『蒼の彼方のフォーリズム』レビュー

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このゲーム、正直に言うと一年近く積んでいた。

というのもオレには悪いクセがあって、みんなが遊んでるのを見たり、感想やスクショを眺めたりするだけで、だいたい話の流れが脳内補完できてしまう。で、なんとなく分かった気になってしまうもんだから、よっぽど他にやることがないとか、特別な理由がない限りは優先して手を出さない。たいていは未開拓の荒地を耕すほうに時間を回してしまう。まあそんな感じだ。

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そんなわけで、最近になってアニメがもうすぐ始まるってなってようやく「あ、これ積んでたわ」と思い出してプレイ開始。ところがゲーム自体が面白すぎて進みが遅く、アニメが二話まで放送されたあたりでやっとクリアした。

ん? 今なんつった? ゲーム自体が面白すぎる?

そう、これは正のエネルギーと明るい人生観、そして心の傷を癒やす力に満ちあふれた良ゲーなのだ(眼鏡クイッ)。

蒼の彼方のフォーリズムの制作は Sprite。恋愛と選挙とチョコレートを作ったところだ。この会社の素性はよく知らないが、なんか金持ちっぽい。金持ちすぎて体液の匂いがするようなお色気路線をほとんどやらないのに、売上はそこそこ良くて、分社会社の Fairys で全年齢ゲーまで出してるくらいだから、まあ悪くないんだろう。他のギャルゲーが「黄色ゲー」だから「エロゲー」と略されるのに対して、蒼の彼方のフォーリズムは確かに「黄色ゲー」とは言い難い。18禁シーンはあるにはあるが、そのシーンがとにかく可哀想なほど少ない。各キャラちょっとだけで、しかもエロ方面の話題はほぼ皆無。ほとんどが真面目な内容で、下ネタもほぼない。だから時々こう思う。

「告白した直後にいきなり H シーンが飛び出してこなければ、全年齢ゲーだと思ってたわ。」

もちろんこのゲームの H シーンも無意味ではなくて、一応ストーリーを進める効果はある。たとえば各キャラ二回だけ。二回終わったら、そのルートも終わりって合図だ。

ほら、少なくとも目安にはなる。タイマー……あるいはリマインダーとして。

ゲームの話は概略だけならそんなに複雑じゃない。世界は反重力粒子を発見し、携帯式のフライングシューズを生み出した。そのシューズを中心にフライングサーカス(Flying Circus、略して FC)というスポーツが展開される。物語は主人公がコーチとして、少女たちを導きながら FC 競技に奮闘する話だ。

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タイトルにフォーリズムとあるとおり、攻略対象は四人。倉科明日香、鳶沢みさき、有坂真白、市ノ瀬莉佳。それぞれルートの色はかなり違う。アニメの方向性はまだ不明だし、二話からもうゲームの展開を大きく変え始めているから、「明日香ルートがアニメの本筋」という当初の予想は外れるかもしれない。まあアニメのネタバレも気にしなくていいだろう。

共通ルート:

ゲームの進行はアニメ方式で、「第一話」「第二話」みたいな章に分かれていて、各話にタイトルと次回予告まである。こういう形式は初めてじゃない。昔の架向星空之橋もこの調子だったし、一番きっちりやってたのは魔法少女松島満だ。なぜかと言えば、ほとんどの「アニメ章」分割はただの見せかけで、まともなクールアニメは11話から13話くらいなのに、それを守ったのは魔法少女松島満だけ。架向星空之橋はとっくに破綻してたし、蒼の彼方のフォーリズムも実は厳密じゃない。各ルートは八話しかなくて、七話が終わるとそのまま最終話になる。ただ、各キャラに個別ルートがあることを考えれば、6+4+1で最終的に11話という全体の長さもまあ妥当か。もちろん、あくまで建前で、アニメはそういう構成じゃなさそうだが。

共通ルートは結構長い。主人公の日向晶也はかつて FC でかなり活躍した選手で、たくさんの好成績を残した。だがその後、ある理由で FC を引退し、それきり FC に触れていない。主人公のかつてのコーチであり現在は教師の各務葵は、そんな主人公を見捨てず、FC に積極的に参加するよう促すが、いつも断られている。

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そこへ倉科明日香という転校生がやってきて、ひょんなことから FC で非常に強い才能を披露する。そんな彼女のもとに、廃部寸前の本校 FC 部の部長から依頼が来る。FC 部に入って夏の FC 大会に出てほしい、と。この FC という競技はどちらかというと……旋回しながらの競速競技に、格闘要素を足したようなもので、戦闘機のような対抗内容もある。たとえば中の肉弾戦はドッグファイトと呼ばれている。最終的に倉科明日香の再三の頼みと、葵先生の後押しもあって、元選手として今の FC の練習方法に見かねていた主人公は、本校 FC 部のコーチに就任し、各人の育成と練習に携わることを決める。目標は夏大会での勝利(最初はベスト8でもいいと言っていたような気もする)。

練習の途中では、隣校の高藤学園と合宿も行い、学校のエースである真藤一成の戦闘力を体験する。面白いことに、真藤一成は主人公のほうに興味を持つ。ホモ的な意味でも FC 的な意味でも……そして自分の憧れを隠さない。なにせ主人公も昔はエースで伝説の選手だったのだ。

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夏大会はすぐにやってくる。主人公のチームは初参戦で、結果はかなり惨敗だった……筋肉部長は初戦で敗退、真白も初戦で敗退、みさきは次戦で敗退、明日香は運良く小物を二人連破したあと、真藤一成と当たって容赦なくフルボッコにされる。しかもこのときの真藤一成の戦闘力は合宿のときと全然違う。むしろ合宿のときは手加減していたのかもしれない。面子とか、他の要素とか……

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ともかく主人公のチームはあっさり全滅し、真藤一成はどんどん勝ち進んで優勝目前。そこへ乾沙希という海外帰りの選手が現れる。決勝で乾沙希は僅差で一成を破るが、一成はことごとく辱めを受ける。

なぜ辱めかというと、乾沙希が完全に「試合を支配」していたからだ。

Dota の「支配」とは違う。乾沙希の「試合の支配」は試合全体のコントロールだ。一成が得点しようとすれば乾沙希に妨害され、かといって乾沙希自身も得点しない。一成が乾沙希を攻撃して得点しようとしても、まったく触れない……

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要するに、乾沙希は一成が取れる得点を制御していた。言い換えれば、この試合で彼女は完全にスコアを操る能力があった。もう「勝ちたいときに勝つ」レベルではなく、「何対何で勝ちたいかを自由に決められる」レベルだ。囲碁で言うなら「一人に勝つ」のと「相手に何目差で勝つかを自由に操る」のはまったく別物。乾沙希は一成に対して巨大な実力差があった。乾沙希の地上協力者兼コーチであるイリーナはこの戦術を「バードケージ」、つまり鳥かご戦術と呼ぶ。一成は完全に乾沙希の籠に閉じ込められた小鳥で、身動きできない。最終的なスコアはそこまで悪くないが、一成はこのスコアが相手に故意に作られたものだと知っている。相手が本気を出せばいつでも恥をかかせられるのだ。

そして当然、乾沙希が優勝。乾沙希のコーチであるイリーナが主人公の前に現れ、意味深なことを言う。その内容は、自分は主人公のために来たのだと。主人公に FC 選手として復帰してほしい、と。もちろん断る。

その後、主人公の FC 部は夏大会での活動を終え、夏休みを迎え、新たな目標として秋大会が設定される。これが共通ルートの終わりだ。

ルート:倉科明日香

倉科明日香のルートは共通ルート終了後に最初に出てくる。倉科明日香は FC に情熱を持つ少女で、才能もある。初めての対抗戦でいきなりエアキックのような必殺技を繰り出せるし、何より重要なのは、彼女が一度も恐怖を感じたことがないことだ。夏大会で乾沙希が試合を支配して多くの人が恐怖する中、彼女はむしろ興奮した表情を見せる。強者の姿を見て、追いつきたい、超えたいと思う気持ちだ(オレには図々しいというか、死を恐れないようにも見えるが)。その後、沙希を超えるために主人公にもっと厳しい練習をしてほしいと懇願する。同時に主人公の FC 部は、他の部員の練習を捨てて明日香一人を育てることを決める。目標は秋大会の優勝のみ。障害となる相手は乾沙希ただ一人(真藤はもう卒業したから)。

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最初の練習は順調だったが、次第に問題が露呈する。あまりに高強度の練習で明日香の体がついていかず、急に倒れてしまう……。主人公は少し戸惑い、回復するまで待ってから練習を再開しようとする。だが待っていては秋大会に間に合わないかもしれない。そこへ葵先生が現れ、問題点を指摘する。

「あなたも明日香をずっと指導してきたでしょう。彼女のことをどれだけ知ってるの?」 「好きなものは? 好きな食べ物は? 好きなことは? 全部知ってる?」 「練習中に何を考えてるか、試合で楽しいと思ってるか、試合や練習で自信を持ててるか、知ってる?」

主人公は自分が指導している部員のことを何も知らないことに気づき、いったん練習をやめて見舞いと話し合いに向かう。そして最終的に明日香と恋人になる(くそ、先生のプロ級アシスト)。絆が深まり、わだかまりも消え、練習を再開できる。

ここで実は回想が挿入される。主人公の過去について。かつての主人公は FC の天才少年で、数々の賞を総なめにした。だが賞が増え、目標が高くなるほど、主人公が受けるプレッシャーは大きくなり、FC で楽しむ気持ちはどんどん減っていった。しかしコーチである今の葵先生はそれに気づかず、練習と試合を続けさせる。主人公はついに耐えきれなくなり、一度の失敗をきっかけに崩壊し、FC を完全に諦めてしまう。

葵先生が主人公に明日香のすべてを理解するよう勧めたとき、彼女は独り言のように言う。「自分ができなかったことを、あなたにやってもらうわ」と。

葵先生は主人公のコーチとしてうまくコミュニケーションを取れなかった。だから主人公に同じ過ちを犯してほしくないのだ。

その後、練習が再開され、明日香は乾沙希に対する様々な対策を練る。隣の高藤学園も手伝いに来て、明日香の成長を加速させる。明日香の能力は強力で、信じられないほどだ。

「彼女の最大の長所は模倣能力が極めて高く、しかも一度犯したミスは二度と犯さないことよ。」

これだけで明日香は怪物級の速さで成長できる。

その間、乾沙希のコーチであるイリーナが一度やってきて、主人公に諦めるよう勧め、自分のチームに引き入れようとするが断られる。イリーナは冷笑し、最終戦で主人公と明日香は乾沙希に勝てないと言い放つ。

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そしてイリーナの言葉の多くが一つのメッセージを伝えている。「本当の FC が何かを知っているのは私だけ」と。

FC に「本当の」も何もあるのか? 葵先生はイリーナの練習拠点を見学した後、主人公に最終戦で明日香は勝てないかもしれないと言う。理由を聞くと、葵先生は言えないと言い、主人公自身に気づいてほしいと告げる。

最終戦はすぐにやってくる。最初は順調だったが、後半に乾沙希がフライングシューズのパラメータを調整し、戦術を変え、明日香は不意を突かれる。だが時間切れで引き分け、延長戦に入る。延長戦で主人公は必死に考え、乾沙希に勝つための鍵を見つけ、最終戦で勝利する。そしてイリーナの言う、他人を欺き支配することを目的とした「本当の FC」が偽物であることを実際の行動で証明する。最後には全国的な FC ブームまで巻き起こる。

正直に言うと、明日香ルートは非常に王道で、恋愛ゲームというより完全に熱血漫画のようだ。ボスの登場、戦いの展開、練習中の挫折、すべてが標準的な競技もののテンプレート。見ていてとても燃えるが、どこか嘘くさい。明日香のようなキャラは現実では共感できない。だって、好き放題に練習させられて文句も言わず、むしろどんどん興奮する奴がどこにいる? 衡水中学校でも見つからないだろ?

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あと明日香の「ちょっと練習すればあらゆる専門選手を超えられる」能力はマジでチート。一般人が到達できるレベルじゃない。むしろ彼女自身がチートだ。ゲーム内でも多くの人が明日香をばけもの、怪物と言っている。こういうキャラ造形は実感が湧きにくい。見ていて気持ちいいのは確かだが。このルートが目指すのは「燃え」の一言。最後に乾沙希に勝つ場面も、アニメのテンプレ的な口先の台詞が混ざる。「試合が終わったら友達になろう」みたいなセリフは多くの人が暗記してるだろう……だから多くの人がこのルートは「アニメ化」のために生まれたと感じる。まあアニメ化は今のところ完全にこのルートをなぞるつもりはなさそうだが。

それでも、このルートには「燃え」以外に意味のある部分が結構ある。たとえば主人公の過去の黒歴史。強くなり名声を追ううちに自分を失っていく苦しみ、そして FC で二度と楽しさを得られなくなった迷い。これらは重點的に描かれている。まあ、このルートの重点ではないが。

ルート:有坂真白

有坂真白のルートは明日香の選択肢を断った後に出てくる。主人公が真白の入部時に「必ず勝たせてやる」と言ったのを、真白が「約束」のように受け取っていたからだ。実際、夏大会で真白は勝てなかった。ここで真白は主人公に、あの約束を覚えているかと暗示する。覚えていれば個別ルートに入る。

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約束を覚えていた主人公に真白は心を動かされる。「一度勝つ」ことは他人にとっては大したことないかもしれないが、真白にとっては「小さな願い」だ。真白との様々な交流の中で、主人公は真白のコンプレックスや強くなりたいという憧れに気づいていく。真白自身は家にこもってゲームをするのが好きなオタク少女で、何をやっても平凡。空想が好きで、独り言で小芝居を演じるのが好き。強い人、たとえばみさきには妙な憧れを抱く。FC は得意ではないが、それでも一度は勝ちたいと思っている。

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このルートで主人公がやることは、真白との「勝たせてやる」約束を守ること。真白は優秀な選手の苗子ではないが、それでも主人公は彼女を選ぶ。勝たせると約束したからだ。最後に真白は自分の力で一度勝利し、小さな願いを叶える。

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明日香ルートが熱血系なら、有坂真白ルートは典型的な恋愛路線だ。FC の戦闘部分は実は少なく、真白という性格の複雑な小柄な少女の描写が多い。恋に憧れながらもプライドがあり、細かいところを気にし、主人公が好きでも素直に言えず、家でぶつぶつ言う。そんな可愛さは「女の子」としての造形が非常に成功している。真白にファンが多いのも納得だ。

ルート:市ノ瀬莉佳

莉佳のルートはゲームの中では比較的出来が悪いと思う。あくまで比較的、だが。質そのものに大きな問題はない。ただ位置づけが少し不明確なだけだ。

市ノ瀬莉佳は主人公と同じ学校ではなく、隣に住んでいるだけ。窓から互いが見える、それだけの関係だ。後輩として、最初は主人公の FC 部をあまり良く思っていなかった。最初の合宿のときには、主人公にふざけないでほしいと注意までしている。市ノ瀬莉佳は優等生だらけの学校に通い、そこの FC 部もトップクラス。そんなところに主人公のような寄せ集め軍団が突然挑んでくるのは、いじめに近いと。

すぐに市ノ瀬莉佳は、主人公が強いこと、部員も強いことに気づき、自分から謝り、主人公とどんどん距離を縮めていく。その後、莉佳の学校の上の代が卒業し、夏大会での主人公の活躍もあって、莉佳は真藤に連れられて主人公に会いに来る。主人公にコーチとして莉佳を指導してほしいと……

「莉佳は優秀な選手だ。だがこのまま練習を続けても、おそらくこのレベルで止まったままだ。突破できない……俺の言いたいこと、分かるな?」真藤はそう言い残す。

主人公にはよく分かる。かつて自分が FC 選手としてデビューしたときもそうだった。もし葵先生のようなコーチに出会っていなければ、自分も今の莉佳のように足踏みしたままだっただろう。

主人公は莉佳の指導を始め、莉佳も真剣に練習する。だが様々な練習試合が莉佳の幻想を打ち砕く。どんなに努力しても勝てない相手がいることに気づくのだ。

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つまり、莉佳のあの壁はまだ突破できていない。彼女は自分に本当にセンスがあるのか疑い始める。

莉佳は主人公に泣きつき、内面の苦しみを打ち明ける。そのとき主人公が思い出したのは、もっと昔、自分のコーチである葵先生が言った言葉だった。

「試合は疲れる? 試合は辛い? 辛いなら、言えばいい。少し休んでもいいのよ。」

当時の主人公はコーチの期待を裏切りたくなくて、首を振り、疲れていないと嘘をついた。その瞬間の無理が、後の精神崩壊と絶望につながった。

言い換えれば、今の莉佳は過去の主人公のようにすべてを隠さず、素直に言って、主人公のような悲劇を避けている。

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最後のルートで、莉佳が対戦する相手はそれほど高位な人物ではない。黒渕霞という選手だ。黒渕霞は莉佳と幼馴染で、莉佳を FC の世界に導いた人物でもある。だが後に彼女の家庭に変事が起こり、今の彼女は歪み、FC を憎むようになる。試合中、彼女は絶えずズルをする。勝つためではなく、FC の試合で殺傷性のある動きで相手に怪我をさせること目的にしている。一度は明日香に脳震盪を起こさせたほどだ。莉佳は最後の試合で自分自身と旧友への恐怖を克服し、彼女に勝ち、更生させる。

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簡単に言うと、莉佳のルートはまあ普通。唯一価値があるのは、主人公の回想シーンで過去への懺悔が描かれるところだ。なぜ競技のプレッシャーが大きくなったとき、黙って耐えることを選んだのか。しかし主人公はこれに気づいたときにはもう遅い。できるのは、同じ悲劇を莉佳に繰り返させないことだけだ。

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もちろん、オレは常々思っている。蒼の彼方のフォーリズムは、ヒロインたちが飛ぶ物語というより、心に傷を負った主人公の救済の物語だ。特に次のみさきルートはそうだ。

ルート:鳶沢みさき

鳶沢みさきは普段はやる気がないが、とても負けず嫌いな人間だ。

鳶沢みさきは運動神経が良く、FC に向いている人間だ。

共通ルートでの鳶沢みさきは何もかもどうでもよさそうな態度だった。だが真藤との練習で、真藤に試合中に見下したような嫌味を言われ、見事に怒らされ、試合に真剣になる。一時期は真藤を苦しめるほどだった。

そのときのみさきは思っていたのかもしれない。「小さな真藤ごとき、本気を出せば倒せるだろ」と。

そして夏大会で再び真藤と会い、みさきは敗れる。だがそこまで悪くなく、みさきも何も言わない。全力は尽くしたし、真藤は強敵で点差も大きくない。一位までそう遠くない。まあ十分だ。

しかしみさきは真藤と明日香の試合を見て、怒りを露わにする。

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明日香と戦う真藤と自分と戦う真藤は別物だった。明日香相手の真藤はもっと恐ろしく、本気だった。そこでみさきは理解する。真藤は自分を最初から相手にしていなかったのだと……

酷く見下された屈辱感が湧き上がる。たとえるなら CS で完全装備なのに相手にナイフで殺されたときのような屈辱だ。

みさきは試合を見ているときから怒りの目をしていた。その時点ではまだ真藤は乾沙希と戦っていなかった。最後の試合を見終えた後、みさきは部活を辞め、FC をやめると決める。

主人公は理解できず、理由を知ろうとするが、みさきはもう来ない。どんなに説得しても、どんなに引っ張っても来ようとしない。

葵先生は理由を分かっているかのように主人公を見つけ、これからはコーチをやめなさいと言う。残りの選手は自分が育てる。主人公がやることは、みさきを専門に指導することだけだ、と。

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苦労の末、主人公はようやくみさきを捕まえる。本当に捕まえた。彼女は商店街でアーケードゲームをしていた……。主人公はみさきを引っ張って他人の練習を見に連れて行く。そのとき明日香が佐藤院と試合をしていて、隅のみさきは冷めた目で結果を見ていた。

「どっちが勝つと思う?」

「佐藤院でしょ。」

みさきの答えは少しおかしかった。結果は明日香が佐藤院に大差で勝利する。

「ちっ。」

みさきはそのスコアに不満そうだ。

「どうした?」

「分かんないけど……」みさきはゆっくりと言う。「なんか……明日香が失敗するところ、見てみたい気がする……」

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主人公の心がざわつく。彼はこの感覚が分かった。自分も時々そう思うことがある。

明日香ルートで、主人公は言っていた。明日香は怪物みたいで怖いと……

他人の必殺技をすぐ覚える。怖い。

一度犯したミスを二度と犯さない。怖い。

FC の習得が速すぎる。怖い。

しかも永遠に疲れを知らず、ボス級の相手にも恐怖を感じない。怖い。

主人公は自分がみさきと同じ気持ちを抱いていたことに気づく。みさきがなぜ FC をやりたくないのか、少し理解できた。試合では真藤どころか、明日香だけで十分怖い。ましてや明日香より怖い乾沙希はなおさらだ。

みさきはこれが嫉妬なのか分からない。でも明日香を嫌っているわけでもない。この感情が何なのか、自分でも分からない。

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主人公は子供の頃のことを思い出す。毎日の練習でFCに疲れ果てていたとき、幼いみさきに出会った……みさきはFCをやったことがなく、主人公に一緒にやろうと持ちかける。当時の主人公はプロ選手で、みさきは初心者。最初はみさきは要領を得なかったが、すぐに主人公ができることをどんどん吸収していった……

しまいには主人公を打ち負かし、主人公は完全に戸惑ってしまう。自分はあれだけ長くやってきたのに、この子供はあっさり覚えてしまった……

心の底からの恐怖と劣等感が湧き上がり、それが間接的に主人公がFCを完全に諦める原因になった……

「みさきは才能のある選手だけど、とても面倒な選手でもある。彼女はいつも自信がないんだ。」

「みさきは天才だと思う?」

「天才? まあ、そうかもね……」

主人公が真藤にみさきについての意見を聞くと、真藤は彼女にあまり自信を持っておらず、明日香を育てることを勧め続ける。

自分とみさきの心境の似ている点から、主人公はみさきを諦めるつもりはなく、みさきに直接こう告げる。「子供の頃、俺を倒したのはお前だ。お前が俺にFCを諦めさせたんだから、責任を取れよ」と。

この要求はかなり幼稚だが、確かに効果があった。みさきは「やってみてもいい」と言う。

練習が始まると、みさきは次々と問題を露呈していく。ほとんどが精神面でのことだ。

「試合に負けたらどうしよう?」

「こんな練習で明日香に勝てるのかな?」

「自分は本当に向いているのかな?」

「FCを続ける意味ってあるのかな?」

さまざまな疑問と自信のなさがみさきの頭を占め、彼女は消極的に逃げ始める。主人公は一つ一つをなだめ、説得していく。ある日、主人公は乾沙希の「鳥籠」戦術を破る飛行方法を発見する。それは背中を下にして逆さまに飛ぶことだった……

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しかしこの飛行方法を練習するには大きな毅力が必要で、みさきに習得できるのかと皆が疑う。

「やってみよう。」

「秋季大会までそんなに時間ないぞ、このままだと厳しいな」

「大丈夫だと思う。俺の中ではみさきは天才だ。」

主人公はみさきに対してますます自信を深めていく。ある夜、みさきは独学でこの飛行方法を習得してしまう。この瞬間、主人公はみさきが本当に天才だと気づく。ただ彼女がずっとやろうとしなかっただけで、やろうとすればできないことなんてないのだ。

最後の秋季大会、みさきは乾沙希とグループリーグで対戦し、苦戦の末に前回のチャンピオンを破る……

沙希は信じられない。彼女はみさきを全く評価しておらず、この者が自分を倒せるとは思っていなかった……

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その後もさまざまな相手と戦い、ついに明日香と決勝で対戦する。明日香は葵先生の指導で非常に強くなっており、みさきは自信を取り戻して恐怖はなく、自分の努力で、ずっと劣等感とコンプレックスを抱かせてきた相手を倒す……

みさきはチャンピオンになった。

主人公がかつてみさきを評価しなかった人々に報告すると、葵先生を含む皆が祝福する。

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「やったな、お前がみさきを天才にしたんだ。」

明日香ルートで得た優勝とは異なり、みさきの優勝は価値が重い。彼女の一勝一勝は、戦術と対抗の上で巨大なプレッシャーを克服して得た本物の勝利だ。

「努力して得た才能は簡単には失われない。」みさきは自らの後天的な努力で優勝を勝ち取った。

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誰もが天才かもしれない。ただほとんどの人が自分が天才だと信じずに行動しないから、一生を無為に過ごしてしまう。

誰もが天才に対して劣等感を抱くかもしれない。そしてその劣等感ゆえに努力を諦め、自分がいくらやっても他人の足元にも及ばないと思う。しかし努力してみれば、天才ができることなど自分にもできる、いや、もっとうまくできると気づくはずだ。

結局のところ、誰もが天才になれるのだ。

終章とまとめ

4人のヒロインのエンディングをアンロックすると、主人公の終章に入る。終章では葵先生が教師の職を辞し、FC選手として現役復帰しており、主人公もFCの試合に戻り、人生の解放を得て心の傷を癒やす。

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ああ……むしろこのゲームは最初から「主人公の心の傷」を基盤に展開していたのだろう。ゲームの始まりは主人公の回想であり、終わりも主人公の回想が終わって新たな旅立ちに向かうところで完結する。すべては主人公と葵先生が過去に犯した過ちへの懺悔なのだ。

各ヒロインのルートは、主人公の過去の心の影に対応している。明日香ルートではコーチと選手間のコミュニケーション不足、真白ルートでは未来への自信喪失、莉佳ルートでは困難に直面しても言わずに飲み込む苦悶、そして最後のみさきルートではより強い者への劣等感と自卑、さらには呪い。これらはすべて主人公がかつて抱えた問題であり、ルートを一つ一つ解き明かすにつれて問題は消え去り、主人公自身も競技場に戻り、自由と解放を得る。

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蒼の彼方のフォーリズムは飛行スポーツを架空のテーマに選んだが、ゲーム内でも何度も語られている。飛行スポーツの楽しさは自由であり、青空の彼方への憧れなのだと。

「彼方へ飛べ、答えはそこにある。」

ゲームは一つ一つ完結した感動的な物語で、私たちに素晴らしい答えを与えてくれる。生活においても、心においても、人生においても、生涯役立つ答えだ。

答えはプレッシャーに関係なく、劣等感に関係なく、約束に関係なく、天才や才能に関係ない。

ただ「自由」をどう得るかという物語にすぎない。

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