『甘夏アドゥレセンス』レビュー

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去年……いや、一昨年だったか、『天ノ空レトロスペクト』ってゲームをやったんだよ。実はあの時は結構いいと思ってた。後半は失速するし中盤はグダグダだけど、序盤の書き出しは良かったし、「無限猿定理」をうまく使った面白い設定もあったし、序章の場面転換なんかはちょっと映画っぽい雰囲気もあった。

でもこのゲーム、日本人にはどうもウケなかったらしい。ウケなかった理由は、俺が「俺は良いと思うけど日本人は見向きもしないゲーム」によくあるパターンとだいたい同じで、多くの日本人が「なんだこれ、世界が猿の作ったもんなわけあるか、猿がタイプライターでシェイクスピア全集を書けるわけあるか、天上の神様と猿が関係あるわけあるか、めちゃくちゃだ、低評価!」って言ってた。だから俺にはこのバカな小日本人どもが本当によくわからん。俺が「カナダガンの群れを飼って一緒に飛ぶ」ゲームを良いと思っても、彼らは「カナダガンを飼うのは犯罪だ」って低評価をつけるのと同じ理屈だ。「無限猿定理」によれば、猿がでたらめに作ったようなある可能性が世界に無限に存在し得る、という設定は受け入れられないのに、「世界が数万年滅亡する」みたいなもっとバカな設定は喜んで受け入れる。多くの日本人は『天ノ空レトロスペクト』を「電波ゲー」と叩くけど、俺から言わせりゃ先に「季節くるる」シリーズを電波ゲーって叩けよって話だ。さらに理解できないのは、後者の方が前者より中二も神経も20個くらい Chaos;child 分は上なのに、むしろ好評を得てることだ。『天ノ空レトロスペクト』は中二少年が書いた黒歴史小説みたいだって言う人もいるけど、もしこれが中二黒歴史小説なら、「季節くるる」シリーズは精神病院の便所紙にしかならない。

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今月、『甘夏アドゥレセンス』っていうゲームが発売された。設定を見た瞬間バンドものだとわかったから、すごく疑問だった。『けいおん!』ブームってもう何年も前に過ぎたのに、今さらこの設定を思い出すのか、バカじゃないの……。でも暇つぶしに評価を見てたら面白いものを見つけた。このゲームは新会社「コンフィチュールソフト」の作品で、この会社の第一作がこれ。だけどこの作品のスタッフ、原画も脚本も音楽も、とにかく全部が過去の『天ノ空レトロスペクト』と同じ面子だ。まるで連中が新しい外看板の会社を作って新作を始めたみたいに見える。さらに評価を読み進めるともっと面白いものがあった。日本人が直接叩いてて、「これってかつての地雷会社 GLace が売れないから名前を変えて人を騙すために作った新会社だろ」って。

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は? GLace が地雷会社? 言われてみれば確かに当たってる気もする。俺も GLace の「Timepiece Ensemble」をやったけど、あれはバカすぎて極致だった。でもよく考えるとおかしい。GLace は作品ごとに脚本家が違うんだから、どうして毎回地雷を書くのが得意な奴を連れてこれるんだよ……。一番悲惨なのは『1/2 Summer』ってゲームで、評価はまあまあなのに、これも GLace と同じ面子が作ってるのに Alcot の下に置かれてた。今は Alcot から GLace の下に戻ったけど、誰もこれを GLace の作品だとは思ってない。

で、今回の『甘夏アドゥレセンス』はどうなのか。地雷なのか。なかなか言いにくい……。

『甘夏アドゥレセンス』の設定は紹介を見る限り爆発的に単純で、青春を楽しむためにバンドをやる、ってだけ。パッと見は何の問題もないように思えるし、実際ゲームの序章も非常に単刀直入で、特に問題はない。ゲームの構造から見て、俺はこのゲームを三つに分けるべきだと思う。一つ目が序章、二つ目が本編、最後が個別ルートだ。

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ゲームの第一部はわりと面白い伝統的な部分。主人公は最初、学校の音楽部に所属していて、バンドを組んで演奏もしてる。最初の演奏で見せびらかすために火を吹くギターを使って、その火吹きギターで暴走して学校を燃やしてしまう。すぐ消し止めて被害は小さかったけど、学校は協議の結果、主人公たちの活動部を廃部にして他の部活、たとえば野球部や合唱部、科学部なんかに転属させることにした。この結果に部長のnatuと主人公たちは納得できず、生徒会長に頼み込んで学校に寛大な処置を取ってくれないかと掛け合うが、当然ダメ。

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活動部がなくなり、バンドの演奏場所もなくなった。そこでナツが自分の祖母の楽器店で演奏しようと提案する。おばあちゃんは「練習ならいいよ、ただし店を片付けな」と言う。またみんなで大忙し。いざ演奏の準備をすると人が足りない。ちょうど主人公の両親はロシアで出版ビジネスをしていて、ロシアから転校生のロシア娘が来て主人公の家にホームステイすることになる。ロシア娘は胸が大きくて音楽も好き。最初は主人公たちのバンドを見下すツンデレだったけど、最後は口撃で引き込まれて加入。最後には科学部の部長、ロリ科学者の天音もドラムが叩けるという理由で引き込む。

バンドのメンバーが揃っていよいよ始動。主人公たちはこのままじゃダメだ、大事なのは学校に活動部の復活を認めさせることだと思う。そこに最後のチャンスが来る。学校は、主人公たちの公演でチケットを完売させ、しかも効果が良ければ活動部の復活を認めると言う。

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結果はわかるだろ、もちろん成功して、主人公の活動部は復活した。

で、ゲームの第一部はここで終わり。ここまではわりと普通で、もう話は終わりだと思うかもしれない。nonono、甘い甘い、ここからが始まりだ。

第二部からゲームはファンタジー寄りになる。主人公の家にホームステイしているロシア娘が、ある日街で突然知り合いを見かける。これもロシアから来た人物。翌日その知り合いが突然主人公の学校に空降してきて、今日から自分が校長だと言う。主人公は困惑。聞いてみると、学校がロシアの某大財閥に買収されたので、新しく来たロシアの金髪女教師が新校長だという。

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校長は言う。この学校は今日から厳格に規律に従う、活動部なんて全部やめる。今日からグラウンドは赤の広場、毎日行進して社会主義科学価値観を積極的に暗唱し、厳格な規律を貫く。主人公たちはバカを見た気分。やっとバンドが動き出したのに、またダメになるのか。そこへさらに驚天動地の事実が待っていた。主人公の家にホームステイしているロシア娘は、なんとロシア大統領の娘だった。音楽が大好きだから日本に音楽を学びに来た(マジでどんな論理だよ)。さらに奇妙なのは、空降してきたロシア人女校長。ロシアから来た人がはるばる日本の学校に英語教師として赴任してきて、生徒を間違った方向に導かないかすらわからん。

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その後ゲームはさらに展開する。ここにはもっと大きな陰謀があった。この学校を買収したロシア財閥の裏にはロシア最大の反政府組織があり、空降してきた女教師は実はスパイで、今のロシア政府を倒すのが目的。同時に彼女はロシア大統領の娘が主人公の家に泊まっていることに気づき、主人公を脅す。おとなしく引き渡せ、従えば学校の活動部を返してやると。

最後はもちろん断固拒否。そこである賭けをする。次の何とか FES(まあ何かの大会だと思ってくれ)でいい成績を取れたら、この女スパイは今の所業を諦める、と。

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あとはもうめちゃくちゃ。主人公は偉大な口撃と演奏で女スパイを説得し、学校と活動部を守り抜く。

馬鹿げてるって? まだ終わらない。

次は第三部、個別ルートだ。俺は天音のルートをやったから、このルートを中心に話す。これもなかなか一筋縄ではいかない。天音は学校の科学部にいるロリ科学者で、毎日いろんな研究をしてる。主人公の火吹きギターも彼女が作ったものだ。個別ルートは非常に単純明快で、二回選べばいい。なぜか告白する。その後はわりと伝統的な恋愛展開。でも個別ルートの最後で、このゲームはまたファンタジーになる。

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主人公と天音が突然誘拐され、目を覚ますと周りはロシアの専門家だらけ。専門家たちは連れてきたのには理由があると言い、天音はすぐ理解して協力を表明する。主人公は困惑。ロシア人が説明する。天音は実はすごい天才科学者で、世界を滅ぼす力すら持っている。天音が協力すれば最高の研究環境と最高の研究設備を用意する、つまり金は問題じゃない、好きにやっていい、成果さえ出せばいい、と。

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天音は大喜びでやると言い、主人公は考え込む。そして主人公と天音が実験室で何発かやった後、賢者タイムで二人は考える。ここで研究すべきなのか。天音はここは環境が良すぎる、自分も研究に没頭して何も気にしなくていいと言う。でも主人公は「お前が本当に欲しいのはそれか? 俺が欲しいのか研究が欲しいのか?」と聞く。天音はそれを聞いて一瞬固まり、「じゃあ、やっぱりあなたがいい」と言う。

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そこで天音は専門家たちに研究をやめて彼氏とバンドをやると伝える。専門家たちは困惑しつつも理解を示す。天音が続ければ、すぐに世界を高速で滅ぼす黒科技を開発するかもしれず、その時世界は終わる。やらない方がいい、と。

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最後には、世界を滅ぼす力を持つ天才科学者が研究を捨て、日本の小さな村に戻って彼氏とバンドをやって同棲する。完……


正直に言って、このゲームは30%くらいまではまあまあだと思った。少なくとも今月前にやったいくつかのゲームより、日常会話がずっと面白い。キャラの個性もはっきりしてる。楽天家は楽天家らしく、腹黒は腹黒らしく、ツンデレはツンデレらしく、天然は天然らしく。30%までの演奏で活動部を取り戻す話も、ゲームの宣伝に確かに合ってる。青春だ、青春のために一度頑張るんだ、別にいい。

ただ、この30%以降の話は……何と言っていいか。正直に言うと、ずっと笑ってた。

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脚本家は最近ロシア関係の何かを見たのか? だからこんなにロシアをネタにしたがるのか? しかも脚本家のロシア認識はどうもソ連時代で止まってる。やたらゴルバチョフ的なものが出てくる。ゲーム内には大量のロシア語も出てくるが、このロシア語には翻訳がない。ロシア語がわかる人に聞いたら、中のロシア語はすごくアホな単語ばかり(ありがとう、知らない、ごめんなさい、はい)らしいけど、説明がないのは本当に気持ち悪い。ロシア語ってわかるだろ、俺なんかどう打つかもわからんし、調べようもない……。

ゲーム後半のファンタジー度はもう表現できない。時々『革命機ヴァルヴレイヴ』みたいなアニメを見てる気分になる。話は完全にでたらめだし、しかも真面目にでたらめをやってる。実はこれがギャグだと言われればそれもいい、パロディだ、銀魂を見習え、って思う。ただ、見た目は真面目に物語を語ろうとしてる。ゲームのBGMも、学校がロシアのスパイに支配されるとか言い出すと、突然母親が死んだみたいな曲に変わる。悲しみどころか喜劇しか感じない。しかもゲームは後半からほぼ完全に音楽と関係なくなってる。いや、むしろゲーム本来のテーマ設定と完全に無関係になってる。残るのはロシア、反政府組織、大陰謀、そして世界滅亡……。

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このゲームが地雷かと言われれば、そうでもないと思う。日常会話はやっぱり面白いし、キャラもよく描けてるし、BGMもいい。後半の雰囲気にすごく合ってる。

どんな雰囲気かって? ギャグの雰囲気だよ。このゲームは後半の無茶苦茶な展開と、その真面目にでたらめを言うシナリオ、そしてページをめくるより速く変わる音楽の切り替えが相まって、まさに盲亀浮木のようにギャグ映画のスタイルを作り出してる。俺はずっと笑ってた。チンポが硬くなるほど笑って、硬いまま笑って曲がった。俺は変わり者かもしれんが、ゲーム自体は物語として後半完全に制御不能になってる。青春だのバンドだの熱血だの、屁だ、ロシアの糞を食らえ!

もう一つの欠点は、音楽を看板にしたゲームなのに、ゲーム内の音楽内容について詳しい描写が全然ないこと。いや、まったくない。ゆずソフトの『サノバウィッチ』だってバンドやっててクソみたいな編集MVがあるのに、このゲームにはバンドの気合の入った演奏シーンすらない。元々はロシア反政府組織が日本に空降して学校を乗っ取り世界を滅ぼす話を書きたくて、急遽音楽と青春の設定を皮としてかぶせて急いで売り出したんじゃないかと疑う。

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もう一つすごく面白いのは、脚本が「おばあちゃん」という設定にほとんど狂信的な偏執を見せてること。前作『天ノ空レトロスペクト』には「折角」というおばあちゃんの設定があって、そのおばあちゃんは歴史学者で、世界が猿の定理みたいに作られた原因を発見し、神と対話もできる。このゲームにもおばあちゃんがいて、ナツの祖母、しかもロックなおばあちゃんで、すごくイケてる。最初は主人公を何度か助けてくれるけど、最後は病気で死んだような……死んだかどうかも忘れた。とにかく突然出てこなくなった……。脚本家が子供の頃おばあちゃんと暮らしてたからこんな奇妙な情結があるんじゃないか。

このゲームは日本人の間で極めて低い評価を得てるけど、俺は普通だと思う。後半のでたらめは十分に「出まかせ」と言えるし、メインストーリーは混乱し、前半と後半はまったく別のゲームだ。中には脚本家本人、えじむらを直接叩いて「あいつは大バカ、地雷専門、書くゲームは全部ゴミ」と言う人もいるけど、残念ながら次は Alcot のゲームを書くんだよな。

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ところで GLace って会社は Alcot と何か関係があるのか? これまでの作風やゲームの合作から見て、いつもそんな予感がする。二社には何か協力か他の関係があるんじゃないか。しかも GLace の叩かれてる「地雷作」の日常のレベルは Alcot 本体の日常レベルと同じくらいだ。まあただの推測だけど。

だから個人的には『甘夏アドゥレセンス』は地雷とは言えないと思う。でも後半のシナリオが制御不能になって暴走してるのも事実。多くの人にはプレイする必要もないだろう。CVは高森の演技もなかなかだし、ゲーム特典のキャラソンも数曲なかなかいい、ただフルバージョンじゃないのが惜しい。この気まずいゲームはまあこんなもんだろう。

ゲームの最後は何かを昇華しようとしてる。たとえばロリ科学者の天音の言葉。研究して世界を滅ぼすより、好きな人と一緒にいたい。好きな人こそ私の世界だ、と。

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ただ、この昇華がとにかく気まずい。ゲーム内でも他の人が言ってた。天音の努力は世界を変えられるかもしれない、その変え方は滅亡かもしれないし、もっと良いものかもしれない。それをこんな風に捨てて、主人公とロックをやるために帰る。しかもこのゲームはロックが何かについてほとんど語ってない。やたら「ロックしろ」と言うけど、ロックって何だよ……。

俺に言わせれば、脚本がもっと脳洞を広げて、天音に世界を滅ぼさせればよかった。某アニメのタイトルを真似て、『終末なにしてますか? 忙しいですか? ロックしていいですか?』って。

そうすれば本当に神作になったかもしれない(笑)

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