『WORLD END ECONOMiCA』レビュー

WORLD END ECONOMiCA episode.01

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WORLD END ECONOMiCAは『狼と香辛料』の作者・支倉凍砂がシナリオを担当した電子小説(ギャルゲーと言ってもいい)だ。この作品はネット上でも活発らしく、Steamで配信されているだけでなく、Kickstartで各国語の翻訳を募っていたり、台湾市場向けに公式の中国語パッチまで出している。episode.01しかないとはいえ、金融と株に特化した物語で、シナリオライターが本物の作家なのだから、これは期待せずにはいられない。そういうわけでプレイ開始。

プレイ時間は長くはないが、短いとも言い切れない。ただ遊び終えてみて、この作品には問題がかなりあると感じた。

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まず絵柄

キャラクターデザインは上月一式。初耳だし、詳しい情報も見つからない。日本人らしいのだが、絵柄はまごうことなき欧米風。典型的な日系の絵柄といえば繊細な少女趣味だろう。ところがWORLD END ECONOMiCAでは、主人公からしてアメコミのようだし、何より本命のヒロインの絵がとにかくおかしい。物語の中でヒロインは感情を知らず、主人公を悪意たっぷりに睨みつけると何度も念を押される。だとしても、ヒロインを夜叉みたいに描くのはどうか。『桜吹雪』の夜叉でさえ限界だと思っていたのに、WORLD END ECONOMiCAのヒロインはさらにその上を行く……SteamストアのヒロインCGが唯一マトモに見える一枚で、それ以外の画面でも立ち絵でも、ヒロインは凶悪な顔をしている。おまけに後半のシナリオではヒロインが「美人」に見えると何度も言ってくる。こっちの目はどうやって信じろと。

ヒロインだけではない。第二ヒロインのリサも、まるで筋肉女だ。三笠みたいな話ではなく、欧米の屈強なおっさんみたいな体つきの筋肉女。第三ヒロインのアリスは、男の娘萌えに合わせるためか、わざと男の子のように描かれている。見た目もかなり変だが、よく見比べるとアリスの体のバランス自体はおかしくない。ただ、あれで可愛いと思わせるのは無理がある……

絵柄が欧米風なのは悪くない。問題は……せめてヒロインだけでもちゃんと描いてほしい。あのヒロインの顔は欧米風だろうが日本風だろうが、合格とは言えない。

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次にシステム

第一章に分岐がないからか、システムにはskipがない。言い訳にはなるかもしれないが、backlogがない言い訳には決してならない。それにこのゲームを遊んで、日本の典型的なギャルゲー制作システムの成熟度を思い知らされた。WORLD END ECONOMiCAではテキストボックスが巨大すぎて、立ち絵が下に寄りすぎている。そのせいで上半身の胸から上しか見えず、下は何も見えない。つまり会話相手の顔しか見えないわけで、こんな立ち絵に意味があるのか。おまけに意味不明なtitleボタン。あそこに置いてどうする。テキストボックス横の巨大な飾りも、画面を隠す以外の何の意味もない。細かい点だが、プレイの気分にかなり響く。

ただ多言語対応にはかなり力を入れていて、システムの多言語サポートはなかなか優秀だ。複数の言語パックを入れるとゲーム言語を選べる。とはいえ『片輪少女』も同じことをやっていたし、向こうはシステムもよほど充実している。おまけに向こうはオープンソースで無料だ……

最後にシナリオ

シナリオライターの名前目当てで来たと書いた。だからシステムと絵柄は我慢できる。だがシナリオで失望させられたら、このゲームには何も残らない。で、結果は……シナリオは正直、良いとは言えない。

舞台は未来の月。主人公は生粋の月出身者で、短期トレーダー。目標は大金を稼ぐこと。ヒロインは数学の天才だが、それ以外は何もわからない。そこで主人公がヒロインと組んで大金を稼ぐ物語……

金融ものとは言うが、正直に言えば最初の60%は金融と関係ない。途中で主人公のトレードを無理やり挟んで、これでも金融ものだと思い出させるだけだ。しかもその部分が冗長すぎる。ヒロインの登場や主人公とのいざこざは、回想シーンで十分だろう。なのに延々と本編で書かれるから、とにかく眠い。全三章構成だと知って、第一章がこう書かれる理由もわかった気がする。完全に前日譚だ。終盤、主人公が挑戦を受けて本格的に株を動かし始めると、シナリオは面白くなってくる。ただ株式の描写の大半は退屈で理想化されすぎていて、『シュタインズ・ゲート』や『ロボティクス・ノーツ』のように専門用語の解説を出してくれるわけでもない。だから話が頭に入ってこない。本当のクライマックスはバトンの登場だ。バトンの株式や金融への理解、そして主人公との会話は、このゲームで唯一、中身が濃い部分だ。勝負を決めるのは計算ではなく観察と人間性。実際、最後に主人公はまさにそこに負ける。

クライマックスは20分ほどで終わり、第一章もそこで終わる。結末は予想通りで、主人公は初戦に敗北し、ついでに脚もやられる。ただ脚の怪我は後の復讐の見せ場のための飾りで、大した意味はない。

シナリオ全体には満足できなかった。30分でまとめられる内容なのに、いらないところで時間を引き延ばしている。しかも悪趣味な売肉売萌(あの凶悪なSB立ち絵とセットで)まで詰め込まれている。11区がなぜスイッチを入れるような萌えモードにここまで夢中なのか、今もってわからない。理解できない。

『狼と香辛料』はちゃんと読んでいないが、このゲームを見る限り、支倉凍砂の金融への理解が確かなのはよくわかる。実際に面白いのは、月面金融街の通り名「シュレーディンガー通り」だ。こんな形で金融市場の移ろいやすさを表現している。

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ここまで書いてきたが、このゲームは遊ぶ価値があるのか。個人的には、支倉凍砂に本当に愛がないなら、あるいはSteamで0.99ドルまで値下げされないなら、買わないほうがいい。もちろん悪いところばかりでもない。音楽は『少女病』のチームが参加していて質はそこそこ。教団のOPとEDもなかなかのものだ。残念ながらどこで手に入るのかわからないが……

金融と絡めたいACG作品は多いが、そのほとんどが不自然だったり、ギャグになったりする。『魔王勇者』にしても、天国のCにしても、元祖の『狼と香辛料』にしても、結局は一群が狼女に向かって抜くだけだ。ACG作品が格を上げるには、まだまだ道は遠い……

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