『夏彩恋唄』レビュー
尿崩ジェットコースター
恥ずかしながら、自分ではそれなりにタフな人間だと思っているんだが、人生で初めてジェットコースターに乗ったのは4年前のことだ。
勤め先がタダで鄭州の「方特」とかいう遊園地に連れて行ってくれたので、そこで人生初のジェットコースターに乗った。
感想は……うまく言えないが、とにかく前立腺がえらく不快だった。
乗ったことあるやつなら分かるだろ、まずゆっくり上昇して、頂上に着いたら急降下、ぐるぐる回って最後に安定する。
乗った当時はまだダイエット前で、標準的なデブオタクだったから、降下の瞬間に前立腺にすごい違和感が走った。締め付けすぎなのか、それとも重力加速度のせいなのか分からんが、とにかく下半身にくるあの感覚。
そのなんとも言えない快感は妙にクセになるんだが、それ以上に不快で、瞬時にトイレに行きたい衝動に駆られた。
同じ感覚は海で小船に乗ったときにも味わった。船体が波に合わせて上がったり下がったりするたび、前立腺が誰かに掴まれたみたいに締まったり緩んだり……
幸いなことに、新世界の扉が開く寸前で船は岸に着いた。
上陸してまずトイレを探した。便器の前で初めて「尿崩」という言葉の意味を理解した。ああそうだ、ジェットコースターの後も同じ反応だった。
で、最近あるゲームでまた「尿崩」の感覚を味わうことになった。緑茶社の『夏彩恋唄』だ。
緑茶社のゲームは2本しか触ってない。前作の『はにかみclover』もそうだが、緑茶社の過去作、南十字星恋歌とか恋色空模様とかがすごいらしいと聞いていたので、まあ「シナリオを書くのが得意な」大手なんだろうと思っていた……

そしたら今年の『はにかみclover』が思いっきり顔面にクソをぶちまけてきやがった。しかもムカつくことに、このゲームは発売時期が良かったせいで2016年1月のエロゲー賞まで取ってる。まあ分からんでもない、あの月は他に名前の通ったゲームなんて一つもなかったからな……
そして今年、緑茶社がまた新作を出した。今回は「嘘から始まる恋」が売り文句で、タイトルもベタな『夏彩恋唄』。

正直なところ、このゲームは情報が最初に出たときから体験版が出たときまで、全然面白そうだと思わなかった。設定はベタ、CVもベタ、何もかもベタ。緑茶社の宣伝もそんなに力が入ってない感じで、適当にツイートして放り投げただけって雰囲気だった。体験版を実際に触ってみたら……
マジかよ、体験版のプレイ時間はだいたい20分くらい。信じてくれ、体験版をクリアしても、同じ時間じゃ京アニの1話すら見終わらないぞ……
だからこのゲームには期待もしてなかった。高森奈津美が出てるし、あさみほとり……あ、違う秋野花だ。まあ適当に見てみるか程度の気持ちだった。どうせこのゲームの話なんて、設定を見れば展開が分かる……
そう、設定を見れば展開が読める。ケツを突き出せば何が出てくるか分かるのと同じくらい分かる。

設定はこうだ。主人公は大所帯の一族の端っこの親戚の子。ある日、家族にしつこくお見合いを迫られているお嬢様に、偽の彼氏をやれと頼まれる。
そう、お嬢様が偽の彼氏を頼んでくる。家族のくだらない結婚催促とお見合いをかわすためだ。正月に実家帰ってタオバオで彼女をレンタルするのと大体同じノリ。
もちろん攻略対象はこのお嬢様だけじゃない。ブラコンの妹、幼馴染の巨乳お姉さん、そしてどこからともなく現れた、主人公の一族と約束があると自称する許嫁で巨乳の妹……
だが何と言っても、主人公はこのお嬢様と「偽の恋人」になる。他のヒロイン連中は完全にモブで空気だ……実際ゲームの出来もその通りだった。

共通ルートはものすごくお決まりだ。どのくらいお決まりかというと、台湾の学園アイドルドラマ見たことあるか? あの憎まれ口を叩き合うやつ。台湾のアイドルドラマは日本を真似た部分が強いが、この『夏彩恋唄』の掛け合いはむしろ台湾版に近い。お嬢様ヒロインの月夜野悠那はどこか斜に構えていて、反抗的で、口が悪くて、豪快。普通の男から見れば性格が悪くて教養ゼロって感じだ。もちろん主人公と偽の恋人になってからは、毎日のように口喧嘩が繰り広げられる……
ここがポイントだ。このゲームの醍醐味は、ヒロイン月夜野悠那と主人公の掛け合いにある。

下ネタあり、ツンデレあり、揚げ足取りあり、人身攻撃あり。でも妙に面白い。悠那のCV高森奈津美もなかなかで、お嬢様をうまく演じている……
その後の展開はケツの穴で考えても分かる。偽の恋人が本当になるんだ。過程もそんなに複雑じゃない。まず主人公の許嫁を自称する巨乳の婚約者が現れる。この婚約者は主人公にアプローチしてくるが、あいにく主人公は名目上お嬢様と付き合っている。しかし婚約者は鋭い第六感で、この二人が本当の恋人じゃないと見抜き、さらに圧をかけてくる……
そして一連のイベントを経て、お嬢様は妙に嫉妬を感じ、自分がいつの間にか主人公を好きになっていることに気づく。
あとは告白の準備……だが待て。さっき言った「尿崩」を覚えているか?
このゲームの話はベタだが、少なくとも日常の掛け合いと「お嬢様が自分は主人公を好きかもしれないと気づく」部分まではそれなりに形になっている。「ニセコイ」みたいなラブコメとして見れば悪くない。なのに、肝心の感情の転換点で……シナリオライターが…………

尿崩した!
そう、尿崩した。お嬢様は迅雷耳盗鈴のごとく、破竹の勢いで自分は主人公を好きになったと宣言し、そして速攻で告白する。
告白の後は高頻度のパコパコ、パコパコ、パコパコ、パコパコ、パコパコ。
そして他の連中もようやく二人が恋人らしくなったと気づき、祝福を送り、ゲーム終了……
この後半の衝撃はジェットコースターに乗ったのと本当に変わらない。違うのはトイレに行きたくならなかったことくらいか。水をあまり飲んでなかったからな。

このシナリオライターの頭の中がよく分からん。設定はベタでも、真面目に書き切ればそれなりに面白かったはずだ……それとも、告白間際まで書いたところで「あーやっと終わる、これでやっとパコパコ書ける」と安堵して筆を置き、大あくびして尻切れトンボにしたのか?
それともシナリオライター、給料を踏み倒されたのか?
そういえばこのゲーム、もう一つクソみたいな仕掛けがある。アニメの演出を真似したくて、毎話OPを流すんだ。だがこの演出がクソすぎて、真似も生硬。某魔法少女でも某あおかなでもない。ただ毎話の冒頭にOPを無理やり差し込むだけ。OPによってはスキップできるとヒントを出してくれるが、出さないOPもある。4回もOPを見た後、セーブデータを見て「第四話」と書いてあるのを見て、ようやく何でこんなにOPを見せられたのか理解した。しかもこのゲーム、EDすらない。曲はあの1曲だけ。よく「アニメ演出の模倣」なんて決断できたもんだ。

立ち絵はまあまあだが、CGは驚くほど少ない。HCGは足りてるが、このゲームHの密度が高すぎて、何が何だか分からん……
で、このゲームをどう評価するか? 総合的に見る必要がある。
まず制作費は間違いなく高くない。アニメ化演出を真似ても中途半端。シナリオは中盤から尿崩。ボリュームもそんなに長くない。EDすらないし、CGも驚くほど少ない……
しかもこのゲーム、初回販売に通常版がなく、特典付き版しかない。特典はエロ画像1枚、サイン入りカード1枚、それから特典HCGのDLC。しかもそのDLCはまだ配信されてない……
そんなゲームが9504円。通常版なし、この版だけ……何と言うか……もしこのゲームを買って家に帰ってこれを見たら、俺が言える言葉は一つだけだ。
ぼったくり!!!
だから日本人が怒って「このゲームは60点程度だ」と言うのも大体理解できる……

本来このゲームは救いようがあった。「ニセコイ」あたりのテンプレートに沿って書いても悪くなかったはずだ……純愛青春ラブコメとして見れば、無理やり持ち上げることもできた。なのに後半で尿崩しやがった。
後半の展開を「ジェットコースターみたいにスリリング」と形容するゲームは多いが、『夏彩恋唄』に関しては「尿崩ジェットコースター」並みのスリリングとしか言いようがない……
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