『あなたに恋する恋愛ルセット』レビュー
Sugar Coma
先日ネットで、今のエロゲーの脚本でおすすめは誰か、みたいな話が上がっていて、そこでも案の定みんなが同じ名前を並べていた。虚淵とか、奈須とか、丸戸とか、そのへん。
正直に言うと、俺はこの連中の脚本がそんなに好きじゃない。むしろ、名前を見ただけで吐き気がするやつもいる。そのうえこの中には、もはや「エロゲー」の脚本に収まっていない人もいて、けっこうアニメ方面にも進出している。アニメのレベルで言えば、こいつらの腕はかなりひどい。俺の中の評価では岡田麿里にも劣る。
いや、むしろ岡田麿里はすでに優秀なアニメ脚本家だ。
俺は「脚本家」と「脚本」について、ずっと大事にしている持論がある。人に物語を聞かせる人間として、まず必要なのは「物語を語れる」ことだ。
「物語を語れる」とは何か。物語そのものが面白いかどうかは別にして、少なくとも自分の語る物語を、他人に聞かせる、あるいは読み進めさせることができる。これは実力で、基礎で、いちばん根本的な部分だ。
残念ながら、いわゆる ACG ファンに持ち上げられている脚本家の中には、そもそも物語を語れないやつがいる。つまらない設定の補足に溺れるか、自慰に耽るか、あるいは……一つのパターンの話しかできないか。
日本のものに触れていると、妙なことに気づく。多くの日本の作品は、永遠に一つのパターンで、作り手自身もそれが古い手だと分かっているのに、観客は永遠にそのパターンを食い続ける……永遠の魔王と勇者、永遠の王子と姫、永遠の仮面ライダー、永遠の正義の味方……永遠の幼馴染、永遠の登校時の曲がり角でのパン、永遠の転校生、永遠の異世界、永遠の魔法少女、永遠のアイドル、そして永遠の可愛い男の子。
要素だけなら別に少なくない。適当に組み合わせれば小さな新しさくらい出せると思うんだが、どうにもならない。日本人は買わない。彼らはパターンの物語のほうが好きで、設定がどれだけ斬新でも、展開はいつも通りで、最後にはパターンに戻ってくる。そうして初めて観客は「安心」するらしい。
ものすごく閉鎖的に見える。日本の民族文化と関係があるのか、ソニーが複数部門にいい素材を持ちながらいいスマホを作れないのと同じだ。
脚本のレベルで言えば、俺は個人的に「功成り名を遂げた」連中が好きじゃない。多くの成功者は、次の作品が完全にクソで、それでも有名人だから一群の人間が読み、読み終わったファンは過剰解釈までして自分の推し脚本を褒める。
そう、俺が言ってるのはクソ野郎の丸戸史明のことだ。
脚本家は物語を語れて、しかもいろんな物語を語れなければならない。一つの話しかできないのではダメで、多様性があり、脚本の何でも屋であること。それこそが優秀な脚本家で、そういう脚本家だけが本当に実力のある脚本家だ。
それでその議論の中で、俺は暇つぶしに一句挟んで、好きな脚本家を何人か挙げた。すぐに叩かれた。
俺の好きな脚本は廃萌だの、小学生レベルだの、脚本の腕が足りないだの。
納得いかない。どんな話なら腕が足りるんだ?超展開と伏線回収が必須か?ルクルが書いたのもそうだろう?結局そいつも小学生レベルだと噴かれ、超展開のために人物造形を捨て、自分の展開を便利にするために世界観を勝手に空虚にしている、と。
そう言うなら、虚淵の『魔法少女まどか☆マギカ』だって同じじゃないか……人物造形なんて一銭もないだろ……杏子なんて出てきて何話もしないうちに死んだし、造形はどこにあった。でもあの作品を最後まで観て面白くなかったとは言えないだろ?
多くの人は「有名な」脚本家に盲目的な愛着を持ち、新しい脚本家には盲目的な偏見を持つ。いちばん理解できないのは「廃萌」を書く脚本家、とくに女性脚本家を見下すことだ。女性脚本家の物語への差別は日本のオタクにもあって、前にいいと思ったゲームが日本のオタクにわけの分からない低評価を付けられたことがある。これも女性脚本家への差別なんだろうか。
実は女性脚本家のスタイルはとても穏やかで可愛い。彼女たちは主人公の造形に重点を置き、書く物語もそこまで「エロ」ではなく、甘さのほうが多い。
それに恋愛ゲームは必ずしも廃萌ゲーとは限らない……恋愛物語を甘く書くには相当な腕が必要なんだ。いい恋愛ゲームは、プレイ中に恋愛の感情を感じさせてくれる。そんなものは主人公が何度ループしようが、何度転生しようが、何度ボスを倒そうが、挙句ニュートンを犯そうが感じられるものじゃない。
たとえば、これから話すゲームだ。『あなたに恋する恋愛ルセット』
『あなたに恋する恋愛ルセット』というタイトル、中国語にすると「あなたと恋する恋愛レシピ」という意味になる。ルセットはフランス語の recette で、パンや菓子、デザートなどの作り方を指す。フランス語の recette は英語の recipe のことだと思うんだが、日本人がわざわざカタカナで区別しているだけだ。

ゲームの内容と設定はタイトル通り。菓子やデザート作りを主軸に、主人公が日本のとある「専門学校」に来る話だ。そこにはいろんな学科があり、デザート作りを主とする学科もある。甘いものが好きな主人公はその授業に参加する。同じく参加したのは四人の女の子。幼い頃から知る橘ののか、日本の伝統的なお菓子が得意な鍵由楓花、お菓子を作ったことはなくただ学びに来たお嬢様の大園柚姫、そしてこの学校の学院長の娘、白咲美絵瑠。
もちろんツッコむかもしれない。「ああ日本はいいなあ、デザートを専門に教える学校があるなんて。中国にはないのか。この設定、都合よすぎないか」と。
それは生活を見ていないだけだ。日本の「専門学校」は中国の「技校」で、菓子作りを学びたければいつでも藍翔に報告に行けばいい。菓子だけでなく、美容・理容、自動車整備、内装、電気溶接、アルゴン溶接もある。

こうして物語は、主人公が専門学校に入学して菓子作りを学び始めてから展開する。日常の展開は実に穏やかで、その穏やかさはゲーム中の菓子作りの描写の中にある。序盤は最初のデザートを作り、次に先生の課題デザート、そして期末試験のデザートテスト、続いて学園祭でクラス全体の合作デザート、最後にヒロイン個人ルートのデザート作り。
ゲームのデザート作りの描写はとても丁寧だ。俺もクッキーを作ったことがあるから分かる。主人公の最初のクッキー焼きから、後のシュークリーム作りまで、基本的に現実の作り方に沿って描写されている。脚本家が自分で作ったに違いない。でなければ書けない。そして菓子作りの描写と同時に、四人のヒロインの性格も形作られ、次第に各キャラが生きているように感じられる。

鍵由楓花は典型的な日本的な古典的雰囲気のお姉さんタイプ。美絵瑠は菓子作りの天才だが、毎日授業をサボって居眠りしている。大園柚姫はとても真剣に作りたいのだが、経験がなくていつも不器用に失敗する。かりん先生は自称男の娘だが、実際のところ本当かどうかは分からず、最後に否定しなかったのでたぶん本当だろう。頼りになるときもあれば、腹黒いときもある。そして橘ののかの立場は少し特殊で、菓子作りが非常に上手く、レベルは中上、わりと熱心で、いつも楽天的でニコニコしているように見えるが、実際にはその裏の性格がいちばん複雑だ。

ゲームの宣伝画像を見たことがあれば分かるかもしれない。橘ののかはゲームの本命ヒロインで、ゲームのメインストーリーは彼女を中心に書かれていると言っていい。
ゲーム中盤には回想シーンがあり、主人公がなぜ菓子作りが好きなのかを語る。
主人公は子供の頃ケーキが大好きだったがお金がなかった。ある日ついにお小遣いを手に入れ、町のケーキ屋に買いに行った。ところが店の前に大きな狼犬がいて、主人公は何度も入るのをためらった。結局デザートの誘惑に負けて飛び込み、ケーキを買い、甘い美味しさを食べた。同時に一人の女の子に出会い、女の子は自分で作ったケーキを主人公に食べさせた。食べた主人公は「うまい」と言い、その後も女の子の作ったケーキを食べ続けると約束した。

そして主人公は引っ越し、ケーキ屋も見つからなくなった。主人公はそれをきっかけにデザートが好きになり、自分で作ってみたくなった。
ののかとは誰か、そう、あの女の子だ……
だから主人公が再び専門学校に来てデザート学科を選び、ののかと出会うのは「幼馴染の再会」になる。
その後かりん先生が、学科から一人を推薦して有名な菓子コンクールに出ると言い、最終的にののかが推薦されて参加することになる。
参加するなら練習して腕を上げるしかない。ののかも一生懸命練習し、主人公もずっとそばにいて資料を調べ、一緒にデザートを作る。

結果が出た。ののかは失敗した。
みんなはののかが落ち込むと思ったが、彼女は平然としていた。自分のレベルが足りないなら仕方ない、また上げればいい、と。
主人公は納得がいかず、みんなも……少し違和感を覚える。あれだけ苦労してコンクールに出たのに、なぜののかはこんなに平然としているのか。
実はゲームのののかの性格造形はここから少しずつ奥が見えてくる。
ののかは偽装が得意な女の子で、表面的にはとても楽天家を装い、主人公にもおおらかで、何気なく接してもそつがなく、何も見えない。しかし実際の内心はとても複雑だ……

ののかは主人公が好きで、よく乙女心が爆発しているが、主人公の前では出さない。ののかにとって菓子を作る理由は、子供の頃に主人公が言った「もう一度君の作ったケーキが食べたい」という言葉だ。だからある授業でののかがあるケーキにこだわったのだ。つまり、彼女はコンクールに出たいのではなく、主人公ともっと一緒にいたいだけなのだ。
最終的に先生がののかの内心に気づき、ののかに早く気持ちを伝えるよう促す。ののかも根っからのツンデレではなく、ようやく機会を見つけて主人公が好きだと伝える。その過程はとても甘く、少し感動的だ。

その後の展開はさらに自然になる。ののかはまさに世界一の彼女で、優しく、押し付けがましくなく、リアルで嘘がなく、ずっと主人公と一緒にケーキを作る日々を楽しんでいる。参加のチャンスは何度もあったが、彼女は主人公と一緒の時間のほうを大切にしているらしい。

そして卒業から数年後、ののかと主人公は結婚する。結婚式のウェディングケーキも二人で作った。幼い頃の無邪気な日々、その後の別離、学校での再会、そして結婚式へ。「デザート」こそが二人の最も深い繋がりだ。

「私とあなたの恋の菓子レシピ、ようやく完成したね」と結婚式でののかは主人公に笑いかける。このゲームで最も重要なルートも終わりを迎えた。
「恋愛」の描写がうまいゲームはたくさん遊んだが、このののかルートは間違いなく異色だ。
なぜなら最高すぎるから!
ゲームは大量の心理描写と会話の細部で、ののかの乙女心を表現している。そしてゲーム CG の絶妙な切り替え、CV の完璧な演技、穏やかな BGM。ののかという可愛い少女のイメージを見事に引き立てている。
これは文章、会話、CV、BGM、画面の複数層が完璧に組み合わさって初めてできることだ。
多くの描写から、ゲームの脚本チームには女性がいるはずだと思わされる。風間ぼなんざという人は女性かもしれない。ゲーム中で二人が一つの傘に入る場面は、「エロ」ではなく「甘さ」を描いている。むしろゲーム全体が HCG 部分を除いてとても正常で健全で、完全に甘さの高い恋愛物語であり、セックスためのセックスのエロゲーではない。

ゲームは物語の描写にもいろんな工夫を使っている。たとえば白咲美絵瑠のルートは倒叙を選び、冒頭から二人が最後に遠くへ菓子の勉強に行く時間で、写真を見ながら回想し、ルートの終わりには回想も終点に達し、一気に進む。美絵瑠の個人ルートの描写も行き届いている。美絵瑠は天才だが普段はサボってばかり、体が小さくロリで、小さい女の子の一面を描くことが多い。悪意のある萌え売りもなく、ちょうどいい。今の日常恋愛ゲームでは本当に珍しい。そしてこのルートの倒叙では言葉が童話風に近づき、ゲームの菓子のスタイルと合わさって、より面白い化学反応を生む。

『あなたに恋する恋愛ルセット』の BGM は相変わらず水月陵で、スタイルはおなじみのピアノの軽音楽だが、フランス風の内容も混ざり、ゲームのテーマに非常に近い。またゲームの原画はふみー、米白粕、ぺろで殺傷力が満載。ゲーム画面の品質は恐ろしいほど高く、崩れがなく、CG も多い。CV の演技も上質で、「ベテラン」と「新人」の方式(たぶん)を採用している。風音とみるはベテランで、さすがの演技。ののかの CV は完全な新人とは言えないが、知名度はない。メーカーはそうやって節約しているのか?値打ちのない過去のベテランと、値打ちのない無名の新人?だが構わない。CV の演技は作品の品質に見合っている。

『あなたに恋する恋愛ルセット』はタイトルに非常に忠実な作品だ。タイトルは菓子作りだと教え、とても甘い恋愛を届ける。作ることから味わうことへ、少しずつ甘さが体に広がるのを感じる。ゲーム自体もそうしている。これはエロゲーとは言えず、むしろ乙女心に満ちた「恋愛日記」で、開けば疲れが消え、障害を越えて画面の向こうの彼女と手を取り合って老いたくなる。
もちろん、こんなゲームでも日本のオタクは難癖を見つける。たとえばこれ。

「俺は絵師目当てにゲームを買って抜くんだ!なのにこのゲームは恋愛しやがって、抜く内容が少なすぎる!」
このオタクは風俗に行けばいい。
『あなたに恋する恋愛ルセット』に点を付けるなら、少なくとも 90 点。これこそ本当の「恋愛ゲーム」で、プレイ後に恋に落ちたくなるゲーム、恋の甘さと美しさを感じられるゲームだ。めちゃくちゃな転生やループが与えてくれるものではない。

そういえばこのゲームの OP と ED は相変わらず Meis Clauson + Yuiko の組み合わせで、ゲーム内に残された作曲者の言葉によれば、OP は「画面から絶えずお菓子が飛び出してくる可愛く楽しい感じ」を追求し、ED は「甘いお菓子を味わった後の少し昏い、現実と夢の間で漂う幸福感」を追求したという。
OP:https://www.youtube.com/watch?v=MsLdKDPOwdA ED:https://www.youtube.com/watch?v=qRNpnrAnYO0
実は OP より ED のほうが好きだ。
ED が言う「甘く昏い夢と現実の間」の感覚は、俺も分かる。外国人が Sugar Coma と呼ぶもので、糖分の高いケーキを食べた後に血糖値が上がって軽い昏睡状態になることを指す。

そういうことだ。『あなたに恋する恋愛ルセット』は糖度がこんなに高くて、プレイし終わった俺も……幸福に満ちた Sugar Coma に陥っているのかもしれない。
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