ゲームの検閲ってやる価値あるの?
少し前に Twitter を眺めていたら、Herkz のツイートが目に入った。Sekai Project による『グリザイアの果実』のリリースを手伝ったことのある人だ。彼がその続編――『グリザイアの迷宮』と『グリザイアの楽園』――について個人的な所感を呟いていた。

「個人的には、えっちな内容に興味がなくても、このゲームの 18+ 非修正版を待つと思う。全年齢版のわずかな新規 CG のために待つ価値があるかと聞かれたら、ないとしか言えないな」
「ちなみに、ask.fm でも言ったけど、『グリザイアの迷宮』で修正されてるのは 18+ コンテンツだけじゃない」
今読み返すとこのコメントはなかなか面白い。まず、これはゲームのローカライズ班の主力翻訳者の言葉だ。そしてその翻訳者は、自分が翻訳したゲームが最終版でとある事情により一部内容がカットされることを知り、ファンに向かって「自分は会社が出す『切除版』なんか無視して、後から出る 18+ 非修正版を待つ」と宣言している。これにはちょっと考えさせられる。自問してみるといい。すでに発売済みの「完全非修正版」のために、販売地域を増やす目的でわざわざ別の「修正版」を作る価値は本当にあるのか。あるいは「非修正版」の発売前に、待ちきれないプレイヤー向けに削減済みの「修正版」を先に出しておくべきなのか。
ここではタイプの異なる3つのインディーゲームの検閲事例を挙げて、細部を見ていこう。『限界凸騎』(Monster Monpiece)、『この大空に、翼をひろげて』(If My Heart had wings)、そして『グリザイアの果実』(Fruit of Grisaia)の3本だ。
まずは『限界凸騎』(Monster Monpiece)から。このゲームはある意味「半身不随版」とでも言うべきものだ。Idea Factory International は以前、Nippon Ichi Software などの開発会社のアメリカ支部と提携していた。主に彼らのゲームのライセンスを取得して、アメリカその他でローカライズ・発売する形だ。彼らはゲーム内に存在しうる違法コンテンツを回避するため、内蔵ミニゲームのカードをかなり修正した。立ち絵が児童ポルノに関わる可能性があるからだ。

40 枚以上を削除して 350 枚強しか残らなかったカードについて、どういう反応があったか。NEOGAF や GameFAQ といったフォーラムでは、プレイヤーたちが激怒した。その怒りに対して Idea Factory International が出した答えは、「ファンを侮辱するつもりはない、ただこのゲームを無事発売するにはこうするしかなかった」というものだった。何と言おうと、彼らの「修正」は ESRB の審査を通る前に行われている。周知の通り、企業はゲームを出すとき、狙う年齢層に合わせて自発的に内容をいじるものだ。結局この「半身不随版」の『限界凸騎』は、修正があまりに酷すぎて隅に追いやられ、市場での成績もぱっとせずに惨敗で終わった。
Steam で発売された日本のギャルゲー『この大空に、翼をひろげて』(If My Heart had wings)は、ゲーム検閲に関するもうひとつの生々しい例だ。挙げていけば、性行為、キス、性的示唆、そして低年齢層向けに合わせて改変された多数のセリフ。自己検閲はゲームタイトルにまで及んだ。さらに一部ヒロインの個別ルート(特に姫城あげは√)は一部削除、挙句には書き直しまでされている。

プレイヤーコミュニティはこの改変にすぐ反応した。彼らは怒りを込めて、これらの改変・書き直しはあまりに残酷で、原作とほとんど別ゲーに見えると指摘した。激しい反響と同時に、すぐさまネット上には「内容復元パッチ」が出回った。このパッチで、削除・改変された内容を本来の姿に戻せる。全体として見れば、これはゲーム検閲事例の中でも最悪の部類だろう。『この大空に、翼をひろげて』はビジュアルノベルだ。このレベルの内容削除とテキスト改変は、ある意味作品を踏みにじる行為であり、また欧米のビジュアルノベルファンに重い現実を突きつけている。つまり、販売会社はファンが切望する原作通りの内容なんて意に介していない。ただこのゲームの英語版を出したいだけで、一部内容の削除や書き直しも厭わないのだ。
『この大空に、翼をひろげて』(If My Heart had wings)の内容復元パッチについてはこのリンクを参照: https://steamcommunity.com/sharedfiles/filedetails/?id=501001760
最後の例は『グリザイアの果実』(Fruit of Grisaia)。このゲームは Seikai Project が『グリザイアの果実』およびその後続すべてを含む三部作全シリーズの代理発売を発表する以前から、ファン翻訳組による「英化版」が存在していた。このゲームについて、Seikai Project は最終的に、ゲーム内の 18+ 要素を削除し、日本で発売された全年齢向け PSP 版の内容で代替することを選んだ。同時に、全年齢版の発売後に削減なしの公式完全版を出すとも発表した。さっさと全年齢版で先取りするか、完全版を待つか。選択権はプレイヤーに委ねられた。

『グリザイアの果実』(Fruit of Grisaia)の全年齢版について、多くのファンの反応は「別に気にしない」というもので、18+ 内容を含む完全版をわざわざ待つ気はないようだった。このゲームの全年齢版の修正度合いは他の作品に比べて受け入れやすくはある。ただ、全年齢版と 18+ 完全版が同時に発売されればもっと良かったかもしれない。
さて、ゲーム検閲の話題に戻ろう。以上の3例を踏まえると、ゲーム内容の検閲で最も無難な方法は、あるゲームを原作タイトルで全年齢版として出すと同時に、別ルートで 18+ 完全版も出すことだろう。
だから今のゲームは Steam に直接並べつつ公式サイトでパッチも売って二重に稼げる。いいね。
原文:Is game censorship worth it?(加筆修正あり) http://www.gamerisle.org/2016/06/22/is-game-censorship-worth-it/
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