『僕はキミだけを見つめる ~I gaze at only you~』レビュー
『僕はキミだけを見つめる ~I gaze at only you~』は別に新作じゃない。はっきり言えばリメイク作品だ。
リメイクって何かっていうと、ドラマや映画のリメイクと同じノリ。インレがこれをリメイクした理由はまあ納得できる。なにせオリジナルは2006年で、絵柄も制作もかなり粗かった。信じない人はググってみればいい。この2015年のリメイク版は、作画、彩色、BGM、どれを取っても生まれ変わったレベルに達している。
原画は同じ人なのに、その進化がはっきり分かる。彩色はなぜかSAGA PLANETSの匂いがするし、音楽はElements Gardenを呼んでいて、OPは彩音、EDはヒロインの三代眞子が自ら歌っている。三代眞子が誰か分からないなら、米澤円でググれ。なにより重要なのは、オリジナルにはCVがなかったこと。リメイク版は当然のようにフルボイス化されている。
最初はリメイク版なんて金儲けの騙しだろ、と思っていた。でも今回の『僕はキミだけを見つめる ~I gaze at only you~』は前後の差がデカすぎるし、公式も「単なる画面強化の域をはるかに超えている」と断言していて、シナリオも大幅に刷新されている。とても騙しとは思えない。
だから俺はこの穴に飛び込んだ。他でもない、ゲームの設定に引かれたからだ。主人公が依頼を受けて、暗殺組織に狙われたヒロインを守る。ただそれだけ。もう退屈な学園恋愛劇には飽き飽きしていたからな。

ゲームの流れは短く、選択肢もほぼない。唯一の分岐も象徴的なもので、誰かが選び間違えるとは思えない。故意に死にに行くなら別だが。こういう一択で進むゲームを「一本道」と呼ぶのが好きな人がいるらしい。俺が過去にやった中で「一本道」と言えるゲームにもう一つあって、それがSinClientだ。面白いことに、あっちも設定がちょっと似ている。SinClientも後半で主人公がとあるヒロインのボディガードを始めるくだりがあった……
ああ、もちろん、やってみたら全くの別物だったけどな。
『僕はキミだけを見つめる ~I gaze at only you~』の物語は主人公の回想から始まる。冒頭で主人公は、かつてこの街の幼馴染二人と一緒に…………あー、カタカナ覚えてない、中国語だと剣歯虎になる組織を立ち上げたと語る。この組織はヤクザっぽく見えて、子分を集めて依頼を受けてはいるが、実際は警察がやりにくい正義の行為をやっていた。たとえば輪姦された少女たちを助けて犯罪者を見つけ出し、そいつらのチンポに穴を開けるとか。グレーゾーンに位置しながらも、結局は庶民のために動いていて、街全体の支持を集め、侠客と呼ばれていた。同時に剣歯虎は主人公の指揮で街の麻薬取引も一掃していた。だが、そんな主人公の動きは大物たちの不満を買う。ある日、幼馴染二人が相次いで変死する。しかも無残なことに、首を切られて内臓をえぐられていた。主人公の「剣歯虎」もこれで崩壊し、主人公は街の支配を失って普通のチンピラになり、街では麻薬取引が再び蔓延る。主人公はもう手が出せない。
物語の基本ルートはこの一連の回想が終わってから始まる。ゲームに突然ロリが現れて、主人公をボディガードとして雇う。数日後、主人公がチンピラを追い払うと、ロリは主人公をとあるキャバクラのママに紹介。ママも主人公を雇って用心棒も兼ねさせる。すぐに主人公の働きぶりがママの信頼を得て、ママは何度か主人公の能力を試す。すべて合格。ママは「もっと上の人があんたを雇いたがってる。行くか?」と聞く。
主人公は結局行くことにした。好奇心と金欠、両方の理由で。制作会社に着いて社長に会うと、社長はこう言った。自分のところに今一番人気のスター、風早永遠がいて、彼女は8日後にチケット制のライブを開催する。3日間続く。ところがマフィアから彼女への脅迫状が届き、ライブを中止しなければ暗殺すると。だからライブが終わるまで風早永遠のボディガードをしてほしいと。あのママやロリの雇用も、社長が適任者を探すための選考活動だったのだ。
主人公は少し考えて承諾し、大スターとの同居生活が始まる。話してみるとこのスターはなかなかドジっ子で、腹黒さは全然ない。ライブの日は近づき、日々は穏やかで、怪しい人物も見当たらない。ただ、ある日マンションの外で京劇の仮面をつけた不審者を見かけたくらいだ。

ライブ前日、主人公は「マフィアの暗殺計画を知っている」という人物に、かつて住んでいた街へ呼び出される。そこに着くと知人は惨殺されていて、京劇の仮面の怪人が突然襲いかかってきた。格闘の末、主人公は力及ばず殴り倒される。怪人は自分が差し向けられた殺し屋「悪夢」だと告げ、ライブを中止しろ、さもなくば風早永遠が危険だと警告した。
警告を受けた主人公は大スターのもとへ戻り、ライブを中止すべきか尋ねる。皆で協議した結果、そして風早永遠本人の意思で、彼女は怖くない、ライブは予定通り開催したいと言う。主人公も彼女を信じ、警備を強化する。ライブ初日は無事。二日目、風早永遠の女性アシスタントが殺し屋に斬られ、さらにマンションの風早永遠の部屋の壁に脅迫状が現れる。殺し屋はすでに女優の部屋に出入りする能力を完全に持っているということだ。どんどん危険になっていく。
主人公は調査を始め、風早永遠のマネージャー森戸美夜に問題があると気づく。ある電話の会話を主人公が聞いてしまい、相手がかつて剣歯虎にいた子分「ナツ」にそっくりだったのだ。調べた末、森戸美夜は自分が内通者だと認める。だが、やむを得ずであって、風早永遠を殺したいわけではないと。ナツは森戸美夜の弟で、本名は徐切那。森戸美夜の本名は徐切咲。二人は徐切栄という青龍帮のボスの子供で、青龍帮は……中国の暴力団組織で、日本の白も黒も貫いて、日本の上層部を支配していると称している。

最後に主人公は、ナツが以前自分に接触してきたことを思い出す。とても殺し屋には見えなかった。まさかすべて偽装だったのか? 主人公は風早永遠をライブに戻す決断をし、同時にナツを郊外の教会におびき出す。ナツは来るなり本性を現した。彼こそが殺し屋で、性格はすでに歪んでいた。最初に「剣歯虎」に潜入したのも計画的で、主人公の仲間二人を殺したのも計画的だった。こうして対立は決裂し、戦いが始まる。苦戦の末、女刑事が来て助けたことで主人公が勝利し、ナツは劣勢になって逃げる。女刑事と主人公は追跡を続け、ナツ、つまり徐切那の父親である徐切栄のアジトを見つける。主人公が駆けつけたとき、徐切那は父親に銃で殺され、血の海に倒れていた。徐切栄は「こんな男は知らん」と言って関係を切り捨てようとする。口論の末、徐切栄は悪事が露見したと悟り、手を出そうとしてその場で射殺された。
殺し屋は排除され、主人公は風早永遠のもとへ戻って最後のライブを終わらせようと思ったそのとき、警備員が飛び出してきて一突きする。森戸美夜、つまり徐切咲が罪悪感と責任感からその一撃を身代わりに受け、死亡する。風早永遠は自分のマネージャーであり親友が目の前で死ぬのを見て、大きなショックを受け、失声してしまう……

最後の三日目のライブは失敗した。歌手がもう歌えないのだから当然だ。芸能事務所も解散する。社長は主人公に礼を言い、給料を清算したら出ていい、新しい仕事も紹介すると言う。ここで清算するかどうか選べるが、正統ルートは清算しない。主人公は、もう風早永遠のボディガードであり盾になった以上、続けると言う。社長からもらった金を持って、風早永遠を連れて田舎へ帰り、療養生活を始める。
療養生活はのんびりしていて、昔の友人たちからもよく手紙が届く。だが風早永遠は依然として失語のまま話せない。島で主人公は森戸美夜の墓を見つける。同時に、森戸美夜の弟ナツが実は死んでいなかったこと(戦闘中に女の格好をしていたのが分かっていた)にも気づく。ナツはそこにいて、今は主人公と揉めないと言い、姉と自分と主人公の愚かさを嘲笑う。ひとしきり物悲しくなって黙って立ち去る。主人公はナツに蹴られて気絶するが、ナツは命までは取らず、風早永遠に電話して主人公を助けに来させ、振り返らずに去る。

気絶した主人公は森戸美夜の墓前で彼女本人を見る。永遠を恨んでいるかと聞くと、彼女は首を振る。永遠を許せるかと聞くと、彼女はうなずく。そして主人公が目を覚ましたとき、風早永遠はもう話せるようになっていた。足りなかったのは、森戸美夜の許しだけ。風早永遠の心の中の、森戸美夜へのわだかまりが解けただけのことだった。
話せるようになった風早永遠は、主人公にすぐ告白し、二人は恋人になる。最後に、かつての制作スタジオの仲間たちが再び集まり、社長は当時チケットを買いながら三日目のライブを見られなかった観客たちも呼んでくる。誰もがひまわりを持って、再び島に集まり、あの中止になった三日目のライブをやり直す。ここでゲームは終わる。
正直、最初にクリアしたときは失望した。なにせ俺は「暗殺」「護衛」「陰謀」「追跡」「逆追跡」のサスペンスを求めて飛び込んだのに、その方面の出来がひどくお笑いだったからだ。ボスは中国の暴力団で、しかも日本の白も黒も貫いているとか、どこのなろう系の爽文だよ。中国の暴力団に徐切咲という名前の奴がいるらしいが、はっきり言って中国人の名前に「咲」の字を見たことがない。もっとひどいのは、ゲームが冒頭で主人公のボディガード就任を決めた瞬間から、長々とした日常が始まって緊張感が皆無なこと。ゲームは全十章+After Story一章で、ボディガードらしい内容はせいぜい二章。残りは全部日常の与太話。ヒロインのキャラ造形も、むしろこれは萌えゲーなんじゃないかという気がしてくる……

でも、だからといって簡単にダメだと断じることもできない。他のゲームにない光がある。あのヤバい戦闘演出だ。俺が今まで見た中で最も滑らかで、臨場感が強く、爽快な戦闘表現だと言い切れる。今のところ超えるものはない。アニメーションの使い方、表情の変更、エフェクト、打撃音、どれも完璧で、見ていて異常に気持ちいい。二流のラノベ原作アニメの戦闘よりよほど爽快で、完全に圧倒している。ただ残念なことに、さっきも言った通りボディガードの話自体が少なく、戦闘はさらに少ない。ゲーム全体でせいぜい三回だ……



ゲームの陰謀の説明は二章分しか容量がないのに、それでもかなり強引だ。女刑事の長々とした説明で、ようやく主人公は背後にある理屈を理解する。なぜ青龍帮が風早永遠を暗殺しようとするのか。それは青龍帮のボス徐切栄が筋金入りの悪党で、冷酷なだけでなく女好きだったからだ。最初は他人の妻をNTRして子供の父親になり、同時に日本に来たばかりの頃に風早永遠の母親に目をつけた。しかし母親は相手にしなかった。すると徐切栄は帰宅して妻を殴り、風早永遠の母親が結婚したと知ると、さらに激しく妻を殴った。妻は耐えられず自殺する。それ以来、徐切栄は風早永遠の母親を恨み、彼女とその娘を暗殺しようとする。しかし手違いで娘は逃げ出し、再び現れたときにはスターになっていた。

つまり、風早永遠があの徐切栄に暗殺されかけた理由は、あのオッサンが彼女の母親を抱けなかったから。マフィアと制作会社の対立なんて全部そいつのツンデレの言い訳だ。くだらねえだろ???
つまりこのゲーム、シナリオはかなりアホなのか? せっかくまともに話を語るゲームなのに、本筋に使っているのは全体の20%だけで、残りは全部日常。どういうことだよ?
でも、待てよ。俺は何か勘違いしているんじゃないか。
ゲームのタイトルは『僕はキミだけを見つめる ~I gaze at only you~』。意味は明らかで「俺はお前だけを見つめる」。ゲームの最初の一文「ひまわりの花言葉、知ってる?」から、最後も同じ言葉で終わる。俺はゲームの流れを思い返してみた。

まず風早永遠は初登場のときから特徴がある。自己紹介のたびに「好きな花は向日葵です」と強調する。これが妙で、作者が何かを暗示しているようだった。日常パートにも伏線はあって、なぜ風早永遠の歌声がそれほど重要なのか、なぜ制作会社の全員が彼女の歌声のために彼女を守ろうとするのか、ずっと説明しようとしている。
中盤あたりで、主人公が子供の頃に風早永遠と知り合っていた話が出る。主人公が風早永遠を一度見て彼女を懐かしいと感じた理由も、二人とも孤児で、かつて会っていたからだ。制作会社の社長は主人公に風早永遠の過去を話す。彼女は母親に捨てられ、最後に母親が良心を取り戻したときには母親を失っていた。最初は失語だったが、ある日なぜか話せるようになり、しかも歌がやたら上手かった。医者は「奇跡」だと言うが、同時にこの「奇跡」は長くは続かない、未来のある日また失声するかもしれないと告げる。これがゲーム終章のあのくだりの説明だ。

誰もが風早永遠を純真で、無邪気で、優しく、しかも勇敢だと思い、彼女の歌声のために守ろうとする。風早永遠も、自分はいつも主人公だけを見ていると言う。なにせ初期に助けてくれた人だから。
ゲーム内に「お前だけを見つめる」展開があるのは風早永遠だけじゃない。マネージャーも、最後のボスであるナツも、みんな「主人公だけを見つめる」存在だ。みんな主人公に好意を持っていて、ただ最後のボスのは歪んだ愛だっただけ。
ゲームタイトルを軸に解釈すると、このゲームはなかなか強く見えてくる。伏線はすべて回収され、タイトルにある「お前だけを見つめる」という要素の重要性がうまく際立っている。恋愛物語としてはこれで十分合っている。細部はちょっと変だが大した問題じゃない。まるで瓊瑶の『煙雨朦朧』に戦闘シーンがあって穴だらけでも、誰も気にしないのと同じだ。だって重点はそこじゃないから。

ああ……もしかするとこのゲームが語りたかったのは「暗殺」なんかじゃなく、風早永遠という女の子の恋愛なのかもしれない……
子供の頃に憧れた相手が何年も経って再び目の前に現れ、再会する。長い時間をかけて互いを知り、傷ついたときにも相手は離れず、自分が立ち直るまでそばにいてくれる。そんな王子様に女の子はみんな出会いたいと思うだろう。

日常パートは本筋とあまり関係ないとはいえ、出来が悪いわけではない。CVの演技も良いので、ネタとして見ても問題ない。CVといえば、主人公のヒロインとボスに触れないわけにいかない。ヒロインは米澤円で、米澤円がまた女歌手を演じるのは制作側の意図なのかどうか。ボスは桐谷華で、最初は男性キャラとして登場し、戦闘中に自分が女性だと露見する。終章での再登場では、女性の姿がなかなか魅力的に見える……おお……
もう一つ面白いのは、オリジナル版2006年では桐谷華が演じたナツは確かに男で、しかもホモだったこと。ゲームにはホモが主人公にストローを差し出すCGもあった。だがリメイク版ではついに性別が修正され、BLゲー疑惑の気まずさを回避している。同時に終章は完全にリメイク版独自のものだろう。オリジナルにはヒロインが失声する話はなく、戦闘が終わったら終わりだったから。
で、結局このゲームをどう評するか。「暗殺」部分のシナリオはお笑いだと言いたいが、サスペンス重視のゲームではなく、むしろ恋愛ゲームだ。恋愛方面から見れば、シナリオの進みは悪くない。絵柄は優秀、戦闘パートのアニメは非常に非常に非常に気合が入っていて、音楽も良く、CVの演技も良い。ああ……もしかしたらこれは良いゲームなのかもしれない。
ただ、俺が最初から心の中で分類を間違えていただけの話だ。
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