『一千字侦探』レビュー

一千字探偵

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物理の先生と和食を食べる約束をしていたのだが、車で店まで行ってみたらその和食屋は閉まっていた……

あの店の美団に載っている電話番号に繋がらなかった時点で気づくべきだった。判断ミスだ。それにしても、店が閉まっているのに美団ではまだクーポンが買えるらしい。美団の連中はホモ活動と自転車に忙しくて店の状況まで手が回らないのか、とツッコミたくなる。

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というわけで隣の火鍋屋に入ることにした。

火鍋をだいたい食べ終えたころ、物理の先生が自分の趣味の話を始めた。

「推理小説を読むのが好きなの」

「へえ」

「わりと高度な犯罪を扱った推理小説が好きなんだよね」

「へえ……」

「あなたも好きでしょ?」

「好きだよ。でも個人的には、人と人との心理を掘り下げるタイプの推理小説のほうが好みかな……」

「心理学?」

「まあそんな感じ。でもどちらかというと物語を読みたいだけで、人がどこまで追い詰められたら犯罪に手を染めるのか、そういうのを見るのが好きなんだよね」

「ふーん…………私はどっちかというと、化学とか物理とかを利用したハイテク犯罪を読むのが好き」

「めちゃくちゃマイナーな知識が出てきて、大半は聞いたこともないようなやつ?」

「そうそう、すごく知識が増えるんだよ。あれ、あなたも読んだことある? おすすめある?」

「純粋に文字だけの小説はあまり読まないんだよね(マジで)。このタイプで最近読んだのだと、『すべてがFになる』くらいかな」

「聞いたことないなあ……すべてが……Fに……なる」物理の先生はスマホで検索し始めた。「うわ、この本の紹介見た感じ、ヤバすぎでしょ……」

「そう? 俺は割と普通だと思ったけど」

「ほら、中にコンピュータと数学が出てくるって書いてあるじゃん、すごいよ……」

「実際に出てくる内容は大したことないよ。ただの会話がちょっとあるだけで、話そのものは……まあ、悪くない。少なくとも読めなくはない」

「それはあなたが分かってるからでしょ。私はパソコン分からないから、すごくすごく見えるの。探偵小説って、登場人物がやたら物知りで、すごくすごく見えるものが多いじゃん」

「あれは探偵小説家の知識のひけらかしだよ。わざとマイナーな知識を入れて、深遠で測り知れない感じに見せているだけで、知識の部分を剥がしてしまえば、残るのは大したものじゃない。それか昔からあるパターンだ」

「昔からあるパターン?」

「ああ、正確に言えば、探偵推理小説のパターンはだいたい二つしかない」

「二つ?」

「一つは、探偵が犯人を前にして、経緯と真相を全部しゃべる」

「じゃあもう一つは?」

「もう一つは、犯人が探偵に推理の機会を与えず、いきなり探偵と戦闘を始める……」

「戦闘?」

「ここ数年のコナンの劇場版、観た?」

「あ……分かった……」物理の先生ははっとした顔をした。

「じゃああなたの話だと、ほとんど全部の探偵推理小説はこの二つのルートってこと?」

「そうだよ。俺はすべての小説を千字くらいに短縮することだってできる……」

「ほんとに?」

「ほんとに……」

「言ってみてよ……」

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「たとえば……小さな島とかマンションとか、そういう場所で事件が起きて、外に出る道も封鎖されて、その場に何人かいて、絶対に一人は犯人がいる。そして探偵が調査してから行動を起こす準備をする」

「うん……どんな行動?」

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「真相が分かったらしゃべるしかない。そこで探偵が皆を一か所に集めて、べらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらしゃべりまくる。次に容疑者がべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらと言い訳し、続けて探偵がべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらしゃべって証拠を出し、容疑者は最終的にべらべらべらと自白して、物語は終わる……」

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「じゃあもう一つは?」

「もう一つは、探偵が真相を見つけたとき、容疑者がナイフを持って探偵の命を奪いに来る。で、探偵もやられっぱなしじゃないと分かって、二人で取っ組み合いになって、ばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきばきと半日喧嘩して、最後に容疑者が探偵にばきばきばきばきばきばきばきにやられて、ついでにこいつが犯人だとバレて、物語は終わり」

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「退屈すぎる…………」

「何が退屈なもんか。探偵小説はあんたの言う知識のひけらかしを抜いたら、だいたいこんなもんだ……これが本質だ……俺は時々、千字でも多いって思うね」


ゲーム『1000文字探偵』紹介: http://www.freem.ne.jp/win/game/13618

ゲーム『1000文字探偵』体験版: https://zyx.fplay.xyz/play/display/13618/6e314005880e6ea7e8d3ee4d39128bd0

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