『働くオトナの恋愛事情』レビュー

大人の恋愛物語はこんなにも退屈だ

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ずいぶん前のことだ。今から見ればそうでもないけど、友人と飯を食ってた時にこう聞かれた。「なんで彼女を作らないんだ。お前はもうダイエットに成功してるのに。それともあの俺を振った腐女子が忘れられないのか、それとも性癖がおかしいのか」と。

こういう質問には最初は答えを拒否してた。でも答えないと事態は悪くなる。片思いしてるダサい男と勘違いされるのも、振られてホモになった変態と勘違いされるのも、どっちもマズい。

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さんざん考えた末、慎重に答えた。

「だって、女との付き合い方がよく分かんねえんだよ。掴みどころがなくて、プレッシャーがすごいし、正直めんどくさい」

友人は一瞬キョトンとした後、ぶっと吹き出した。

そこからは奴らの長講釈が始まった。「そんな答えは何度も聞いた」とか、「俺はどんな女も口説いてきた」「恋愛のベテラン」として「人生の経験を教えてやる」とか、まあそんな感じだ。

最初の方はダラダラと説教が続いて、俺はずっと首を振ってた。

「お見合いの女をさっさと誘って飯に行けばいいじゃん?」 「写真見ただけで吐き気がするようなのが大半だから、誘う以前の問題だわ」

「職場で知り合った女を夜に映画に誘えばいい。別に恋愛じゃなくても」 「うちの職場に女なんかいねえ。女に化けたトランスフォーマーしかいない」

「グラウンドの近くにいる女に声かけてみろよ」 「グラウンドの近くにいるのは竹馬みたいな男とランニングシャツのジジイだけだ。女はいねえ」

「お前 ACG 好きだろ。漫展にでも行って女を誘えばいい」 「漫展なんて人生の勝者がコスプレ女子をヤってるのを見る場所だ。俺が行っても空気だよ」

「じゃあ今度俺が飲み会開く時に女を何人か連れてってやるよ」 「カラオケは行きたくねえんだよ。うるさくて死ぬ」

「お前ネットに詳しいだろ。 WeChat のボトルメールとか陌陌とか使えよ」 「ヤリ目的なんかゴメンだ」

「土日は街をぶらついて女に声かけてみろよ」 「土日に時間があったらギャルゲーやるわ」 「てめえ、街に出なきゃ女と出会えるわけねえだろ」 「てめえ、街に出て女を探しまくったら、それただのチンピラじゃねえか」 「………」

繰り返しの答えに友人は少しイラついて、頭をかきながら手をポンと叩いて最終手段を出してきた。

「だったらもう風俗行くしかねえな」 「帰れ!」 「マジだって」 「帰れ!」 「嘘じゃねえよ。お前みたいに女を見てどうしていいか分からねえ奴は、経験豊富な女に一発ヤってもらえばすぐ治るって」 「帰れ!」 「おい…そのうち分かるって。何でも結局は同じところに行き着くんだよ。これを経験値の蓄積って言うんだ。ゲームと同じだ。経験値分かるか。経験がなきゃレベル上がらねえだろ」 「お前こそなんで風俗行かねえんだよ」 「行きてえよ。でも嫁が許さねえんだよ!」 「だから黙って帰れ!」

ひとしきり揉めた後、また場が静かになった。

「思うんだが…」友人が口を開いた。「お前、ギャルゲーやりすぎなんだよ。ずっと学校恋愛の幻影の中に生きてる。現実の社会の恋愛はもうそんなもんじゃねえ。もし大人の恋愛物語をお前に見せてやったら、現実がもっと分かりやすくなるんじゃねえか?」

「社会の現実の恋愛?バカ言え。そんなの知ってるよ。毎日仕事終わりにヤリに行って、女を見たらすぐ媚びて、露骨な言葉で女を家に誘ってそのままヤる。先にヤってから付き合うのか?しかも付き合わないのもいるんだろ?」

友人は頷いた。

「それが俺にできるかどうかは置いといて、そんなのクソつまんねえと思うわ」

「残念だな」友人は水を一口飲んだ。「まさにそんなもんでつまんねえんだよ。お前は瓊瑤小説にハマる女の子じゃあるまいし、恋愛なんて交尾の文芸的表現にすぎねえんだよ」

「もし大人の恋愛物語を専門にやるギャルゲーがあったら、あの起点的なザラッとした都市エロ小説と大して変わらねえだろ。お前の言葉を借りれば、同じようにつまんねえはずだ」と友人が最後に付け加えた。

もちろん、その仮説が現実になるとは思ってもみなかった。本当に「働く大人の恋愛物語」をメインに据えたギャルゲーを出す会社があった。akabee soft 3 の『働くオトナの恋愛事情』だ。

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タイトル通り、働く大人の恋愛物語の現状を描いている。俺の記憶が正しければ、日本語の「事情」は「物事」そのものよりも「今の事態の状態」を指すニュアンスがある。このタイトルも「論相声五十年之現状」的な意味合いがあるんじゃないか。

ゲームの設定も想像がつく。主人公は働き始めたばかりの若者、会社員、社会人、社畜。恋愛経験ゼロで平凡な生活を送っている。ある日、会社の先輩のおじさんが仕事終わりに「今夜予定あるか、バーに一緒に行かないか」と誘ってきて、主人公は承諾して夜遊びの第一歩を踏み出す。

初めてバーに行った主人公は緊張して何も分からなかったが、おじさんもバーの客もわりと親切で、すぐに流れを覚えた。そしてある夜、おじさんが都合で来られなくなり、一人でバーに行くと、生活の行き詰まりで飲んだくれているお姉さんに出会う。お姉さん曰く、主人公はイケメン小鮮肉レベルで、こういう童貞に興味を持ったお姉さんは主人公を誘惑して連れ出し、道端のトイレに引っ張り込んでそのままヤってしまった…(レイプとまではいかない。主人公も半ば押し切られる形で、何しろ経験がなかった)。その後、主人公は童貞を失い、新しい世界への扉を開いた。

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ヤり終えた主人公は、女に対してそれほどギクシャクしなくなり、職場の女先輩とエロい冗談を堂々と言えるようにもなった。身近な女性にも目を向け始める。道端の女子学生アスカ、紗夜子、バーのバイトの優里香、昔の同級生ともえ、職場の女先輩美優などなど……そして日々の仕事の中で彼女たちとの付き合いが始まる。

その後はほぼ平坦な展開、というかそのまま平坦に終わる。主人公はバーの女性の勧めで髪型を変え、同級生の勧めで筋トレを始め、生活習慣を変えたことで風俗の場でもどんどん通用するようになり、艳遇も絶えない。夜のジョギング中に女から言い寄られたり、コンビニで家出した女子学生がヤらせてくれたり、同窓会で昔の同級生に相談されたり。社会を歩む中で様々な女性に出会い、主人公は自分の容姿と体型、そしてそこまで卑屈じゃない話術で多くの女性の好感を得て、完全に新世代のマダムキラーになった。

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ここでゲームのキャッチコピーを思い出す。「全員処女」。ゲームの本編がここまで進んだ時点で、主人公は少なくとも4人の女性と関係を持っている。だが彼女たちは誰も「処女」ではないし、主人公自身も童貞ではない。その間の感触は完全に一夜限りの類のものだ。ここまでで、ゲームの個人ルートはまだ展開していない。まあ、そうだよな、彼女たちは脇役で、本当のヒロインじゃない。

ヒロインの個人ルートはどこにあるのか。個人ルートは攻略可能なキャラの中から一人を選んでエンディングに到達するものだ。これもギャルゲーで、ヒロインの個人ルートも確かに公式の「全員処女」という宣伝に合っている。だがそれでも、エンディングへの到達の仕方は普通の学園恋愛とは大きく違う。何しろ働く大人だから、酔った勢いでどうにかなるか、一緒に飯に行ってストレートに付き合いを求めるかの展開しかない。恋のロマンスもなければ、胸を打つ雰囲気もない。「二人が苦労の末にようやく結ばれる」なんて展開もない。

あるのは「付き合おう」「いいよ」みたいな会話だけだ。

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ゲームが個人ルートの後半に入ったあたりで、俺は大きな退屈を感じていた。何というか、ゲーム内の環境が今の自分の生活状態にそっくりだったからだ。

主人公は毎日会社で同僚とふざけ合い、仕事が終われば誰かとバーに行くか、さっさと家に帰って寝る。出会う女には飯に誘うか、ちょっとからかってすれ違うだけ。ヤれる時はヤり、なければ帰る。

こういう奴は日本にも中国にもいる。欲望に従い、需要を理解し、互いに交換し、痕跡を残さない。もしかしたら君や俺の隣にいるかもしれない。よくアダルトサイトの夜の場の専用板を覗くなら、似たような「ハンター」が経験を交換しているのを見るだろう。正直に言えば、俺の同僚や同級生にも多い。彼らはそんな夜の生活の中で軽やかに動き回り、よく「都市の猟師」と自称している。

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そしてゲームの主人公は、このゲームの物語の中で、普通の会社員から「都市の猟師」へと歩む道のりのように見える。もちろんこの物語は俺にとってリアルであり、同時に遠い。リアルなのはこういう奴が俺の隣にいるからで、遠いのは俺がそういう奴じゃないからだ。彼らの行動は理解できるが、そんな物語を見るとひどく他人事に感じる。

そこで気づいた。リアルに寄りすぎたゲームの物語は、「すでに社会人になって数年経つオタク」の俺に距離感だけでなく、つまらなさも与えるのだと。

昔、Blizzard が World of Warcraft を宣伝した広告に「I am a paladin」というコピーがあった。広告は短いが、普段は仕事に忙殺される人間が、余暇に別の身分に変わり、別の世界に入り、別の自分を求めるということを表現していた。ギャルゲーも同じで、それ自体が娯楽であり、社会環境に押しつぶされた奴がゲームを起動する時、求めるのは当然大きなリラックスだ。アダルトコンテンツとして使うにせよ、異世界小説として没入するにせよ、得られる感覚は本物の自分を忘れて別の世界に入ることだけだ。

『働くオトナの恋愛事情』に関して言えば、それは自分を忘れさせてくれるのではなく、ゲームの中で登場人物がみんな自分の身近にいるように見える。親近感はあるかもしれないが、その人たちがゲームの中で都市の猟師になり、自分は画面の外で彼らが気持ちよくなるのを見ているだけだと気づいた時、喪失感の方が濃くなるかもしれない。

これがドラマなら、あの「ハンター」たちは自分を見つけるだろう。小説なら、彼らは自分の立ち位置を見つけるだろう。「おい、この話の主人公は同級生の女をヤったんだ。俺もやったことある」と他の人に得意げに話すかもしれない。そして大きな共感を得るだろう。

だがこれはギャルゲーだ。18禁のギャルゲーだ。ストーリーを見ようとするのは現実の負け組が大半だろ。歪んだ妄想で自分が女をヤるのを想像する以外に、誰が気持ちよくなるっていうんだ。

しかもゲームの後半は仕事と恋愛の描写が軽すぎて、大きな幻想を与えるのは難しい。むしろ SexInSex のヤリ板のスレを眺めているような、喪失感と遠さを感じた。

ゲームには「雑学」解説リストがあり、会話に出てくる大量の社会用語を説明してくれる。「有給休暇」「人事異動」「残業」「ゲイバー」などの意味の解説で、最後にツッコミが入るのも面白い。社会に出ていないプレイヤーがこのゲームに触れたら、もっと新しい世界を発見できるかもしれない。

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絵柄は問題ない。むしろ全く問題ない。雰囲気は冬を選び、大半が夜で、「都市の慵懶で爛れた夜の生活」の空気を醸し出している。音楽も同じで、西坂恭平が手掛け、大半が酒の名で名付けられている。特筆すべきは、これらの酒の多くがゲーム内に登場することだ。ゲーム内にもカクテル専用のリストがあり、それぞれの酒を調べて知ることができる。

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そういえばゲームの解説システムには「雑学」と「カクテル」があり、どちらも社会に出てから、あるいは女を口説くのに使う、役に立たなそうな知識を多少なりとも説明してくれる。制作側もこのゲームをやる負け組たちに何かをもたらしたいと思ったんじゃないか。ゲームの選択肢にも社交用語の慎重な選択が溢れている。女先輩が「痩せなきゃ」と言ったらどう返すべきか、みたいな。現実で女の前で巧みに話せるようになることは、確かに女を口説く必要条件だ。女の心は繊細で敏感だからな。

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『働くオトナの恋愛事情』はいいゲームだ。絵柄、音楽、台詞、リアルな社会人の物語に基づいた考証など、多くの場所で工夫している。社会人でない人には極めて親切なガイドを提供している。内容の解説、様々な社交辞令のアドバイス、そして社会に出たくないオタクたちに「人生の勝者になる」ための極上のルートを見せてくれる。

だがギャルゲーとしては、少なくとも俺にとっては、正直つまらない。俺はもう社会人で、こういうことは全部分かっている。もう一度言われても、本当にうるさいだけだ。

これが伝説の「電波が合わない」ってやつだろう。

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最後に『働くオトナの恋愛事情』の主人公の心の遍歴を振り返ると、なかなか面白い。最初は会社員で、初めてバーに行って夜の生活を始め、次に服を変え髪を切り身だしなみに気を使い、同時に筋トレを始めて体型に気を使う。そしてお姉さんに童貞を奪われ、その後は獵艳の道でどんどん熟練し、経験を積んでいく。二度目に女子学生とヤった時はキスが下手だとツッコまれたが、その後はそんな問題もなくなった。しかも主人公は全然誠実じゃない。女が送り込まれればヤるし、ヒロインとヤった後も以前と同じように責任を取らなくていいと思っている。だが不思議なことに、ゲーム内で誰もそれを強く責めない。みんなそれが当たり前のことのように思っている。

そこで気づいた。これが現実社会でも、確かに当たり前のことなのだと。

友人が最初に言った言葉を思い出す。

「女を口説くのもヤリも、ゲームと同じだ。経験値分かるか。経験がなきゃレベル上がらねえだろ」

友人の言う通りかもしれない。いつか経験を積んで第一歩を踏み出す必要がある。轟々たる恋愛物語なんて社会にあるわけがない。学園にだってほんのわずかな確率でしかない。エロゲーが全部嘘だとは言えないが、ただそれらは小確率の出来事にすぎない。語り手は物語のクライマックスや神展開がどれほど痛快で面白いかしか教えてくれないが、日常がどれほど退屈かは決して教えてくれない。

社会に出たらもうロマンスとは縁がない。『働くオトナの恋愛事情』の主人公がヤるか仕事かバー通いしかないように、大人の恋愛物語はこんなにも退屈なのだ。

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