『嫁探しが捗りすぎてヤバい』レビュー

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『嫁探しが捗りすぎてヤバい』のタイトル、どう訳したらいいのか全然わからない。中に「ヤバい」が入ってるからだ。とある大学の日本語学科の教授が書いた解説記事によると、やばいをカタカナで書くのは日本の若者のトレンドで、これには相反する意味があるらしい。やばい本来の意味は「まずい」なのに、ヤバいになると badass みたいに正反対の両方の意味を兼ねるようになって、「気持ちよすぎてまずい」って感じになる。実際、このやばいを「すげえ」と訳したほうが合ってると思う。いいことが起きても悪いことが起きても「これすげえわ」って言えるわけだから。

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だから『嫁探しが捗りすぎてヤバい』は最初「嫁探しが順調すぎてすげえことになってる」くらいの意味だろうと思ってたんだけど、実際に遊んでみたら考えすぎだった。このやばいはそう簡単に結論づけないほうがいい。

ずっとタイトルの話ばかりしてたけど、だってこのゲーム自体があまりにもテンプレすぎて、タイトル以外にツッコむところがないんだよ。

前に今の日本のエロゲー業界は「キャラを作ってキャラを売る」方向に進んでるって書いたけど、『嫁探しが捗りすぎてヤバい』もそのキャラゲーのひとつに過ぎない。

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設定は、主人公が幼い頃から神様みたいな村で育ったというもの。村の人間には神力がある。ただし主人公は小さい頃、ある女の子と契約を交わしていて、将来その子が自分の嫁になるはずだった。ところがその女の子は後で街へ出ていってしまった。主人公も成長し、妹と村の婆さんから「そろそろ街へ行って、約束した嫁を探してこい」と言われる。そうしないと神様村の主人公の家が絶えてしまうからだ。

妹の話では、その女の子の苗字は「八神」だったらしい。村から出てきた主人公はまっすぐ街へ行き、八神家を訪ねる。さあ嫁に会おうとしたら、八神家には三姉妹がいた……。どの子が約束した相手なのか、主人公は覚えていない。完全に固まってしまう。なので妹の采配でしばらく八神家に住み込み、観察しながら、誰が幼い頃に約束した婚約者なのかを探すことになる。

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これがタイトルにある嫁探すの意味だ。主人公は村から来た人間で、子供の頃に決めた婚約者を探している。ただ、このゲームが面白いのは、最後まで誰が本当に約束した婚約者なのかをはっきり教えてくれないこと。

攻略可能なキャラはなんと7人。八神三姉妹、主人公の実妹、学校の菜々華先輩、学校でバイトしているメイド、そしてロリ先生……最後にはハーレムエンドまである。

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攻略対象が多いのに、意味不明なルートロックまである。一周目は米澤円が声を当てた八神甘夏を強制攻略。その後、八神の他の姉妹と菜々華先輩のルートが解放される。菜々華先輩を攻略すると実妹ルートが解放。全部攻略し終えると先生とメイドのルートが解放される。意味不明なのは、キャラ同士に因果関係がないことだ。つまり誰を攻略しても誰を攻略しなくても、ストーリーは進展しない。

いや、むしろこのゲームにメインストーリーなんてほとんどない。メインは主人公が嫁を探して、見つかったら村に帰って結婚するだけ。裏の陰謀もなければ、厄介な障害もない。つまり好きなキャラを選んで進めばいい。話を見逃す心配はない。

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八神甘夏のルートは強制なのに、これといって価値のある雰囲気はまったくない。すべてが順調に進む。主人公が「子供の頃に約束した嫁は八神って苗字だった」と言うと、八神甘夏は自分かもしれないと思い、自分から告白して、そのまま付き合う。最後にちょっとした展開がある。八神甘夏は、主人公が子供の頃に約束した女の子は自分ではないと気づく。主人公は相手を間違えて自分を嫁に選んでしまった。八神甘夏は罪悪感を抱き、隠れようとする。自分が他人の幸せを奪ったと思い込む。

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だから最初にやばいの訳し方がわからないと言ったんだ。ここでは確かに、主人公の嫁探しが順調すぎて、まずいことになったと気づくやばいなんだよ。

物語の最後は当然、主人公が間違ったまま押し通すことを選び、「真実の愛を選べばいい」と宣言する。村の婆さんも妹もそれを理解して、最後はハッピーエンド。

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もう一人、菜々華先輩のルートも甘夏と似ている。最初に菜々華先輩が主人公に会うなり自分から誘ってくる。しかも菜々華先輩は、自分も神力を持つ人間だと言う。ただし自分の母親やさらに上の世代がその神様村から逃げ出していて……だから主人公に会えて興奮したらしい。自分の神様の血脈を残すため、主人公との子どもをどうしても欲しがる……(おい………………)。最後は当然、あれこれ押し切られてカップルになり、パコパコ。最後の展開もテンプレで、村の婆さんが出てきて「八神家の娘を探す話じゃなかったのか、なんでこいつなんだ」と言う。結果は当然、真実の愛が無敵。主人公と菜々華先輩は結ばれ、子どもを二人作るつもりになる。

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大体わかると思うけど、このゲームのルートはこんな感じだ。神様村の設定なんてただの看板で、本質は恋愛ゲーム。嫁探しの設定は恋愛を展開しやすくするための方便にすぎない。他のキャラのルートを進める気は正直起きなかったけど、中二空間の評価を見ると、八神家の末妹ルートはかなり起伏があるらしい。誰かが瀕死になったりして、ハッピーエンドではあるものの、すでに日本人がそのルートのシナリオライターを憎んでいるとか。

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つまりキャラを売るキャラゲーだ。でも失望するのは早い。ちゃんと長所もある。

『嫁探しが捗りすぎてヤバい』の個別ルートは比較的長い。しかも内容の80%は、あなたと対応するヒロインとの感情のやり取りに重点を置いている。

どういうことかというと、このゲームの個別ルートでは、ほぼずっと女の子と恋愛についての会話をしているということだ。

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そう、くだらない伏線も、くだらない起伏も、めんどくさい三人会話もない。あるのは一対一の長時間の恋愛相談だけ。これは菜々華先輩のルートでより顕著に現れる。声豚なら、桐谷華の個別ルートでの演技に「たまらねえ」と叫ぶはずだ。

この会話の良さを言葉で説明するのは難しい。自分で感じるしかない。女の子と朝までずっと喋り続けるあの感覚こそ、この興奮の度合いなんだろう。時々女の子がいろんな照れを見せてくれて、心臓が高鳴る。ただし前提として、好きな女の子を見つけられている必要がある。例えば甘夏の米澤円には俺はあまり興味が持てなかった。どうしても雪菜を思い出す。でも菜々華先輩はぶっ刺さった。ありがたいことにキャラがたくさん選べるから、一人くらいは合うはずだ。

しかも菜々華先輩は本当に可愛い!

音楽は普通。作画は池上茜。うーん……画風がいいとも悪いとも言えない。ただ、彼女の Twitter は慎重に見たほうがいい。BL の購入物を晒されて目がやられるから。

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『嫁探しが捗りすぎてヤバい』について言えば、どちらかというと無毒でピュアな標準的恋愛ゲームだと思う。中の大部分は女の子と甘えるような世間話。すごくいいとも言えないし、悪いとも言えない。ただ中に好きな声優やキャラがいれば、遊んでみても時間の無駄にはならない。それにのめり込めば、本当に恋愛している感覚になれる。

とはいえ、ギャルゲーにとって恋愛の感覚を追い求めることこそ、最初の目的なんじゃないか?

これってまさに「初心忘るべからず」ってやつ? はは。

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