グリザイアの果実:おそらく神ゲー

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誰の心にも神ゲーがある。もちろん神ゲーなんて価値はない。一つは人が騒ぎすぎているから、もう一つは今後自分の神ゲーよりいい作品に出会わないとも限らないからだ。厳密に言えば、死ぬ直前まで自分の人生の神ゲーなんて確信できない。まあ俺は死ぬにはまだ早いので、ここで適当に喋るしかない。

『グリザイアの果実』をやる前、俺の中の神ゲーは『穢翼のユースティア』だった。シナリオの連続性と密度が一流だったからだ。まあ、ああいう架空の話は俺たちからはちょっと遠すぎるけど。

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『グリザイアの果実』はFrontwingの10周年記念作品で、かなり気合が入っているのが分かる。特にシナリオとスクリプト。この作品には短所があるかもしれないが、その短所ですら他の作品に持っていけば長所になるレベルだ。Frontwingの作品は少なくないようだが、漢化されているものはほぼない。たぶんこのブランドには厨がいないんだろう。もちろん『グリザイアの果実』は英化されていて、海外の掲示板にはかなり巨大なファングループがいる。俺だけでもRedditのAnime板でこのゲームの議論を何度も見た。

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アニメ放送が近いことを考慮して、以下はゲロ重ネタバレ。見たくないやつは閉じろ……

共通ルート

ゲームの設定は最初かなりありきたりに感じる。主人公の風見雄二が転校してきた学校には自分を含めてたった5人の生徒しかいない。そして「普通の学校生活」を体験したいと言う。そこで学校で小嶺幸、周防天音、榊由美子、松嶋みちる、入巣蒔菜、そして学園長の橘千鶴と出会う。こうして長い長い学園生活が始まる。

ゲームを始めた時点で、このゲームは各ヒロインに暗い過去があると聞いていた。だから共通ルートはあまり考えず、適当に流れるんだろうと思っていた。これが大間違いだった……共通ルートにこれほど力を入れるとは思わなかった。

共通ルートにはイベントが60近くある。各イベントは一つのシーンでの一連の会話で、長さは10分から30分ほど。これが何を意味するか分かるか? 共通ルートだけで短くて10時間、長ければ30時間だ。実際、俺は共通ルートを抜けるのに20時間近くかかった。でもこれは共通ルートが退屈で無意味というわけではない。共通ルートの用途は各ヒロインの性格を確立することにあり、これが後の個別ルートで重要になる。各ヒロインの性格にはそれぞれ奇妙な点がある。

委員長の小嶺幸は誰の頼みも断らず、頑固なまでに完璧にこなす。 天音は主人公に会うなりお姉さんのように優しく接し、常に自分から彼の彼女になろうとする。 由美子は常に人混みを避けていて、彼女の姿はほとんど見つからない。 松嶋みちるはIQ低めでどこでも弄られているが、ある瞬間にはひどく落ち込むようだ。 蒔菜は毒舌ロリで、家は金持ちらしいが自分の家庭のことを話したがらない。

とにかく誰もが多かれ少なかれ問題を抱えていて、その問題は長い共通ルートを経て個別ルートでしか解けない。

小嶺幸:両親を殺した罪悪感

小嶺幸のルートはゲーム全体を貫く。最初に彼女と接触した時から、その性格の問題は感じられる。彼女は従順すぎるのだ。何を言っても「嫌」とは言わず、あれこれ工夫して完璧にこなす。ほんの些細なことでも。たとえば松嶋みちるに「みちる様と呼べ」と頼まれれば、小嶺幸は最後までそうする。そして他人の頼みを果たした後、小嶺幸は疲れた顔ではなく、解放されたような満足そうな顔をする。

だから個別ルートの冒頭で、主人公も多くの人物も疑問に思う。「小嶺幸は約束を破ったことがあるのか?」と。

結論から言えば、ない。

そこで主人公の雄二は色々な人に聞いて回る。「誰かの頼みを全部、文句もなく完璧にこなして、しかもそれを楽しんでいて恨み言一つない人間がこの世にいるのか」と。

これは異常だ。雄二は小嶺幸に、誰かに頼みたいことはないのかと聞いてみる。彼女は常に人のために動き、自分のことは気にしたことがないからだ。何度か躊躇った後、小嶺幸は言う。

「雄二に褒めてほしいんです。それから頭を撫でてほしいんです」

雄二はその通りにし、なぜ小嶺幸がそんなことを頼むのか驚く。その後、好奇心に駆られて小嶺幸に少しでも自我を持たせようとする。小嶺幸に自分の彼女になれと要求すると、小嶺幸は即座に承諾した。雄二は驚き、困惑する。なぜなら、この子が自分の命令に逆らいたくないからなのか、それとも心から同意したのか、神のみぞ知るからだ。

その後ある時、雄二と小嶺幸は夜に「いつもの場所」で会う約束をする。小嶺幸は4時に来ると言うが、少し遅れるかもしれないとも言う。しかし一日一夜待っても、小嶺幸は失踪した。主人公は小嶺幸が住宅街の遊園地が好きだと言っていたのを思い出し、一か八かで探しに行くと、やはりそこに小嶺幸がいた。

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この時、雄二の疑惑は頂点に達する。彼はついに上司のところへ行き、小嶺幸の過去の記録と、この奇妙な学校に入った記録を手に入れる。そこには小嶺幸の黒歴史があった。

小嶺幸は子供の頃、品行方正で成績優秀な優等生で、自分にとても優しい両親がいた。彼女は両親と一緒にいるのが好きで、両親が自分を褒めて頭を撫でてくれるのを楽しみにしていた。自分も努力して、試験ではいつも一番だった。勉強のためではなく、両親に少しでも自分を見てほしくて、少しでも褒めてほしくて。しかし年齢とともに両親の仕事は忙しくなり、小嶺幸のいい成績も当たり前になって、だんだん子供の頃のように親しくなりなくなった。ある誕生日、小嶺幸は両親が帰ってきて一緒に食事するのを待ったが、両親は仕事に忙しくて相手にしない。最後に両親が謝ると、小嶺幸は怒った。

「プレゼントなんかいらない。家族一緒にカレーを食べたかっただけなのに!」

その後、小嶺幸は一方的に両親に捨てられたと思い込み、家を飛び出し、近くの遊園地で子供の頃の主人公、風見雄二と出会い、すぐに友達になる。そして毎日遊園地で会うと約束する。

「明日、いつもの場所でね!」これは小嶺幸が雄二に言った言葉だ。

ある日、雄二は小嶺幸にもう遊べないと告げる。

「どうして?」

「姉が死んで、家がバタバタしてて、引っ越すんだ」

「じゃあ明日もここで待ってるね」

「明日には引っ越してるかも。来るとは限らない」

「大丈夫、いつもの場所で待ってるから」

翌日はちょうど小嶺幸の誕生日だった。早朝、小嶺幸の両親は彼女にサプライズをすると言い、今後は仕事に忙しくして彼女をないがしろにしないとも言う。しかしこの時の小嶺幸はもう両親に捨てられたと思っていて、突然優しくしてくるのは偽りだと決めつけていた。

「どうして……どうして今になって急に優しくするの?」

わけもなく怒った小嶺幸は家を飛び出し、遊園地のいつもの場所に隠れて雄二を待つ。もちろん夕暮れになっても雄二は来なかった。

夕方、小嶺幸を一日中探していた両親がついにここを見つける。彼らが小嶺幸を見て駆け寄ろうとした時、酔っ払いの運転するトラックが突っ込み、両親を跳ね飛ばした。

結果は父親が即死、母親は植物状態。二人は小嶺幸の目の前に倒れた。

母親は最期に小嶺幸にこう言った。「幸、どうして……」

彼女は深い恐怖と自責に陥る。両親が仕事に忙しいのは知っていたし、自分がわがままを言うべきじゃないことも知っていた。ずっと両親の言うことを聞いてきた。でも誕生日の日にだけ、聞き分けがなくて両親に怒って飛び出してしまった。すべて自分のせいだと思った。そして母親の最期の「どうして……」という言葉が、自分の聞き分けのなさを責めているように聞こえた。毎晩小嶺幸は悪夢を見て、母親が「どうして」と言う夢を見た。

「幸、どうして言うことを聞かないの? どうして走り回るの? お父さんとお母さんがどれだけ苦労してあなたを探したか分かる? トラックに轢かれてどれだけ痛かったか分かる? あなたは本当にいい子じゃないね」

幸は病院に母親を見舞う勇気がなかった。見ればあの血みどろの光景を思い出すからだ。医学的診断はPTSD。この症状はA/Zにも出てきた。その後、小嶺幸は心に決める。自分は言うことを聞く人間になろう。言うことを聞く人間であれば、自分はいい子でいられる。

「いい子はみんな言うことを聞くの。私は言うことを聞いていれば、いい子でいられる……いい子でいれば、お母さん……許してくれるよね」

そして小嶺幸は本物の「言うことを聞くいい子」になった。学校では不良少女に利用され、学校中のガラスを拭けと言われれば従い、カンニングしろと言われれば従った。どんなことでも、他人に頼まれれば理由も聞かずにただ従った。最後に不良少女が「来週の全校試験、面倒くさいから中止にさせてよ」と言った。

小嶺幸はあれこれ考え、真夜中に学校に火を放った……誰かが止めても、彼女はそれをやめられなかった。他人の頼みを果たせなければ、もういい子でいられないかのように。

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学校が燃えれば試験も当然できない……そして小嶺幸も問題児として退学させられ、この奇妙な学校に送られた。

小嶺幸の過去を読み終えた雄二は、なぜ彼女の願いが頭を撫でて褒めてほしいだったのか分かる。彼女はずっと両親の死の影に生きていて、両親の死は自分が言うことを聞かなかったせいだと思い込んでいる。罪を償うために、何でも言うことを聞くいい子になって罪悪感を減らし、母親に会いに行く勇気もない。母親が自分を恨んでいると思っているからだ。

すべてを理解した雄二は小嶺幸を救うことを決意する。彼女を母親に会わせ、励まし、さらには学校を爆破までして、小嶺幸に「人の言いなりになるばかりではいけない、あなたにも守りたいものがある」と理解させる。物語の最後で、雄二は勇気を出して母親に会えた小嶺幸を子供の頃の家へ連れて行く。

その、彼女がその後一度も足を踏み入れなかった部屋には、子供の頃、誕生日の日に両親が用意しようとしていたサプライズがあった……丁寧に用意された誕生日プレゼントと、自分への激励の言葉が貼り尽くされた壁が。

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両親は自分を忘れていなかった。ただ、それらを保存することを選んだだけだった。両親が自分に残した誕生日の手紙を読み、小嶺幸は理解する。両親は自分のために、仕事まで辞め、機械も売り払い、ただ自分と一緒に楽しくカレーを食べたかっただけだと……

楽しくなるはずだった誕生日が、こんなことになってしまった。小嶺幸は泣いた。

最後は両親が小嶺幸に贈った誕生日プレゼント、オルゴールだ。

「幸が最近よく公園で雄二という男の子と遊んでいると聞きました。きっといい子なんでしょうね。将来あなたが彼と一緒になったら、このオルゴールを一緒に聴いてください。お母さんとお父さんもそうやって愛し合いました」

そしてEDが流れ、ルートは終わる。

正直、小嶺幸ルートはあらゆる面で完璧な描写だ。前後のつながりが密で、因果も完全に対応している。以前の小さなイベントの伏線もすべて回収されている。俺が見た中で最も完璧なルートと言える。物語の意味でも誰にでも身近だ。世の中に自分の子供を恨む親はいない。小嶺幸の子供の頃のあの誕生日は、もともと両親からのサプライズで、作業場にもお祝いの準備がしてあったのに、小嶺幸の一時の疑念とわがままのせいで両親は事故で死んだ。ずっと小嶺幸は両親が自分を愛していないと信じていた。あの日は自分にいい加減に応じたり、からかったりしたんだと。自分は両親を愛しているのに、わがままが原因で事件を起こした。自分は罪深い殺人者だ。10年近く、母親に責められる悪夢に囲まれていた。だから絶えず他人の命令に従い、いい子でいようとして、自我を失った……

物語全体はため息しか出ない悲劇だ……

周防天音:一人だけ生き残った罪

周防天音のルートはゲーム全体で大きな比重を占める。なぜなら主人公の風見雄二の姉、風見一姫の死に関わるからだ。このルートも入り方がよく分からない。最初から天音は主人公にべったりで、サービスカットをしたり、彼氏になってほしいと言ったり、断られると今度はしつこく彼の姉になろうとする。

ルートに入る選択肢は付き合いに同意する、ただそれだけ。付き合ってから二人は恥ずかしげもなく生活し、一日三回、あらゆる体位で。蒔菜が天音をビッチとツッコんでいたのも無理はない。そしてある時、地元の祭りに参加した後、雄二は天音についての噂を耳にする。

「周防天音って、こんなとこに来てたのか……」 「あははそうそう、あのゴキブリ女ねwww」 「ここの連中はあいつのこと知らないんだろうな。ゴキブリみたいなあのこと」

雄二は違和感と好奇心を覚え、周防天音が何かを隠していると気づく。その夜直接問い詰めると、天音は黙って日記帳を取り出す。日記を通して、雄二は天音の過去を暴く。

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周防天音はかつて雄二の姉、風間一姫と同じ学校にいた。ある時、学校のバスケ部が遠征合宿に向かう途中、車が人里離れた山奥で横転した。事故後生き残ったのは14人、その中に天音と風間一姫がいた。最終的に逃げ出せたのは天音一人だけだった。

山奥の周りは森で、携帯も圏外、外界と連絡が取れず、森が密すぎて出られない。協議の末、一同はその場で救援を待つことに決める。

最初の日々は耐え難いものだった。引率者が食料は三日しかもたないと言い、すぐに三日が過ぎた。救援はまだ来ない。食料が不足し始め、事故で負傷した者の傷口も膿み感染し始める。薬がないのでどうしようもない。

天音と風間一姫は二人一組で一つのテントに住んでいた。天音は一姫が物事に対して非常に高い先見性と強い知性を持っていることに気づく。天音が絶望していた時、一姫は言った。

「安心して、私たちは出られる。少なくとも、あなただけは生き残らせてみせる」

そして日々は過ぎていく。12日、13日。絶え間ない雨と食料不足に多くの人が耐えられなくなる。ある者はおかしなキノコを食べて精神異常をきたし、ある者は汚れた水を飲んで脳に虫がわき、ある者はもう動けなくなり、最初に負傷した数人はすでに死んでいた。

ある者が死んだ仲間の死体に向かって言う。「なあ……こいつも食っちまおうか?」

20日目、引率の教師は残念そうに、一人の生徒が自殺したと言う……そして午後、彼は何かの肉を持ってきて皆に食わせ、動物を捕まえたと言った。

「食べちゃダメ」と風間一姫は天音に告げる。

その夜、一姫は天音を連れて引率者を尾行し、森のすぐ近くで、引率者とセックスしている女子生徒を見る。そして地面に倒れている、自殺したはずの生徒。彼女の体の一部の肉はもうなかった。つまり午後に引率者が渡した肉は、この女子生徒の人間の肉だったのだ。

「あいつらはもう人間じゃない。獣だ」

天音は驚き、叫び声が「獣」たちを刺激する。人肉を食べない天音と一姫は異端とされ、囲まれ、獣たちは天音を殺し、天音の肉を食おうとする。

一姫は天音に先に逃げるよう言い、地図を渡し、自分には方法があると言う。

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天音は地図に従って手探りで進み、ついにあの森を抜け出す。その後警察がその場所を見つけた時、地面に残っていたのは死体の一部だけだった。風間一姫も死んだとされた。

あの事故で一人だけ生き残った天音は、あの獣たちと同じ、人を食う怪物とされた。ある者はゴキブリと呼び、ある者はゾンビと呼んだ。誰もが異様な目で彼女を見た。そして彼女自身も何度も、自分は生き残るべきじゃなかった、少なくとも生き残るべきは風間一姫だったと思うようになる。だからその弟、風見雄二に会ってから、自分から積極的に近づき、彼の姉の代わりに姉を失った弟を慰めようとした。

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天音はあの災難で唯一生き残った者であり、しかも風間一姫を犠牲にしたことで、一生罪悪感を抱えている。償いたい、早く誰かに罰してほしい、殺してほしい。だから主人公に近づき、風間雄二に許しを求めた。もちろん最後に主人公も彼女を許すが、主人公は自分と自分の姉を代表できるだけで、あの時犠牲になった他の13人を代表することはできない。周防天音は一生罪悪感の中で生きる。ゲームは最後に意図的に時間軸を引き延ばし、結婚まで、天音が老いるまで描く。天音はずっと死にたかったのに、彼女こそが最も長生きした。最後に、孫娘がすでに祖母になった天音に尋ねる。

「おばあちゃん、死ぬの怖い?」 「怖くないよ。むしろ、穏やかに死にたいと願ってる」 「どうして?」 「だって寂しいんだもの。天国でおばあちゃんの友達が待ってるからね」 「じゃあおばあちゃんに天国の切符を作ってあげる。そうすれば天国に行けるよ」

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天音の微笑みの中で、彼女はついにその一生を終える。

「ねえ、雄二、迎えに来たよ。また会ったら、前みたいに私の不器用さを責めてくれる?」

そしてEDが流れ、ゲームは終わる。

このルートは小嶺幸に次ぐ。主に回想パートの入り方が突然すぎると思うし、天音の性格造形も説明がつかない。回想の中の天音は純粋な少女で、今の天音はビッチ。どう見ても対応しない。しかし回想の20日間の遭難は確かに詳細に描かれていて、絶望感が伝わってくる。最後のボスはちょっと意味不明で、削っていい。そしてギャルゲーで男女双方が老いて死ぬまで時間軸を引き延ばすのを見たのは初めてだが、天音の過去には合っている。彼女には罪悪感があり、解放を望んでいる。

天音のED曲のタイトルはHome。これはおそらく、あの悪夢の20日間での天音の最大の願い、そして死んだ同級生たちの最大の願いを表している。

「家に帰りたい」。それは彼ら全員が一生で最も渇望したことだった。

松嶋みちる:失敗した天才と臆病な少女

松嶋みちるは共通ルートで一度だけ異常な様子を見せた。まず、海を見ている時の松嶋みちるは普段のおちゃらけた姿とは別人物のようだった。最初は二重人格かと思ったが、どうやらそうではないらしい。

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松嶋みちるの子供時代は悲惨だった。父親は子供に期待をかけるタイプで、彼女を天才にしたくて、大量の家庭教師をつけ、自分は最も優秀な教師だと自称した。

しかし誰もが天才ではない。松嶋みちるはすぐにそんなに多くの勉強をこなせなくなり、娘の学習が全く進まないことに父親は怒りを家庭教師に向ける。家庭教師の無能がすべての原因だと考えたのだ。

そして災難が松嶋みちるに降りかかる。

ある日、家庭教師が教えに来る。

「私に続けて言え、『私は大バカだ、何も覚えられない、私は間抜けだ』」

「…………」松嶋みちるはなぜ先生がそんなことをするのか分からない。その結果、平手打ちが一発。

「早く言え! お前の父親が、私が教えられないのは私の腕が悪いからだと言った、はは、どうやらお前が間抜けだからだろう!」

また平手打ち。

最後に何発も殴られた松嶋みちるは従うしかなかった。

「私は大バカだ、何も覚えられない、私は間抜けだ」

「そう、それでいいのよ、大間抜け。次に教えることをちゃんと覚えなさい。覚えられなければ丸暗記でもしなさい。私が教えられないなんて思うんじゃないよ!」

すぐに松嶋みちるをいじめることが家庭教師全員の必修科目になり、松嶋みちるの成績は当然上がらず、転落する一方だった。父親は彼女に完全に失望し、放任して構わなくなった。松嶋みちるは成績最下位と自暴自棄で友達もできず、自殺まで考える。自殺しようとした時、彼女はもう一人の自暴自棄な少女と出会う……

彼女はその少女とすぐに友達になったが、すぐに少女は自分を愛する男に出会った、その男と遠くへ行くと言う。

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一か月後、少女は戻ってきた。あの男は自分を愛していなかった、ただいじめていただけだと言う。それどころか多くの男を呼んで輪姦した……彼女は世界に完全に絶望した。

「さようなら」

松嶋みちるの唯一の友達は、彼女の目の前で飛び降り自殺した……

唯一の友達を失った松嶋みちるも絶望に陥り、ナイフを手に取り、自分の胸に突き刺した。

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もちろん彼女は死ななかった。松嶋みちるは心臓移植手術を受け、移植されたのは、別の難病の植物状態の少女の心臓だった。その少女はすでに生きる希望を捨て、死にたいと思っていた。すぐに松嶋みちるの体に二人の人格が現れる。一つは自分の、もう一つはあの少女の。もう一人の少女が現れている間、松嶋みちるには記憶がない。

松嶋みちるは自分の記憶喪失に気づく。もともと臆病で怖がりで、隠れて人に会わず、他人にもそっけなくして、絶望に陥り、生きていたくなくなった。

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最後はもちろん雄二が松嶋みちるを救う。救い方は簡単で、恋愛、デート。それでも松嶋みちるの不安は消えなかった。最後に雄二は極端なことをする。松嶋みちるを絞め殺すふりをして、彼女の葬儀まで開く。葬儀で松嶋みちるはルームメイトたちが自分のことを惜しんでいるのを聞き、自分の生存には意味があると気づき、最終的に生きることを選ぶ……

最後に松嶋みちるは体内のもう一人の自分と友達になり、もう一人の自分の母親に会いたいという願いも叶えて、まあハッピーエンドだ。

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全体的にシナリオは悪くないが、このルートは渡辺明夫の原画に台無しにされている。このルートは他よりほんの少しだけ短い。ほんの少しだけ。このルートは実は弱くないが、残念ながら周防天音や小嶺幸のルートと比べると短所になってしまう。正直、このルートのシナリオを適当な萌え作品に突っ込んでTRUE ENDにすれば、作品全体のレベルを押し上げられる。だがこれはグリザイアの果実だ。このルートは不自然な穴が多すぎる。

もう一つ、個人的に渡辺明夫のキャラデザと画風がとても苦手だ。血色が高すぎるし、松嶋みちるのルートはもっと可愛らしくあるべきなのに、渡辺明夫はいくつかのCGを妙に不気味に描き、キャラの顔も凶悪に描いて、ユーザーの印象、そして松嶋みちるへの印象を直接下げている。松嶋みちるは可愛くて臆病で、でも善良な弱い女子であるべきなのに、神原駿河の顔をした八九寺真宵みたいになってしまった。水橋さんが頑張っても、やっぱり浮いてしまう。

榊由美子:生まれたこと自体が罪

榊由美子の出生は悲劇だ。由美子の母親の家系企業が衰退し始め、最後には仕方なく、由美子の祖父母が彼女の母親と別の大企業の社長を政略結婚させた。そしてその社長、つまり由美子の父親は彼女の母親を好きではなく、むしろその男は感情を全く感じない冷血漢だった。すぐに由美子が生まれたが、女の子だった。由美子の父親は自分の後継ぎが男でなく、自分の産業を継げないのを見て、由美子と母親を一気に冷遇した。すぐに由美子の母親が病気になったが、その男は構わず、二人を家から追い出した。二人は実家に戻って療養するしかなく、由美子自身も実家から「男じゃない、役に立たない女だ」という理由で蔑まれた。

「もし……あなたが男の子だったらよかったのに。そうすればこんなことにならなかった」とベッドに横たわる母親が由美子に言った。

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由美子はこの時ようやく気づいた。自分がどれだけ努力して親を喜ばせようと、自分が女だからという理由で全てが無駄なのだと。彼女は正気を失ってカッターナイフを取り出し、自分の髪を切り落として男の子になろうとしたが、周囲の笑いものになった。

クラスでも誰もが彼女を嘲笑った。大金持ちの娘でありながら捨てられたお嬢様というだけで、何の罪もないのに噂され続けた。怒りで理性を失った由美子は、自分を見下す連中をカッターナイフで切りつけ始め、自身も問題児として見られるようになった。

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やがて由美子の母親は病状が回復し、由美子にも謝罪した。二人で仲良く家に帰ろうとした矢先、由美子の父親と愛人が男児をもうけたという知らせが届く。そして由美子の父親は、男児が生まれたその日に弁護士を母親のもとへ送り、離婚協議を始めたのだった。

この冷血な男のせいで由美子の母親は完全に精神を病み、二度と回復しなかった。

母親を失った由美子は完全に絶望した。しかしすぐに父親が自分を迎えに来た。家に連れ戻すだけでなく、美味しいものを食べさせ、以前は間違っていたと言うのだった。

由美子がこの父親を許しかけた時、この老いぼれが自分を引き取ったのは、愛人の子が死んだため、自分を政略結婚のようなことに利用しようとしているだけだと気づく。

由美子は父親の本質を見抜き、彼と縁を切った。すると父親は自ら学校を設立し、由美子をそこに監禁した。その学校こそ、雄二が入学した生徒わずか5人の学校だった。学校は由美子の父親の監視下にあり、だから由美子は他のクラスメートと付き合おうとしなかった。学校の目的を知っていたから、他の人を巻き込みたくなかったのだ。

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最初、主人公は由美子のボディガードとして彼女に接触するよう命じられた。もちろんこれは全て由美子の父親が仕組んだ芝居で、由美子に自分が危険だと知らせ、素直に従わせるためだった。後にこの芝居は主人公に見破られ、彼は本気で由美子を守り始める。8人を一人で相手にするなど、本物の戦いを始めたのだ。

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結末は、主人公が由美子を助ける決意をし、由美子を誘拐した飛行機から彼女を奪い返し、この檻から連れ出す。二人は遠くへ逃げる。もちろん事はそう順調には運ばない。あの老いぼれの手下は至る所にいる。一連の対抗の末、由美子はビジネス的手段で逆襲を果たし、父親を打ち負かして主人公と幸せに暮らした。

最後には由美子の父親は全てを失い、自分の過ちに気づく。自分も幼い頃から道具として育てられ、感情を知らなかった。今は分かったと言い、改心して娘との関係も徐々に修復されていく。由美子は最終的に雄二と結婚して子供を産み、全ては終わる。

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正直、このルートはプレイしていて少し焦っていた。日常パートの多くは飛ばした。もちろん重要な回想シーンは見た。後半はビジネス戦争の用語が多く出てきて、少し分からない部分もあったが、大意の理解には影響しなかった。

ゲームの最初に紹介される「生まれたこと自体が罪」の少女はずっと莳菜だと思っていたが、実際は由美子だった。このルートの筋は香港ドラマ……いや、大陸の時代劇に非常に似ている。男尊女卑とビジネス戦争が混ざった内容で、11区ではこれをギャルゲーに使う人は少ないだろう。それに脚本の強引な点もある。企業のリーダーが子供のいたずら一回で左右されるはずがない。あまりにテンプレすぎる。

由美子ルートはゲームのTRUE ENDとされているが、面白さは明らかに天音や小嶺幸のルートに劣る。未散ルートよりは少しマシな程度だ。アニメ化するなら、内容は豊富でカーチェイスや飛行機の追跡もあるが、最後はやはり脚本の強引さを指摘されるだろう。

入巣蒔菜:犠牲になった罪

莳菜は正直最初は好きじゃなかった。声優の声が聞き取りづらく、毒舌で腹黒いからだ。しかし彼女のルートは比較的理解しやすかった。

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まず、彼女はお嬢様だ。金持ちのお嬢様で、何でも700万円の小遣いをポンと出すお嬢様だ。莳菜は子供の頃、一族の神童で希望とされていた。だからこそ敵対勢力に狙われ、すぐにある日誘拐された。父親は助けるために巨額の財産を差し出したが、それでも無慈悲にも金が少ないという理由で綁匪に殺され、莳菜の目の前で殺された。

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監禁された莳菜は父の死体を目の前で7日間、腐るまで見せられた。その後ようやく救出された。以来、莳菜の精神は異常になり、父親が綁匪と妥協したこともあって一族の恥となった。当然、跡継ぎは莳菜の妹に移った。

しかしすぐに妹も標的になり、ある事件で爆弾に殺された。その頃、莳菜は正気を取り戻し、この5人の学園に通っていた。

すぐに莳菜の祖父が、莳菜を再び後継者にすると宣言した。

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そこで莳菜は再び標的となった。あらゆる暴力団や企業の敵がこの娘を狙った。しかし莳菜の母親はその状況を知りながら、何の行動も起こさなかった。

雄二が立ち上がり、莳菜を助けることを選ぶ。正確には、莳菜が最初に700万円で雄二を買い、「パパ」にしたのだ。雄二は莳菜の過去を知り、この少女が自分の過去とあまりに似ていることに気づき、自ら彼女を守ることを選んだ。

最後には、雄二の所属する傭兵団も莳菜暗殺の任務を受け、雄二が実行役に選ばれる。組織と莳菜の間で、雄二は組織を裏切り、莳菜を守る道を選ぶ。

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莳菜は暗殺の際に負傷した。死にはしなかったが、後継者になれなくなり、命だけは助かった。雄二はこれでは問題が解決しないと気づき、莳菜の母親に会いに行く。この冷血な女が裏で何かを企んでいることを知り、怒った雄二は彼女に銃口を向ける。

結局雄二は引き金を引かなかったが、それでも十分な威嚇となり、莳菜を一族から解放することに成功する。そして一緒にパン屋を開き、幸せな日々を送るのだった。

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正直、莳菜ルートはあまり深い感動はない。主に金持ちの財団内部の争いで、誰もがお嬢様というわけではないからだ。このルートの展開も起伏に富み、戦闘シーンも多くて主人公がとても男らしく見えるが、あまりに高級すぎて一般人の生活に密着しておらず、共感しにくい。最後のBad ENDは巨大な悪意だ。最初は正しい選択肢を選んだと思ったのに、最後に主人公が死体になり、莳菜が死体に向かって独り言を言う……

これがBad ENDのCGだ。ゲーム内ではハエの羽音も聞こえる。

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その他

キャラクターデザインは二人。一人は渡辺明夫、もう一人はFumio。前者は化物語で有名、後者は智代Afterで有名だ(だから風間一姫とそのバージョンの坂上智代が似ているのが分かる)。キャラデザにおいて、私は渡辺明夫の画風がとてもとてもとても好きではない。由美子はまだしも、松嶋みちるに関しては非常に奇妙に見える。多くの横顔が恐ろしく描かれていて、本来可愛く見せるべきところを顔芸にし、本来純粋さを表現すべきところを巨大な色気にしてしまう。Hシーンの描写では渡辺明夫は深崎暮人のスタイル(筋肉!筋肉!もっと筋肉!)に達しているが、非Hシーン、特に熟女以外のキャラクターを表現する時は確かに満足できない。それに比べてFumioのデザインは多様性があり、ロリでも御姉でも上手く表現できる。表情の細部も行き届いている。渡辺明夫の絵は独特のポーズが多い……化物語の阿良々木の立ち姿のような、戦場ヶ原の典型的な振り向きポーズがグリザイアの果実のCGにも見られる。まあ、好きな人もいるだろうが、私は好きじゃない。

音楽は大きな亮点はないが、悪くもない。ゲームの剧情に合っていて、美しい旋律もある。特筆すべきは各ルートに大物アーティストの独立EDがあること。個人的には小嶺幸と周防天音のEDが好きで、テーマに合っていて、何度も聴くと涙が出る。

褒めるべきは英語版の品質だ。どこが英語化したかは知らないが、言葉の選び方が本当に的確で、多くの用語も繊細だ。pantsをずっとunderwearと書き、toiletをずっとbathroomと書き、日本風をアメリカ風に変換している。時々、元々英語のゲームだったのではないかと疑うほどだ。英語の練習として読んでも価値がある。

アニメ化

アニメ化の知らせは興奮するものだ。自私に言えば、原作をプレイしたことでイキれる。もちろんそれ以上にアニメにサプライズがあるか見たい。作画監督とゲームOPのスタッフはほぼ同じで、グリザイアの果実のゲームOPは全アニメーション、作画監督も渡辺明夫だ。しかし公式サイトのキャラデザを見て、大きな不安がよぎった。

私は渡辺明夫のキャラデザにトラウマがある。具体的には『神のみぞ知るセカイ』のアニメだ。若木民喜自身はキャラを描く時、顔を丸く、目を大きく描くのが好きだ。長所は可愛く見えること、短所は色気がないこと。

そこで『神のみぞ知るセカイ』のアニメ化の際、若木民喜本人が渡辺明夫にキャラデザを依頼したと聞いた。結果はご覧の通り……

これが若木民喜版:

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これが渡辺先生のデザイン:

選択範囲_137.png 選択範囲_136.png

次に若木民喜の長瀬純: 選択範囲_142.png

そして渡辺先生: 選択範囲_140.png

女神編ではさらに狂っていた 選択範囲_141.png ロリが色っぽい女に~ 選択範囲_139.png

そこでアニメ化のキャラデザが公開された時、私はすぐに見に行った。

これがゲーム版のデザイン Grisaia.jpg これがアニメ版のデザイン 選択範囲_144.png この色気を増した独特の画風と顔を見て、嫌な予感が頭を覆った。

小さい口が上がり、頬が脂ぎり、口がV字になっている。このポーズはまだゲーム通りに描かれている。私は神に祈るしかない。松嶋みちるの顔芸を小嶺幸の顔に移さないでくれと……

誰の心にも神作がある。『グリザイアの果実』にはいくつか瑕疵があるかもしれないが、剧情の描写は完全に私の中の神作ランキングに値する。後に『グリザイアの迷宮』と『グリザイアの楽園』も出た。一つはファンディスク、一つは主人公の過去の歴史を語る。海外でも英語化が進んでいると聞くが、いつプレイできるかは分からない。

『グリザイアの果実』は剧情がとても長いが、時間があるなら、または英語を気にしないなら、プレイすることを勧める。10月のアニメが剧情をどう変えるか分からないし、顔も持つか分からないが、とにかく原作の方が安心だ。

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