『空飛ぶ羊と真夏の花』レビュー
「物語の書き方って、そうじゃないだろ」
ネット編集者になったばかりの頃、これってすごく神聖な仕事だと思ってた。
だって大勢の人がお前の書いたものを読んでるんだから、書いたものには責任を持たなきゃいけない。めちゃくちゃな内容はダメ、バカみたいな意見もダメ、曖昧な言葉もダメ。
どんな記事だったかは覚えてないけど、たぶんブラウザの話で、まあChromeってことにしとく。その日、海外でChromeの某バージョンのセキュリティがIE9より低いってニュースが出てた。だから俺は「Chrome XXバージョンの安全性はIE9以下」ってニュースをコンパイルした。
記事を上げてすぐ、編集長に取り下げられて、そのまま編集長との個別面談。
「ニュースとしてはいい。でも爆点がゼロだ。お前のタイトルは平坦すぎる」
タイトルが平坦なのは分かってる、でもこれ以上ないくらい最小限の言葉でニュースの内容をまとめたらこれになったんだ、と説明しようとした。
「いや、そういうことじゃない。お前のタイトルは、面白くない、惹きつけない、他人がクリックして読んでみたいと思わせる力がまるでない」
しばらく考えて、ようやく分かった。編集長が言いたいのは、俺が「タイトル党」になりきれてないってことだ。
実はタイトル党のやり方には自信がある。お前らが俺に何を言ってほしいか、何を書いてほしいか、何を表現してほしいか、そういうのを読むのは得意なほうだと思ってる。編集長の心を読んだ後、俺はニュースのタイトルをこう変えた。
「真相はこうだった?Chromeの安全性がまさかのIEにフルボッコ?」
新しいタイトルは編集長に褒められ、頭の回転が速い、他の新人ライターも見習えと言われた。
でも俺は、こんなタイトルを作ったことで何かを失った気がした。そして後になって、失ったのは職業倫理に対するほんの少しの節度と操守、略して「節操」だって分かった。それと同時に編集長のタイトルへの要求はどんどんエスカレートして、明らかに詐欺じゃんって思うタイトルも、俺は喜んで出し続けてた。
「クリックがあってこそ金になり、効果になる。他のもんは全部浮雲だ」
「飯も食えねえのに、何の節操だ?」
それも一理ある……仕事ってのはまず腹を満たすことだ。お前が餓死したら、節操なんて何の役にも立たないだろ?
でも節操は節操として、俺は嘘は許せなかった……タイトル党のニュースを繰り返し作り、下限なしのクリック詐欺をやる姿には吐き気がした。
何年も経って、俺はもう編集者じゃないけど、昔働いてた場所を振り返ると、相変わらずタイトル党だらけで、当時より酷い。むしろさらにヒートアップしてる。大衆が文句を言っても、お前になんの手がある?文句を言いながら、結局見てるだろ?クリックのたびに誰かの金になる。ユーザーって時々そういう意味でクソなんだよ。
タイトル党が嫌いな俺でも、たまに騙されてニュースを何個かクリックして、開いてみたら真実に腹を立てて、すぐまた自分が醜いなあって気づくだけ。
実は時々分かるんだ。惹きつけるタイトルには、それなりの必要性があるって。タイトルが平坦すぎて情報の荒波に埋もれてしまうニュースも確かにある。同じ一言でも、面白く言うのと堅苦しく言うのと、どっちも選べるなら「面白い」ほうを選ぶだろ。ニュースのタイトルも同じだ。これこそが「書くことの魅力」であり「文字の魅力」なんだと思う。
片手じゃ拍手はできない。タイトル党の氾濫はどちらか一方のせいじゃなく、社会がせっかちすぎるだけだ。
だからこれは「元々堅苦しい文字」を面白くしない理由にはならない。タイトルもそう、ニュースもそう、物語もそう。ストーリーのあるゲームもきっとそうだ。
面白い物語の筋。それが面白い理由は、元々は設定と関係あると思ってた。展開と関係あるし、テンポとも関係ある。でも今はもう一つ加える。物語の構成にも関係ある。しかもかなり大きく。良い構成ならゲームは常にサスペンスと楽しさに満ちる。悪い構成なら、本来面白いはずの物語をつまらなくする。『空飛ぶ羊と真夏の花』のように。

『空飛ぶ羊と真夏の花』はNavel honeybellの処女作。会名を見れば何の会社か分かるから、余計な説明はしない。

『空飛ぶ羊と真夏の花』は、まさに「本来面白いはずの物語」をうまく語れず、逆にすごくつまらなく語ったゲーム。全部クリアしてから振り返ると、このゲームは物語に大きな欠点があるわけじゃない。むしろ見どころは多い。でもその見どころをここまで使い潰せるのは、ある意味すごい。
物語は比較的ストレート。主人公は天界の神で、毎日天界から世界を守って眺めている。神には妹がいて、妹女神という。ある日、妹女神が兄、つまり主人公に話しかける。天界はこんなにつまらない、自分が天界から飛び降りて人間に転生したら、兄は自分を見つけて連れ戻せるか?

主人公は神だから当然そんなこと気にしない。でも妹女神は本当に飛び降りた。飛ぶ前に、これは兄とのゲームだと言い残して。
妹が消え、下界で人間に転生したらしい。神である主人公はかなり不安になる。そこに天使が現れ、自分は妹女神の守護天使メリエルだと言う。下界に降りて妹を連れ戻すよう神に警告する。仕方なく主人公は下界へ。転生はせず、自分の身の上を設定して、両親が早くに死んだ孤児となり、お嬢様の此花宮琴耶に引き取られる。この時点で主人公は人間で、名前は天城恵介。天界の記憶も失っている。要するに自分が神だって覚えていない。孤児として真面目に暮らし、海外留学までして引き取ってくれたお嬢様の執事になる。お嬢様と一緒に学校に通い、執事のバイトをしながら静かに暮らす。学校でも友達や女の子たちと出会う。

自称天使のメリエルが現れる(そう、最初に天界にいた天使)。主人公の本当の身分は神だ、妹を探すために下界に降りたんだ、本題を忘れるなと告げる。

当然主人公は半信半疑。でも人間になった主人公は時々天界の神の夢を見る。とりあえず信じることにした。天使いわく、妹を目覚めさせるには、妹が下界に落ちた時に散らばったフラグメントを何個か回収して、妹を覚醒させ、主人公と一緒に天界に戻り、このゲーム騒動を終わらせる必要がある。
で、フラグメントはどこに?メリエルが候補者を挙げる。みんな主人公が学校で会ったことのある人物。超能力サークルの部長、生徒会長、アイドルの友達、校内の庭で見た謎の女の子、そして自分のお嬢様(たぶん?)。
つまりこのゲームの物語は、女の子を攻略し、妹女神が彼女たちに憑依させた欠片を回収し、妹を目覚めさせ、神である主人公を天に戻して秩序を回復する、というもの。この設定は『神のみぞ知るセカイ』にかなり似ている。あっちは遊魂を回収、こっちは欠片を回収。でも展開は違う。桂木桂馬は攻略のたびに記憶を消されるが、元神であるこの主人公は攻略後も……永遠に人間界に留まる。

そう、ゲームでは各ヒロインのルートでフラグメントがヒロインに与える影響が鍵になる。自信の源になる者、超能力を持つ原因になる者、歌の特殊な才能を持つ者、そして……フラグメントの力で命を繋ぐ者。主人公は各ヒロインと恋に落ちた後、彼女を置き去りにして自分だけ天に戻るなんてできない。メリエルはヒロインの記憶を消して全てをリセットすると保証するが、一度恋をした主人公はその感覚を忘れられない。どのルートの結末も、主人公とヒロインが互いを忘れられず、神をやめて人間として彼女のもとに戻るENDだ。

ルート単体で見ればとても感動的で、恋愛への美しい憧れを十分に表現している。中国古代の「比目魚になれるなら死も辞さず、鴛鴦となって仙人を羨まない」みたいな味わいがある。でもゲーム全体を俯瞰すると、この展開はどこかおかしい。
ゲームの最初は主人公と妹のゲーム。妹のわがままで、主人公は妹を探しに下界に降りる。普通に考えれば、結末は妹と関係あるはずで、ハッピーエンドも主人公が苦労して妹を取り戻すもののはず。

なのにこのゲームの全ルートの結末は、主人公が妹を探す途中で人間の女の子と恋に落ち、最後は神をやめ、妹を一人天に残す。あるルートではもっと直接的に、妹が現れて主人公に告白する(実は妹のCV卯衣が最初からそのキャラを暴露してた)のに、主人公にフラれる……

妹ルートに関係する結末がないわけじゃない。選択肢をめちゃくちゃに選んで最後にNormal ENDに入ると、主人公は誰とも恋をせず、メリエルがゲーム終了だと現れ、妹も出てきて、主人公は天に戻る……
つまりこのゲームの正常なテンポに最も近い結末が、やたら短いNormal ENDだってこと。なんだそれ?

それに、普通こういうゲームの展開は、主人公が最初はただの人間で、恋愛学園ストーリーが始まり、最後に天使が現れても半信半疑、最後にルートロックでTRUE ENDが開き、TRUE ENDで真実が明かされる。天使は本当に天使で、主人公は本当に神で、全てはただのゲームだった。最後に苦労して妹を見つけ、妹ルートと深い告白、これが正規の展開だろ!
でもこのゲームにはルートロックがない。あるのは欠片の持ち主たちとの攻略話だけ。妹との直接の話もない。Normal ENDが一つあるだけ。もっと理解できないのは物語の語り方。最初から夢の感覚で、主人公は神だ、全てはゲームだとプレイヤーに直接教える。ゲーム設定を説明し終えたら本編が始まる。でもこれをやったら、ゲームの物語にはサスペンスがなくなってしまう……最後に隠しエンド、つまり妹ルートがあると思ってたのに、なかった。

脚本がどう考えたのか知らないが、このゲームは始まりはexcitedなのに、中盤はまるでサスペンスなし。最後に妹ルートのサプライズもなし。プレイヤーは最初の高揚から、どんどん退屈に……どんどん退屈に。しかもヒロインのルートが多くて長いから、見続けるのがつらい。
ああ、別に個別ルートがクソってわけじゃない。むしろなかなかいい。野球で勝負する話も、中二病の魔法研究も、お嬢様も、難病の少女も、アイドルも、どれもいい話だ。でも……それらはバラバラで、欠片を集めるという共通点以外に骨組みがない。つまり本筋と関係ない!しかもルートのパターンが単一で、ほとんどが急速に告白、イチャイチャ開始、メリエルが現れて神は恋に落ちるなと警告、主人公無視、最後に神をやめて人間に……などなど……

むしろこのゲームの本筋ってあのNormal ENDなんじゃないか?
ああ、だからこのゲームに低評価を付け続ける人がいるのも無理はない。俺に言わせれば本当に惜しい。ゲームの語り方さえ変えれば、いい設定といい物語になったのに。別に面倒じゃない。妹ルートを追加して、ルートロックを入れて、妹との賭けの話を最後のTRUE ENDに置けばいい。
脚本家が正直すぎたのか、企画側のミスなのか。ともかくこのゲームは自分でネタバレするピエロみたいなもの。最初から結末が分かっていて、実際その通りに終わる。意外性もサプライズもなく、ただそれだけ。

絵は文句なしに豪華。CVも上原あおい、桐谷華、卯衣と実力派揃い。音楽も心地よく、OPは中毒性がある。システムも親切で、スキップしても章単位で進むから、素早くジャンプして位置を確認できる。

なのに、何もかも悪くないこのゲームが、構成の下手な物語のせいで催眠劇みたいなものになってしまった。
『少林サッカー』を見た時、印象に残った台詞がある。
「サッカーってのはな、そうやって蹴るんじゃねえ!」
このゲームの脚本家にも言いたい。
「物語の書き方って、そうじゃないだろ」
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