『サクラノモリ†ドリーマーズ』レビュー
『サクラノモリ†ドリーマーズ』は発売前から気になっていた。設定がダークで、OPが燃えるし、紹介を見る限りホラー路線らしい。ただ、リリースが遅かったので後回しになってしまった。やってみた感想は「悪くない」とは言えるが、決して「楽しい」とは言えない。とはいえ、この「楽しくなさ」の半分はポジティブな方向のものだ。ホラーゲームをやって楽しいと思えるようになったら、そろそろお縄が近い気がする……。
このゲームは評価が難しい。個人的には肯定的な評価を与えたいのだが、それを絶対的に裏付けるものを何も出せない。たぶん自分がこういう作風のゲームが好きなだけで、全方位的に「あと一歩足りない」だけなんだろう……。

このゲームは章の数がとにかく多い。メインルートを進むなら十三章必要で、実質的なメインは清水愛CVの桐遠暮羽なのだが、本当の物語は彼女ともあまり関係がない。彼女のルートを進めるとTRUE ENDに辿り着けるというだけだ。
物語の序章は恋愛物語だ。主人公は以前の飛行機事故で両親を失い、一人暮らしをしながら親戚の世話になっている。主人公の向かいに住むまどかという女の子とは気が合い、主人公は自転車が好きで、まどかも一緒に自転車に乗ってくれる。二人は楽しく過ごしていた。そんな中、町で次々と殺人事件が起き、主人公も町で頻繁に「悪霊」を見るようになる。
主人公には「悪霊」が見えるという特殊能力がある。そして主人公は知っている。悪霊を見るときは必ずろくなことが起きないと。両親が飛行機事故に遭う前、機内で大量の悪霊を見たのだ。だから最近町で色々起きると思っていた。特に悪霊が身近な人間、たとえば従妹の吹上初音に近づき始めてからはなおさらだ。

主人公は身の回りに頻出する悪霊が気になって仕方ない。自分も悪霊が原因の死を二度見たし、ある時は自転車のブレーキが突然効かなくなって転倒し、危うく死にかけた。そこで主人公は悪霊が見えることをまどかに打ち明け、一緒に調査する。近所の探偵事務所にも行き、所長とバイトの秀典という青年に話を聞いてもらうが、二人とも「うわ、すげえ」と言うだけで何の役にも立たない。ただ秀典は主人公に興味を持ち、「正義のヒーロー」だと褒めて応援してくれた。

しかし事態は進展しない。町では事件が続き、まどかの両親が引っ越すと言い出す。まどかから別れを告げられ、主人公は初めて自分がまどかを好きだと気づく。最後にもう一度だけ一緒に自転車に乗る約束をし、その最後に主人公はまどかに告白する。まどかは告白を受け入れ、とても嬉しそうだった。帰り道、まどかは「ちょっと照れくさいから一人になりたい」と言い、先に帰ってほしいと告げる。「すぐ追いつくから」と。

主人公は家に帰る。深夜になってもまどかは戻らない……嫌な予感がして、まどかの両親と一緒に探すと、まどかは告白したあの湖で溺死しているのが見つかった。他殺と判定された。
主人公の世界は崩壊した。告白したばかりの彼女が、まだ一日も一緒に過ごさないうちに死んだ。両親を亡くし、今度は彼女まで亡くし、主人公は精神的に死んでしまった。ある日、まどかが死んだ湖に行くと、不気味な影を見つける。主人公は追いかけるが、影は素早く消えた。あれがまどかを殺した奴に違いない。悪霊の一員かどうかはわからない。怒りに燃える主人公は、まどかの仇を討つと決意し、もう落ち込まないと誓う。

その後、主人公は精神を取り戻す。しかし彼を生かすのは「まどかの仇を討つ」という信念だけだ。親戚はとりあえず元気になったのを見て、何も言わなくなった。主人公は学校に通い普通の生活を送りながら、身の回りの悪霊を調べ続ける。まどかを殺したのは悪霊だと信じて。
事件は続く。クラスメイトの遠野という少女が行方不明になったと聞くが、主人公には遠野の霊が見えた。この娘はもう死んでいる。ただ遺体が見つかっていないだけだ。周囲に彼女の情報を聞いて回るが、みんな資料をくれるだけで確証はない。すると面白いことに、クラスの桐遠暮羽という少女が主人公に近づいてくる。暮羽は自分も「悪霊」が見えると名乗り、主人公を自分の家族が運営する「サクラノモリ ドリーマーズ」という組織に誘う。この組織は「悪霊」を滅ぼし人類を救うことを使命としている。ついでに「悪霊」の知識も教えてくれた。「ボダッハ」は青と赤の二種類に分かれ、青は無害で、人間が死に近づいたときに現れる。いわば日本の霊異伝説でいう「迎え」のようなものだ。赤は有害で、赤に憑かれた人間は凶暴化し殺人鬼になる。赤い悪霊は憑依した人間の魂を喰い荒らす。だから「サクラノモリ ドリーマーズ」は赤いボダッハを滅ぼし、憑かれた人間を救うことを任務としている。ドリーマーズ(Dreamers)という名の通り、この組織に加わる人間は共通して「悪霊」が見え、特殊能力を持つ。主人公は悪霊だけでなく幽霊(死んだまどかの霊も含む)も見えるので、組織の一員となる。活動方法は夜中に眠ることで夢に潜り込み、憑依された人間の夢の状況を探り、夢の深層に入って赤い悪霊を滅ぼすというものだ。

最初の調査対象は行方不明のクラスメイト遠野だった。調べると、彼女はよく行く小料理屋の料理人に殺されたらしい。さらに調査を進めると、料理人は赤い悪霊に憑かれていると判明する。夢に入ると料理人はやはり異常だった。主人公は奮闘して悪霊を追い払うが、料理人は救えなかった。魂を悪霊に喰い尽くされ、そのまま死んだ。死んだ少女も戻らない。

暮羽は主人公に教える。赤い悪霊に憑かれた人間は殺人鬼になるだけでなく、人を殺すと被害者の遺体を直接青い悪霊に変えてしまう。遺体自体は消え、証拠は残らない。だから遠野の遺体はないのだ。彼女は最後に主人公に感謝を伝えに来た。
主人公は不思議に思う。なぜまどかが殺されたときは遺体が残ったのか。暮羽は状況によって違うと説明する。そして赤い悪霊とは別に、ジョーカー(Joker)という殺人鬼がいて、そいつ自体が殺人鬼で、赤い悪霊と関係があるかは不明だという。まどかはそのJokerに殺されたのかもしれない。

こうして最初のCaseは終わった。主人公は自分の彼女を殺した犯人を見つけられず、追及を続けるしかない。
その後も「赤い悪霊憑き事件」をいくつか片付ける。クラスメイトの葛木朋成や、非常に陰険な塔野沢亜里砂という少女などだ。主人公は彼らがJokerかもしれないと思うが、結局どれも違った。
まどかの魂が主人公に語る。死ぬとき犯人の顔は見ていないが、確かな特徴がある。殺すときに「へへへへふふふふ」と笑い、そして泣くような声を出すのだと。
主人公は担任の塚田良平の笑い声が似ていることに気づき、気になって勝手に調査を始める。教師は半夜に家でゲイビデオを見てオナニーしている以外に、特に過激なところはないようだった。それでも主人公は安心できず、教師の部屋に不法侵入してまで調査を続ける。
調査して驚いた。教師はゲイであるだけでなく、ゲイの強姦魔だった。何人もの若い男を犯し、しかも動画まで残して後で見返してオナニーしていた。さらに教師の収入は怪しく、毎月10万円の安定した支出があり、他にも不可解な出費がたくさんある。しかし教師の生活は質素で、授業以外は家でオナニーするくらいしかない。なぜそんなに出費があるのか?

やがて主人公は教師のゲイビデオの中に、誰かを強姦している映像を見つける。犯されていたのは探偵社で会った秀典という少年だった。主人公はその子に同情し、教師をさらに憎む。この固定支出はきっとJokerとしての身分に関係しているに違いないと考える。そこで半夜にこっそり教師の夢に入り、問い詰める。秘密を暴かれた教師は慌て怒り狂う。主人公は一発殴ってから夢の奥深くに入るが、教師の夢の奥には何もなかった。
つまり教師は単なる変態ゲイで、Jokerでもなければ赤い悪霊に憑かれてもいなかった……。
主人公は失望の極みに達する。あれほど追い続けた殺人犯を、何ひとつ掴めなかった。絶望すらしたが、最後は誰かに引き戻される。ある日、再び探偵社に行くと秀典がいて、同情する。秀典がレイプされたことを知ったと言うと、秀典は淡々と、しかし失望したように言う。

「あー……誰でもいいけど、君だけには俺のこと知られたくなかったなあ~」
さらに衝撃の事態が起きる。秀典が制御を失い、あの「へへへへふふふふ」と笑い泣きする声を出す。
主人公が問う。秀典、なぜあの教師の真似をする?
「え?真似してないよ。正確には、あいつが俺の真似をしてるんだ~」秀典は笑う。「俺をレイプした奴さ、最初はやられてたけど、そのうち気持ちよくなって、それからは自分からヤリに行って金も脅し取ってたんだ。この探偵社のバイトじゃ食っていけないしね」
「俺がJokerだよ。君の彼女は、俺が殺した」
怒った主人公が殴りかかろうとすると、あっさり壁に投げ飛ばされ、意識を失う。
その後、主人公は秀典の痕跡を追い、教師の部屋へ行くと教師が惨殺されていた。秀典が教師を殺し、狂笑していた。秀典はもはや人間の姿ではなく、体中に触手が生えた怪物になっていた。

「赤い悪霊に憑かれると魂を喰われる。いつから憑かれてる?」と主人公。
「わかんない、たぶん三年以上かな」秀典は静かに答える。
「三年以上経って魂は残ってるのか?」
「わかんない。喰われてない気がする。赤い悪霊と一体化したみたいな」秀典は発狂し、殺せない存在になっていく。暮羽の姉が助太刀に来て、一刀で怪物を真っ二つにするが、また蘇る。
「Jokerは殺せない。正義のヒーローだけが俺を殺せるんだ」秀典は主人公に向かう。「さあ、正義のヒーロー。ずっとお前が殺しに来るのを待ってたんだ!」
その後も主人公と秀典の対決が何度も続くが、主人公自身は手を出さず、毎回助っ人がやる(主人公に戦闘力はない)。暮羽の姉は自らを犠牲にし、秀典は灰になる。主人公は死んだと思い、人生の目標を達成したと脱力する。そして物語は穏やかな恋愛期に入り、主人公は元彼女まどかの荷を下ろし新たな恋を選ぶ……。そして、どこかで秀典が再び現れる。

今度の秀典は本物の、どこにでも憑依できる悪霊になっていた。クラスメイト、教師、警察、そして主人公の恋人など、様々な人間に憑依して主人公に挑戦する。
主人公は理解する。最後に秀典と決着をつけなければならないと。秀典の遺骨を集めて封印の準備をするが、その夜、秀典が主人公の夢に潜り込む。
夢の中で秀典は自分の過去を語る。この子の過去は本当に複雑で、『Batman』のジョーカーの陳述に似ている。実際、このJokerの設定自体がジョーカーのパクリな気がする。最後に話は秀典から主人公への問いに戻る。

秀典は考える。自分は両親を失い、主人公も両親を失った。自分は生きる目標を一度失い、主人公も一度失った。自分は「悪霊」が見え、主人公も「悪霊」が見える。だから自分は主人公と同じ人間のはずだ。
秀典は「正義のヒーロー」に憧れていたが、過去に人を殺しており、そんな存在にはなれない。だから秀典は選んだ。主人公を正義のヒーローにすると。
「正義のヒーロー」になるには悪役が必要だ。だから秀典は自分が「悪」になると決めた。主人公の彼女を殺し、周りの者を殺し、近しい者を殺し、挑戦し続けた。自分が「悪」になり、主人公が自分を殺して「正義のヒーロー」になることを望んだ。

『Batman』のジョーカーがバットマンに挑むのと少し似ている。バットマンは殺せない。殺せば正義ではなくなる。主人公もバットマンと同じく、秀典を殺すことを選ばなかった。
主人公の無視によって秀典の悪霊は支えを失い、夢の深層に永遠に封印される。物語は結末を迎える。
『サクラノモリ†ドリーマーズ』の物語は正直たいしたことがない。『Batman』や『Fate/Zero』など、正義の味方とその対立面を描く物語と同じパターンだ。説教くささはそれらより少ないが、物語のテンポは非常に悪い。
そう、テンポが非常に悪い。どのくらいかというと、中盤の少なくとも6章分は本筋と無関係なサブルートを進む。そして終盤、重要な展開が必要な場面で最後の盛り上がりを欠く。四字で言えば:高開低走(出だしは良いが尻すぼみ)。

序章は悪くない。彼女を殺されて爆発する主人公のシーンはOPと合わさってかなり燃える。しかしその後は最終盤までずっと失速したままだ。攻略ヒロインが大勢設定されているが、序章で最も密度の濃いまどかは含まれない。すでに死んでいるからだ。他のヒロインは本筋でほとんど役に立たず、感情を描く時間もない。これは理解できる。本筋は復讐だからだ。だがそれならなぜ「攻略のために無理やりデートや水着回を入れる」のか? すごく浮いている。物語自体中盤の展開が遅く、何度もの対決でヒロインたちはほぼ無用で、主人公が「復讐の信念」だけで突っ走る。薄めに薄めた物語に無理やり恋愛を詰め込まれても、やる気が起きない。それならまどかルートの方がよほど良かった。彼女こそずっと主人公に寄り添っていたのだから。
ゲームは中盤から敵役の八束秀典を重点的に描き始める。子供時代に名もなき幽霊と交わした会話の挿入もあるが、その幽霊が誰なのかは明かされない……。

そして物語は突然転換し、黒幕が誰かが一気に明かされる。黒幕が明かされた後は非常に速いテンポで、その最終ボス級の人物があっさり灰にされる……。そしてもどかしいことに、ボスが灰になった後、物語はまた転換してボスの過去の第二ラウンド性格造形が始まる。しかもその造形がひどい。主人公が発見するのではなく、一部は探偵社の調査、一部はボス自身の最後の陳述に頼っている………ここまで消耗させられたプレイヤーに、そんなものを噛みしめる余裕はない。しかもボスの過去陳述が終わって間もなく、ゲームは終わる……。
欠点ばかりではない。演出効果の設計は満点をあげていい。「ホラー系」AVGのプロ級の演出だ。様々なCGの差分、あのワイルドな画風と彩色、音楽の演出が加わり、恐怖感は満点。何度かビビった。比べて少し前にやったあけいろ怪奇譚は遠く及ばない。音楽については愛憎半ばだ。「夢の曲」と「日常の曲」に分かれ、日常パートの曲は本当にひどい。普通の電子音楽だ。一方で夢の曲は質が恐ろしく高い。というか、このゲームは「恐怖シーンの演出」と「日常シーンの演出」で完全にレベルが二段階違う。前者が後者よりはるかに高い。これがこのゲームにどこまでも葛藤させられる理由だ……。

そう、どこまでも葛藤。
設定は良いのに、無理に水増しした中盤と迫力不足の最終対決で台無しにされた。 音楽効果は良いのに、日常パートの曲がダサすぎる。 画風はまあまあなのに、全員が黒化するときの「横顔で目玉をギョロッとさせる」立ち絵がダサすぎる。 序章のアニメは良いのに、最後のEDが二つとも、片方は字幕なし、片方は聞けたものじゃない。どういうことだ?
しかもこのゲームには「パクリ」の痕跡がかなりある。『インセプション』のコマ、『寄生獣』の手への寄生、『Batman』のJokerなどなど。まあ大した問題ではないが。総合的には、プレイ後、感情としてはこのゲームが好きだ。体験版をやってすぐOSTを買ったほどだ。でも最終的な出来にはとても失望した……。

失望はしたが、心のどこかで「このゲームを擁護したい」気持ちがある。しかし考えても、擁護できるところはない。各方面で一歩足りないのだから、仕方ない……。
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