『運命予報をお知らせします』レビュー
いわゆる運命ってやつ……
しばらく抜きゲーばかりやってた時期があって、そのあと廃萌キャラゲーを一通りやって、やっぱり自分は「物語重視」の基本路線に戻るべきだなと思って探してみたら、個人的にかなり好きな『紙の上の魔法使い』のシナリオライターの初期作品『運命予報をお知らせします』を見つけた。日本のオタクが中二空間で書いてる評価をざっと見た感じ、大丈夫そうだったので始めてみた。
プレイ時間は十数時間くらいと聞いていたけど、思ったより長く感じた。やってみた感想はけっこう驚きで、こんなに描写が丁寧な作品に久しぶりに触れたからかもしれない。おかげでこのゲームのあとに新作の『フローラル・フローラブ』をちょっと開いたら、文章のレベルの落差が受け入れられなくなった。前者は大学生の読み物、後者は比べるまでもなく中学生の読み物レベル……

まあ、日本語力が上がってきたせいで、かなりアホっぽい書き方にも「ダサいな」と思うようになったってのもある。昔は意味が分かればいいやって感じだったし。
『運命予報をお知らせします』というタイトルは別に難しくない。知らせるは「伝える」「告げる」って意味で、要するに「運命の予報」をあなたに知らせるよ、という意味だ。このタイトルはゲームの序章に出てくる学園の噂、赤い糸メールを表している。
主人公はこれ以上ないくらい普通の高校生(当たり前だけど)。で、主人公の通う学校にはこんな噂がある。赤いメールというアドレスにメールを送ると、そのメールが自動的に「運命の赤い糸で結ばれた相手」の携帯に転送される、というものだ。主人公の学校には生徒会みたいな管理部門があって「執行部」と呼ばれている。執行部は女の子ばかりで、部長の夏帆のもとに「執行部」にこの赤い糸メール、つまり赤い糸メールの噂が本当かどうか確認してほしいという依頼が来る。

実は執行部の連中は誰も信じていなかった。でも女の子ばかりで、女性はこういう噂に弱い。部長はせっかく依頼を受けたんだから、みんなでこの「赤い糸メール」アドレスにメールを送ってみようと言い出す。そしてメールを送ると、主人公のもとに四通のメールが届く。全部執行部からだ。主人公の妹「御法光」も執行部にいて連絡先に入っているからこのアドレスに気づいたけど、他の子はよく知らない。主人公も何が何だか分からず妹に聞く。妹を通じて、執行部の面々は自分たちがテストで送った「赤い糸メール」が全員主人公に届いていたことを知る。
少女たちは口々に「赤い糸メールの噂ってやっぱり馬鹿げてるよねwww 全員の赤い糸が一人に繋がるわけないじゃん、ありえねーよ」と笑う。
それからすぐ、学校の執行部が新入部員を募集し始める。主人公が学校で唯一気軽に話せる相手、早蕨林檎が「執行部に入ってみたら?」とけしかけてくる。

主人公はずっと自分を消極的だと思っていて、もっと学校でうまくやっていきたい、友達を作って人脈を広げたいとも思っていた。だから唯一の友達である林檎の勧めに従って、執行部に入りたいと申し出る。行ってみると執行部の部長も部員も知っている顔ばかり。部長の夏帆は子供の頃一緒に遊んだ相手で、副部長の観月も夏帆の友達で主人公も知っている。あとは自分の妹と、学校で成績優秀な有名人の夕紀。執行部の女の子たちの話し合いでは、妹はあれこれ反対したけど、部長に「部に男手が一人もいないのは困る」という理由で結局入部を誘われる。

主人公も入部には迷った。気まずいからだ。子供の頃、この部長の夏帆に告白して玉砕したことがある。何年経っても主人公はどこかで割り切れていない。でも相手に断られた以上、もう何も言えず、ただ普通の友達として付き合っている。
さっき書いた妹が入部に反対して邪魔したのには理由がある。実は彼女はもうあの「赤い糸メール」の伝説を少し信じ始めていたのだ。
まず妹は主人公本身に強い依存心を持っている。子供の頃、兄がいつも自分を守ってくれたから、大きくなるにつれてその依存が恋愛に変わっていった。でもずっと隠して言わなかった。あるとき二人は事故でうっかりキスしてしまい、妹は特別な感情を抱くようになる。そこにあの「赤い糸メール」の件が重なり、妹はこれも運命の仕業だと信じ始める。そして大胆になって、兄に自分の気持ちを伝えようと決意する。

そこから話のテンポが面白くなってくる。妹がやたらと主人公にまとわりつく。主人公はちょっとまずいと思うけど、妹はいつも「どうせ家族なんだし、私はお兄ちゃんが好きなだけ」と言ってごまかす。主人公も何も言い返せない。
主人公は周りに悩みを打ち明ける。
「最近さ……妹がちょっと可愛すぎるんだよ」

「それがどうしたの? 妹が可愛いのはいいことじゃん」
逆に林檎に相談すると、林檎は容赦なく言う。
「もしかしたら妹に惚れられてるんじゃない? だったら堂々と妹萌えすればいいじゃん」
「まさか……」
「なんで? お前が好きなら応えてやるのもいいんじゃね?」
主人公が本気で妹との関係を考え始めた頃、妹はますます大胆に、積極的になっていき、主人公はもう陥落寸前。そこへ一人の人物が現れる。学校に一切来ない、退学寸前の先輩、帚木景色が主人公の前に現れて言う。
「妹のことで悩んでるのは知ってる。妹がどう思ってるかも知ってる。そして……お前がどう思ってるかもな」
帚木景色も主人公の幼馴染みだった。子供の頃から色々なことを教えてくれた。夏帆が主人公を好きだってことも、早く告白しろってことも。その結果は失敗だったけど。
主人公は景色のことを半信半疑で見る。でも景色の次の言葉は主人公の心にストレートに刺さった。
「妹が可愛くなってきたのは分かってる。それが妹を好きになる始まりなのか? 禁忌の恋、最高じゃね?」

「でも考えてみろよ。妹の恋は本当に恋なのか? お前と兄妹として長い時間を過ごさなかったら、お前を好きになったか? お前自身、妹の感情は恋じゃなくて兄妹の情だと思ってるんじゃないか。そしてお前の感情も、本当に女の子としての恋から来てるのか? 妹だからそうしてるんじゃないのか?」
主人公は迷う。
「結局な、お前らはちょっと仲の良い兄妹なだけなんだよ。お前は妹のことが好きなんじゃなくて、ただ妹として見てるだけなんだ」
そしてついに、ある日妹が主人公に告白する……
主人公は選択を迫られる。妹の恋を受け入れるのか。迷いに迷う中、頭の中に「景色」という先輩の声がずっと響く。
「お前は妹として見てるだけだ。好きじゃないんだ」
結局主人公は妹を断る。妹は自分が兄を陥落させられると思っていた矢先、兄に振られてしまう。

振られた妹は自分の恋愛感情をしまい込み、普通の妹として振る舞うことを選ぶ。そして次に恋に落ちたのは、執行部の学園の人気者、梅枝夕紀だった。
梅枝夕紀は学校のテニス部のエース(ごめん、今テニス部って聞くと乱交部を思い出すんだ)。学校で成績優秀な良い子で、誰にでも優しく、誰からも嫌われない。日本語に「八方美人」という言葉があるが、要するに八方美人ってやつで、この夕紀という女の子の処世術をよく表している。
でも彼女を快く思わない人間もいる。主人公が唯一気楽に話せる女の子、林檎だ。
林檎と夕紀は学校で両極端。林檎は毒舌で空気を読まないことで「最低な生徒」の一人と公然と評され、夕紀は誰からも愛されている。

林檎は主人公との会話で、夕紀は人によって言うことを変えるし、自分の意見がなくて他人の選択に盲従して「誰からも好かれる良い人」を演じている、と漏らす。夕紀も夕紀で、林檎は意地悪で毒舌でろくでもない奴だと思っていて、主人公に「あの子から離れた方がいい」と暗に示す。
すべては主人公がテニス部の試合に出始めたことから動き出す。試合に出るにつれて、主人公と夕紀はどんどん会話するようになる。夕紀は有名人だから、いわゆる女友達や親友もたくさんいる。ある人が夕紀に「男主人もいい人だし、付き合ってみたら?」と勧める。夕紀自身もそう思うようになり、女友達と一緒にどうやって主人公に告白するか計画を練り始める。

夕紀のテニスの試合はほぼ無敗。実力も高く自信満々。告白にも自信があった。自分は人気者で学校の有名人、好きな人は列をなすほどいる。主人公を落とすなんて簡単……。でも夕紀が唯一気に入らないのは、主人公のそばに林檎がいること。主人公と付き合うということは、間接的にこの評判最悪の林檎と付き合うことになる。だから夕紀は会話の中で、自分のために林檎から離れてほしいと主人公に言う。主人公は受け入れられない。林檎はいい奴で、言い方がストレートなだけで悪いところはない。夕紀と知り合ったからといって林檎を遠ざける理由はない。

林檎は「私には関係ない。遠ざけたいなら遠ざければいいし、そうでないならしなければいい。自分で決めろ」と主人公に言う。
そして夕紀の告白計画。放課後の教室で主人公に告白する。主人公は少し突然だと思ったが、それでも心を動かされる。夕紀は今すぐの返事は望まず、明日、テニス大会の決勝が終わった後に聞かせてほしいと言う。

主人公が教室を出ると、廊下で女の子たちの話し声が聞こえる。
「どうだった? 私たちが夕紀に組んだ告白、うまくいった?」
「絶対成功するよ。予想通りスムーズだった。夕紀ちゃんを断れる人なんていないんだから」
そこへ、あの景色先輩がまた主人公の前に現れる。
「おやおや、意外な場面を見てしまったな。教室での告白、感動的だったよ」

主人公は景色という奴を内心うっとうしく思うが、仕方ない。彼の言うことには一理ある気がする。
「夕紀の告白、どう思う? お前、彼女が本当にお前を好きだと思うか……お前、断るつもりなんじゃないのか」
主人公は一瞬固まる。

「夕紀って奴はな、人によって見方が違う。でも総合すると全部いい印象なんだ。でもおかしいだろ? 同じ人間なのに、相手によって印象が全く違うんだぜ。ある人はおとなしいと言い、ある人は活発と言い、ある人はよく笑うと言い、ある人は憂鬱だと言う。おかしいだろ?」
景色はまた演説を始める。
「夕紀って奴はな、あちこち偽装だらけだ。さっきも見ただろ。お前への告白は、実は誰かが裏で指図してアイデアを出してる。告白にまで他人の知恵を借りるなんて、それが真心の告白か? だからな……三次元のいわゆる告白は、吐き気がするんだよ」
「彼女は自分が学校の人気者で全て順調だと思ってる。誰もが夕紀がお前に告白したら、お前は絶対受け入れると思ってる。誰もがそう言う。これじゃお前の意見は完全に無視だ。お前は夕紀という人間を本当に理解してるのか? 本当に好きなのか? 本当に彼女がお前を好きだと思うのか?」

主人公は黙り込む。景色の言う通り、夕紀という人間をよく知らない。学校の有名人で、女神級の存在だから、女神が突然告白してきたら、普通の男は断りにくい。
翌日、夕紀はテニスの試合に出る。自信満々だった彼女は、最後になんと負けてしまう。

主人公は試合を全部見ていた。相手は周到に準備していて、夕紀に体力がないことを知り、試合時間を引き延ばし、夕紀の体力切れを利用して勝利する。
試合後、夕紀はとても悲しんでいた。自分が負けるなんて信じられない。今まで負けたことがないから。

でも主人公は夕紀の敗北を通して、逆に本当の夕紀を見つける。
この世界には完璧に見える人がいる。完璧すぎて信じられないくらいの人が。でもその人が失敗するのを見て初めて、ああこの人も普通の人間なんだと分かる。主人公は夕紀が「女神」のオーラから抜け出して、少し身近に感じ始める。

夕紀の当初の計画は、テニスの試合で優勝してから主人公の告白を受けるというもの。最初はパーになったが、二つ目はまだ望みがある。彼女は主人公の返事を待つ。
ところが主人公は言う。「俺は試合中の夕紀が好きだ。負けても、すごくリアルに感じられた」そして話を変えて、「ごめん、告白は受け入れられない。君のことをよく知らないし、君が本当に俺を好きなのかも分からない」
夕紀は試合の敗北と告白の失敗のダブルパンチで、完全に崩れ落ちる。自分が告白で失敗するなんて考えたこともなかった。自分は絶対に負けないと思っていた。
ベンチに座り呆然とする夕紀の目は虚ろで、突然泣き出した。そこへ電話が鳴る。「親友たち」からで、告白は成功したかと聞いてくる。

まだ泣いていた夕紀の表情と口が勝手に動き出す……
「あー、失敗しちゃった。仕方ないよね、私の魅力が足りなかったんだ。大丈夫大丈夫、失敗したら次頑張ればいいし……」
夕紀は驚く。心の中ではまだ悲しんでいるのに、なぜか条件反射のように電話に向かってそんなことを言ってしまう。

夕紀は気づく。自分はずっと他人の期待に生きる操り人形で、とっくに本当の自分を見失っていた。自分が本当に主人公を好きなのかも、やっぱり分からない。そして主人公が自分を断った理由も、まさにそれだった。
すべて見抜かれていた……
妹と夕紀の告白事件を経て、主人公は二人を断った。それからしばらくして、執行部でこの二人と最低限の友人関係を築くのに時間がかかった。そこへ新しい問題が持ち上がる。
学校で学園祭が開かれ、執行部が出し物をすることになった。誰かが演劇をやろうと言い出す。
執行部の橋姫観月は小説を読むのが得意で、最終的に彼女が中心になって進めることになる。
主人公と橋姫観月は早くから知り合いだった。橋姫観月は部長の夏帆と仲が良く、もともとあまり話さない女の子だった。主人公が自分から話しかけて、次第に友達になった。橋姫観月には深刻なコミュニケーション障害があり、どう話せばいいか分からず、他人に恐れを抱いていて、そのせいでしばしば辛辣な言葉を口にしてしまう。
観月が自分で脚本を選んだ。恋愛小説だ。演劇の指導では、観月は各俳優に厳しく、多くの提案をし、言葉遣いがきつくなることがあって、一部の不満を買う。

彼らは陰で観月のことを言い始める。観月は女子グループでの評判も悪い。話がいつも辛辣なのに執行部の副部長になれるのは、部長の夏帆と友達だからじゃないかと疑う声も出る。
観月は普段誰に対しても上から目線で、偉そうにしている。主人公が「ツンデレ」と言っても認めない。実は観月は悪い人間じゃない。ただ人と話すのが苦手で、知らず知らずにハリネズミのように、自分を守るために言葉に棘を持たせ、他人から軽蔑されるとこっそり隅で縮まって泣く、可哀想な奴なのだ。

ついにある日、観月がいじめられる。理由は彼女が非常に失礼な口調で先輩と話したこと。侮辱にまで発展した可能性もある。執行部副部長として人を侮辱するのは謝罪が必要だ。観月は頑として謝らない。最後には主人公が立ち上がり、代わりに謝って場を収める。

観月は主人公に感謝する。というより、観月はずっと主人公に感謝していた。子供の頃から。子供の頃の観月はとても内向的で、夏帆以外に友達がいなかった。主人公が最初に自分から話しかけてくれた。三人はよく一緒に遊んだ。観月はもともと主人公に好意を持っていて、助けてもらってから好感度がさらに上がり、恋愛に変わっていく。

観月は主人公と演劇の打ち合わせを重ね、二人でいることが多くなる。観月は感情を表すのが苦手だが、主人公もなんとなく気づく。観月は自分のことが好きなのかもしれないと。
「まずいな……観月、お前に告白しそうだぞ」
ある日、あの景色先輩がまた現れる。
「実はお前、もう答えは出てるんじゃないか?」
「彼女が好きなのはお前じゃない。彼女の心には白馬の王子様がいる。ただお前がちょうどいいタイミングで現れて、自分がその王子様だと思い込んだだけだ。全部間違ってるんだよな」

この言葉は主人公の胸に突き刺さる。
主人公は思い出す。なぜ自分が観月に近づいたのか。それは夏帆に近づきたかったからだ。観月は夏帆の友達。夏帆の友達に近づくのは、女神の親友に近づくようなもので、女神と繋がるいい方法だった。
「だから最初からお前は彼女を騙してたんだろ? お前ってほんと最低だな、ははは」
景色先輩は主人公を嘲笑う。主人公は言い返せない。事実だから。
「なあ、観月に告白される前に、彼女の想いを断ち切ったほうがいいぞ。告白されてから断るほうが面倒だろ」
「どうやって?」
「観月は演劇やるんだろ? その演劇をぶち壊せばいい。学園祭でな」

………………
主人公は断る。観月が心血を注いだ演劇を壊すわけにはいかない。
しかし当日、やはりトラブルが起きる。主演の女優が突然病気になり、代役がいない。台詞を覚えているのは指導役の観月だけ。観月が急遽ヒロインの代役を務めることになる。
そこへ景色先輩が演劇の会場に現れる。主人公は警戒して何をしに来たのか聞く。
「別に、手伝いに呼ばれただけだよ。ほら、この舞台の階段の一部が弱くなってて、夜光の警告テープを貼りに来たんだ。ずれて貼ったら誰か落ちるだろ? この演劇、ぶち壊しだな」
景色先輩は含みのある言い方をする……
演劇が始まる。演劇の男主角は主人公。本来のヒロインも観月に変わっている。演劇の途中、男主角がヒロインの観月を見つめて告白する……

演技のはずなのに、観月は本気にしてしまう……演劇の途中で男主角の名前ではなく、主人公の名前を叫んでしまう。
主人公は慌てる。慌てて気持ちを落ち着けて演劇を続けようとするが、舞台脇の反射テープを忘れて、転落する。
演劇はやはりぶち壊しになった。
主人公が回復すると、観月が会いに来る。演劇がぶち壊しになったことに対して怒らず、むしろ主人公の怪我が治ったかを気遣う。
夕陽の下、観月は主人公にそれとなく告白する……ずっと前から主人公のことが気になっていた、これからも主人公と一緒にいたい、と言う。そして、演劇のあの脚本小説は、実は子供の頃に主人公が初めて観月に会ったとき、観月が主人公に勧めた小説なのだと。

主人公ははっきり言わなければならないと悟り、正直に話す……
「最初にお前に近づいたのは夏帆に近づくためだった。俺は当時夏帆が好きで、お前を騙したんだ」
観月は事実を受け入れられない……もともと自闭的だった彼女が、自分から近づいてきて守ってくれた男に出会い、その男が自分を利用していたと言うのだ。

観月の驚愕と狂乱を前に、主人公は自分が騙し屋のクズだと罵るしかない……

こうして主人公はまた一人の女の子を断る……
観月を断ったあと、主人公は子供の頃のことを思い出す。
子供の頃の主人公はかなり中二で、他人と関わろうとせず、ただ妹を守るだけだった。ある日、夏帆が主人公に出会う。
「出てけ、ここは俺の縄張りだ」主人公は夏帆に言う。
「どうしてそんなこと言うの! 私、誰にもそんなこと言われたことない!」夏帆は理解できない。
二人は殴り合いから始まって、やがて友達になる。
そしてすぐに、子供の頃の夏帆は主人公のいいところに気づく。妹を大切にし、友達を気遣い、とても誠実だ。
そこへ子供の頃の景色が現れる。景色と主人公は小さな頃から知り合いだった。
「なあ、夏帆がお前のこと好きだぜ」
景色が主人公に言う。
「は? 俺のこと好き?」
「そうだ。思うに、お前が告白したら絶対成功するぜ」
「なんで信じるんだよ」
「俺は運命予報士だからな。お前の未来の運命を予報できるんだ」
主人公は半信半疑。
そこで景色はある日、わざわざ主人公と夏帆の前で夏帆に聞く。「お前、こいつのこと好きなのか?」
夏帆はとても照れる……しかし景色は続ける。
「俺はこいつに言ったんだよ。お前に告白しろって。お前が告白したら……絶対受け入れるだろ」
夏帆は少し呆然とする。何が何だか分からない……
夏帆という女の子は恋愛に対してとても真剣だった。景色のこの言葉を聞いて、主人公が本当に自分のことが好きなのか疑い始める。
主人公は景色の言葉を信じて、夏帆に告白しに行く。

結果は即断られる。
夏帆は、自分は主人公のことが好きだけど、主人公は景色の言葉があったから告白しただけで、本当は自分のことが好きなわけではない、と思う。
こうして主人公の最初の恋は失敗に終わる。
回想が終わり、景色がまた現れる。
「三人の女の子を振ったな……」景色は笑う。「自分が一番好きなのはやっぱり夏帆だと思うか?」
「そこまで好きなら、もう一度告白すればいいじゃないか。夏帆は今でも君のことが好きだって、俺は確信してるよ」

「なんでそう言えるんだ?」
「夏帆は大人気者でさ、ずっと男から告白されてるのに全部断ってる。まるで恋愛を拒んでるみたいに、自分は恋愛しないままでいいって思ってるみたいに。明らかに心に忘れられない何かがあるんだよ。それがもしかしたら君なんじゃないか」
「行けよ、告白しろ。案外今度はうまくいくかもよ」
主人公は考えて、やっぱり夏帆を忘れられていないと気づき、再び告白を決意する……
………………
そしてまた秒でフラれる。
「俺のこと、嫌いなのか?」とフラれた後で主人公は聞く。
「ううん、嫌いとは言えない」
「なんで受け入れてくれないんだ」
「聞きたいのはこっちだよ……本当に私のこと好きなの?」
主人公は固まる。
「好きって言うけど、本当に好きなの? それとも私があなたを好きだと聞いたから、自分を好きな相手と付き合うのも悪くないって思って、受動的に……あなたも私を好きかもしれないっていう感覚が生まれただけなんじゃないの?」

主人公は呆然とする。夏帆がそんなに考えているとは思わなかった。考えてみれば、確かに自分が本当に夏帆を好きなのかはわからない……
フラれてまた落ち込む……ここに来て、主人公は三人の女の子を傷つけ、最後に告白した相手にも振られ、もうグチャグチャのドロドロだ。
そんな時、主人公は早蕨林檎に長いこと会っていないことを思い出す。聞いてみると、彼女はずっと前から学校に来ていないらしい。無性に会いたくなった。これまでずっと彼女が助言をくれていた。今は彼女しか救ってくれないかもしれない。

そしてある日、主人公は公園で早蕨林檎を捕まえ、彼女が景色と一緒にいるのを見つける。
「私と彼はね、親戚なんだ」と林檎は説明する。

「そうだよ、林檎ちゃんが面倒見てくれなかったら、学校に行ってないのに学校のことをこんなに知ってるわけないだろ」景色は偉そうに自慢げに言う。林檎が彼を睨んでいる。すごく嫌な目つきで。
最後に林檎は、もう学校には行きたくない、学校にいるみんなは自分のことが嫌いだから、と言う。主人公は林檎を心配するが、林檎は自分と主人公は友達ですらない、こんなバカなやつは構う気にもならないと、主人公を無理やり追い払う。
そのあと、林檎と景色が二人きりになる。
「あいつのこと、好きなんだろ?」景色が先に口を開く。「なんであんなバカなやつが好きなんだ。自分は弱いくせに、女が二人も寄ってくる。全くもってくだらない」
「あんた本当に歪んでるね……」林檎が言う。「ていうか、なんであいつの恋愛に何度も首を突っ込むんだ。あんたが何回恋をぶち壊したかわかってる?」

「理由なんてない。俺はこういう浅はかな恋愛が嫌いなんだ。恋愛ですらない」景色は正義面で。「強いて言うなら、俺も夏帆のことが好きなんだろうな。ただ夏帆は俺のことを嫌ってる。だから不純なやつが夏帆に近づこうとするのを見ると、当然説教したくなるんだ……それに俺は嘘なんて一つも言ってない。言ってることは全部事実だ」
どうやら景色は小さい頃からずっと主人公をそそのかして、あれこれさせていたらしい。主人公に主体性はなく、まるで操り人形のように。

林檎が立ち去ろうとすると、景色が呼び止める。「なんだ、あいつの手助けをするのか? 助けたら失恋するかもしれないぞ。お前の好きな男が他の女のところに走るんだ。こうしよう、俺とお前で手を組む。お前はあの男を手に入れ、俺は夏帆を手に入れる。どうだ?」
林檎は無視して去っていった。
その後、林檎は直接執行部にやって来て、主人公の目の前で過去を全部ぶちまけ、主人公を嘲笑する。度胸もない、大勢の女の子を騙して、最後には振られた、と。

一見すると問題を起こしているように見えるこの行動は、実は林檎の最後のアシストだった。こうしなければ主人公は諦めてしまう。こうすることでしか、主人公を夏帆と向き合う道に押し戻せない。
真相を知った執行部の面々は、主人公に対して憎たらしくもあり哀れにも思い、最後には励まされる。主人公も自分はやはり夏帆を愛していると確認し、再び告白することを決意する。夏帆に振られてももう一度告白する。子供の頃の夏帆への感情は不確かだったかもしれないが、もう大人になった。執行部に入ってからの数ヶ月で改めて生まれた感情なら、ちゃんと伝えられる。大事なのは夏帆に、これは自分自身の気持ちなんだと信じてもらうことだ。

告白の当日、景色先輩がまた現れる。しかし今回は違う。主人公はもう彼を相手にせず、邪魔するな、消えろと直接言い放つ。これは主人公が小さい頃から初めてこの男を拒否した瞬間だった。

景色は自分に勝ち目がないと悟り、逆ギレして「お前ほんと気持ち悪いな」と吐き捨てる。
そしてもちろん、主人公の再告白は成功し、夏帆と恋人になる。その過程も胸が熱くなるものだった。

物語の最後、夕日が沈む中、林檎と景色がまた言葉を交わす。
「なんでこんなことするの?」と林檎が問う。
「俺さ、小さい頃から運命の予報士になりたかったんだ。他人の運命を予報する。ちなみに学校の赤い糸メールの件も俺がやったことだ。男女の仲を自由に取り持って、一緒になるように誘導もできるし、一人ずつ引き裂くこともできる。これが運命を掌握する感覚だ。最高すぎる!」景色は陶酔して言う。

「今は? 失敗したの? あいつは自分の運命を取り戻したよ」
「かもしれないな。夏帆の件では失敗した……でも俺は諦めない」
林檎は考えた。自分もこの景色と本当によく似ている。彼は他人の運命を支配しようとし、自分は絶えず他人に助言を与えて、他人が自分の運命を掴むのを手助けするだけ。

その後は主人公がいちゃつくのを見せつけて終わり。二人の脇役の未来ははっきりしないが、主人公は幸せを手に入れた。

『運命予報をお知らせします』というゲームはどうだろう。実は伏線らしい伏線はない。唯一の鍵となる「赤い糸メール」の引き金もそこまで重要じゃない。最初から誰も信じていない。男主人公は一人、攻略可能ヒロインは四人。だが彼らは重点じゃない。このゲームが重点的に描く人物は二人。一人はサブヒロインの早蕨林檎、もう一人は大悪役の帚木景色。二人の脇役の方がこのゲームで一番成功しているキャラクターだというのは、面白い現象だ。

これは失敗ではなく、脚本家が意図してやったことだ。早蕨林檎が会話の中で繰り返し強調するように、「私は出番も多いしアシストも多いけど、私のルートはない。ただ女主人公じゃないってだけの理由で」。帚木景色の名言はもっと多い。彼の歪んだ発言の数々は、様々な陳腐な展開への軽蔑を繰り返し表現している。エロゲーを指して、こう言うのだ。「まず弱くて臆病で引っ込み思案な男主人公を造形して、長時間の水増しシナリオで成長を見せて、さらには女を何人も用意して言い寄らせる。これが王道展開だと。なんで女がそんなバカな男を好きになるのか、俺には理解できない」。帚木景色はかつて主人公を指さして言った。「お前がモテるわけないだろ。誰かに好かれるわけない。お前は主人公であるべきじゃない。俺こそが主人公なんだ」。今思えば、この二人の造形は確かに主人公待遇だ。ただ主人公の椅子に座っていないだけで。

ゲーム中では「本当の恋とは何か」というテーマが一度ならず議論される。帚木景色が主人公に語る会話はどれも噛みしめる価値がある。そして今のネット上にいる歪んだ人々の心理を代表している。妹の兄への恋心は兄妹の情でしかないと疑われる。学校の高嶺の花がぼんくら男に告白するのは、大抵女方が遊びたいだけ。自分の女神を攻略するために女の子を捕まえて偶然を装う。そんな男は多い。ある女が自分を好きだと思い込んで告白するのは、有名な「人生三大錯覚」の筆頭。
帚木景色はそうしたすべてを見通している。彼はずっと主人公に自分のネガティブな考えを注入し続ける。しかも直接的で、ほとんどが人間の醜さを利用して人と人との間の絶望感にさせる。衝撃的な扇動の前で、主人公は最初こそ信じないが、一度はその言葉を心に刻み込む。特定の状況に遭遇すると頭の中ですぐに思い出し、次第にまた信じるようになる。

「誰も運命なんて信じない。でも誰もが知らないうちに、俺が示した道を信じてる。そして気づかないうちに、俺が与えた運命を信じてしまう。俺は運命の予報士だ」。帚木景色はそういう、人を惑わすのが好きなやつだ。
しかもこいつはずっと「二次元至上」「三次元はゴミ」理論を唱え、最悪の心理で他人を推し量り、非難されると逆に嬉しくなる。自分はゴミにすぎない、お前が俺を非難するならお前もゴミと同じだと。

ある歪みの源の掲示板から出てきた歪んだオタクとそっくりじゃないか。
早蕨林檎は彼とは逆に、絶えず有益な助言を与え、他人に選ばせる。惑わすことはない。林檎がいなければ、主人公は最初から執行部に入らなかったかもしれない。後のあれこれも、幸せもなかったかもしれない。
こう見ると、このゲームはまるで天使と悪魔が二人で絶えず博弈し、主人公の運命を左右しているようだ。幸いなことに、最後は天使が勝った。

『運命予報をお知らせします』は前作『紙の上の魔法使い』と完全に似ているわけではない。このゲームは純粋にキャラクター造形と会話描写で勝負している。会話の文章はとてもうまく、時には詩のようで、時にはとても現実的だ。人物造形は生き生きしている。帚木景色は悪役だが、近年見た中で最も完成度の高い悪役だろう。どことなく『Batman』のJokerを思わせる。もちろん最も輝いているのは脇役だが、主人公の会話もそこまでひどくはない。ただシナリオには未熟な部分も多い。例えばヒロイン一人ひとりへの告白はやや唐突だし、告白後すぐに何事もなかったかのように振る舞うのも不自然だ。告白をもっと文芸的で暗喩的にするか、もっと深い理由を用意するか、同時に各ヒロインのルートを章立てで区別すれば、もっと良くなったはずだ。
もちろん脚本家もバカではない。本人も欠点に気づいているから、『紙の上の魔法使い』では魔法の本を破る設定や章立てを加えた。これらは改善であり、『運命予報をお知らせします』が悪くないとはいえ、『紙の上の魔法使い』より少し見劣りする理由でもある。何せこちらが前作だからだ。

しかもこの脚本家は特殊な趣味を持っている。『紙の上の魔法使い』のルートの流れと『運命予報をお知らせします』がまったく同じなのだ。ヒロインからの告白のたびに、その子を選べばその子のルートに分岐し、簡単にやって終わる。受け入れなければ次の章へ……そして両方に重要な共通点がある。最も完成度の高い真のヒロインが攻略不可なのだ。『紙の上の魔法使い』のかなたも、『運命予報をお知らせします』の早蕨林檎も。脚本家はこうすることでしか、より深い印象を与えられないと思っているのかもしれない。
ゲームの音楽も『紙の上の魔法使い』とスタイルはかなり近い。同じ人物ではないが、脚本家か誰かが関わっているのかは知らない。とにかく質は高い。覚えているメロディーも多い。ただこのゲームにはOSTがない。公式はOSTがあると言っておきながら、削除した……
CVも見どころだ。小倉結衣はともかく、唯香がこんな可愛い妹の声を出せるとは意外だった。彼女の最近の役はどれもバカみたいなアヒル声みたいなもので、聞くに堪えない……

このゲームに短所があるとすれば画風だ。絵師はTwitterで自分はエロ漫画を描いていると言っているが、その質は本当にひどい。横顔が別人になっていることが多く、崩壊しまくり。まともに見られるのはHCGくらい。さすがエロ漫画家出身だけある。幸い後の『紙の上の魔法使い』では桐葉大師を起用し、華やかな画風と合わせてこの脚本家の偉大な物語を救った。

よく考えれば、『紙の上の魔法使い』の会社はウグイスカグラで、『運命予報をお知らせします』の会社はヨナキウグイス……別会社のようで、実は同じ。Twitterを見ればわかる……
ヨナキウグイスの最後の更新情報はウグイスカグラを指している。

しかもこの二社はほとんど同じ欠点を持っている。Twitterの更新が極端に少なく、特典も少ない。一番の問題は、両方ともOSTをくれないことだ。あれだけいい音楽なのにOSTをくれないなんて、死ぬのか!! 『運命予報をお知らせします』は本来くれるはずのOSTを削除してOPディスクだけ渡し、『紙の上の魔法使い』に至ってはOPすらくれない。
最後に良い知らせ。『運命予報をお知らせします』と『紙の上の魔法使い』の制作会社の新作が、もうすぐ来るかもしれない。脚本家のルクルはすでにゲーム主題歌の録音が完了したと述べており、ほどなく発表されるだろう。以前ウグイスカグラのTwitterでも新作をちゃんと制作中とあった。


なら新作を楽しみに待つとしよう。なんだかもう脳死のファンになりそうだ。
ちなみに、この脚本家の物語が好きな理由がもう一つある。彼の語りのパターンも人物造形の方法も、自分の思考回路ととても近い。実は自分が「愛とは何か」的な物語を書いても、似たようなものになるだろうな……
最後にこのゲームを終えて、感慨深い。
ゲーム内では最後にポジティブな方向に戻り、運命は自分の手にあると教えてくれる。しかし自分が感じたのは、もっと悲哀だった。ゲーム内の大悪役・帚木景色が言うように、運命と言っても誰も信じない。でも誘導すれば、彼らは徐々に信じていく。もし運命が自分の望みと一致していれば、なおさら盲目的に信じる。
ゲーム序盤の赤い糸メールのように、もし自分がもともと好きな女の子から赤い糸メールが届いたら、自分に有利な運命を信じたくなるだろうか? それとも最初のように運命を拒否するだろうか?
誰もが運命は自分の手にあると言うが、本当に自分の運命を掴める人はほとんどいない。帚木景色の運命予報士という役割は、この弱点を利用して誰もを惑わす。
運命は大海の小舟のようなものだ。誰もが自分で進む方向を操れると言うが、最後には疲れて流れに身を任せる。
運命とはそういうものなのかもしれない。
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