『9-nine- ここのつここのかここのいろ』レビュー

ここから、ここまで、ここで終わり

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まずは作品を当ててみてくれ……

主人公はごく普通の平凡な高校生。ある日突然、自分の住む町に異変が起きて、奇妙な現象が発生する。そしてついに主人公は一人の少女と出会う。なんとその少女には超能力があって、しかも何かのために戦っているらしい。同じ頃、主人公は謎の生物とも出会う。生物はしゃべる。生物は主人公に言う、お前には巨大な潜在能力がある、と。だがその能力が何なのかはどうしても分からない。その生物に引っ張られる形で、主人公は超能力少女とチームを組んで町の奇妙な現象を調査し始める。やがて身近なクラスメイトたちも実は隠れ超能力者だと分かって……しかも彼女たちと衝突までしてしまう。調査が深まるにつれ、背後にいる黒幕がどんどん姿を現してくる……

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分かったか?

いや、むしろ…………

どの作品か分かったか?

この設定、もう使い古されすぎだろ、そう思うだろ? 11eyesだの、未来日記だの、魔法少女まどか☆マギカだの、あとは似たようなFateだの、どれもこれも同じパターンだろ!

主人公は永遠に高校生、主人公は永遠に体内にチートを抱えていて覚醒しない、主人公は永遠に他の能力者とバトルロワイアルを繰り広げ、しかもやりながら聖母ぶって他人を救ってハーレムを広げる。主人公忙しすぎるだろ! これって日本の一部の作家のテンプレートなのか? みんな暗黙の了解でこう書くことになってるのか?

そこにまた新たに、そう書いたゲームが誕生した。和泉つばすの新作、『9-nine- ここのつここのかここのいろ』である。

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このゲーム、最初の宣伝を見た時から驚いた。脚本がかずきふみで、この人が何を書いたかというと、去年書いたのが怪談『あけいろ怪奇譚』……女子中学生が教師にレイプされて絶望して飛び降り、悪鬼になるゲームだ。彼と和泉つばすの組み合わせはどうも違和感がある。そしてゲームの設定がすぐ出てきたが、案の定オカルトバトル系……まあ、こういうゲームは見た目が奇妙に感じるのは確かで、和泉つばすのゲームといえばずっと『純白交響曲』だの、『恋桜』だのという印象だったから、こういうバトル系をやるのは変だなあと思いつつ、新鮮でもあって、一体どんなもんか見てみたいという好奇心をそそられた……

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しかしこの気分が盛り上がった矢先に、制作サイドはすぐに一発殴ってくる……

ゲームは分巻販売……

ストーリー志向に見えるゲームを分巻で売るって、お前は涼香かよ? 涼香の分巻販売にも理屈はある。あっちはキャラ売りでストーリーはどうでもいいからな。でもこっちはストーリーが肝だろ! それを分巻で売るのか?

もちろんストーリー志向の分巻販売も不可能ではない。『時計仕掛けのレイライン』シリーズを思い出せば、実際分割しても結構イケてた……

そんな考えでゲームを始めた……

冒頭でツッコんだ通り、このゲームのパターンはあまりに露骨だ。主人公は最初から町で地震があって、町の神社の何かの聖物が壊れたと言う。同時に、主人公が学校で知り合った女子生徒・九條都が、町に異変を感じるから調査を始めると言う。ほどなく町で「石化殺人事件」が起きる。

公園で生き写しのような石像が見つかった。女子生徒の像だ。主人公は最初、どこの芸術家がそんなに凄いんだ、石像がこんなにリアルだなんて、と首をかしげる……

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しかしよく触ってみると、その石像の小指から血が流れ始めた……すぐに警察に通報した。

警察が来て調べたところ、石像の姿の少女は行方不明になっているという。そして九條都が大胆な推測を口にする……

「この女の子の石像……本人かもしれない。どこかの石像能力者に遭って、石像に変えられたんだ。」

わあ、すごいねえ。奇遇だな、俺もそう思ってたところだ。

その時突然学校が火事になり、主人公は九條都と一緒に見に行く。九條都は能力者が暴走していると言う。主人公が見ると、確かに男子生徒が全身から火を噴いている。九條都が手を伸ばして何とかいう術を放つと、男子生徒は昏倒し、火も消えた。

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後に九條都は主人公に説明する。自分は能力者で、能力の源はある「聖物」(たぶんそんな感じ、仮名が長すぎて覚える気もない)から来ていると。九條都の能力は「奪取」。他人の所有物の所有権を奪うことができ、他の能力者の能力も奪える。あの火もそうやって消したのだ。

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家に帰ると、部屋にぬいぐるみが増えていた。ぬいぐるみはしゃべり、自分は異世界から来たと語り、主人公と九條都たちに、この世界に散らばった「聖物」を回収してほしいと頼む。

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主人公が「聖物」って人に能力を与えるのかと聞くと、ぬいぐるみはそうだそうだと答える。君たちは能力者を見つけて、九條都の能力で彼らの聖物を奪い、このぬいぐるみに渡して回収すればいい。聖物は異世界のもので、本来ここに属するものではないからね、と。

主人公は聞く。この聖物はどうやって来たんだ?

ぬいぐるみが説明する。この前地震があっただろう、異世界とこの世界をつなぐ「門」が開いて、そこからこれらのものが散らばったんだ。だから回収して門を閉めなければならない、と。

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こうして主人公は九條都と共に他の能力者を探す旅に出る。まずはあの「石化殺人事件」の犯人だ。その間にも、石化能力者はまた一人殺している。

しかし探せど探せど、全然見つからない。その代わりに他の能力者が見つかる。主人公の妹、主人公自身、そして学校の先輩・香坂春風、さらに別の学校の、九條都のバイト先のパフェ屋によく来る結城希亜。中でも主人公の妹・新海天の能力は潜伏。先輩・香坂春風の能力は「魅惑」らしく、主人公を見るたびに魅惑してホテルに連れ込もうとするが、邪魔が入る。結城希亜は能力を明かさず、主人公たちと臨時でチームを組んでも、主人公たちに介入してほしくないと言い、自分の能力「The Order」は特別ヤバくて、簡単に人を殺せるんだと言う。

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一方、主人公の能力は主人公自身にも分からない。ぬいぐるみも主人公には強い能力があると言うが、何なのかは分からない。覚醒していないのかもしれない。

最後にストーリーは分岐する。1周目は強制的にバッドエンド。バッドエンドの原因は、主人公がぬいぐるみに、九條都が他人の能力の聖物を奪った後、その人はどうなるのかと聞いてしまうこと……

ぬいぐるみは言う。「聖物」は人そのものと強く結びついている。聖物を奪えば、その人は死ぬ……

つまり九條都はすでに男子生徒を一人間接的に殺してしまっていた。本人はまだ知らない。主人公も言わないつもりだ。

その後、主人公が九條都に結城希亜に対して潔白を証明してほしいと頼む場面があり、九條都に一時的に主人公の記憶を奪って読むように要求する。すると九條都は自分が人を殺した情報を読んでしまい……自責の念が極限に達して、チームを離脱。一人で石化能力者を探し、ついに見つけるが、その能力者との一騎打ちに敗れる。主人公が九條都を見つけた時には、彼女は石になっていた。死んでいた……

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もちろん2周目ならこのバッドエンドは変えられる。転換点は、主人公がぬいぐるみに能力を奪うと殺人になるのかを聞かないこと。そして後に記憶を読まれた時にも九條都はそのことを知らず、代わりに主人公が自分を好きだということだけを知る。

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なので2周目には九條都の恋愛ルートが付いてくる。恋愛部分は省いて、最後に石化能力者を追う話だけしよう。

石化能力者が持つ聖物は「魔眼」。主人公たちはついにチームで彼を見つけるが、見つけた時にはもう石人形が一つ残っているだけだった。石人形にはメモが残されていて、大体の意味は、自分の石化能力は恐ろしすぎて、いつか自分で制御できなくなるから自殺した……

ふざけんな、どう見ても嘘だろ! なのに主人公たちはあっさりこんな結末を受け入れてしまう……

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さんざんボスを追いかけて、見つけた時にはボスが自殺してた?

そしてゲームは? 終わりだ!

最後に一枚CGが表示され、金髪の人物が高台に立ってニヤニヤしているが、それで終わりだ!

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この第1巻、内容がバカすぎだろ? 何も説明してないじゃないか!

そこでこのゲームの当時の分巻説明を見に行ったら、見た後は余計に腹が立った。

「本作は分割販売で、各巻は一人のヒロインの独立した物語です。」

は? 独立した物語? じゃあ本筋はどこにあるんだ?

そこでゲーム内のあのぬいぐるみの言葉を思い出す。「どうやらこの分岐では九條都は死ななかったみたいだね、よかった。」そして主人公に、自分は実はたくさんの世界線の内容を見ることができると語り、もう一つの分岐で九條都がすでに死んだことも知っている……

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つまりこのゲームは設定上、延々とループして異なる分岐を見せる作品なのだろう。分割が「独立した物語」と言っている以上、次の作品でも同じ時間で、ヒロインだけが変わるという可能性も十分ある……

だから本筋はどこだ? どこかのバカな会社が最初に「1周目強制バッドエンド、その後何度もループさせて、いわゆる別ルートを味わわせる」というバカなパターンを始めたのかは知らないが、お前らは最初から最後まで一つの物語をきちんと語れないのか? ループしないと死ぬのか?

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だから『9-nine- ここのつここのかここのいろ』というゲームは、日常会話やギャグの質は高いのに、ストーリー主体の設定なのにバカな分巻のせいでほとんど何も説明されていない。作画はまあまあ、さすが和泉。CVの演技も悪くない、桐谷華が演じる妹は間違いなく見どころなのに、この巻では彼女の出番がほとんどない……音楽は極度に節約されていて、曲は数曲。HCGにはEmoteまで使っているが、ゲーム自体の酷さは隠せない。もしこれが単なる小品の抜きゲーで、涼香の作品みたいなものなら、こういうやり方でも何も言わない。

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でもこれは明らかにストーリー志向に見える作品なのに、こんな風に切り刻むのはさすがに言い訳が立たない。しかも比べると差が歴然で、比べてみて初めて、かつての時計仕掛けのレイライン三部作の分割がいかに優れていたか分かる。同じく分けて売るにしても、あちらの物語には少なくとも「続きは次回」という趣があった。このゲームはというと「続きは次回で適当に語る」に近い。最後にあの意味不明なイキりタイトル、ここのつここのかここのいろ。『ここからここまでここで終わり』(ここから始まってここで終わってこれでおしまい)とでも名付けたほうがよほどマシだ。

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ああそうだ、このゲームの見どころは原画以外にもう一つあって、主人公のCVが実は阿部敦の変名、つまり上条当麻を演じたあの人だ。ゲーム内のぬいぐるみ・ソフィーティアのCVは最初聞いた時から妙に思った、新井里美にそっくりすぎる。後でCV名を見ると荒井さん。どうやって調べるんだこの変名……

よく見ると、荒井さんの読みはあらいさん、漢字で書けば……新井さん。

つまりこのゲームは史上初めて上条当麻と白井黒子が同時に登場する18禁ゲームということになる。これも一つの売りと言えるのか? ああそうだ、このゲームはいつも死んだラシャスを思い出させる。バトル描写の多くに11eyesの既視感がある。特に主人公の能力が強大なのに覚醒しないという設定……

ぱれっとがこのままラシャスの後を追うのかは分からない。

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