『はるまで、くるる』レビュー
『はるまで、くるる』のシナリオライターに渡辺僚一という人がいて、この大先生の最新作が蒼の彼方のフォーリズムなわけだが、その前は彼と良き相棒の木緒なちが結構な数のエロゲーに関わっていて、中には設定がぶっ飛んだ作品もある。俺はかなり早い段階で資料を漁って、そういう作品の多くに共通点があることに気づいた。
超展開が得意で、ゲームの最後に「実は主人公たちは夢の中にいた」とか「元の世界じゃなかった」とかを明かしてくる。
渡辺僚一と木緒なちが一緒に関わった中で割と有名なのはすきま桜とうその都会だろう。間違いなく、このゲームの最後はまさにその展開だった。企画はこの二人じゃないらしいけど、それを彼らのせいと呼ぶかどうかは微妙なところだ。
で、『はるまで、くるる』もこの二人の大先生が組んだゲームの一つなわけだ。なぜやったかって?
またOPに釣られたからだよ!
『はるまで、くるる』ってゲームは……絵柄がまたあの歪んだ顔なんだよ。ただねこねこそふとの面子そのままってわけじゃないから、まだマシなほう。中二空間の評価によればシナリオで勝負するタイプらしく、俺はシナリオを食う側の人間なので、まあ行ってみるかと。
その結果、半年かかったわ……正確にはまずOP前とOP後をちょっと進めて、その後ようやく残りを終わらせた。
何というか……話はすごい。想像力もすごい。でもこのゲーム、こんなに……長くする必要あった?
ゲームが始まると、主人公と数人の女の子が孤島で暮らしていて、学校にも通っている。授業はすべて自習だ。登校して間もなく夏休みに入る。一行は自分たちがどうやってこの島に来たのかも、島に自分たち以外の誰がいるのかも知らない。とりあえず食料は十分あるから心配ない。唯一気になる異変は、島にそびえ立つめちゃくちゃ高い煙突。しかも毎晩、軍号のような音楽が流れる。メロディは童謡「春よ来い」。音楽は不気味だけど、誰も理由を言わない。他のことは何も記憶にないから、来たからには住むしかないと、一行は生活を始める。

そしてゲームは早々に俺に洗礼を浴びせてくる。すべてはヒロイン一号のあの一言「自習中断、乱交開始!」から始まり、そのまま崩壊する。

そこからは惨無人道的なハーレム啪啪啪劇。ずーっとヤリまくり、あらゆるパターンで致し、致しまくっているうちにゲーム内時間で3ヶ月近くが経過する。突然タイムリセットが発生し、主人公は3ヶ月前の時間に戻り、すべてがまた振り出しに戻る。
特筆すべきは、リセット直前のカットチェンジ。実験室らしき場所で、水槽いっぱいのクラゲみたいな生物を前に、誰かが「今度の実験は少し失敗だったかな……次は別の方法でやってみよう」と呟く。
つまり分かるだろ。このゲームのシナリオはこの3ヶ月の無限ループに入る。主人公が3ヶ月分のシナリオを終えるたびにループして戻される。まるでこの連中が誰かに飼われて実験されているように見えるが、なぜ実験しているのか、何の実験なのか、そもそも実験なのかすら、誰も教えてくれない。ゲームはひたすらLoop Loop Loop。合間に一部ヒロインが突如暴走する小話が挟まる。ある者は殺人欲求を抱え、ある者は自殺を考え続け……。島では夜の月は見えるのに潮の満ち引きがない、おかしいと主人公に告げる者もいる。
あの巨大な煙突にも主人公は探索を試みたが、近づくことすらできない。とにかくシナリオは延々とこの3ヶ月を巡り続け、ある日、主人公はとあるヒロインに連れ去られる。そしてこの世界の秘密が直接暴かれる。

この秘密の明かし方がとにかくシンプルで乱暴。いきなり真実を顔面に叩きつけてくる。この「孤島」は地下世界だったのだ。
しかも本当の時間は、ゲーム内で主人公が感じている西暦2000年頃ではなく、実際には西暦10000年以降。
曰く、人類は西暦3000年頃から、若返り能力を持つクラゲを発見した。科学者たちはその特性を抽出して人類に使おうとしたが、どうテストしても成功しない。研究の末、このクラゲの若返りには特定の環境と特定の音刺激が必要で、それによって細胞が活性化し若返るのだと判明する。最終的な研究の限界は、細胞活性による3ヶ月分の若返り、つまり3ヶ月前の状態に戻ること。ただし細胞の活性化なので記憶も失われる。
そこで研究者たちは地下に巨大空間を建設し、2000年の孤島環境を再現した。クラゲの細胞を活性化させる条件をすべて整えたのだ。環境の生態系バランス、食料供給、あの軍号のような童謡「春よ来い」の放送まで含めて。それから世界から数人の志願者を募った。主人公とヒロインたちである。彼らは元の名前と記憶を捨ててこの人造空間に入り、実験に参加した。ゲーム冒頭のように、3ヶ月をひたすら繰り返す日々へ。
実験開始は西暦3000年。誰が予想しただろう、ほどなく地球に新たな氷河期が訪れ、食料不足と戦争が重なり、人類は滅亡に近づく。実験プロジェクトの責任者たちもほぼ消え、主人公とヒロインたちだけが何も知らずにこの仮想空間で3ヶ月を延々とループし続ける。実験全体でただ一人、毎回のループの記憶を保持する少女がいる。彼女は管理者であり、記憶を保存する専用の「液体コンピュータ」が用意されている。彼女はここで延々と3ヶ月の生活を繰り返し、ついに飽き果て、自殺を望む。共通ルートのあの自殺事件の由来である。

少女は「もう無理」と、本気で自分を絞め殺そうとする。だが死んでも本当には死なない。3ヶ月後に細胞が活性化すればまた蘇る。ただしその後の彼女は「管理者」ではなくなり、管理者は第二優先度の主人公に移譲される。やがて主人公が管理者となり、この仮想世界の外の状況が想像以上に深刻だと知る。人類は死に絶え、氷河期の終わりは遠く、太陽も活動を停止し始めている。このままでは世界に残る人類は主人公たちだけになり、しかもこの世界で3ヶ月3ヶ月の無限ループを続けることになる。ループの記憶を重ね持つ主人公も、この無限ループの中で少しずつ狂い始める……
もちろんゲームの結末は最悪なわけがない。最後に主人公は希望を手にし、自らの手で実験を止め、外の世界を見に行くと決意する。実験装置を切り、エレベーターで地上へ上がった主人公を迎えたのは、新しい地球と、本物の春の訪れだった。これこそが『はるまで、くるる』というタイトルの意味である。
で、このゲームは結局何を言いたかったのか。
メインは、実は主人公一行が実験体として仮想世界で暮らしていて、その外では人類世界が激変し、いろいろ起きている。なのに主人公たちはここで無限ループを続けている、ということだろう。
つまりこのゲームの見せ場は、すべての真相が明かされる瞬間にある。
しかし『はるまで、くるる』はその「メイン」以外が薄すぎる。
要するに、真相が明かされる瞬間にプレイヤーが興奮できるだけで、それ以外の大半は日常を眺めるしかない。しかもその日常の書き方も大したことない。ヒロインたちも可愛く描かれていない。5言も話せば必ず下ネタが出る。しかも下ネタがストレートで、含みを持たせて唸らせるタイプの汚さではなく、ただ直接的な汚さ。一周目の乱交から、その後の乱走、最後の乱扯まで、最後の「真相」に近づかないからすべてが無茶苦茶。どうせ周回ループなんだから好き勝手に書けばいい、とばかりに。
だから共通ルートでひたすら俺の忍耐を削ってくる。メインへの説明に近づく気配がほとんどない。この「世界」は偽物だろうと推測するしかない。だが、それが偽物だと誰に見えないっていうんだ。OPで「不思議の国のアリス」なんて出してきた時点で偽物だと分かったわ。なのに真相は最後まで説明されず、説明された瞬間にいきなり10000年後を叩きつけられて、水に浸かったように呆然とする。まあ、この前の20000年後とかいう作品よりはまだ受け入れやすいけどな。
总而言之、『はるまで、くるる』は「実質的な内容」のある部分が本当に少ない。世界設定だけ見て、一周目やって最後に飛んで読めばいいと思う。理解には全く影響しない。途中の殺人事件は分からないかもしれないが、後半でも全く触れないから心配無用だ。
音楽は褒められたものじゃないし、絵柄も良いとは全然言えない。システムも変で、たまに落ちる。フォントも美しくない。唯一最大の売りがシナリオなのに、結局はただの標準的な詐欺爆発ゲームだった。ただ、他のゲームは超展開以外にもキャラデザ、音楽、日常、ギャグなど日常を読み進めさせる要素がある。それに対して『はるまで、くるる』の日常は、ストレートな下ネタと啪啪啪だけ。ああ、あと中二病やら高度な議論やらもあるが、何の役にも立たない。ただの煙幕だ。
もちろんよく考えれば、共通ルートにも伏線がないわけじゃない。軍号、春へのあこがれ、未来への想像。最後に一行が本当に地上の春を見たとき、このタイトルの意味が分かるのかもしれない。
最後に特筆すべきは、『はるまで、くるる』には精神続編の『なつくもゆるる』があること。評価を見る限り、シナリオは教訓を活かして「緩やかに展開し、層を重ねて噛み合う」方式を採用したらしい。だがそれでも「中学生が書いた中二黒歴史小説みたい」と突っ込まれている……
まあ、気が向いたらこの精神続編も見てみるか。
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