『春季限定ポコ・ア・ポコ!』レビュー
そして、ぼくがシスコンになる
ちょっと前、気分が落ち込んでたから、気分が上がるゲームでもやろうと思って、YouTubeで「春季限定ポコ・ア・ポコ!」のOPを見たんだよ。正確に言うと、このOPにはめちゃくちゃ聞き覚えがあって、買ったAngle Noteの音楽集CDにこの曲が入ってたから何度も聞いてたんだけど、まさかこのゲームのOPだとは知らなかった。
ゲームのOPはめっちゃ切ない。主人公の大事な人が死んで、立ち直れないってのが見て取れる。でも評価を調べたら、みんな揃って「これは楽しい作品だ」って大盛り上がりしてる。
まあいいや、ちょうど笑いが欲しかったところだし、妹のCVの名前を見てやることにした。
で、どうだったかっていうと……
このゲームはOPみたいに切ないのか、それともネットの評価通り楽しいのか。
どっちも間違いじゃないんだよな。

ゲームは最初からテンポが速い。主人公の父親は大芸術家で、自分は子供の頃からチェロを無理やりやらされて、めちゃくちゃ上手くなった。その後父親が失踪して、血の繋がらない妹と二人で暮らすことになる。さらに学校で知り合った「春花」というピアノの天才も突然亡くなってしまう。主人公は春花のことが好きだったけど、最後まで言えなかった。それからチェロを辞めて、春花の影から抜け出せずにいた。春花の双子の妹・夏海も実は主人公のことが好きだけど、主人公が姉の影から抜け出せないのも分かってるから、意識的にも無意識にも春花を模倣して、春花のピアノレベルに近づこうとすることで主人公に気づいてもらおうとする。同時に、あの手この手で主人公に音楽を再開させるよう迫る。

結局、主人公がもう一度チェロをやる決心をしたのは夏海の説得のおかげじゃない。主人公自身がチェロの特待生として入学して学費免除になってるのに、やらなくなったら特待生の資格を取り消されて学費も免除されなくなるからだ。もともと金がないし、妹の面倒も見なきゃいけない。学費なんて払えるわけがない。仕方なく学校と妥協して、卒業公演で音楽部の連中と四重奏を演奏する。合格すれば特待生として学費免除を続けられるという条件だ。
この後の話はケツの穴で考えても分かる。夏海ルートでは、主人公が偶然春花から自分への遺品を見つける。自分に贈るピアノ曲だと言われて、最後まで聞くと春花からのメッセージが入っていた。実は主人公の告白を受け入れない、しかも……主人公のレベルは大したことないけど伸びしろは大きいから、元気出して毎日練習を続けて諦めるな、などなど。結局、主人公はフラれたことで吹っ切れて、影から抜け出す。そして夏海の告白も受け入れる(姉を落とせなかったから妹で妥協した感はある)。

もっと簡単に言えば、好きだった人が死んで落ち込んだ主人公が、最後には立ち直る話だ。
あらすじは短いけど、感動的だろ?そうだよな、こういう話は感動系一直線だし、少なくともOPの内容とは一致してる…………
でもゲームの中身は全然違うんだよ!
ゲーム本編のシナリオは実は短くて、いくつかのシーンを演出的に見せれば説明できちゃう。でも日常パートがとにかく長い!ゲームの8割は日常パートが占めてると言っていい。ここで日常パートが悪いって言ってるんじゃなくて、日常パートを褒めたいんだ!
なぜかって?退屈じゃないからだ!全部ネタ!全部ギャグ!演出は出色!CVは光ってる!

ここで特に挙げたいのが、桐谷華が演じる妹・野々宮藍。もうシナリオのブルドーザーとしか言いようがない。彼女がいなかったらこのゲームの面白さは70%減る。このキャラは「ミッドの兄貴がゲームをキャリーする」の定義をこれでもかと体現してる。声優の演技は完璧、セリフはめちゃくちゃ面白い。元気で可愛くて純真無垢、そして救いようのないブラコン妹をこれでもかと演じ切ってる。もう形容詞が出てこない。何を言っても色褪せて見えるから、とにかくゲームをやって感じてくれとしか言えない。個人的には野々宮藍のルートが一番長いと思う。序盤の伏線、中盤の「曲げる」……おっと違う、兄を妹控に変える展開、そして終盤の実妹の登場と父親の話の回収まで、どれもテンポがいい。
妹の存在感が強すぎて、時々、このゲームは非日常パート、つまり真面目に物語を語り始めると、途端に退屈になるんじゃないかと思う。妹の顔芸を見てた方がマシだ……

でも考えてみれば、確かにそうだ。
全体的に見れば、春季限定ポコ・ア・ポコ!はそこまで良いギャルゲーじゃない。まずゲーム内容がテーマから離れすぎてる。ポコ・ア・ポコ!は春花が主人公に言った「ゆっくりでいい」という意味の言葉で、春季限定は主人公の演奏が限定された話。本来なら物語はテーマに沿ってOPのテンポで進むべきなのに、誰が予想しただろう、本編がギャグになっちまうなんて。これ、Asa Projectのゲームじゃないんだぜ……
ギャグの比率が高すぎるせいで、メインストーリーはほぼ見るものがない。伏線も仕掛けもなく、急に主人公が告白して、急にヤり始めて、一言不合で即エロ、やったらED。しかもEDは全部同じで区別もない。お粗末すぎる。時々、このゲームは適当に設定を当てはめて、メインストーリーを適当に語って、残りを全部ネタで埋めただけなんじゃないかと思う……

時々思うんだけど、このゲームは去年の恋×シンアイ彼女に似てる。売りと中身がズレてる。ただ新島夕は引っ張り出されて責任取れって叩かれたのに、こっちの企画の瀬尾順は誰も文句言わない。
ちなみに、ずっと既視感があった。このゲーム……前にやった別のゲームを思い出す……『あえて無視するキミとの未来 ~Relay broadcast~』だ。でも『春季限定ポコ・ア・ポコ!』の方が先に出てる。この二つ、テンポもシナリオも構造もほぼ同じ。CVも似てるけど少し変わってるだけ。で、比べてみたら企画はどっちも瀬尾順一人。時間的に考えて、あえて無視するキミとの未来は春季限定のリメイクというか模倣で、このパターンをもう一回やっただけ。実際その通りで、あえて無視するキミとの未来はリラックス部だの、主人公が未来を見る能力だの言ってるけど、ほとんど役に立たない。設定は設定でしかなく、大部分はネタ……
この感じは、先生に作文を書けと言われて、テーマは大きく「人生を考えろ」みたいなのに、ネタを一つ書いて出したようなもの。先生は「ああ、この学生は才能がある、ネタが上手い」と思うかもしれない。でも結局、そのネタは「作文」にはならないんだよ。

でもエロゲーにはそんな制限がないから、プレイヤーを喜ばせればいい。だからあえて無視するキミとの未来も春季限定ポコ・ア・ポコ!も、とっくにテーマから十万八千里離れてるのに、誰も文句言わない。新島夕だけが可哀想で、恋×シンアイ彼女は後日談を一つ余計に付けただけで、また吊るされて叩かれた。
客観的に言うと、このゲームは作画は普通、音楽は印象に残らない。日常パートは面白いけど本編はありきたりで、説明すべきところもはっきり説明されてない。全体的にストーリーがすごく適当な感じ。点数を付けるなら、素点は高くないだろう。

中二空間のアホどもがノラと皇女と野良猫ハートを評価するときみたいな上から目線で言うなら、「このゲームは陳腐の極み、何の内涵もない、シナリオもつまらない」ってところか。

そう、シナリオ重視で見れば確かに退屈。でも好き。そして、ぼくがシスコンになる。
ついでに言うと、先輩が攻略対象じゃないのは残念。Ritaの声はマジでいい。なんで声優を続けないで先のない音楽活動に……(大嘘
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