『箱庭の学園』レビュー
日本の同人ゲームは数も種類も多いけど、シナリオなしでただ抜くだけのやつを除けば、残りのストーリー重視の作品は大体ボリュームが短くて、絵師も普通、音楽もそこそこ、声優もアマチュア級。勝負できるのはほぼシナリオだけ。そりゃシナリオは比較的どうにかなるけど、いい絵師、いい声優、いい作曲家はなかなか連れてこられないからね。
要するに同人ゲームの会社は金がないことが多くて、小規模な作品しか作れない。本当に金があるならさっさと正式な会社を立ち上げて真面目なゲームを売るだろうし、同人サークルとして中途半端に活動したりしない。
でも例外はある。同人ゲームでもヤバいのはプレイしたことあるし、同人ギャルゲーでも豪華なやつはある。たとえば無人灯の『箱庭の学園』がそうだ。
まず『箱庭の学園』の原画は捆枝りこ。これだけで十分すぎる。しかも声優陣がやばい。日高里菜、徳井青空、柿原徹也、沼倉愛美……
あとはまともなシナリオさえあれば、このゲームは正式な会社の大作と肩を並べられた。なのに……現実は残酷で、すべてはストーリーでぶち壊された。

ゲーム自体は長くないけど分岐は多くて、全体の流れは一本道。主人公は山奥の閉鎖的な学校に通っていて、学校には七不思議の伝説がある。学園祭の前夜にその伝説が次々と現実になり、学園祭の翌日には大量の生徒が行方不明になったり死んだりする。これらの事件は全部七不思議と関係している。
そして今年の学園祭が来る前に、主人公はなぜか気を失っていることに気づく。目を覚ますと学園にはほとんど人がいなくて、主要キャラ数人しか残っていない。そこで主人公の友達・折本樹が「これは学園の『七不思議事件』と関係あるんじゃないか」と仮説を立て、一行は人の気配のない場所で調査を始める。
調査の途中で、幼馴染の佐倉綾奈の情緒が不安定になり始める。同時に現れた謎の少女・柴谷栖もわけのわからない発狂と狂った行動を見せる。一方、まもなく入学するという古都莉緒は情緒安定していて、折本樹はずっと古都莉緒を観察し、疑いの目を向けていた。

最後に校長室を調べたところで、突然折本樹が主人公たちを閉じ込め、「お前たちは『かつて覚えていたこと』を忘れている」と告げる。回想を経て、主人公と佐倉綾奈は自分の過去を思い出す。佐倉綾奈は自分の両親を殺していて、主人公はそのことを知っていたのに、やはり忘れていた。そこへ折本樹の声が響き、主人公たちに学校の池のほとりで真実をみんなに伝えろと言う。
現場に駆けつけると折本樹が古都莉緒と対峙していた。ひとしきりくだらないやり取りの後、真実が明かされる。この学校全体がマウス実験用の学校だったのだ。古都莉緒の母親は人の精神と記憶を操る薬を研究していて、薬には実験体が必要だからこの学校を作り、生徒を実験台にしていた。薬は効果があるが副作用もあり、記憶がしょっちゅう蘇ったり、精神が不安定になって暴走したりする。実験反応が強く出た失敗体は学校が密かに処理し、「学園の不思議事件」の名目で片付けていた。大半は学園祭の前だ。

佐倉綾奈は両親を殺したために薬を飲まされてこの学校に来た。実は柴谷栖も同じだ。校長室で見つかった赤い枠で囲まれた名簿には、枠で囲まれた名前が学校の実験体として載っている。

古都莉緒と折本樹は実験体ではない。前者は両親が薬の研究開発に参加していて自分は触られないから。後者は両親が薬の実験で殺されたので、学校に潜入して復讐しようとしていた。
ひとしきりくだらないやり取りの後、主人公は佐倉綾奈を連れて学校を脱出する。残った古都莉緒と折本樹は共倒れになって贖罪する。ゲーム END 。ちなみにこのゲームには END がたくさんあるはずで、Happy END の可能性も否定できない。
でももうやりたくない。シナリオがひどすぎるから。

容量が小さくてシナリオが短いせいか、序盤の展開はジェットコースターのように激しく、中盤ではどのキャラもわけもなく発狂し始めてちんぷんかんぷん。最後に真実が明かされる時もあまりに強引で、回想シーン一発で終わってしまう。CG は多くて絵柄もいいのに、肝心なところで絵がない。たとえば徳井青空のあの娘が死ぬ CG はなぜないんだ?
ああ、このゲームは完全に捆枝りこが自分の力で友人たちを呼び寄せて作った感じがする。方糖社の連中もそうだし、自分が一番好きな徳井青空の矢沢ニコもそう。このゲームでも声質は同じで、声優は大物揃い、絵師自身も大物、音楽もまあまあで、しかも OP と ED の独立曲まである。
ただシナリオが硬すぎてひどすぎる。軽く遊ぶ分にはいいけど、時間は短いから損したとしてもそんなに時間は無駄にしないと思うよ。
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