ。

『いろとりどりのヒカリ』の二階堂真紅のパートが短すぎたせいか、最後も完璧な結末じゃなくて物足りなさが残った。それから何年も経って、新しく専用の Fandisk『紅い瞳に映るセカイ』が満を辞して登場した。ゲームも分かりやすけりゃ、宣伝ビジュアルも分かりやすい。ウェディングドレスを着た二階堂真紅が「このゲームは真紅への愛だけで作られました」とでも言わんばかりだ。

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だから甘々を見せるファンディスクとして、ちゃんと甘々を見せて CG を配ればそれでいいのに、あの脚本家はまた余計なことをし始めた。

『紅い瞳に映るセカイ』の物語は元の設定をそのまま受け継いでいる。主人公は解脱者で、真紅と恋に落ち、さらに娘までいる。名前はそら、青空だ。物語の始まりからして甘々で、一同が数年ぶりに再集結し、ささやかな日常の物語が始まる。

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しかもゲーム全体が水増しだらけで、本篇だけじゃ足りないからギャグで尺を埋めてる感じ。それが悪いとは言わないけど、どうしても唐突に感じるし、この先いったい何を語りたいのか分からないような空気になる。

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甘々を見せつけるファンディスクとして、この作品のシナリオは正直言うことはない。前作のファンディスクを経て、ほとんどの人はこのシナリオライターがどんな鳥の手口が好きかを理解している。案の定、最初は主人公が日記をめくっているところから始まり、この物語は日記の中の幻影かもしれない。甘い物語のあらすじの合間に、主人公が日記をめくるカットが入り、同時に「なぜ一番愛する人が死ぬのか」としきりに感慨を漏らし、二階堂真紅はもう死んだかのようなサスペンスを作り出す。残された孤独な主人公が神の日記帳を前に妄想していると。しかし本編はまだ甘いから、些細なことは無視すればいい。しかし、その後にまさか本編で強引に夢の中の夢をぶち込んでくるとは誰も思わないだろう。夢の中の二階堂真紅は怪我によって記憶喪失になり、一日に1時間だけ記憶があるという。まだ泣き出す暇もなく、記憶喪失になったのは実は主人公だとわかる。脚本家を罵ろうとした矢先にまたどんでん返しがあり、記憶喪失のシナリオは主人公が書いた小説で、小説の結末では2人はやはり離れ離れになったと告げられる。しかし物語はいよいよ転じ、2人が小説を書いた云々、離れ離れ云々は、単に主人公の日記の中のあらすじに過ぎず、その後の2人はようやく本当の未来を迎えることができるのだった。

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そして最後になって、ゲームは華々しくこう告げてくる。主人公が「解脱者」として存在しているあの世界もまた、神が創り出した一種の夢にすぎないのだ、と。

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だからこのファンディスクは夢の中の夢の中の夢の中の夢をやらかしたうえに、一番上の層すら夢だと言ってくる。世界は相変わらずあの有り様で、本物の真紅の最後の結末も語られない。まあ真紅はこの偽りの世界で幸せを得た、と考えておけばいい。

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だからって……この話、どう思う? ヤバいよな?俺はそう思う。 脚本家を〆てえよな?それもそう思う。

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「織姫と彦星が結婚してからというもの、牛の世話も機織りもろくにせず、いつも一緒に遊んでばかりいたものだから、結局西王母は二人を引き離したんだよ」と、老人は少し得意げな声で言った。

「え????」 少女は困惑した。「これって結局別れちゃうの? それとも一年に一度しか会えないってこと?」

「そうだよ」と老人はスマホをちらりと見て、言葉を続けた。「物語の結末は変わってないんだ。途中がちょっと違うだけさ。まあ、二人の恋が天の神様に認められただけでも上出来だろ」

「でも……結局は同じなんじゃない?その後は?二人は反抗しなかったの?いつも一年に一度しか会えないなんて……つらすぎるよ」 少女は少し共感した様子で、自分の親族の誰かを思い出しているのかもしれない。

「牛郎と織姫の話をもっと聞きたいかね?」老人の口元には笑みが浮かんでいた。

「考える考える!」小さな女の子は大喜びだ。

「じゃあ、織姫と彦星の話をもう少ししようか……」 老人は座り直して、ゆっくりと口を開いた。

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『いろとりどりのセカイ』の評価は、正直一言では語りきれない。俺はこの作品の立意が好きだ。数あるギャルゲーの中でも、「TRUE ENDで共通ルートの内容を完全に覆しつつ、何度もどんでん返しを重ねて結末へ到達する」作品は本当に少ない。ほとんどは中途半端だったり、いろいろな欠点を抱えていたりする。似たタイプだと、すきま桜とうその都会、終わる世界とバースデイ、それから紙の上の魔法使いなんかが挙げられる。TRUE ENDに到達して、真実が明かされて初めて、ずっと夢の中にいたんだとハッとする。こういう展開を描くには、伏線を張る力が十分に必要で、実際『いろとりどりのセカイ』の伏線はなかなかよくできている。加奈ルートでかなりの設定がもう十分に説明されている。神の存在、遠くの図書館、それぞれの記憶、そして多重世界、最後には二階堂真紅の夢の話まで忘れずに教えてくれる。これらは全部後の伏線で、極端な唐突さは感じさせない。最後に真実が明かされて、だいたいどういうことかも分かる。驚きは与えてくれるし、無理やりこじつけてクソみたいな気分にさせることもない。

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とはいえ、これはゲームの進行に不足がないという意味ではない。唐突なところはかなり多い。何より脚本家・漆原雪人の恋愛描写能力がとにかく低すぎる。恋愛ものにおいて、イチャイチャ描写やHシーンを書くのはほぼ難しくないし、普通の会話も難しくない。難しいのは「友達」から「恋人」へ変わる過程を書くことで、これが本当に難しくて、だからこそ多くのACG作品では、最初から好感度MAXで、適当な回想シーンをくっつけて「前から好きだった」とやるのが定番になっている。漆原雪人もそれをやったが、中途半端だった。回想シーンでの恋愛の理由がとにかくlowくて、「賭けで君を好きになる」「恋の味を試してみる」みたいな……。ある意味、二階堂真紅の妹である二階堂藍は、神様に女を斡旋しているようにすら見えて、恋愛の移行過程がまったく感じられず、キャラクターを強力な接着剤で無理やりくっつけたような印象だ。そしてくっつけた後は、この乱れ打ちの政略結婚感を薄めるために、濃度の濃いイチャイチャを開始する。とても胸キュンは感じられない。幸い、ゲームのCVは非常に頑張ってくれた。二階堂真紅は福圓美里が演じており、甘える声が脚本上の性格不足をかなり直接的に救っている。正直、二線級のCVに変えていたら、このキャラはそのまま終わっていた可能性が高い。CVの実力と対照的なのが如月澪で、CVの演技がいまひとつのせいで、このキャラはいつも何かが足りない。ちなみに如月澪のキャラ作りにも光る点はあって、「ツンデレ」の解釈はよりリアルだ。ただ、作者が加奈と真紅のTRUE ENDに大量のエネルギーを注いだせいで、如月澪√は後半の推力不足で慌てて終わってしまった。敷島鏡と東峰司については前述の通り、まったく存在感がなく、作者もエネルギーを割いていない。

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実は『アストラエアの白き永遠』の恋愛パートはなかなかよく書けていると言っていい。CVの演技がいいからだけじゃなく、シナリオライターの保住圭(ほずみけい)唯一の取り柄が女の子の甘えやぐずりを書くことだからだ。もちろん、『アストラエアの白き永遠』のその他の部分はまた別の話だが。

ゲームの画風は良好で、最初は受け入れられないかもしれないが、見慣れてくると微妙な繊細さを感じられる。音楽については文句のつけようがない。これは私が見てきた Galgame の中でも屈指のレベルの劇伴だ。なにせアストラエアの白き永遠もこのゲームと同じスタッフで制作されている。シナリオ以外の内容に関しては、特に多くを言うことはない。

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もうひとつ面白いのは FAVORITE 自社エンジンのあの演出で、キャラの立ち絵をズームさせながら背景をぼかす効果がとにかくヤバい。いつも心地よくて、ちょっと高尚な、いやどこか儚げな既視感を与えてくれる。そこにゲームで頻出する空、夕焼け、夜が加わると、もう表現力が強すぎる。時々、いろとりどりのセカイとアストラエアの白き永遠は同じシナリオライターが書いたんじゃないかと思うことがある。いつも同じ匂いがするからだ。実際、両者のシナリオはまったく別物で、そのすべてはエンジンの演出効果が生む既視感にすぎない。

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ここまで来ると、脚本家がゲーム中でひけらかす小賢しい小細工についても触れざるを得ない。このゲーム全体を通して、脚本家が最も得意としているのは「一つの物語を書いてから、これは嘘だと告げる」ことだ。それは後のファンディスクだけに存在するわけではなく、共通ルートでも何度か登場している。主人公が見る幻覚のいくつかは笑いを取るためであり、いくつかは純粋に人を不快にさせるためだけのものだ。ファンディスクのほうの連中に至っては、脚本家が最もイキった方法で、本来なら良いものをドSな嫌な顔で目の前に差し出し、「さあ食え」とでも言わんばかりに押し付けてくるようなものだ。

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このゲーム、最後の結末でもっと潔く、世界を造り直して悠馬と真紅が永遠に幸せに暮らしましたと直接言ってくれれば、文句は言わない。 このゲーム、Fandisk でもうちょっとマシにして、言うべきでない余計なセリフは言わず、これが夢だと何度も繰り返さなければ、俺も文句は言わない。 このゲーム、真紅の Fandisk で中盤の病院のシーンを消して、最初の幕間のワケわからんものも消してくれれば、俺も文句は言わない。 このゲームのシナリオライターがクソみたいにいつも小賢しく余計なことさえしなければ、俺はもっと文句なんて言わない。 もし……もし……

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「もしも」なんてあるわけないじゃん。だからこのゲームには妙に引っかかってしまって、こき下ろしてやろうかと思ったけど、ゲーム自体に落ち度はほとんどなくて、悪いのは裏で小賢しく知恵を絞ろうとした脚本家のほうなんだよな。まあ脚本家がゲームのシナリオを作ってるわけだし、こういう類の話にはだいたい見下した態度を取ってる。某『ホワイトアルバム2』もそうだし、他にもいろいろある。たぶんこれが例外なんだろう。

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まあいい、これはただのゲームの感想であって、結果を出さなきゃいけないわけじゃない。何年も経ってから、このゲームをどう評価すべきか、もっと分かるようになるかもしれない。

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「それで最後には、牛飼いは織女に振られて、織女は別の人を好きになっちゃったんだとさ……」老人の話はまだ続く。

「なんだよ!」 少女は少しイライラしていた,「どうして織姫は彦星を愛してないんだよ」

「ああ、実はこれは他の人が伝えた話で、本当の牛郎織女の話じゃないんだよ……」老人はそう説明した。

「織姫と彦星のその後の話が聞きたいの!」女の子が老人の腕を揺らしながら……

老人は意味深な笑みを浮かべ、ゆっくりと言った。

「当然、離れ離れで年に一度しか会えないってことか」

「あの二人はこのまま続いていくのか?」

「それもそうとは限らないよ~」

「あれは一体なんだったんだ……」

「織姫と彦星の話が聞きたいなら、もう一つ話してやろうか?」

「やだ、本物の織姫と彦星の話の続きが聞きたい!」

「へへ。」老人は口の端を曲げて、「それは明日来たら教えてやるよ。」

「なんだよあんた。」小さな女の子は怒って立ち上がった。「話をしてって言ったのに、途中まで話して続きを話さないし、そのうえ嘘の話をでっち上げては私を騙すし、最後にはどうなったかも言わないで、ただ笑ってる。何がおかしいんだよ!」

「だって、少しはサプライズを残しておかないとね……」

「何を焦らしてるのよ!」少女は服をぱんぱん叩いて、背を向けて立ち去った。半分ほど歩いたところで振り返り、老人に向かってあっかんべーをすると、怒りを込めて言い放った。「おばあちゃんが言ってた、話を途中までしか聞かせないやつは、みーんなケツの穴が腐ってるんだって! ぷーーーーーーーーーッ」

少女はぴょんぴょん跳ねながら去っていき、老人はひとりそこに座ったままだった。

「ケツの穴が腐ってやがる、へへ。」老人はスマホを取り出し、またいじりながら独り言をつぶやいた。

「若い頃に遊んだゲームのシナリオなんだが、あのシナリオライターこそ真の・爛屁股眼子だったな」

一陣の夜風が吹き抜け、遠くの地面にあった一枚の落ち葉を巻き上げた。葉は風に乗って舞い上がり、月光を横切り、遠くへと漂っていく……

完。

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